週末の懐メロ58:イッツ・ア・ミステリー/トーヤ

 

1981年。トーヤのセカンドアルバム「聖歌」の挿入歌。

世界の神秘を歌う詩人のようなトーヤの歌と

2本のアコースティックギターの響き。

5年ほど前にイギリスの新設ラジオ局で

収録されたものらしい。

 

トーヤ(TOHA)はバンド名であり、

彼女の名前(トーヤ・ウィルコックス)でもある。

1980年代のパンク・ニューウェーブの流れでデビューした

イギリスのアーティストで、俳優としても活躍している。

 

イメージ的にはケイト・ブッシュのフォロワー、

日本で言えば戸川純というところか。

 

非日常の世界に引っ張り込んでくれる

エキセントリックな女性アーティストが好きだったので、

彼女の音楽もよく聴いてた。

アルバムも5枚持っていた。

 

バリバリにロックしていた頃のトーヤは、

髪をオレンジ色に染め上げたり、突っ立てたり、

メイクも衣裳も、とにかく奇抜さを追求。

今ならゲームのキャラクターにでもなりそうな

妖精かSFヒロインみたいな恰好で、

神話やファンタジーから題材をとった楽曲を

パンク仕立て、ニューウェーブ仕立て

時にはプログレのスパイスを加えつつ

ステージで暴れまくりながら歌っていた。

 

「イッツ・ア・ミステリー」は、

その親しみやすいメロディで、

彼女の代表曲ともいえる楽曲だが、

原曲はシンセサイザーがビンビン響き、

リフレインでどんどん盛り上がっていく

テンション上がりまくりの曲だった。

 

もちろん僕は大好きだったのだが、

先日、このアコースティックバージョンに

巡り会って再びハートを射ぬかれた。

 

だてに40年歌い込んできたわけではない。

昔やっていた突き抜けるようなシャウトは

もうできないのだろうが、

その分、丁寧に思いを織り込むように歌うトーヤの声は、

若い頃よりも深く、優しく、可愛く、

不思議な色気に溢れている。

まるでケルト神話の森に誘い込まれるかのようだ。

 

後から調べてみたら、2015年に

「アコースティック・アルバム」を出していて、

他にピアノバージョンや、

弦楽四重奏バージョンまでやっていて、どれも素敵だ。

 

若い頃はエキセントリックな面しか見えていなかったが、

改めて本当にいい曲だなと思う。

アコースティックにしたことで、

むしろ21世紀の音楽として昇華したという感じがする。

すごく新鮮に響く。

 

さて、80年代のトーヤを知る人は少ないと思うが、

彼女は最近、YouTubeでちょっと話題になっている。

それはキング・クリムゾンの総帥ロバート・フリップと

コンビでやっているロック漫才である。

彼女はかのプログレの巨匠のカミさんなのだ。

 

厳格な求道者と見られていた夫のイメージを

お笑い芸人か? と思えるところまで

完膚なきまでに叩き潰した功績は大きい。

 

二人の結婚生活は結構長く、

もう30年以上に及ぶはずだ。

 

フリップ(クリムゾン)とトーヤの音楽からは、

愛情とか結婚とか家庭とか、

一般的な幸福感といったものは

微塵も感じられないけど、

とても仲睦まじいようだ。

人間はいろんな矛盾した面を

併せ持っているからこそ面白い。

 

以前からイギリスのテレビ番組などには

「おもろい夫婦」として出演していて、

暖かく幸福そうな笑顔を振りまいていたようだ。

 

だからYouTubeEでのお笑いパフォーマンスも

そう唐突なことでもないのかもしれない。

 

それにしてもフリップをここまで改造してしまった

女の力はまさしくミステリー。

 

夫婦漫才を始めた動機は、

コロナ禍でステイホームを余儀なくされた人たちを

少しでも楽しませたい、というもの。

かつてのエキセントリックなニューウェーブガールは

包容力と慈愛の深い女性に成熟したのだ。

 

そんなことを考えあわせると、

この「イッツ・ア・ミステリー」の

アコースティックバージョンも

より味わい深く響いてくる。

 

 

おりべまこと電子書籍

「酒タバコ やめて100まで生きたバカ」

ただいま無料キャンぺーン実施中!

11月28日(日)16:59まで

 

人生100年時代を面白く生きたい人のための心の常備薬。

今のうちに無料で購入しちゃってください。

面白かったらレビューもよろしくね。

 

表題作のほか、「人生タマタマ」「バカは死ななきゃ治らない」「公務員の仕事は娼婦会社にまかせよう」「きみも一生に一度は着ぐるみアクターに」「人を喰った話」「2020年の挑戦への挑戦」など、人気の記事がずらり。


0 コメント

電子書籍「酒タバコ やめて100まで生きたバカ」発売記念無料キャンペーン

 

本日11月25日(木)17:00よりスタート! 

28日(日)16:59まで実施中。

https://www.amazon.co.jp/dp/B09MDX2J45

よろしければレビューをお願いします。

 

「人生100年」と言われるようになったのは割とつい最近のこと。

あなたも僕も、そんな心の準備はできていなかった。

顔では笑って「うれしいです、ありがたいです」と言ってみても、内心「さあ、大変なことになった」と思っている。

カネが要る。

健康でなくてはならばい。

周りから邪魔者扱いされないよう気を遣う必要もある。

けれども、何よりも大事なのは。

面白く生きられるかどうか。

笑って死ねるかどうか。

あなたにとって面白い人生とは?

その答えはもちろん僕にはわからないけど、

ちょっとは参考になる話もあるかもしれない。

心の常備薬として、

あなたのお部屋の片隅に置いてほしいエッセイ集。

 

もくじ

・人生のすべては十代にある

・こわくて暗い夜ふたたび

・わたしの中の人間のクズ

・客観性という名の神様と自分の物語

・人生最後の全力疾走?

・母の卒業

・1976年の夏休みの星空と自己の存在証明について

・子どもの青春はこれからだけど、

あんたの青春はもう終わり

・「赤い服の少女」に学ぶ人生タマタマ

・母の世界が縮小し深化する

・お正月のワクワクすごろく

・「この世界の片隅に」を見ると、

世の中そうたやすく悪くはならないと思える

・この世界の片隅に居所を見つけられる未来のために

・酒タバコ やめて100まで生きたバカ

・公務員の仕事は障害者にまかせよう

・冠婚葬祭は人生のストーリーを形にするツール

・カルテット:おとなとこども、あるいはアリとキリギリスのハイブリッドライフスタイルと友だち家族の未来

・「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」で

すべてが変わる

・アンパンマンと「ちっちゃいおじさん」のいるところ

・創造的な仕事をするなら眠らニャいと

・バカは死ななきゃ治らないけど、死ぬまでちょっとは成長できるかも

・きみも一生に一度は着ぐるみアクターに

・5月病は克服しない

・他人のメガネをかけ、靴を履いてみることについて

・最後の晩餐の演出

・映画「はじまりへの旅」の寓意とユーモア

・雨女に遇った 

・人を食った話

・人間には最初から子供から大人まで全部詰まっている 

・「2020年の挑戦」への挑戦

・夏のニュースで道行く人たちが「暑い」とコメントすることに関する考察

・おんな・おとこか、女性・男性か、

あなたはどっちが好き?

・映画やテレビドラマの世界では

高齢の犯罪者が増えている?

・長く生きるのはそれだけで価値がある――と

誰もが思えるように

・おとなの事情を優先して、

自分の中の子どもを虐待していませんか?

 

                      全35編収録


0 コメント

電子書籍:新刊本日発売! エッセイ集:生きる①「酒タバコ やめて100まで生きたバカ」

 

お待たせしました。発売しました。

明日から発売記念無料キャンペーン4日間実施です!

11月25日(木)17:00~11月28日(日)16:59

https://www.amazon.co.jp/dp/B09MDX2J45

 

「人生100年」と言われるようになったのは

割とつい最近のこと。

あなたも僕も、そんな心の準備はできていなかった。

顔では笑って「うれしいです、ありがたいです」と言ってみても、内心「さあ、大変なことになった」と思っている。

 

カネが要る。

健康でなくてはならばい。

周りから邪魔者扱いされないよう気を遣う必要もある。

けれども、何よりも大事なのは。

面白く生きられるかどうか。

笑って死ねるかどうか。

 

あなたにとって面白い人生とは?

その答えはもちろん僕にはわからないけど、

ちょっとは参考になる話もあるかもしれない。

心の常備薬として、

あなたのお部屋の片隅に置いてほしいエッセイ集。

 

表題作のほか、「人生タマタマ」「バカは死ななきゃ治らない」「公務員の仕事は障害者にまかせよう」「きみも一生に一度は着ぐるみアクターに」「人を喰った話」「2020年の挑戦への挑戦」など、当ブログ人気の記事がずらり。

 

★もくじ

・人生のすべては十代にある

・こわくて暗い夜ふたたび

・わたしの中の人間のクズ

・客観性という名の神様と自分の物語

・人生最後の全力疾走?

・母の卒業

・1976年の夏休みの星空と自己の存在証明について

・子どもの青春はこれからだけど、あんたの青春はもう終わり

・「赤い服の少女」に学ぶ人生タマタマ

・母の世界が縮小し深化する

・お正月のワクワクすごろく

・「この世界の片隅に」を見ると、世の中そうたやすく悪くはならないと思える

・この世界の片隅に居所を見つけられる未来のために

・酒タバコ やめて100まで生きたバカ

・公務員の仕事は障害者にまかせよう

・冠婚葬祭は人生のストーリーを形にするツール

・カルテット:おとなとこども、あるいはアリとキリギリスのハイブリッドライフスタイルと友だち家族の未来

・「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」ですべてが変わる

・アンパンマンと「ちっちゃいおじさん」のいるところ

・創造的な仕事をするなら眠らニャいと

・バカは死ななきゃ治らないけど、死ぬまでちょっとは成長できるかも

・きみも一生に一度は着ぐるみアクターに

・5月病は克服しない

・他人のメガネをかけ、靴を履いてみることについて

・最後の晩餐の演出

・映画「はじまりへの旅」の寓意とユーモア

・雨女に遇った 

・人を食った話

・人間には最初から子供から大人まで全部詰まっている 

・「2020年の挑戦」への挑戦

・夏のニュースで道行く人たちが「暑い」とコメントすることに関する考察

・おんな・おとこか、女性・男性か、あなたはどっちが好き?

・映画やテレビドラマの世界では高齢の犯罪者が増えている?

・長く生きるのはそれだけで価値がある――と誰もが思えるように

・おとなの事情を優先して、自分の中の子どもを虐待していませんか?

 

                      全35編収録

 

読んでくださった方はぜひレビューお願いします。



0 コメント

東宝特撮×日活ロマンポルノ?「監禁惑星アメーバ」

 

ちょっと息抜きに映画を観よう。

昔の東宝特撮みたいなの、あるかな?

と思って検索したら出てきた

「監禁惑星アメーバ」

 

タイトルとサムネ映像からSFとエロがイメージできる。

紹介文は以下の通り

 

日本の上空に出現した小惑星。

地上から連れ去られた女性たちはアメーバ状の生命体に

レイプされ、妊娠させられる。

拉致された妹のため、小惑星に向かう女性の奮闘を描く。

川上奈々美主演のエロティック・スリラー。

 

どうも想像するには、

1960年代の東宝特撮のSF怪奇系

(マタンゴ、ガス人間など)と

1970年代の日活ロマンポルノを

合体させたような路線をねらって作られた模様。

 

2018年製作というのが

ちょっと信じられないほどの映像クオリティだ。

「わざとでしょ」と、つい言いたくなる。

 

レビューを見ると★一つがずらずら。

一様に「ひどい」「つまらない」「チープ」と

酷評が並んでいる。

 

これだけ見事な酷評を見てしまうと、

どんだけひどいのか、つまらんのか、チープなのか、

自分の目で確かめずにはいられなくなる。

 

主演の川上さんというのはAV女優さんで

セクシー界では演技派として評価が高いらしい。

出ている女優さんはほとんどAV系の人。

 

ただし、これはアダルトビデオでなく、

あくまでSF映画なので、

エロシーンはかなり控えめです。

 

ちょっと濡れ場の多い恋愛系・情事系映画より

少ないくらいで、刺激も強くない。

女性もあまり不快感なく見られるレベル。

逆にH方面を期待する男性は肩透かしを食らう。

 

というわけで観てみたけど、

まぁ尺も1時間ちょいだし、息抜きとしては

こういうのもアリかなという感じ。

 

主役をわざわざこんなやさぐれキャラでなく、

もっとカッコいい捜査官みたいなヒロインに

すればよかったのにと思った。

 

それにしても終わった後、謎の生命体と

上空の小惑星はどうなったのか?

気になる。

もしや「2」を用意しているのか?

 


0 コメント

電子書籍新刊「酒タバコやめて100まで生きたバカ」 発行日延期のお知らせ

 

本日22日発行予定でしたが、最後の価格設定まで済ませて何度もUPしようとしてもこの2日間、

Kinndleの原因不明の不具合で、

エラーが出てUPできません。

そのため数日遅れそうです。

楽しみにされていた方、ごめんなさい。

発行でき次第お知らせします。

 

●内容のご紹介

 

「人生100年」と言われるようになったのは

割とつい最近のこと。

あなたも僕も、そんな心の準備はできていなかった。

顔では笑って「うれしいです、ありがたいです」

と言ってみても、

内心「さあ、大変なことになった」と思っている。

カネが要る。

健康でなくてはならばい。

周りから邪魔者扱いされないよう気を遣う必要もある。

 

けれども、何よりも大事なのは。

面白く生きられるかどうか。

笑って死ねるかどうか。

あなたにとって面白い人生とは?

その答えはもちろん僕にはわからないけど、

ちょっとは参考になる話もあるかもしれない。

心の常備薬として、

あなたのお部屋の片隅に置いてほしいエッセイ集。

 

●もくじ

・人生のすべては十代にある

・こわくて暗い夜ふたたび

・わたしの中の人間のクズ

・客観性という名の神様と自分の物語

・人生最後の全力疾走?

・母の卒業

・1976年の夏休みの星空と自己の存在証明について

・子どもの青春はこれからだけど、

あんたの青春はもう終わり

・「赤い服の少女」に学ぶ人生タマタマ

・母の世界が縮小し深化する

・お正月のワクワクすごろく

・「この世界の片隅に」を見ると、

世の中そうたやすく悪くはならないと思える

・この世界の片隅に居所を見つけられる未来のために

・酒タバコ やめて100まで生きたバカ

・公務員の仕事は障害者にまかせよう

・冠婚葬祭は人生のストーリーを形にするツール

・カルテット:おとなとこども、あるいはアリとキリギリスのハイブリッドライフスタイルと友だち家族の未来

・「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」で

すべてが変わる

・アンパンマンと「ちっちゃいおじさん」のいるところ

・創造的な仕事をするなら眠らニャいと

・バカは死ななきゃ治らないけど、

死ぬまでちょっとは成長できるかも

・きみも一生に一度は着ぐるみアクターに

・5月病は克服しない

・他人のメガネをかけ、靴を履いてみることについて

・最後の晩餐の演出

・映画「はじまりへの旅」の寓意とユーモア

・雨女に遇った 

・人を食った話

・人間には最初から子供から大人まで全部詰まっている 

・「2020年の挑戦」への挑戦

・夏のニュースで道行く人たちが「暑い」とコメントすることに関する考察

・おんな・おとこか、女性・男性か、

あなたはどっちが好き?

・映画やテレビドラマの世界では

高齢の犯罪者が増えている?

・長く生きるのはそれだけで価値がある――

と誰もが思えるように

・おとなの事情を優先して、

自分の中の子どもを虐待していませんか?

 

全35篇収録


0 コメント

週末の懐メロ57:暗黒(スターレス)/キング・クリムゾン

 

1974年発表、アルバム「レッド」の最終曲。

計ったことはないが、キング・クリムゾンは、

おそらく僕がこれまで最も長い時間、

その演奏を聴いたミュージシャンである。

 

アルバムも1980年に発表されたものまでは

ライブ盤、ベスト盤を含めてすべて持っていた。

 

なぜそれほどハマったのか?

ほとんどビョーキだったとしか思えない。

今でいう「中二病」というやつだろうか。

 

紅王との遭遇

 

「レッド」と出会った時は中三のだった。

忘れもしない、初めて買った音楽雑誌

「ミュージックライフ」のレコードレビュー欄に

新譜としてこのアルバムが紹介されていた。

 

そこにある情報はジャケット写真と曲名と、

100~200字程度の短いレビュー。

ツイッターで書ける程度の分量だったと思う。

 

脳髄に入り込んだのは 収録された全5曲の曲名の並び。

表題作のほかはすべて漢字で、

「堕落天使」「再び赤い悪夢」「神の導き」「暗黒」。

全部合わせてもわずか16文字。

カタカナ名の「レッド」を入れても19文字。

 

語彙の少ない当時の中学生が、

まだあまり目にすることのなかった

ダークで宇宙の深淵を感じさせるような

言葉の並びに

それまで持っていたロック、ポップスの概念が

破壊されるようなインパクトを受けた。

 

それと合わせて、暗闇にメンバー3人の顔が

浮がび上がるジャケ写真。

それだけで迷わず小遣いをはたいてレコードを買った。

 

レコードから出てきたのは、

これまで聴いたことのない「異様」としか

表現できないような音楽だった。

その時の感触は今でもよく憶えている。

 

特にメロディアスな部分を多く含む

「堕落天使」と「暗黒」には

完璧に心を支配された。

 

クリムゾンの音楽のすごさと魅力は

その過激なメリハリにある。

むき出しの暴力性と、

それを取りなすような優しさ・切なさ・美しさ。

地獄と天国、悪魔と天使との矛盾を

ギリギリのところで抱え込んだ圧倒的存在感が、

まさしくプログレの中のプログレ。

キング・オブ・プログレッシブロックだ。

 

僕が読んだ「ミュージックライフ」のレビューでは

5点満点で星4つ。

「そこそこいいよ」といったレベルだった。

 

そして1974年から75年頃、クリムゾン自体も、

プログレッシブバンドとしての人気は、

ELP、イエス、ピンク・フロイドの後塵を拝していた。

 

ところが半世紀近く経った今、

キング・クリムゾンはその名の通り、

依然としてプログレのキングとして君臨。

70年代最後のアルバム「レッド」は、

1969年のデビュー盤「クリムゾンキングの宮殿」と並ぶ

深紅の王の最高傑作として、

また、ロック史に輝く名盤として

世界中の人たちに評価され、寵愛されている。

 

そして曲名は日本人の英語力のレベルアップ?)に伴って、

「堕落天使➡フォールン・エンジェル」、

「再び赤い悪夢➡ワンモア・レッドナイトメア」

「神の導き➡プロヴィデンス」

「暗黒➡スターレス」

といった具合に、そのまんま原題のカタカナ名に、

たぶんアナログレコードからCDへの変わり目の時に

改名された。

 

ついでに言うと、

「21世紀の精神異常者」は「21世紀のスキッツォイドマン」に、

「放浪者」は「エグザイルㇲ」に、

「夜を支配する人」は「ザ・ナイトウォッチ」になった。

 

なんだかプロレス技の「岩石落とし」が「バックドロップ」に、

「人間風車」が「ダブルアーム・スープレックス」に、

いつの間にか変わったのと似ている。

 

1960~70年代と80年代以降の間に流れる深い河、

昭和と平成の間の感性のギャップを感じる。

 

●燃え尽きた紅王

 

 

僕が初めてクリムゾンの音楽に遭遇したアルバム「レッド」は、

彼らのラストアルバムだった。

その半年後に「U.S.A」というライブ盤が出たが、

収録は「レッド」のほうが後なので、

実質的にはこちらが最後と言っていいだろう。

その時、1960~70年代のクリムゾンの歴史は

いったん幕を下ろしたのだ。

 

「暗黒(スターレス)」はその有終の美を飾る大曲で、

集大成、燃え尽きるクリムゾン、などとも評された。

 

実際はこの曲はアルバムの他の曲よりも先にできていて、

1973~74年のヨーロッパやアメリカのツアーで

たびたび演奏されていた。

ライブ盤「U.S.A」にもアナログでは入っていなかったが、

CD化された時に収録されていた。

 

この映像で演奏されているのは、

その頃の、いわゆるアーリーバージョンで、

まだデヴィッド・クロス(バイオリン/キーボード)が

脱退する前の、4人の時に演奏されている。

 

「レッド」製作の際には、

これにイアン・マクドナルドやメル・コリンズなど、

初期の旧メンバーの管楽器群が加わって完成された。

 

この4人だけでもすごいのに、

マクドナルドらが参戦して、

後半は各楽器の圧倒的なバトルロワイヤルになって展開。

クライマックスでメインテーマに戻ってきて

エンディングに向かって激走する最後の1分間は、

まさしく集大成・燃え尽きる感じがして、

クリムゾンの音楽のすごさが凝縮されている。

 

●神秘のベールに包まれた紅王

 

10代から20代前半の頃は、どちらかというと、

「宮殿」に代表される初期のサウンドが好きだった。

 

最初のクリムゾンは、イアン・マクドナルドと

作詞家ピート・シンフィールドの個性が強く出た

まるでシェイクスピア劇のような荘厳な世界だった。

 

けれども齢を経るとともに、

「太陽と戦慄」から「レッド」にいたる

この頃のクリムゾンサウンドが好きになった。

その思いは今も変わらない。

 

クリムゾン史上最強のメンバー。

 

ロバート・フリップ(ギター/メロトロン)

ジョン・ウェットン(ベース/ヴォーカル)

ビル・ブラッフォード(ドラムス/パーカッション)

デヴィッド・クロス(バイオリン/メロトロン)

 

アルバム「太陽と戦慄」(これもすごい邦題!)で

集結したこの四人は、1973~74年にかけて

ヨーロッパ・アメリカで

長期のライブツアーを行い、膨大な音源を残した、

 

じつはこの時、

日本公演もスケジュールに組まれていたらしいが、

あまりのタフさにクロスが音を上げてバンドを脱退。

そして、フリップが限界を感じて解散を決めた。

そのために残念ながら来日公演は実現しなかった。

 

70年代のクリムゾンは音源は膨大にあるが、

映像はほとんどなく、後から加工されているとはいえ、

このスタジオでの収録風景の映像は

かなり貴重なものである。

 

ちなみに高校生の時、

行きつけのレコード屋のマスターからプレゼントされた

ワーナーパイオニア(レコード会社)のカレンダーに

各月それぞれ12組のロックバンドが載っていて、

確か9月だか10月だかがキング・クリムゾンだった。

そこで使っていた写真が、

このスタジオでの演奏シーンだった。

 

何と言っても、

まだ20代半ばの若きメンバーらの風貌がいい。

今は亡きジョン・ウェットンは

まるで映画俳優のような顔立ち。

デヴィッド・クロスも、とてもハンサムだ。

ビル・ブラッフォードのエキセントリックな表情もいい。

ちなみにビル・ブラッフォードは、

今は「ブルーフォード」と呼ぶらしい。

 

この当時は今と比べると情報量に

天と地ほどの開きがある。

 

特にクリムゾンの音楽活動に関しての情報は非常に乏しく、

音源以外の情報といえば、

レコードについているライナーノーツと

雑誌のわずかな論評のみ。

動画はおろか、カラー写真もないし、ステージ写真もない。

ビジュアルがほとんどない。

しかし、それが却って他のミュージシャンにはない、

神秘感を醸し出していた。

 

ライナーノーツや雑誌に載る

モノクロ写真のメンバーの姿は、

ロックミュージシャンというよりも

世界史の本に載っている

思想家とか哲学者・文学者を想起させた。

それもまた、僕の中でキング・クリムゾンが

別格の存在になった要因でもある。

 

そういえばレコードについている帯には

「神秘のベールに包まれた・・・」

といったカッコいいフレーズが謳われていた。

要するに情報が少なかっただけなのだが。

 

●1980年の来日公演

 

1974年のラストアルバムで罹患したクリムゾン病は

その後、どんどん進行していったが、

それと反比例するかのように、

70年代半ばをピークにプログレの人気は急降下し、

代わってパンク、続いてニューウェーブが台頭していく。

まるでクリムゾンの終焉が

プログレの時代の終わりを暗示していたかのように。

 

ところが80年代に入った途端、

なんと死んだはずのキング・クリムゾンは

「ディシプリン」というアルバㇺを出して生き返る。

 

これはロバート・フリップが、

ビル・ブラッフォードと再び組み、

ギター、ヴォーカルのエイドリアン・ブリュー、

ベースのトニー・レヴィンを入れて結成した

新しいバンドだった。

 

当初のバンド名は「ディシプリン」だったのだが、

フリップはこのバンドに再び

「キング・クリムゾン」の名を冠した。

 

フリップの意思だったのか、

マネージメント側やレコード会社の意向だったのか、

わからないが、

この時から「キング・クリムゾン」は

バンド名であるとともに、

音楽ビジネスのためのブランド名になった。

 

驚きと不安の中で聴いた「ディシプリン」。

それはかつてキング・クリムゾンとは

まったく別の音世界だった。

僕は混乱した。

 

それでも初の来日公演を行うというので、

チケットを手に入れないわけにはいかなかった。

 

来日公演について宣伝をしたり、

熱く語った覚えはないのだが、

なぜかプログレなんてほとんど聴いたこともない友だちが

「おれもいく」「あたしも行きたい」とか言い出し、

5、6人くらいで連れ立って会場へ向かった。

 

東京の会場は、今はなき浅草国際劇場。

「なんで浅草?」という違和感と

実際のステージを見た時の違和感は忘れらない。

 

ああ、やっぱり。

このキング・クリムゾンは、

僕が知っている、ぼくを病気にした

キング・クリムゾンではない。

 

「レッド」と「太陽と戦慄パート2」はやってくれたが、

暗黒も、堕落天使も、21世紀も、宮殿も、放浪者もない。

 

ディスコやニューウェーブの影響を受けた

「デイシプリン」のサウンドに、

60~70年代のクリムゾンのイメージに支配されていた

僕は脳も体もついていけなかった。

 

唯一、日本のあいさつを勉強してきたロバート・フリップが

お坊さんみたいに手と手を合わせて「アリガト」と

観客にお辞儀していたのが心に残った。

 

浅草からの帰り道、

本当にプログレッシブロックの時代は

終わってしまったんだとしみじみ感じた。

でも、その頃からロックとは、

音楽とはこういうものがいいんだ

という思い込みから解き放たれ、

より幅広い音楽を自由に楽しめるようになった気がする。

 

振り返ると、プログレのカテゴリーからは外れるが、

「ディシプリン」は今聴いても面白い、

時代の先端を先取りしていた、優れたアルバムだと思う。

ただし、僕がクリムゾンのレコードを買ったのは

ここまでだ。

 

●永遠の暗黒

 

その後、クリムゾンは何度か解散・再結成を繰り返し、

90年代以降はヘヴィメタみたいになってしまい。

6人編成になったり、8人編成になったりした。

オールドファンの要望に応えてか、

最近は60~70年代の曲もよくやっている。

そういえば今年もこれから来日公演をやるらしい。

 

おそらく御大ロバート・フリップが生きている限り、

活動を続けるのだと思うが、

僕はそんなに興味を避けなくなってしまった。

 

ただ、フリップ師には最近、ちょっとまた注目している。

 

独自の道を行くプログレ王であり、

厳格な求道者というイメージだったフリップ師は、

最近、キャラが激変。

 

奥さんのトーヤにそそのかされたのか、

コロナ禍でステイホームしている人たちを楽しませようと、

YouTubeでお笑いコスプレや、

ロック夫婦漫才みたいなことをやっているのだ。

 

まさかあのクリムゾンの総帥が、

お茶目で可愛いじいさんぶりをご披露してくれるとは

夢にも思わなかった。

時代は変わる、人間は変わる、人生は変わる。

 

しかし、これも長きにわたるクリムゾンの活動で、

自分が追求する音楽を成し遂げたという

余裕がなせる業なのかもしれない。

 

今やフリップが従来のイメージを自ら破壊しようとも、

キング・クリムゾンは

微動だにしない圧倒的な世界と物語を構築した。

もうこうなると古いとか新しいとかいった論評は

意味をなさない。

 

普遍的なロッククラック。

プログレッシブロックという名の孤高の文化。

「暗黒」――「スターレス」はそのバイブルとして、

永遠の生命力を持って聴き継がれ、

語り継がれると信じてやまない。

 


0 コメント

電子書籍:新刊予告 「酒タバコ やめて100まで生きたバカ」

 

エッセイ集:生きる①

「酒タバコ やめて100まで生きたバカ」

人生100年時代を面白く生きたい人のための心の常備薬。

11月22日(月)発売予定。

 

もくじ

・客観性という名の神様と自分の物語

・人生最後の全力疾走?

・母の卒業

・1976年の夏休みの星空と自己の存在証明について

・子どもの青春はこれからだけど、

あんたの青春はもう終わり

・「赤い服の少女」に学ぶ人生タマタマ

・母の世界が縮小し深化する

・お正月のワクワクすごろく

・「この世界の片隅に」を見ると、世の中そうたやすく悪くはならないと思えてくる

・この世界の片隅に居所を見つけられる未来のために

・酒タバコ やめて100まで生きたバカ

 

ほか 全31篇収録


0 コメント

フランケンシュタインの母

 

メアリー・シェリーは「フランケンシュタイン」の

作者である。

そのメアリー・シェリーを描いた映画が

2017年に公開されていたのを知って、

例によってAmazonPrimeで観た。

 

「メアリーの総て」という邦題は

わかりやすいけど、イケてない。

もうちょっと気の利いたタイトルは

付けられなかったのかと思う。

 

今や知らない人はいない人造人間フランケンシュタイン。

正確にはフランケンシュタイン博士が

死体をつなぎ合わせて作った怪物。

 

その原作小説を書いたのは女性で、

「シェリー夫人」とい

う人だーーということは

子どもの頃、読んだ雑誌で知っていた。

 

そのシェリー夫人という名前から、

僕は長年、妙齢の有閑マダムだと思っていた。

 

その雑誌にもイラストで40歳か50歳くらいの

金持ちそうなおばさんが描かれており、

「すごく怖い夢を見たの。この夢をもとに小説を書くわ」

といったセリフが付いていた。

 

さらに

「こうしてフランケンシュタインは誕生したのですーー」

といった解説がついていた。

おそらくその雑誌のライターも

シェリー夫人については何も知らなかったのだろう。

 

実際のシェリー夫人=メアリー・シェリーは、

もとは19世紀ロンドンの本屋の娘で、

両親がちょっと名を知られた思想家だったようだ。

そのためか、彼女にも文学的才能があり、

若い頃から怪奇小説を書きたがっていた

というベースがある。

 

そして彼女はフランケンシュタインの物語を書いたのは、

まだ18歳の時。

出産も経験していたものの、まだ少女と言っても

おかしくない齢だった。

執筆時、のちに夫となる詩人パーシー・シェリーとは

まだ正式に婚姻関係を結んでいなかった。

 

「フランケンシュタイン」をSFの元祖、

ロボット小説の元祖と見る向きもあるが、

メアリー・シェリーは科学に興味を持っていたものの、

科学的知識、理系のセンスはほとんどない。

 

フランケンシュタインの物語は、

あくまで当時、19世紀・大英帝国時代の

イギリス・ヨーロッパにおける思想・哲学・文学の

水脈から生まれてきたものだ。

 

そこには現代よりもずっと厳しい道徳性や保守思想、

それに反発する自由への希求、美への憧れ、

理想主義などが渦巻いている。

 

映画ではなぜ若い彼女があの物語を生んだのか、

ただのひらめだけでなく、その背景にどんな事実があり、

どんな心の動きがあったのかを丁寧に描いていて、

僕にはとても興味深かった。

 

ただし、「フランケンシュタイン」からイメージする

ホラー要素を期待して観るととがっかりする。

画面に怪物は一切出てこない。

 

しかし、怪物なるものの正体は、

ストーリーの中でとても分かりやすく描かれている。

ジャンル分けをするなら、

ヒューマンとか恋愛映画に入るのかな?

 

フランケンシュタインの物語は、

おそらくこの先も半永久的んな生命力を保つと思うが、

実は僕も原作は読んだことがないので、

こんどしっかり読んでみようと思う。

 


0 コメント

ぼーっと生きている

 

空が美しい。

雲が流れていく。

そのままボーッと見ていればいいのに、

スマホなんてものを持ち歩いているので、

つい写真を撮ってしまう。

 

子どもの頃、ぼーっとするな、とよく怒られた。

死んでからぼーっとしろ、

死んだらいくらでもボーッとできるから、

と言われたこともある。

 

だけど死んだらぼーっとしていることなんてきない。

生きているからぼーっとできるんだ。

 

生きてるのか死んでるのかわからないぐらい

ぼーっとしてるのが本来の自分であったはずなのに。

アクティブな人間世界に生まれてきたのは

何かの間違いだったはずなのに、

大人になるとぼーっとするのが難しくなった。

 

ぼーっとしながら見る世界は結構美しくて、

見とれて、また輪をかけてぼーっとなる。

でも、そうしていると、

頭の中でいろんな思考が熟していく。

 

それで結局、夜になるとパソコンに向かって

チャカチャカ何か書いている。

ああ、せっかく今日はぼーっとできた良い日だったのに。

 


0 コメント

週末の懐メロ56:ホワット・ア・フィーリン/アイリーン・キャラ

 

1983年。

アイリーン・キャラは、自分も出演してしていた

映画「フェーム」(1980年)と

この「フラッシュダンス」で。

続けざまに主題歌をヒットさせ、大スターになった。

 

この曲が流れてくるとともに、自転車に乗った主人公が

朝焼けの街を疾駆する「フラッシュダンス」の冒頭3分は、

これまでに観た映画の中で、最も希望に溢れた

オープニングシーンだ。

 

みどころは、もちろんダンスシーンなのだが、

僕はそれ以上に、ジェニファー・ビールス演じる

主人公アレックスの、昼間はガテンな溶接工、

夜はセクシーバーで金を稼ぐ、という

大都会で夢を追いながら生きる

タフなサバイバーぶりが好きだった。

 

夢見る少女ダンサーの物語に

こんな設定を加えて映画にすることができたのは、

やはり女性が自由にふるまえるようになり、

ライフスタイルが変わった80年代だったからではないかと思う。

 

今では女性も当たり前にガテンな仕事をするようになったが、

この頃の日本じゃ工場や倉庫や建築現場で

若い女の子が働くなんて、とても考えられなかった。

アメリカだって女性溶接工なんて、

まだそんなにいなかったと思う。

 

それでいてアレックスは可愛い女の子で、

自分の夢にまっすぐで、

ちょっとエッチなところもあって、

成功に向かってがんばって、

予定調和的なシンデレラストーリーを

実現させちゃう。

 

なんだかおいしところてんこ盛りで、

斬新でありながら、意外と古典的なヒロインの、

今考えるとよくできた話だった。

 

時代は変わっても、齢を取っても

やっぱり自然と希望が胸に溢れ出してくるような

音楽と映画に親しんでいたい。

 


0 コメント