まるごとスイカから人生を学ぶ

 

 この間、子供が「スイカ丸ごと食べたい」と言っているのを聞きました。

 どうも子供にとって、これは夢の一つのようです。

 

 うちの小僧くんもそうでした。

 スイカ大好物の彼は、保育園の頃から夏が来るたび、かなりしつこくこれを繰り返していました。

 うるさいのでほかっときましたが。

 

 しかし。

 あきらめなければ、夢はいつかかなうのです。

 

 彼が小学4年生の時、たまたま知り合いから続けざまにスイカを丸ごと2個もらいました。

 それで夢をかなえさせてあげるべく、1個は彼にそのままあげました。

 丸ごと独り占めです。

 僕はなんと慈愛にあふれた親でしょう。

 

 ところが。

 小僧くんは半分に割った途中――まだ3合目付近でギブアップ。

 

 残りは友達が来た時に一緒に食べていたように記憶しています。

 以降、その年はもう「スイカが食べたい」とは洩らしませんでした。

 

 あの夏、彼は人生の真理を一つ学んだのかも知れません。