「ありがとう」の思いを込めた動物供養は、世界オンリーワンの日本の文化

 

★ペット葬・ペット供養

 

 葬儀・供養業界の雑誌の仕事をしているのいで、その方面の話を聞くと、反応するようになっています。べつに信心深いわけではないのですが。

 

 最近、興味を抱いたのが、動物慰霊の話。

 人間の方は、お葬式をしないでそのまま焼場に送ってしまう直葬が激増。

 お葬式なんて形式的なものにお金をかけられない、という傾向が全国的に広がっていますが、その反面、ペット葬儀・ペット供養の件数は年々増え、手厚く弔うようになっています。

 

 これだけ聞くと、「人間より動物の方が大事なのか!」

 と怒り出す人もいそうですが、

 「その通り」とまでは言わないけど、

 日本のように動物の霊魂を認め、ちゃんと供養する文化を持つ国は稀少――というか、ほとんど唯一と言っていいようです。

 

★肉になる動物の供養:畜霊祭

 

 ペットの場合は心の癒し――いわば、精神の栄養になってくれるけど、肉体の栄養になってくれるのが、僕たちが毎日食べているお肉です。

 

 僕のロンドン時代の職場(日本食レストラン)の仲間にダテ君というのがいて、彼は高校卒業後、しばらくの間、食肉関係の会社に勤めていたそうです。

 

 そこでは必ず年に一度、「畜霊祭」というのを行い、自分たちが屠った牛や豚や鶏などを供養していたとのこと。

 

 もちろん、お坊さんが来てお経を唱えるし、参列者も喪服かそれに準じる服装をし、人間の法要と変わることなく、ちゃんとした儀式として行なうそうです。

 そして、社長など代表の人が祭詞を読み上げます。

 

 「人間のために貴重な命を捧げてくれて感謝の念に堪えません云々・・・」

 

 ダテ君の話を聞いたのはずいぶん昔のことなので、すっかり忘れていましたが、最近、この畜霊祭のことが書かれてある本を読んで思い出しました。

 

 さらにインターネットで調べてみると、びっくり。

 

 実際に屠畜に関わる食肉会社はもとより、家畜の飼料を作る会社とか、直接屠畜に関わるけではないところも、とにかく家畜関係のビジネスをやっているところは、みんな、こうした畜霊祭、牛供養、豚供養、鶏供養などを行っているんです。

 家畜のおかげで収入を得て暮らしていける。感謝してしかるべき。

 そういう考えかたなのです。

 その本の著者によれば、こんなことをやっているのは世界中で日本だけ。まさしく日本独自の文化。

 

★イルカもクジラも魚も、動物園も水族館も、実験動物も

 

 この話をすると、欧米人は信じられないとか、奇異な目で見て、嗤う輩もいるらしい。

 バカヤロ。

 彼らがよくやり玉に上げるクジラやイルカはもちろんのこと、「魚魂祭」といって魚の供養をするところだって全国津々浦々にあるのです。

 

 さらに言えば、9月の動物愛護週間には、全国各地の動物園で「動物慰霊祭」が行われるし、水族館ではやはり魚魂祭が行われます。

 

 そして実験動物も。

 マウスやモルモットをはじめ、動物実験を行っている研究所・医療機関も動物供養を行っています。

 

 僕たちは割と当たり前だと思っているけど、こうした施設においてちゃんとした動物供養をする国も、どうやら世界で日本だけのようです。

 

★敬虔な気持ち、感謝の心に基づく文化

 

 だから日本人は立派だ、という気はありません。

 ナナメから見れば、いくらでも批判できます。

 

 ペット業者も食肉業者も動物園も、みんな商売の一環でそうしているんだ。

 他のところがやっているから右へ倣えでやってるだけだ。

 実験動物だって、一部の動物愛護家がうるさいからだろ。

 カタチだけで魂なんかこもっちゃいない・・。

 とも言えるかもしれません。

 

 でも、そうした命や自然に対する敬虔な気持ち、哀れに思う気持ちと感謝の心に基づく文化があることは確かだし、知っておいたほうがいい。

 そして機会があれば、外国の人にも伝えられればいいと思うのです。

 

 少なくとも、畜霊祭や魚魂祭のこをおかしがって嗤う輩に

 「クジラやイルカを殺して食うとは、かわいそう。日本人はザンコクだ」

 なんて言われたくないよね。

 

 


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コメント: 1
  • #1

    ヤマイモ (金曜日, 15 3月 2019 20:36)

    そうだな。たとえイナゴの佃煮だろうがフライドチキンだろうが鯨肉だろうが同じ命。人間の食物になってくれた命には感謝を忘れてはいけないな。