先祖ストーリー①:バクチにハマって貧乏暮らし:娘たちに疎んじられた母方のじいちゃん

 

 お盆なので、先祖の話を書こうと思います。

 先祖と言っても、うちは父方も母方も由緒正しき家柄ではないし、家系図なんてものも存在しません。

 親に訊いてみたこともありますが、おおかたどっかのビンボーな百姓だったんだろ、という程度の回答でした。

 要はそんなことに関心のある人たちではないのです、

 

 なので、先祖と言っても僕に語れるのは祖父・祖母のことくらいです。

 

●明治生まれのジジ・ババは異国の住人

 

 最近は少子高齢化のせいで、3世代の距離が縮まり、孫とじいちゃん・ばあちゃんの親密度はぐんぐん高まっています。

 

 けど、僕らの世代にとって、祖父・祖母は明治時代に生まれて、今の中学生くらいの年齢から働き出し、貧乏生活と軍国化の波を体験し、戦争時代は社会の中核を担い、戦争が終わってやっと平和になって豊かになってきたなと思ったら、もう人生終り・・・といった境遇の人たちです。

 

 彼らの生きていたそんな時代は、僕ら現代の日本人にとってまるで異国のようです。

 

 生活の基本である衣食住にしても、仕事にしても娯楽にしても、まったく違う文化の国の人たちだと言えます。

 もちろん、同じ日本人ではあるのだけれど、今の3世代のように共有できるものは極めて少ない。

 吸っている時代の空気・生活空間の空気がまったく異なるのです。

 

●サザエさんも、ちびまる子ちゃんもファンタジー

 

 日曜の夜のフジテレビのファミリーアニメ2作品はノスタルジーもあるけど、一種のファンタジーとして楽しまれているのだと思います。

 

 原作が戦後間もなく新聞の四コマ漫画として始まった「サザエさん」。

 アニメももう45年くらい続いていて(放送開始の頃も見ています)、表面的なライフスタイルは時代に合わせて現代風にしているけど、家族や近所の人たちとのつながり方など、本質的な部分はそのままキープしています。

 

 波平さんや舟さんは、ほとんど僕のじいちゃん・ばあちゃん世代的な存在です。

 

 いまやこうした「典型的な日本人の家族」とされた暮らしはほとんど幻想であり、そういう意味では「日本むかしばなし」に匹敵するのではないかと思います。

 

 昭和四〇年代が舞台の「ちびまる子ちゃん」。

 こちらは僕らとほぼ同世代で、僕は単純に自分の子供時代と重ね合わせて見られます。

 けど、若い世代の人たちにとっては、日常と地続できでありつつも、ちょっと浮き上がった「プチ・ファンタジー」のように映るのではないでしょうか。

 モモエちゃんだの、ヒデキだの、リンダだの伝説のアイドル(みんなまだ存命だけど)もいっぱい出てくるしね。

 

●語り部おらず、謎に包まれた母方のじいちゃん

 

 というわけで前置きが長くなってしまったけど、そんな異国の民のじいちゃん・ばあちゃんの話。

 当然のことながら、ぜんぶで四人います。

 

 まず母方の祖父。つまり母親の父。

 この人のことは僕はまるで知らない。

 というのは僕が生まれる前に、すでにこの世にいなかったから。

 割と若い頃――戦後10年も経たないうちに亡くなったらしい。

 

 子供の頃は何とも思っていなかったけど、割と最近いなってから気になって、何度か母に訊いてみたことがありますが、あまり話してくれません。

 

 「いい加減な人だった」

 

 というのが娘である母の印象。

 その言い方もずいぶんぶっきらぼう。

 

 母のきょうだういは末っ子は男子だが、その上は彼女を含め、女子ばかり7人。

 ちなみに母は双子の片割れです。

 

 それだけ子供を設けたのだから、それなりの結婚生活があったと思うのですが、どうも彼女の中での父親は好ましい存在ではなかったようで、思い出したくないし、話したくもないようです。

 

 ちらっとわかったのはバクチ好きだったらしい、ということ。

 そのため、家にお金がなく、母たちきょうだいは早くから働いて生計を立てなくてはならなかったようです。

 

 今と違って、男女差別が激しく、女子の給料は極めて低いのが一般的だった戦前の日本国にあって、当時の窮乏生活の元凶だった父=僕のじいさんに対しては恨みはあれど、愛情らしきものはほとんど残ってないのかもしれません。

 

 夫(=僕の父)は、そんな自分の父親とはほぼ正反対で、まじめに働いて金はしっかり稼ぐし、バクチも愛嬌程度にしかやらない人だったので、ずいぶん幸せな思いをしたと言います。

 

●じつはお洒落な遊び人?

 

 ちなみにこの女系家族の唯一の男子である、母の弟(=僕の叔父)は、割と二枚目の優男で、スキーなどのアウトドアスポーツを趣味にするなど、若い頃はちょっとシティボーイ風のイメージがありました。

 彼だけ昭和二けた生まれだし、末っ子だったので、お姉さんたちの癒しと希望の光として、ずいぶん可愛がられたのでしょう。

 

 会ったこともない母方のじいちゃんのことを想像するには、息子であるこの叔父さんのイメージを材料とするしかありません。

 なので、割としゃれた遊び人だったのかなぁ・・・と、良いほうへ考えます。

 母は嫌っているみたいですが、同じ男のせいか、僕はどこか彼に親近感を感じるのです。

 ぜんぜん知らないんだけど、いちおう孫として。

 to be continue・・・