キノコ愛

 

 山中に自生しているキノコにはどこか神秘的な雰囲気がある。

 「かわいい」とか「すてき」とか「妖精みたい」とか言って偏愛している人も少なくないようだ。

 

 僕は生まれてこの方、一度もキノコ狩りには出かけたことがないのだが、子どもの頃にはよく「キノコ狩りごっこ」というのをやった。

 

 これは家の中でも公園などの屋外でもできる。

 友達とみんなでキノコ狩り(というバーチャル)に行くのだが、そこで生え

ているキノコを採って食べのだが、その中には毒キノコが混じっている。いわばくじ引きなのだが、それにあたると笑いが止まらなくなったり、狂ってしまったり、怪物に変身してしまったりするのだ。

 

 その当時のマンガとか映画とかテレビの影響が大きかったと思うが、子ども心にキノコは危険でサイケな魅力に満ちていた。

 そのくせ実際に食べるのは嫌いだったけど。

 

 また、若い頃はドラッグカルチャーの影響の一環で、バリ島(だったかな

?)のマジックマッシュルームでトリップすることに憧れた。

 これも今のところ実現させていない。

 

 長じてそんなオカルティック、ファンタジック、サイケデリックな雰囲気をまとっていたキノコは今やわが家の常食になった。

 何と言っても養殖技術が進歩したせいで、年中、低価格で安定供給されるのもポイント高い。

 シイタケ、シメジ、エノキ、マイタケ、エリンギ、マッシュルーム・・

いつの間にかどれも好物になり、最近はほとんど切らしたことはなく、干しシイタケをはじめ、冷蔵庫の中には必ずどれかのキノコが入っている。

 

 スープ、シチュー、カレー、炒めもの、煮物、汁物・・・どんな料理にも合うので構わずぶち込む。

 すると味も風味もぐんと豊かになる。

 

 栄養面のことはよくわからないが、健康にいいと言うことで、定期的にテレビで紹介されたりすると、スーパーの店頭から消え失せることがある。

 

 静岡の天竜川界隈で3度、採れたてのシイタケを戴いたことがあるが、マツタケなど及びもつかないその感動的なおいしさが今でも記憶に蘇る。

 大人の休日にはキノコ狩りに行くべきかも知れないなぁ・・・と近頃よく思う。