20世紀の愛と平和のロックなんて忘れてしまってた

  

 1960年代から80年代のロックやフォークやポップスをいつも聴いているので、YouTubeさんがよく僕のMy Mixというのを提供してくれる。その中には普段聴かないコンテンツも混じっている。

 「あんた、こういうのも好きしょ」と、オーダーしてないものでもおススメを蔵出ししてくれるというわけだ。

 

 昨日は久しく聴いていなかったNenaの「99 Luftballons (ロックバルーンは99)」が出てきた。

 世界を席巻したドイツ発のドイツ語ソング。

 YouTubeが出してくれたのは2016年ニューヨークでのライブだ。

 

 めっちゃ明るいノリだけど、これはけっこう強烈な風刺を含んだ反戦歌だ。

 ご機嫌なリズムとポップなメロディはもちろんイカしてるが、99個の赤い風船を兵器と間違えて攻撃し戦争に発展してしまうという寓意に富んだ歌詞が素晴らしい。

 

 当時の核廃絶のムーブメントと相まったのか、1983年の世界的大ヒットとなった。、

 そしてそれから5年後にベルリンの壁が崩壊した。

 

 そういえば最近、ある本でデヴィッド・ボウイが1987年にベルリンの壁の前で野外ライブをやったという話を読んだ。

 スピーカーを東ベルリン側に向け、壁で分断された双方のオーディエンスに音楽を送り届けたという。

 まさしくボウイHeroesだった。合掌。

 

 1960年代、当時の若者の多くは音楽で世界が変えられると信じ、ミュージシャンたちはそれに応え、愛と平和について語り歌った。

 その精神は20世紀の間中ずっと生き続けて、東西冷戦の終結や核廃絶運動、難民の救済などにも何らかの影響を与えたと思う。

 だが、いつの間にか、たぶん21世紀の始まりとともに消えてなくなっていた。

 

 世の中そう甘くない。単純ではない。

 あれは幸せな時代の、能天気な連中の、つかの間のたわごとだったのか?

 音楽ビジネスのための偽善だったのか?

 みんな夢でしたと、あとはYou Tubeで音楽を楽しんでりゃそれでいいのか?

 

 ロックが骨抜きにされ、反戦も反核も何もなかったのように、次々とまた世界中で壁が作られ、核が作られる時代になってしまっていることに、今さらながら愕然とする。

 

 「おまえごときに何ができる?」と問われたらグウの音も出ない。

 それでもまだ生きているので、自分の宿題として抱えて、たとえちょっとずつの時間でも向き合いたいと思う。