認知症のハングリーな幻想

 

マッチを擦ると、その小さな炎の中に
テーブルの上に並んだごちそうが見える。
そこはあたたかい暖炉のある部屋だ。
やさしいお父さんやお母さんも笑っている。

 

ご存じ、アンデルセンの「マッチ売りの少女」。
少女はこうした次の朝、真っ白な雪の上で
天使のような微笑みを浮かべて死んでいる。

 

現実的にはとんでもなく悲惨な話だ。
100年以上前のヨーロッパでは、
児童虐待を含む、こうした子どもの悲劇は日常茶飯事だった。

 

しかしアンデルセンの物語は
哀しくも美しかった。
たぶん、子どもの頃、読んだ本の挿絵の影響も大きいだろう。
いわさきちひろだっただろうか・・・。
あの人が描く子どもは、独特の世界観を描き出す。

 

この少女に限らず、人間、極限までお腹がすいたり、喉が渇くと、
幻覚が見えるようになるらしい。
そういうことは餓死ぎりぎりになって

起こることかだろうと思っていたが、
認知症となるとそうでもないらしい。

 

うちの義母は最近、夕方になると「兄貴が来ている」とか
「弟が来ている」とか言って外へ出ようとする。

どうも子どもの「黄昏れ泣き」と同じく、
日が西に傾くと精神が不安にかられるのと、
ちょっとお腹がすく――というか、口寂しくなるのが合成されて、
幻覚とまでは言わないが、そういう気分になるらしい。

 

それで自分でドアがあけられないので、
僕かカミさんに「ちょっと出てきていい?」と申し出に来る。

 

禁止するとかえってこだわるので、
やむなく仕事を中断し、
じゃあ一緒に行きましょう」と言って外へ出る。

 

もちろん、その家族はいない。
「どこにいるんだろうね。一緒に探しましょう」と言って、
そのへんをぶらっと15分くらい歩いて回る。

 

そのうちそんな家族のことなど忘れてしまって、
帰って晩ご飯を食べると、すっかり記憶はどっかに飛んでいる。

けっこう疲れるので何とかしたいと、
少しずつ間食もさせるようにしているが、
なかなかうまくいかない。

 

そんな義母が久しぶりに写真を撮ってくれた。
まぐれだけど1枚、よく撮れたのがあったのでUP。
最近は髪の毛が伸びて人生初のポニーテールになってます。

 

 

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