週末の懐メロ6:スワロウテイル~あいのうた~/¥タウンバンド

 

1996年は息子が生まれた年だった。

それなのにこの歌は、

中学生か高校生の時に出逢ったような錯覚にとらわれる。

それくらいの威力を持って肌に食い込んで、

消えない痣をつくった。

 

今でも耳にすると、架空の街「¥TOWN(エンタウン)」の

荒廃した風景と人々の群像が浮かび上がり、胸が疼き出す。

そして繰り返し聴かずにいられなくなる。

 

¥TOWN(エンタウン)は

バブル経済崩壊後の日本の心象風景だった。

岩井俊二監督はそれを終戦後の焼け野原・闇市のような

イメージを重ね合わせて描き出した。

 

経済戦争のThe DAY After。

僕たちはいまだその後遺症に悩んでいる。

 

その映画「スワロウテイル」を

僕は仕事帰りに渋谷の映画館で観た。

子どもが生まれたばかりだったので、

早く家に帰ってカミさんを手伝わんと・・・と、

ちょっと罪悪感を抱きながら。

 

およそ四半世紀が過ぎたいま、

この歌が頭の中で鮮明によみがえってきたのは、

コロナ禍に巻き込まれて世界が変わっていくのを

目の当たりにしているからだろうか。

 

名曲はそれまでの価値観が崩壊した荒野から生まれる。

 

 

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