「変革の勇気 観光・サービス業が生まれ変わる方法」の
著者である佐々木司さんは、
小田原で観光農園「ベリーの森」を成功させ、
岩手で瀕死のリゾート施設を再生させ、
現在、日光・鬼怒川エリアで栃木県地域経済牽引事業として
「商業施設×観光農園×こどもパーク」という
新しいリゾート施設を建設している。
先日出たばかりのこの本は、
佐々木さんへのインタビューをもとにして
僕が執筆したものだ。
彼がベンチャー企業「くらしデザインラボ」を設立したのは
まだ5年前の2016年。
観光業、農業、レジャー業、いずれに関しても
まったくの初心者だったにも関わらず、
わずかな時間で次々と事業を成功させた。
岩手ではすっかり有名人となり、
ローカルメディアが連日取材にやってきたり、
ラジオのDJまでやって人気者になっている。
また、昨年は「じゃらん」で表彰もされた。
コロナ禍で観光業は大ダメージを受けたが、
それ以前にこの業界の問題は深刻化していたという。
やはりここでも昭和の時代の記憶が、
ビジネスの変化を妨げていた。
結局、それが今回の局面で自分たちの首を絞めることになった。
特に資本力のない中小の旅館やホテルの多くは
息も絶え絶えの状態に陥っている。
期待の高かったインバウンド需要も潰れ、
GoToトラベルが復活したとしても、所詮は一過性のもの。
中小は、付加価値を作らなくては
今後、生き残るのは困難だ――ということで、
佐々木さんはさまざまな提案をしている。
その提案を簡単にまとめていえば、
地元で商売する人たちと手を結び、
子どもや年寄りの面倒も見ながら、
その地域と旅行者・訪問者との間を取り持つ、
よろず相談所みたいな存在になろう、ということだ。
宿泊にくっつく付加価値。プラスアルファ。
お客にとってはその「おまけ」「ふろく」こそが
その宿を選ぶ基準になるという。
地域の人、その地域に興味を持って訪れる旅行者。
双方を幸福にできる業者こそが生き残れる。
言ってみれば当たり前のことだが、
誰にとって何が幸福なのか、
きちんと考えて対処できることが
よろず相談所には求められる。
佐々木さんはコンサルテイングもやっており、
多くの経営者の声に耳を傾けているが、
手っ取り早く儲けるには?
という経営者は相手にしないという。
観光業の将来を真面目に考えている人とともに
生きたいと言っている。
それは日本の将来を考えることにも繋がる。
この本はそのための入門書となっている。
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