週末の懐メロ16:少女/五輪真弓

 

子どもの頃、僕が暮らしていた小さな家には縁側があって、

柿と柘榴と無花果の木が生えていた。

猫の額ほどの小さな庭だったが、

子どもの目にはずいぶんと広く見えた。

 

縁側では祖父や祖母といっしょに

みかんやお菓子などを食べていた記憶がある。

真冬に白い雪が積もっていたこともあった。

 

中学生の頃、出逢ったこの歌は

そんな情景を思い出させてくれる。

 

そして、いつもこの歌の主人公の少女は

いくつなのだろう? と考えてきた。

 

歌詞の1番の少女は9歳じゃないかと思う。

2番の少女は19歳だろうか。

 

9歳の少女は夢が崩れるのを見ても

縁側に座っているしかなかった。

けれど、19歳の少女は色あせた夢を捨てて

垣根の向こうへ旅立つことができた。

 

だけども最近、もしかしかしたらどちらも

本当は90歳のばあちゃんなのかもしれない

と考えるようになった。

 

叶えた夢も、叶えられなかった夢も、

いずれは手放さなくてはならない。

老いた時、人はそのことを知る。

 

そして9歳でも、19歳でも、90歳でも、

どの女にもその内側に少女がいるのだ。

 

人間は経験しなくても、勉強しなくても

生まれながらに生きる知恵と勇気を携えている。

その人ならではの知見もたくさんある。

 

五輪真弓はそんな普遍的な人間存在への思いを

美しい旋律に乗せた。

男の中にも少女がいることを伝えた。

一生の伴侶となる歌に出逢えたのは、

とても幸福なことだと思う。

 

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