週末の懐メロ52:ノーモア“アイ・ラブ・ユーズ”/アニー・レノックス

 

1995年リリース。「メドゥサ」のトップナンバー。

もともとは「ザ・ラヴァ―スピークス」という

イギリスのバンドが1986年に発表した曲である。

 

それはそれでななかなかいいのだが、

これをカヴァーしたレノックスのバージョンが凄すぎた。

 

おそらくほとんどの人は、

彼女のオリジナル曲だと思っている。

かくいう僕もつい最近までその一人だった。

 

圧倒的な歌唱力に加え、

ひと睨みで男を石にする蛇魔女メドゥサの魔性。

 

悪魔の館か、倒錯趣味の変態秘密クラブか、

奇怪な世界を描いた演劇風のミュージックビデオは、

そこはかとなく楽しくユーモラスでもある。

 

これは現在も世界中を巡演している

男性だけのバレエ団

「トロカデロ・デ・モンテカルロバレエ」への

オマージュとして制作したらしい。

 

愛を囁く人たちは怪物たちの話をする。

 

「No more "I love you's"」とともに 

歌詞の中で繰り返される「モンスター」とは、

誰もの心の中にいる、もう一人の自分の姿だ。

 

だって人はこぞってハロウィーンに

オバケになりたがる。

年に一度、自分の中のモンスターを解放するのは、

健康の秘訣なのかもしれない。

 

レノックスはこの曲で第38回グラミー賞(1996年)の

「最優秀女性ポップ・ボーカル・パフォーマンス賞」を

受賞した。

 

ちなみに「メドゥサ」ではチークダンスでおなじみ、

プロコルハルムの「蒼い影」なども歌っている。

これまた圧倒的なレノックス節で素晴らしい。