感動!カネテっちゃんの「ほぼカキフライ」

 

名古屋の人間はみんなエビフリャーが大好物、

というレッテルを貼られてまって、

はや40年ぐりゃー経ったもんでよ、

今や、名古屋の裕福な子どもはエビフリャーを

くわえて生まれてくるとか、

名古屋の年寄りは最期の晩餐にエビフリャーを喰って死ぬ、

という都市伝説さえあるらしいわ。

 

そんだもんだで名古屋出身のおまえもそうなんだろうと

よく言われるけどよ、

おれはエビフリャーよりカキフリャーのほうが好きだがや。

フリャーを格付けすると、

1、カキ、2.イカ 3.エビ だでよ。

 

というわけで標準語に戻ると、

やっぱり好物はカキフライである。

 

僕の場合、カキが好きなわけでなく、

カキフライが好きなのだ。

生ガキやカキなべなどはこのまま一生、二度と喰えなくても

何の悔いもないが、カキフライはそうはいかない。

 

もしかしたら最後の晩餐として選ぶのは、

ソースをたっぷりかけてカラシをちょいちょいとつけた

アツアツのカキフライと白いほかほかごはんかも知れない。

ああ、またカキフライの季節がやって来た。

うれしい。

 

ところが、である。

家ではカキフライは食えない。

なぜかというと、

カミさんがカキフライがダメだからである。

 

しかもたちの悪いことに彼女は嫌いなわけではなく、

「好きだけど食えない」という立場なのだ。

 

聞くところによると、食べられた時期もあったようだが、

2,3度あたって、以降、僕と付き合い始めた頃には

まったくダメになっていた。

しかし、「おいしかった」:という記憶は持っている。

これは厄介だ。

 

こんな人間を前に、「おれは大好物だでよう」と言って、

ガツガツ見せびらかすようにカキフライを喰うなんて、

デリカシーのないことは僕にはできない。

てか、気が弱いので怖くてできない。

なので毎年、こっそり外食して素知らぬ顔をしていた。

 

しかし今年、確かお盆過ぎだったか、スーパーで

「ほぼ大粒カキフライ」という代物に出会い、

わが家のにポッとロウソク程度の灯りがともった。

 

この「ほぼ大粒カキフライ」なるものの正体は、

かまぼこというか練り物で、

おでこに豆絞りハチマキのおなじみキャラ、

かねてっちゃんのカネテツの製品である。

 

「ほぼカニ」とか「ほぼウナギ」とか、

あくなき挑戦を繰り返すカネテツが放った

ホームラン、とまでは言わないまでも、

タイムリークリーンヒットくらいの価値はある。

 

サミット(スーパー)の安売りで150円くらいのとき

(普段は198円で売っている)、買ってきて

喰ってみたら、「おお、これは・・・・」と

思わずうなった逸品だ。

 

ちゃんとカキフライのちょっと磯っぽい味と、

ふんにゃりした食感を見事に再現しているのには敬服した。

すばらしい技術力だ。

やるじゃねえか、カネテっちゃんよ。

 

さすがいに衣のサクサク感だけはイマイチだが、

まぁ、揚げてからちょっと時間のたった

カキフライと思えば問題ない。

 

トースターであっためて、

ソースやタルタルソースをかけて食べれば十分イケる。

 

何よりカキが食べられなかったカミさんが、

もどきとはいえ、

カキの風味を十分に楽しめる。

なので1パック4つ入りなので、彼女に2つあげて、

僕と義母で1個ずつ食べる。

 

アレルギーでカキなど貝類NGの人も

これなら大丈夫だと思う。

カネテツのあくなき「ほぼ」への挑戦と追求に

惜しみない拍手を送りたい。

 

あなたもぜひ200円なりの

カキフライもどきを賞味してみてください。

 

こうなると、次なる作品は、いよいよ

「ほぼエビフリャー」だろうか?

名古屋人に「うみゃー」と言わしたれ!

 

 

おいしい食のエッセイ集

ロンドンのハムカツ

もくじ

・想やストーリーでおいしくなる日本食

・肉じゃがは幻想のおふくろの味

・恐竜の唐揚げ

・スーパーマーケットをめぐる冒険旅行

・むかしのコロッケ、みらいのコッケ、まあるいコロッケ

・ドラもんがどら焼きの売り上げに及ぼした経済的効果 ほか