フランケンシュタインの母

 

メアリー・シェリーは「フランケンシュタイン」の

作者である。

そのメアリー・シェリーを描いた映画が

2017年に公開されていたのを知って、

例によってAmazonPrimeで観た。

 

「メアリーの総て」という邦題は

わかりやすいけど、イケてない。

もうちょっと気の利いたタイトルは

付けられなかったのかと思う。

 

今や知らない人はいない人造人間フランケンシュタイン。

正確にはフランケンシュタイン博士が

死体をつなぎ合わせて作った怪物。

 

その原作小説を書いたのは女性で、

「シェリー夫人」という人だーーということは

子どもの頃、読んだ雑誌で知っていた。

 

そのシェリー夫人という名前から、

僕は長年、妙齢の有閑マダムだと思っていた。

 

その雑誌にもイラストで40歳か50歳くらいの

金持ちそうなおばさんが描かれており、

「すごく怖い夢を見たの。この夢をもとに小説を書くわ」

といったセリフが付いていた。

 

さらに

「こうしてフランケンシュタインは誕生したのですーー」

といった解説がついていた。

おそらくその雑誌のライターも

シェリー夫人については何も知らなかったのだろう。

 

実際のシェリー夫人=メアリー・シェリーは、

もとは19世紀ロンドンの本屋の娘で、

両親がちょっと名を知られた思想家だったようだ。

そのためか、彼女にも文学的才能があり、

若い頃から怪奇小説を書きたがっていた

というベースがある。

 

そして彼女はフランケンシュタインの物語を書いたのは、

まだ18歳の時。

出産も経験していたものの、まだ少女と言っても

おかしくない齢だった。

執筆時、のちに夫となる詩人パーシー・シェリーとは

まだ正式に婚姻関係を結んでいなかった。

 

「フランケンシュタイン」をSFの元祖、

ロボット小説の元祖と見る向きもあるが、

メアリー・シェリーは科学に興味を持っていたものの、

科学的知識、理系のセンスはほとんどない。

 

フランケンシュタインの物語は、

あくまで当時、19世紀・大英帝国時代の

イギリス・ヨーロッパにおける思想・哲学・文学の

水脈から生まれてきたものだ。

 

そこには現代よりもずっと厳しい道徳性や保守思想、

それに反発する自由への希求、美への憧れ、

理想主義などが渦巻いている。

 

映画ではなぜ若い彼女があの物語を生んだのか、

ただのひらめきだけでなく、その背景にどんな事実があり、

どんな心の動きがあったのかを丁寧に描いていて、

僕にはとても興味深かった。

 

ただし、「フランケンシュタイン」からイメージする

ホラー要素を期待して観るととがっかりする。

画面に怪物は一切出てこない。

 

しかし、怪物なるものの正体は、

ストーリーの中でとても分かりやすく描かれている。

ジャンル分けをするなら、

ヒューマンとか恋愛映画に入るのかな?

 

フランケンシュタインの物語は、

おそらくこの先も半永久的な生命力を保つと思うが、

実は僕も原作は読んだことがないので、

こんどしっかり読んでみようと思う。