「芝浜」と女落語家

 

「愛妻の日」に記事を書いたら、

「芝浜」という落語を思い出して、

ちょこちょこYouTubeに上がっているのを聴いていた。

 

有名な古典だから知っている人も多いと思うが、

あらすじを話すと——

 

江戸に魚屋を生業とする男がいて、

魚を選ぶ目も包丁さばきも優れているのだが、

困ったことに大の酒好き。

 

昼間から「ちょっとだけ」とすぐに飲んでしまい、

深酒して結局、ろくな仕事が出来なくなってしまう。

おかげで家は借金だらけという体たらく。

 

そんな魚屋がある日、芝の浜(昔は今の港区芝のあたりは浜、

芝浦から先は江戸湾だった)で大金を拾う。

 

大喜びでそのカネで贅沢三昧、遊び暮らそうとするのだが、

カミさんに「何言っているの。あんたはただ夢を見たのっよ」

と言われてしまう。

 

がっかりした魚屋はカミさんにほだされて酒を断ち、

まじめに働いて優秀な本領を発揮して

暮らしは上向きに。

そして3年後、カミさんから衝撃の真実を打ち明けられる

ーーという話。

 

最後のオチは、いつ何回聴いても笑って泣ける傑作中の傑作で、

おまけにお金とは何か、仕事とは何か、

人生とは、幸福とは・・・といろいろ考えさせてくれる。

 

ところが夫婦愛に溢れたこの物語、

現代女性の立場から見ると、

魚屋のカミさんが「できすぎニョーボ」

「男に都合よすぎるオンナ」という風に映り、

リアリティを感じないという。

なかなか女の目線はクールである。

 

江戸時代、寄席に来て落語を楽しむ観客は、

ほとんどが男だったようで、

どうも古典落語は基本的に男を喜ばせる話に

なっているようだ。

 

それでもいいと言えばいいのだが、

そんな落語の伝統に疑問を唱える落語家もいる。

それも女性。

 

この「芝浜」に女性目線を入れて改変しようと

しているのが、女性落語家の林家つる子さんだ。

 

今や昔とは比べ物にならないほど、

女性の仕事の選択肢は増え、

女性お笑い芸人も多数活躍する時代だが、

さすがに落語家をやろうという人はまだ稀。

 

僕も昨日知ったばかりだが、ちょっと注目してみたいし、

彼女がカミさんの心情を織り交ぜて作る

「芝浜」も聴いてみたいと思う。