週末の懐メロ72:今日の日はさようなら/森山良子

 

卒業の季節。

森山良子がギター1本で歌うこの名曲は

1967年リリース。

最初出た時はシングル盤のB面だった。

—ーと、今回調べてみて初めて知った。

あなたはどこかの卒業式でこの歌を歌っただろうか?

 

僕がこの曲を初めて聴いたのは、

中学生の頃聴いていたラジオの深夜放送で、である。

 

「私がこの番組を担当するには今日が最後です」という

DJのお別れの挨拶のバックに掛かっていたのが

とてもきれいで印象的だった。

 

卒業式の歌のメロディは、総じて切なく美しい。

 

僕の世代は卒業式と言えば「あおげばとうとし」と

「ほたるの光」だったが、

歌詞はともかく「あおげばとうとし」のメロディも

とてもきれいで好きだった。

(最近、アンジェラ・アキがピアノを弾いて

歌っているのを聴いた)

 

1970年代の後半あたりから卒業の歌は、

お世話になった師(先生)に対して歌うものではなく、

別れゆく友だちを思って歌うものになったようだ。

 

「今日の日はさようなら」が作られた頃は

「あおげばとうとし」や「ほたるの光」の

おまけみたいな役回りだったのだが、

だんだん主役に取って代わるようになってきたのだと思う。

30代の友人に聞いたら、歌ったよという人が何人かいた。

 

息子は7年前に高校を卒業して、

いま20代半ばだが、

このあたりの世代はもう歌っていないようだ。

彼らにとってこの曲は

「エヴァンゲリオン」の印象が強烈なようである。

 

子どもたちとともに歌う林原めぐみバージョンが

「エヴァンゲリオン新劇場版・破」の

あのシーンで使われたために、

トラウマになってしまったという人も少なくない。

 

たしかにすごい演出だった。

完結した今、思い返すと、

この曲と「翼をください」の2曲の昭和フォークが

新劇場版全体のトーンを作っていた。

 

作曲者は森山良子のために書いたわけではないが、

最初に歌ってヒットさせ、広めたのが森山だったので、

彼女の持ち歌ということにしても問題ないだろう。

 

それにしてもシングルレコードのB面という、

いわばオマケあつかいだった曲が、

今や懐メロ、卒業ソング、昭和フォークといった枠を超えて

「にっぽんの歌」の殿堂入り。

この季節、改めて聴いてみると本当に良い歌だ。

僕にとって卒業式は、

もう人生の卒業式しか残されていないが、

さようならにはこの歌がいいかもしれない。

 

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