週末の懐メロ85:ラジオスターの悲劇/バグルス

 

1979年の世界的大ヒット曲。

「Video Killed Radio Star」

(ビデオがラジオスターを殺っちまった)

というリフレインが耳に残り、

邦題も一度聞いたら忘れられない秀逸さ。

 

ビデオという新しいメディアが世の中に現れ、

ラジオスターの仕事がなくなってしまったという、

ちょっとシニカルな内容だが、とてもポップで楽しい曲だ。

 

トレバー・ホーンとジェフ・ダウンズのバグルスは、

それまでのプログレと、

新興のニューウェーブの間を行くような

とてもユニークなバンドだった。

 

今ではYouTubeなどで、かつて幻のライブとか、

伝説のコンサートとか言われた映像も

見放題・聴き放題になっているが、

従来、音楽は基本的には音だけ。

ヒットソングはいつもラジオから生まれていたのだ。

 

そうした環境が激変したのがこの頃から。

ホームビデオが一般に普及し始めたのはもう少し後だが、

アーティスト(とレコード会社)は

ミュージックビデオを頻繁に作るようになり、

それがテレビでバンバン流れるようになった。

音楽の「聴く」と「観る」の比重はほぼ半々になった。

 

「ラジオスターの悲劇」も皮肉にも、というか、

なかば戦略的にビデオ化された。

いかにもミュージックビデオ初期の映像でござるという

チープさが目立つが、それが今となっては

却って味になっていて、とても楽しめる。

レトロでコミカルなSF仕立てになっていて、

曲の内容と雰囲気をうまくビジュアル化していると思う。

 

バグルスの活動期間は短かったが、

この曲が入っている1980年発売のアルバム

「The Age of Plastic」

(邦題はこの曲と同じ「ラジオスターの悲劇」)は

プログレポップな曲がいっぱい入っていて、

現代よりもなんだか未来っぽくて面白い。

 

日本ではYMOに代表されるように、

1980年代の始まりは、

明るてちょっとオモチャっぽい未来と

ダークな世紀末がいっしょにやって来たような時代だった。

「21世紀」という言葉にも

まだワクワクするような熱い思いが感じられた。

 

でもラジオがビデオに殺されてしまうようなことは

なかった。

ラジオスターも生き残り、また僕たちに語りかけ、

素敵な音楽を届けてくれる。