さらばノラネコきょうだい

 

「あの子たち、保護猫ということになって

先週、埼玉の川越の里親さんのところに行っちゃったのよ」

暑さがやっとやわらいだ夕方、

義母を連れて、いつもの川沿いの道を散歩していたら、

ネコ使いのおばさんがそう言って声をかけてきた。

 

あの子たちというのは、このあたりのネコ林や

ベンチのあるネコ庭にゴロゴロしていた

クロネコと白黒ブチのことである。

ぼくたちはクロとか、ブチとか呼んでいたが、

ネコ使いのおばさんは「松ちゃん」「竹ちゃん」と

名まえをつけていた。

二匹はきょうだいである。

 

とてもフレンドリーで、

この近くに引っ越してみてから

僕もずいぶん写真を撮らせてもらった。

野良猫として川のほとりに

骨をうずめるのかと思っていたら、

詳しい経緯はわからないが、意外な展開が待っていた。

 

そう言えば最近見かけていなかったが、

暑いのでどっかに引っ込んでいて

夜、行動しているのかと思っていた。

 

二匹ともノラとは思えないくらい、人懐っこく、

散歩の人たちに可愛がられていたので、

そうしたキャラが幸いしたのか、

すっかりおとなになっていても

引き取ってくれる里親が現れ、

めだたしめでたしというところか。

 

よくごはんをやっていた

ネコ使いのおばさんは仲介役だったのか、

川越からいろいろ情報が入ってくるようで、

わざわざスマホを開いて僕と義母に、

二匹の現在の暮らしぶりの写真や動画などを見せてくれた。

ちょっと寂しがっているのかもしれない。

 

それにしてもクロ(松ちゃん)のほうは

よくネコ林のあたりで小鳥を狙ったり、

川岸に降りて行ってカルガモの親子を狙ったりしていたが

そんなワイルドなご趣味も卒業ということなのだろうか。

新しい暮らしになって、野生の血は疼かないのだろうかと

少々気にはなるが、住めば都という言葉もある。

かなり環境に対する順応性が高いようなので、

川越で幸福にくらしてほしいと思う。

 

 

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