週末の懐メロ101:ザ・ビッグシップ/ブライアン・イーノ

 

1975年リリース。

アンビエントミュージック(環境音楽)の原点であり、

巨大な船で僕たちの心をはるかな海へ曳航してくれる

ブライアン・イーノの最高傑作。

 

イーノはグラムロックとプログレッシブロックの

あいの子みたいなバンド「ロキシーミュージック」の

キーボードプレイヤーとして70年代の初めにデビュー。

 

その頃は奇抜なファッションと

アバンギャルドなパフォーマンスで話題を集めたが、

ソロになってからは独特の音楽世界を築き始めた。

 

この曲が収録された3枚目のソロアルバム

「アナザー・グリーン・ワールド」は、

1980年代になってブレイクし、

新たな音楽ジャンルとして成立する

アンビエントミュージック(環境音楽)の先駆的作品。

 

その後、イーノはいわゆるロック、ポップミュージックとは

一線を画した音楽活動を続けるが、

当時のミュージシャン、アーティストらに

与えた影響は絶大で、

ロバート・フリップ、デビッド・ボウイ、

トーキングヘッズ、U2など、

数え上げればきりがない。

 

そしてアンビエントミュージック(環境音楽)の

開発者の一人として、

映画や美術などの世界にもその影響力は広がった。

 

いまや懐かしのマイクロソフト・ウィンドウズ95の、

あの起動音を作曲したのもイーノだった。

コンピュータ時代の幕開けを彩った

わずか3秒の鮮烈な序曲。

 

人間の無数の感情の一つ一つを構築して作ったような

「ザ・ビッグシップ」には、

信者ともいえる熱烈なファンが大勢いるようで、

YouTubeには「THE BIG LOOP」と題して、

10時間という長大な編集バージョンも上がっている。

 

瞑想曲として、作業用BGMとして、

仕事や生活のあらゆる場面で愛聴できる、

そして日常の風景を非日常的なものに変えてしまう

このマジックナンバーは、

ひとりひとりの心の無意識の領域で

まるで血流のうねりのように響き続ける。