本日発売!新作小説「マイ・ギターズメモリアル」

 

人気ポップスターだった父は、

意識不明の状態で病院のベッドに横たわっていた。

音楽で生きる父と子の、死を前にした対話の物語。

短編。1万9千字。

 

あらすじ

デビュー間もない若いシンガーソングライターは

時おり、広い畑の夢を見る。

そこでは幼い頃に死別した妹が畑仕事をしている。

夢の中でいっしょに成長してきた彼女は

「お父さんがもうすぐここに来るよ」と彼に告げた。

 

それが予知夢であるかのように、

ほどなくして父が脳出血で倒れた、

という報せが入る。

彼の父もまたミュージシャン。

それも世界的に有名なポップクスターであり、

愛のメッセンジャーとしても知られる人物だ。

けれどもそうした世間のイメージとかけ離れた、

プライベートな顔を知る息子は、

自分と母親と妹を捨てて生きてきた

父をひどく憎んでいた。

 

一本のギターを抱えて、

病院に瀕死の父の面会に訪れた息子。

閉じられた病室の中で、

意識を失ったままベッドに横たわる父に向き合い、

胸の奥から湧いて出る思いをつぶやく。

そしてギターを媒介として、

意識のないはずの父と「イエス・ノー」の問答形式で会話を交わすようになる。

次第に息子は、もう表に現れない父の奥の意識と

一つになっていき、

それまで知らなかった父の人生の一面を垣間見る。

 

栄光の中の孤独。

自分が信じていた音楽の才能が枯渇していく恐怖。

安息の場のはずだった家庭も重圧となり、

精神的混乱は家族愛さえも悪夢に変えてしまう。

迷走した父は家族を捨てて

一人の女(後妻)との愛に生きるようになる。

ジュンはそんな不完全な人間だった父を

少しだけ赦せる気持ちになり、

彼が旅立つ前に最初で最後のデュエットを

しようと試みる。

 

面会時間が終わる頃、

病室に父の心を奪った女――後妻が現れる。

憎しみのため、それまで顔をそむけ続けてきた相手。

そんな相手と言葉を交わし、思いを交流させるうち、

息子の中には新しい自分の音楽を作り、

歌い始める準備が進んでいった。

 

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