追悼・アントニオ猪木さん:あなたほど無様さがサマになる男はいなかった

 

「ふつう見せないでしょう。こんな無様な姿は。

でもそういう商売をしてきたから。ありのままですよ」

 

昨日亡くなった猪木さんの病床の最期の映像を見て、

なんてカッコいいんだと涙しかなかった。

 

特に熱烈な猪木のシンパではないし、

プロレスファン、格闘技ファンでもない。

しかし、ご多分に漏れず、

子どもの頃・若い頃は夢中になってプロレスを観た。

そして、アントニオ猪木のカッコよさは

体の芯に染みついていた。

 

僕の中でのアントニオ猪木はそんなに強くはなかった。

最期に語ったように、むしろ無様にやられたり、

負けたりするシーンのほうが印象に残っている。

 

それはジャイアント馬場との対比で明らかだ。

馬場がやられるところ、

負けたところはほとんど記憶にない。

しかし、猪木はいつも敵の外人レスラーにやられて、

額から血を流していた。

馬場とタッグを組むと、危機一髪のところでタッチし、

馬場が大暴れして一人で敵のチームをコテンパンにした。

馬場は圧倒的に強く、威勢はいいけど猪木は弱かった。

 

アニメ「タイガーマスク」でも、

なんだか馬場が悠々とした親分で、

猪木は子分の鉄砲玉みたいな感じで描かれていた。

 

ところがある年のワールドリーグ戦。

最終戦で猪木は血まみれになりながら、

相手のクリス・マルコフを卍固めでギブアップさせた。

世界最強の必殺技・卍固め(オクトパスホールド)

初披露の日、猪木はワールドリーグ戦に優勝。

馬場が血で真っ赤に染まった白いハチマキの猪木を讃えた。

めちゃくちゃ感動し、

しばらくテレビの前で棒立ちになっていた。

 

新日時代になってからのアントニオ猪木も、

大巨人アンドレ・ザ・ジャイアントの

バックドロップで粉砕されたり、

超人ハルク・ホーガンのアックスボンバーを食らって

卒倒したりした。

長州力らの維新軍にコテンパンにやられ、

惨敗したこともある。

 

鮮烈に記憶に残る無残な負け方、無様なやられ方。

だけどめちゃくちゃカッコいい。

そして、どんなに無様な姿をさらしても、

敢然と立ちあがり、リベンジを果たした。

それがアントニオ猪木の「闘魂」だった。

 

だから猪木さんの言葉は響いた。

無様でもいいんだ。

負けてもいいんだ。

人生が続く限り、何度でも立ち上がれ。

リベンジしろ。

 

もちろん、彼のように誰でもリベンジできるわけではない。

無様さをサマにできるわけではない。

いや、むしろ、ほとんどの人ができない。

でも「それでもいいんだ」と

猪木さんなら笑って言う気がする。

「元気ですかー!」と言って、

ビンタを食らわせてくれそうな気がする。

もっと生きろ、夢を捨てるな、とも。

もう記憶のなかでしか、それはかなわない。

 

ありがとう猪木さん。

ご冥福をお祈りします。