なぜ20世紀のポップミュージックには神が宿ったのか?

 

今回、「週末の懐メロ」を書籍化するに当たって、

リライト・編集作業をしたり、

紹介した楽曲を改めて聴いてみたりして、

一つ気付いたことがある。

 

それはこれらの名曲の誕生時、

当のミュージシャンらは、

自分でもわけがわからずに

創作に取り組んでいたんだろう、ということだ。

 

もちろん、ベースになるもの—ー

ブルースとか、民俗音楽とかはあっただろうし、

こんな作品にしたいという

完成イメージはあったと思うが、

自分たちの創作のプロセスを

言語化・理論化できなかった。

 

夜中にギターを弾いたり、

夜明けにピアノの前に座ったりすると、

すーっとそこに神とか天使だとかが下りて来る。

そしてわけがわからずに、

自分に内在するものに突き動かされて

詞をつくる、曲を作る、

できた曲を編み上げ、味つけをする。

その過程で神が宿るのである。

 

音楽に限らず、21世紀以降のサブカルチャーに

世のなかの価値観を揺るがすほど斬新なもの、

いわば、神がかり的なものが生まれないのは、

やはり産業化され、

システム化されてしまったからだろう。

言ってしまえば、かつての生きた音楽の抜け殻

を再生産しているだけである。

 

自己啓発本にあるような

「こうすればうまくいく」的な「成功法則」は、

この数年でAIが普及したら、

完全にコモディティ化されて、

成功法則でも何でもなくなってしまう。

それはこの2,3年のことかもしれない。

 

ビジネスになる「そこそこのもの」ができれば、

それで十分なのかもしれないけど、

そもそもクリエエイター自身が、

人の作った法則やらメソッドやらに従って作って

面白いのだろうか?

そこに喜びがあるのだろうか?

 

今の時代、あるいは未来、どうなるのかわからないけど、

何かものを創る人は、

他人のサクセスストーリーなどに惑わされず、

自分を信じて取り組んだほうがよい。

あなたのなかにも、あなただけの神がいる。

 

新刊「週末の懐メロ 第1巻」

20世紀ポップミュージックの

回想・妄想・新発見!

もくじ

1 5年間/デビッド・ボウイ 【1972】

2 愛にさよならを /カーペンターズ 【1973】

3 ドント・レット・ミー・ダウン/ザ・ビートルズ 【1968】

4 嘆きの天使/ケイト・ブッシュ 【1978】

5 ソー・ロンリー/ザ・ポリス 【1978】

6 スワロウテイル ~あいのうた~ /イェンタウン・バンド 【1996】

7 青春の影/財津和夫(チューリップ) 【1974】

8 ボール&チェーン/ジャニス・ジョプリン 【1967】

9 ハッピークリスマス/ジョン・レノン&ヨーコ・オノ 【1971】

10 翼をください/山本潤子(赤い鳥) 【1971】

11 スキャットマンズ・ワールド/スキャットマン・ジョン 【1995】

12 クレア/フェアーグランド・アトラクション 【1988】

13 デジャ・メイク・ハー/レッド・ツェッペリン 【1973】

14 タイムマシンにおねがい/サディスティック・ミカバンド 【1974】

15 キエフの大門/エマーソン・レイク&パーマー 【1972】

16 少女/五輪真弓 【1972】

17 ジュニアズ・ファーム/ ポール・マッカートニー&ウイングス 【1974】

18 トムズ・ダイナー/スザンヌ・ヴェガ 【1984】

19 マーチ・オブ・ザ・ブラッククイーン/クイーン 【1973】

20 なごり雪/イルカ 【1975】

21 忘れじのグローリア/ミッシェル・ポルナレフ 【1973】

22 夢見るシャンソン人形/フランス・ギャル 【1965】

23 同志/イエス 【1972】

24 悲しき鉄道員/ショッキング・ブルー 【1970】

25 タワー/エンジェル 【1975】

26 ロッホ・セヌ―/ランパ 【1990】

27 レディ・ラック/ロッド・スチュワート 【1995】

28 残酷な天使のテーゼ/高橋洋子 【1995】