週末の懐メロ126:オード・トゥ・マイファミリー/クランベリーズ

 

1994年リリース。

クランベリーズは90年代に活躍した

アイルランドのバンド。

リードヴォーカルのドロレス・オリオーダンが

自分の子ども時代を振り返り、

家族への思いを歌い上げる。

家族への頌歌。

 

この美しい讃美歌について

オリオーダンは雑誌のインタビューで

いろいろ語っている。

 

彼女は僕より一回り年下の1972年生まれ。

10代の頃は反抗して両親を悲しませたが、

齢を取ると、いつか感謝する日がやってくるという。

自分の両親がいかに素晴らしく、自分の子ども時代が

いかに幸福だったかを知る時が来るとも。

 

彼女は7人きょうだいで育ったというが

7歳の時、家は火事で全焼。

ずいぶん辛い生活をしたのではないかと思うのだが、

記憶にあるのは美しい食卓、あたたかいベッド、

そして学校にきれいな服を来て行ったことだという。

 

また、こんなことも話している。

「私たちは物質主義がほとんどない状態で育った。

本当にスピリチュアルな子ども時代だったと思う」。

 

いつでも、どこでも、

子ども時代は多かれ少なかれスピリチュアルだと思うが、

もしかしたら現代ではそうとも言えないのかも。

 

美しい食卓、あたたかいベッド、きれいな服というのは、

けっして贅沢な衣食住に恵まれた

ということではないだろう。

 

価値の物差しはお金と物質ばかり。

心の隅々までそうしたものに

支配された環境の中で育つと、

どういう心情になるのか、ちょっと心配になる。

本当に大切なものは目に見えないので、

それが損なわれたこと・失われたことにさえ

気づかなくなってしまうのではないか。

 

けれども、そんな過去だって変えることはできる。

不幸な子ども時代を送ったという人もいるかと思うが、

それを乗り越えて、

今まで続いてきた自分に自信を持って、

幸福な未来を掴むために過去だって変えてやろう--

そんな心持ちで生きていこう。

 

週末の懐メロ 第1巻

 

デビッド・ボウイ/カーペンターズ/ビートルズ/ケイト・ブッシュ/ポリス/レッド・ツェッペリン/イエス/ミシェル・ポルナレフ/赤い鳥/イルカ/高橋洋子など、

#1~#28を収録。

21世紀ポップを語る珠玉の音楽エッセイ集。