週末の懐メロ135:アウト・オブ・ザ・ブルー/ロキシーミュージック

 

和訳するとしたら「青天の霹靂」というところか。

「アウト・オブ・ザ・ブルー」は

ロキシーミュージックの代表曲の一つ。

1974年リリースの4枚目のアルバム

「カントリーライフ」のトップナンバーだ。

 

一度聴いたら忘れられないブライアン・フェリーの、

ダンディだけどどこかマッドな香りが漂う

個性的なヴォーカルを中心に、

通常のギター、ベース、ドラムに加え、

シンセ、バイオリン、サックスが絡み合って

独特のグラマラスなサウンドが広がる。

 

まさに70年代ロック界の「青天の霹靂」だった

ロキシーミュージック。

このバンドはリーダーのフェリー以外、

メンバーチェンジが激しく、それに応じて、

時期によってまったく違う音作りをしている。

 

デビュー当初は、

アンビエントミュージック(環境音楽)の元祖となった

ブライアン・イーノが在籍しており、

音もヴィジュアルも斬新でアバンギャルドで

エッジが立ちまくっていた。

 

一般的に最も人気のある後期は、

「フレッシュ&ブラッド」や「アヴァロン」で

洗練された大人のポップミュージックを聴かせた。

 

そして、この曲を含む中期は、

グラムロックとプログレッシブロックを掛け合わせたような

イメージを醸し出しながらも、

他のプログレバンドなどにはない、

ポップでキャッチーで、

何とも言えない色気のある楽曲が充実。

この時期の「カントリーライフ」と「サイレン」、

そしてライブ盤「ビバ!ロキシー」は、

僕が最も好きな3枚だ。

 

イーノに代わるキーボーディストとしてメンバーとなった

エディ・ジョブスンは、バイオリンも演奏。

この曲は彼のエレクトリックバイオリンが炸裂する後半が

ハイライトになっている。

 

ここではキング・クリムゾンを脱退したばかりの

ジョン・ウェットンがベーシストとして参加しており、

ジョブスンとウェットンはこの後、

新たなプログレバンド「U.K.」を結成する。

 

ちなみにロキシーミュージックは70年代前半、

十分革新的な音楽づくりをしていたのに、

なぜかプログレバンドとしては認識されず、

どちらかというとグラムロックに

カテゴライズされることが多い。

 

もう一つのロキシーミュージックの特徴は、

アルバムジャケットにある。

どのアルバムも、一度見たら忘れられない、

セクシーで個性的な美女がジャケットを彩っている。

中でも裸の女の子が二人並んだ「カントリーライフ」は、

当時、わいせつではないかと物議を醸しだし、

各国でジャケットが差し替えられたりもした。

日本はその方面は寛大なのか、

そのまま発売された。

僕もいまだにそんなにエッチだとは思わない。

この時期のレコードにはもっときわどいのが

いっぱいあったような気がする。

 

ただ、そんなことがあっても、

ロキシーの抜群に美しいアルバムジャケットは、

圧倒的なインパクトがあり、

70年代・80年代の日本の広告アートなどにも

大きな影響を及ぼしたのではないかと思う。

 

ロキシーミュージックは2019年にロック殿堂入りを果たし、

その式典ライブでは当然のごとく、

この「アウト・オブ・ザ・ブルー」も演奏された。

2017年に盟友・ジョン・ウェットンがこの世を去って、

自らも音楽界からの引退を表明していた

エディ・ジョブスンもパフォーマンスに参加。

美青年だった若き日とまったく遜色ない

バイオリンソロを聴かせてくれたのは、

うれしい限りである。