1973年、ロバート・レッドフォードと
バーブラ・ストライサンド主演の
恋愛映画「追憶」のテーマ。
ラストシーン、ニューヨークの街角で偶然出会った
元恋人の二人がちょっとした言葉を交わし、
互いに背を向けてそのままさらっと別れていく。
しかし、バックにこの歌が流れ、
心のなかに切ない思いがあふれ出す。
初めて観た時、まだ子どもだったので、
その切なさ・悲しみを抑えたさらっと感が
ものすごく大人びていてカッコよくて憧れた。
自分もいつかこんな恋愛をするのだろうと思っていた。
しかしまぁ、もちろん現実は映画のようにいかない。
何ともお恥ずかしい限りだが、
この齢になるとそれも笑い話。
映画の内容についてはラストシーン以外、
さっぱり覚えていないが、
この歌は一生心の中に残ると思う。
ものすごく久しぶりに聴いたが、
イントロのピアノとハミング、
そしてハミングから歌に移っていくところは心底しびれる。
女優としてもそうだが、1970年代の終わりごろ、
歌手としてのストライサンドは絶頂に達した。
アメリカにおける彼女のレコードセールスは
プレスリー、ビートルズに次ぐほどだったという。
女性歌手としてはもちろんナンバー1である。
そういえばビー・ジーズのバリー・ギブがプロデュースした
「ギルティ」(1980年)を僕も持っていた。
これは彼女の最大のヒットアルバムだったらしい。
長らく名前を聞かなかったので、
僕にとっては過去形の名女優・歌手だったが、
調べてみると、アメリカではその後も
ずっと変わらずに活躍していて、
レジェンドとして君臨しているようだ。
ただ、来日公演は一度も行っていない。
80歳を超えるバーブラ・ストライサンドは
この「追憶」の頃、31歳。
「30以上は信じるな」とみんなで叫んでいた時代、
僕をはじめとして、その頃の若者の多くは
30前後で人生はいったん終わるのだと
信じていたような気がする。
けれども僕はその30歳をもう2回やってしまった。
その上でこの曲を聴くと、
記憶がいろいろな時代をさまよって
あの頃が遠い昔のことなのか、
つい昨日のことなのか、わからなくなってくる。
どちらでもいい。今、こうして生きて歌を聴けるなら。
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