経済が支配するユートピアとディストピアを見つめる 「父が娘に語る経済の話。」

 

ユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス全史」以降、

こうした人類の発展の歴史を大俯瞰する試みが

次々と世に出され、

一つのムーブメントのようになっている。

やはり人間の世界は大きな転換期を迎えている。

 

5年前に出されたこの著作もその一つで、

経済が支配する世界で暮らしている僕たちは、

ぜひ読むべき本だと思った。

 

著者のヤルフ・バルファキスはギリシャの元財務大臣で、

アテネ大学の経済学教授。

けれども自分で言っている通り、

この本のなかでは専門用語をほとんど使わず、

「資本主義」を「市場社会」と、

「資本」を「機械」や「生産手段」と言い換えている。

 

本を読んでいる時間がないほど忙しいという人は、

最後の10数ページのエピローグ

「進む方向を見つける思考実験」だけでも、

立ち読みしてみるといい。

 

著者はこの1世紀余りの間に世に出された

SF小説・SF映画に親しんでおり、

そのイメージを用いて理論を展開する。

 

そして、この資本主義社会が将来、

理想的なユートピアに、

反転して絶望のディストピアに

なるかもしれないと示し、

どんな社会を希望し選択するのか、

自分の娘ら、子どもたちの世代に問いかける。

 

ここで書かれていることは

コロナ禍後、AIの台頭に脅威を感じるようになった

この1,2年でますますリアルに感じる人が

増えているのではないだろうか。

 

経済に支配され、振り回され、

カネのせいで頭がおかしくなってしまうのは

嫌だと叫んでも、

普通の人たちは到底ここから出ることはできない。

だから少しでも世界の見方を変えていくべきなのだ。

 

目の前の混乱から離れて世界を見つめ直す――

ささやかでもまず、

そうした行動が必要な時代になって来た。

 

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