認知症患者専門店は商売繁盛?

 

先日、義母を美容院に連れて行った。

前にも書いたが、お抱え美容師(?)のTさんは、

腕はそこそこだが、接客の達人である。

義母は普段ニコニコしているが、

自分の体をいじくられるのが大嫌いで、

医者などでも随分と手こずる。

なので、正直、なるべく連れていきたくない。

 

美容院も何かされる、どこかいじくられるに違いないと、

カンがはたらくのだろう。

カミさんと二人がかりで、

できるだけご機嫌のいい状態で連れていくのだが、

店のドアの前まで来るとさっと顔色が変わり、足が止まる。

断固として入ろうとしないこともあり、

そういう時はやむを得ず、そのまま近所を

一回りして戻ってきたりする。

 

しかし今回はちょうどいいタイミングで、

Tさんがドアを開けてくれて、目が合うと

義母の表情がふわっと崩れた。

 

Tさんは、認知症患者の扱いに慣れているのか、

それとも単純に相性がいいのかわからないが、

一旦店に入ってしまえば安心してまかせられる。

すごく丁寧な接客というわけでなく、

適度にフレンドリーなところがいいのだ。

何かあったときのために、

一応、僕たちは店内の待合スペースにいるのだが、

これまでトラブルが起こったためしはない。

 

今回はピンクっぽい金髪にして

「ほぉら、かわいくなりましたよ」と言われ、

義母はご満悦である。

家からすぐ近くというわけでなく、

徒歩15分程度(義母を連れていると20分程度)。

あちこちいろんな店を試したが、

もうここしかないと、この2,3年は完全に御用達である。

 

もしこれから認知症患者が増えるとしたら、

そういうお客に対しても、柔軟に対応してくれる店は重宝され、

繁盛するだろう。

どのジャンルにも「認知症患者専門店」

なんてものができるかもしれない。

 

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