音楽評論家の渋谷陽一さんが亡くなった。
雑誌「ロッキンオン」の編集長で、
ロックフェスのプロデューサーだったが、
僕の中では、若かりし頃の音楽ライター&DJの印象がほとんど。
僕がロックにハマったのは、
彼の文章やDJトークの影響が大きかったと思う。
1970年代の半ばから80年代初めごろまで、
彼の書く文章をむさぼるように読んでいた。
その頃はネットなど影も形もなく、
音楽を聴くうえで信頼できる情報は、
雑誌であり、レコードに入っているライナーノーツだった。
レッド・ツェッペリンのライナーノーツの文章は
今でも忘れられない。
なかでも印象的だったのが7枚目のアルバム「
プレゼンス」のライナーノーツ。
「ロックってやっぱりカッコいい。
レッド・ツェッペリンを聴くといつもそう思う」
と、何のてらいもなく書き放ち、
なぜ、ツェッペリンがそれほどカッコいいのか、
数あるバンドの中で特別なのかを、
アルバムタイトル「プレゼンス(存在)」と絡めて、
さらりと、しかし、力強く言語化していた。
わずか800字程度だったと思うが、
その文章がとんでもなくカッコよかった。
「プレゼンス」はツェッペリンの作品の中でも、
全体的にやや地味な印象のアルバムだが、
その渋谷さんのライナーノーツのおかげで、
ひときわ輝く存在になった。
キング・クリムゾンの「エピタフ」を社会批評の歌、
そして「レッド」をプログレでなくハードロック、
と最初に評したのも渋谷さん、
エマーソン・レイク&パーマーを
「70年代ロックの巨大な打ち上げ花火」
と言い表したのも渋谷さんだった。
渋谷さんひとりではないが、
当時の音楽ライターたちの文章は、ロックをただの音楽ではなく、
僕たちに必要なカルチャーに昇華させていた。
それらは間違いなく、僕らの精神を豊かにし、
現実と未来を生きていく糧になった。
彼が敬愛していたジミー・ペイジも、
ポール・マッカートニーも、
ミック・ジャガーも、まだ生きている。
彼が励まし続けた佐野元春もバリバリの新作を作っている。
ロックはまだ終わっていない、と信じたい。
渋谷陽一さんのご冥福をお祈りします。
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