人や牛馬を襲う巨大ハンザキ(オオサンショウウオ)を
村の若者が退治したという伝説が伝わる、
岡山県真庭市の湯原地域。
その温泉街一帯で8日、「はんざき祭り」が開かれた。
大はんざきをモチーフにしたねぶたや山車が練り歩き、
河川敷では「はんざき囃子(ばやし)」に合わせて
みんなで踊り、花火や餅まきまであるという。
グロテスクな風貌から、恐るべき怪物と
みなされてきたハンザキだが、
昭和30年代には特別天然記念物に指定。
伝説とは裏腹に、獰猛さのかけらもなく、
清流で静かでのんびりした生涯を送り、
井伏鱒二の「山椒魚」みたいに
岩屋から出られなくなったりもする?
最近はそんな、ちょっとトロい生き様が
「グロかわいい」ということで、全国にハンザキファンが急増。
真庭市湯原温泉の「はんざき祭り」にも
東京などから、そうしたファンがやってくるようだ。
僕もハンザキに興味があり、
いろいろ聞いた話をもとに小説を書いてみた。
よろしければ、この夏休みに読んでみてください。
ハンザキを喰った話/おりべまこと
(AmazonKindleにて¥500)
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2000年、20世紀最後の年。
文福社の雇われライター神部良平のもとに、
一風変わった依頼が舞い込む。
クライアントは自称発明家の堀田史郎、齢100歳の老人だった。
かつて折りたたみ式ちゃぶ台の発明で財を成しながら、
親友の裏切りによってすべてを失った堀田は、
人生半ばに自殺の旅に出た。
しかし島根県のある村で思いがけない歓待を受け、
まだ天然記念物に指定される前の
ハンザキ(オオサンショウウオ)を食したという。
そしてその時から自分は不死身になったのだと語るのだ。
最初は老人の妄想だと疑っていた神部だが、
なぜか半分は信じたくなり、みずからハンザキの村を訪れる。
美しい清流に恵まれたその村では、
もはや半世紀前の因習は失われ、
ハンザキを食べていた記憶すら途絶えていた。
ところが神部は、人間と両棲類が混じり合った
怪物との衝撃的な遭遇を体験する。
古代から地球上に生き続ける最大の両棲類オオサンショウウオ。
その神秘的な生命力は、明治・大正を生きた発明家と、
昭和・平成のライターという二人の男の運命を
不可思議に結びつけていく。
夢と現実のバランスが崩れた世界で展開される、
現代日本文学の新たな幻想譚がここに誕生した。
ミレニアムという時代の転換点を背景に、人間の記憶と妄想、
そして生命の根源的な力について問いかける、
15章からなる本格長編小説。
読者は神部とともに、
真実と幻想の境界線上を歩むことになるだろう。
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