サッチャー元首相と高市早苗新総裁

 

街には失業者があふれ、

地下鉄の構内にはホームレスがたむろし、

トサカ頭のパンク野郎が観光客に写真を撮らせて

カネをせびり取っていた。

僕がイギリスで暮らしていた

1985~87年のロンドンの日常的風景。

マーガレット・サッチャー首相が、「英国病治療」のため、

それまでの福祉政策に大ナタを振るっていた時代だ。

 

高市早苗新総裁(そして、たぶん新首相)は、

そのサッチャー元首相の信奉者であるという。

サッチャーはイギリスではもちろん、

世界の先進諸国のなかでも初の女性首相だったので、

高市総裁に限らず、女性政治家のなかには信奉者が多いだろう。

 

サッチャーは思想家・実務家の両面で優れていて、

それがあの強いリーダーシップに繋がり、新自由主義を断行。

重要産業の国有化や社会保障制度の多くをそぎ落とし、

慢性赤字を克服した。

 

それで「強い英国」が復活したと評価されることが多いようだが、

一方で貧富の格差はかなり増大したのだと思う。

僕の働いていた日本食レストランには、

連日、裕福な人たちが大勢来ていたが、

休日、外を歩くと冒頭のような風景に出くわした。

あの頃のロンドンは、

いい意味でも悪い意味でもひどく人間臭かった。

町のあちこちから人臭さが漂っていた。

 

高市総裁も回顧録を何度も読み返し、

「尊敬する」と公言するからには、

マーガレット・サッチャーが政治家として成し得たストーリーが、

そこはとなく頭のなかにあるのだろう。

 

もはや世界で女性のトップは珍しくなくなった2025年、

やっと日本で誕生した(たぶん10日後には)女性首相。

でも、最初の組閣の段階で、もう麻生のじいさんの影が出ている。

本当にだいじょうぶなのか?

 

彼女にサッチャーのような手腕を求めるのは酷かもしれないが、

少なくとも、ジジイどもに対抗する覚悟を持って、

それこそ粉骨砕身、ワークライフバランスなどくそくらえで、

麻生のマリオネットちゃんにならないよう、

がんばってほしいものだ。