若い頃からの性分なのか、
民泊が一般化してから、宿は好んで民泊にする。
仕事で使うならホテルなどの機能性を優先するが、
遊びで行くときは、まずどんな民泊があるかを
エアビーで探すようになった。
単なる安宿というだけでなく、
いろいろ個性があって面白いからだ。
ロケーションも観光地や駅前、繁華街のような
便利な場所であることは稀で、
多くは地元住民の生活圏である住宅街にある。
今回、伊勢で泊った家もその類で、
伊勢市駅から約15分、神宮外宮から10分ほどの
「宮町」というところにあった。
昭和の頃に建てられた家で、
若い世代には「懐かしい」と感じられる民家。
オーナーの女性は教師をしながら、
あちこち外国を旅行していたという人で、
旦那さんが亡くなってから、
家を改造して2階を民泊にしたのだという。
部屋は3部屋あって、僕らが泊ったのは、
2人から3人用の、6畳一間+αの中部屋だったが、
他に5~6人用の大部屋と、一人用の小部屋がある。
僕らの部屋は昭和感漂う和室だったが、
一人用の小部屋(最後の日はあいていたので覗かせてもらった)は、
大きなアンティーク風の机とベッドが置いてあり、
インテリアもちょっと欧風レトロといった風情。
作家や研究者の常宿といった感じでカッコよかった。
さらに夫婦ともども学校の先生だったこともあって、
膨大な蔵書があり、それらを全部集めて図書室にしている。
伊勢志摩の資料はもとより、昭和時代に刊行されたものを中心に
数千冊が10畳ほどの部屋に並んでいる様子は圧巻だ。
また、1階の受付ロビー風の部屋には
ハンドクラフトのミニギャラリーもあり、
オーナーの人生や人柄を映し出したようなゲストハウスだ。
彼女は割と気の合う人だったので、ちょっと話をした。
ここで民泊を始めたのは4年ほど前。
京都などと違って、伊勢では民泊はまだ希少な存在らしい。
少し離れた山のほうに別荘も持っているらしく、
そこでは貸し切りでさらに大勢のグループを泊められるそうだ。
利用するゲストは日本人と外国人が半々くらい。
いろいろな人が来るので緊張したり、疲れたりもするが、
毎日が面白いという。
僕より年上の彼女としては、家や本や資産はあっても、
連れ合いはいないし、ぼーっとして余生を過ごすだけは
ただボケていくだけだろう。
そういう意味では、仕事兼趣味として、
民泊の経営はもってこいだったのかもしれない。
ただ、ちょっと不器用そうで、
あまり経営者に向いているとは言えないキャラクターだ。
いい意味でも悪い意味でも、
ビジネスライクになれない人なので、
客によっては苦労したり、
嫌な思いをすることもあるかもしれないと心配になった。
他の民泊では、民泊用にマンションやアパートを一棟借りたり、
会社の空いている部屋を貸し出して、
スマホに送られてくる暗証番号で
カギを開閉するというシステムを採用。
オーナー、スタッフとはまったく顔を合わせないという
ところもよくあるが、それとは正反対の古臭いスタイルである。
経済的なことも気になったので、
家の改造費にはけっこう先行投資をしたのか?と
尋ねてみたら「そうです」というお返事。
金額までは聞かなかったが、細かいところも含めれば、
おそらく千万単位の費用は掛かっていると思う。
管理についてきくと、
掃除まではさすがに一人では手が回らないので、
他の人に1回につきいくらで頼んでいるため、
一泊だけだと、その手間賃と相殺してしまって
利益は出ないという。
ただ、「一泊の人はお断り」というわけにもいかないので、
連泊客を増やすために、
2泊目以降は少し割引値段にしているそうだ。
話した感じ、割とコンスタントに客が入っているようだが、
10年ほどやればイニシャルコストを回収できるのだろうか?
ただ、エアビーにかなりの割合で
マージンを持っていかれるらしいので、
経済面はきびしいようだ。
以前泊った京都の民泊オーナーは、
いろいろ対抗手段を考えていると言っていたが、
その後、京都では民泊条例が変わってしまったので、
どうしたのだろうか?
それはさておき、
このオーナーは地域の歴史や地元情報にも詳しく、
普通の観光ガイドには載っていない情報を教えてもらったり、
案内してもらったりしたので、宿泊費以上にお得感を感じた。
僕としてはとても好感度が高い宿で、
民泊自体に彼女の人生・人柄が表現されているように思え、
お伊勢参りの旅が、より心に残るものになった。





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