れいわ伊勢ものがたり④「伊勢の名物料理はギョーザで決まり」

 

「伊勢に来たら、ごはんは餃子ですよ」

「え、ギョウザ?」

民泊の女性オーナーにそう言われたときは、

一瞬、目が点になった。

 

伊勢名物と言えば、赤福餅はスイーツだから別だとしても、

一般的には「伊勢うどん」、もしくは「手ごね寿司」、

高そうだけど、やっぱ「伊勢エビ料理」。

ギョウザっていったい・・・。聞いたことないんだけど。

 

僕らの戸惑いをものともせず、彼女は堂々と言い放つ。

「伊勢の餃子は日本一。日本人も外国人も誰もが認めています。

ここから歩いて3分。Have a Nice meal!」

 

というわけで紹介されたのが「ぎょうざの美鈴」。

本当に泊った宿から歩いて3分。

幹線道路沿いにある小さな店だ。

金曜の夕方6時過ぎ。

店の前には1ダースほどの行列ができている。

何時間も並んで飯を食うのは嫌いだが、

旅に来てるし、せっかくだからと思って並んだが、

20分待ちくらいで順番が回ってきた。

 

店内に入った瞬間、この店が人気あることが一目でわかった。

真ん中がオープンキッチン。

それをぐるりと20席ほどのカウンター席が取り囲む構造。

キッチンの中で立ち働く5,6人ほどのスタッフは、

活気あふれるおっさん、おばさんたちだ。

 

この店では出来立てを提供するため、

注文を受けてから餃子の皮を伸ばして餡を包む。

専門の包み手がいて、スピーディーな熟練の手さばきで

あっという間に数十個の餃子を包み上げ、焼き手に手渡す。

油を敷いた鍋にするするっと餃子の群れが滑りこむと、

ジュージューとおいしそうな音を立てる。

包み手・焼き手の職人技連係プレーにほれぼれする。

 

焼きあがった餃子は、皮はもちっとしながらもカリッと香ばしく、

中身の餡は野菜ベースで、とてもジューシー。

にんにくがたっぷり効いている。

一人前は8個だが、

何個でも食べられるさっぱりとした美味しさだ。

 

ちょっとストレンジなのがサイドメニューのラインナップ。

まず、ごっつい鶏の唐揚げ。

骨付きの大ぶりな唐揚げで、鶏肉の肉汁が口いっぱいに広がる。

 

唐揚げは中華つながりでわかるが、

なぜかカニクリームコロッケがある。

クリーミーで舌触りが良く、マイルドなおいしさ。

カニコロ好きのカミさんは、

餃子とカニコロをいっしょに食べられて大喜びで。

 

さらに不思議なことに、ごはんがなくて代わりにおにぎり。

鮭・おかか・梅の3種類がある。

飲み屋ベースだからかもしれないが、

ランチタイムの定食も餃子+おにぎり3個だ。

 

頼まなかったが、他に水餃子、おでんもある。

おでんは大根やがんもどきなど、七色のネタがあり、

「黒砂糖のような風味が効いている」など、

独特な味わいが支持されているようだ。

 

餃子を中心に、唐揚げ・カニコロ・おでん・おにぎり。

あまりお目に掛からないラインアップだが、

よくよく見れば、僕ら昭和っ子の大好物

そろい踏みという感じになっている。

それも「何でもあり」ではなく、

餃子店というコンセプトから外れない、

ぎりぎりの範囲で納まっている。

 

メニューのおいしさもさることながら、

とにかく店の雰囲気が最高にいい。

楽しくて懐かしくて活気があって、

アットホームで昭和レトロ感むんむん。

旅人がひとりでブラっとやってきても、

優しくて、あったかく、居心地の良い時間を過ごせるだろう。

 

カミさんが酒を飲まないので、

僕も旅行ではほとんど飲まないのだが、

この雰囲気にのまれて、つい一杯やってしまった。

「伊勢の餃子は日本一」の評価も、あながち大げさではない。

今の時代、日本人も外国人も、多くの旅行者は

こういう味・こういう空気・こういう日本情緒(?)を

求めているのではないかと思われる。

お値段もリーズナブルだ。

 

ちなみに次の日、土曜の夕方、

まだ5時をちょっと過ぎた時間にも関わらず、

前の日の倍以上の客が店の前を埋め尽くしていた。

後でネットで調べてみたら、

伊勢市宮町にあるこの「ぎょうざの美鈴」は、

2024年に「食べログ餃子百名店」に選出されるほどの

超人気店とのこと。

旅人を迎える民泊オーナーにとって、

まさに地元の誇りでもあるのだろう。

伊勢うどん、手ごね寿司、伊勢エビも

もちろんいいのだけど、お伊勢まいりに行ったら、

美鈴の餃子もどうぞお忘れなく。