れいわ伊勢ものがたり⑥:二見浦の海を見てカエルについてカンガエル

 

海にカエル。海に帰る?

太古の生命がみな、海から生まれ出たことを考えれば、

人もすべからく海にカエル???

そんなわけで、神聖な大注連縄で繋がった夫婦岩で知られる

二見浦の二見興玉神社(ふたみおきたまじんじゃ)を参拝。

波打ち寄せる海岸に建てられたこの神社には、

なぜかカエルがあふれており、神社でありながら、

さながらケロケロテーマパークの様相を呈している。

 

カエルと寺社は相性がいい。

うちの近所の杉並大宮八幡宮の境内でも

「幸福がえる」という、どでかいカエルに見立た石を祀っており、

ご利益を賜るよう、僕も行くたびになでなでしている。

 

日本各地の自社でカエルを祀っているところは

たくさんあるが、鳥居の役割を果たす神々しい夫婦岩、

さらにはるか彼方には富士山まで望む雄大な海を背景に

カエルが佇んでいる風景は、この二見浦ならではのものだろう。

 

二見興玉神社にカエルが群れを成しているのは、

ここに祀られている御祭神が

「猿田彦大神(さるたひこのおおかみ)」だからだ。

猿田彦大神は、天孫降臨の際に道案内をしたことから

「道開きの神」として信仰されているが、

そのお使い(神使)がカエルだと信じられている。

 

ただし、これは社会的お題目、つまり表向きの理由で、

実際は日本人の大好きな語呂合わせ、言葉あそびから生じた

「カエル」のご利益を当て込んだものだろう。

 

無事かえる→旅の安全、交通安全、出張からの無事帰宅

貸した物がかえる→お金の返し、失ったものの発見

若がえる→健康、美容、長寿

福がかえる→開運招福、商売繁盛

みんな、自分が失ったものを思い浮かべ、

帰ってきておくれ、返ってきておくれと願をかける。

 

天照大御神を祀る伊勢神宮へ参るための禊の地なので、

しっかり天岩戸も設けられ、

日本国初代ストリッパー アメノウズメノミコトも踊っている。

そんな霊験あらかたなる神社におわすカエル様だ。

ご利益もたいそうなものに違いない、と考えるのは人情である。

そうやって心から拝めば、テンションが上がるとともに、

心も安定する。

コンディションを整え、前向きに仕事や学業をがんばれば、

運もよくなり、成功や幸福を手にすることも増えそうだ。

 

そして、ご利益を実際に受けた人々が、

感謝のしるしとして境内にカエルの置物を献納する習わしが

古くからこの神社にはあるのだという。

その歴史の蓄積によって、

境内には大小さまざまなカエルの置物が積み重ねられ、

「カエルがいっぱいいる神社」という

現在の姿が出来上がったのである。

特に手水舎(ちょうずや)には

「満願蛙(まんがんがえる)」が鎮座しており、

水をかけて願掛けをする参拝者が多い。

もちろん僕も水をかけて「ケロケロケロ」と願いを唱えた。

 

「海にカエル」という落差のインパクトが強すぎて、

見どころである夫婦岩も霞んでしまった。

(よく見ると、大きさが違い過ぎて、

夫婦岩というより親子岩と呼んだほうが合ってる感じ)

 

ただ、神話ファンタジーから現実に立ち返ると、

海は実際のカエルにとってきびしい環境、

ほぼ生存不可能な地獄といっても過言ではない。

塩水(海水)に入ると、

体内の水分濃度よりも海水の塩分濃度の方が遥かに高いため、

浸透圧の働きによって、体から水分が奪われ、

脱水状態になって、あっという間に塩干になってしまう。

悲しいかな、地球上のすべてのカエルは海には帰れないのである。

 

と思っていたら、なんと例外があり、

海でも生きられるカエルがいるという。

東南アジアの沿岸にあるマングローブ湿地に生息する

「カニクイガエル」である。

彼らは他のカエルにはない特殊な機構を持っていて、

塩分を体外に排出し、

海水や汽水域(川の水と海水が混じるところ)のような、

塩分濃度の高い環境にも適応できるというのだ。

そしてその名の通り、カニを食って生きている。

カニ!? いや、驚くことではない。

明治時代にウシガエル(食用ガエル)が輸入された際、

餌にするためアメリカザリガニも輸入された。

カエル一族は、エビやカニなどの甲殻類が好物なのだ。

 

それにしても、子供であるオタマジャクシのほうが

成長したカエルより大きいという、

南米のアベコベガエル(パラドックスフロッグ)など、

カエルワールドは奥深い。

これまでのカエルの常識がくつガエル。

二見浦の白波を目の当たりにして、

世界は広いぞ、大きいぞとカンガエル参拝でした。