「宿命のライバル和菓子対決」と銘打ったものの、
令和7(2025)年の現時点において、
知名度・ブランド力という意味での勝敗は明らか。
今や伊勢名物として日本中に知れ渡り、
全国お土産ランキングでも第3位にあげられる赤福餅に対し、
おなじあんころ餅という味・形状、さらにパッケージまで、
あまりに似通っているため、
「何これ?赤福のパチモン?」というのが
御福餅に対する一般的認識ではないだろうか。
実際、僕自身も割と最近までそう思っていた。
御福には申し訳ないが、
300年近くにおよぶこの対決、赤福の完勝・圧勝である。
しかし、今回の旅で二見浦にある本店に行き、
「抹茶御福餅」を口にして、
その認識が変わる日が来るかもしれないと感じた。
こ、これはおいしい!
普通の御福餅も赤福餅と同レベルのおいしさだが、
これは赤福との差異をアピールするには強烈な商品!
餡の甘さと抹茶の苦味が絶妙なバランスで口の中に広がり、
お餅と溶け合う。
8個入りだが、
カミさんと二人であっという間に4個ずつ平らげて、
正直、「赤福餅よりおいしいじゃん」と思ってしまった。
この抹茶バージョンをもっとフィーチャーすれば、
宿的・赤福に太刀打ちするのも不可能ではない。
ちなみにこの2つの商品、兄弟で始めたとか、
のれん分けしたとかではなく、
それぞれ別の会社が製造・販売している別製品とのことである。
御福餅本家の本店は、創業以来、
つい最近まで二見興玉神社の参道にあったが、
参道沿いのホテル・旅館が寂れてしまったせいか、
夫婦岩のすぐ近くに移動した。
今年3月にオープンしたばかりの
美しいウッドデザインのおしゃれな店だ。
宝永4年(1707年)に店を開けた赤福餅から遅れること31年。
元文3年(1738年)に二見浦で創業。
伊勢神宮へ参拝に来た旅人に餅を
「お福分け」したことが始まりだという。
赤福餅の表面には伊勢神宮・内宮境内の
五十鈴川の清流をイメージした三筋がついている。
そして御福餅にもそっくりな三つの筋が。
こちらは二見浦の海岸に打ち寄せる波を
表現したものとされている。
いや、でも、そう説明されても、
現代的視点からは明らかにパクリに見える。
ただでさえ、同じあんころ餅というカテゴリーなのに、
わざわざ形・デザインまで似せてしまうとは・・・
現代では絶対に裁判沙汰になりそうだが、
始まりが江戸時代で、そのへんのことは
あまり問題にならなかったのだろうか?
赤福餅圧勝の理由は、第一にやはり立地だろう。
赤福本店は、伊勢に参拝した人が、
ほぼ必ず通る「おはらい町」の
入口付近という最高のロケーション。
伊勢神宮の参拝客は圧倒的に多く、その動線に本店があるため、
おのずと多くの人の目に触れ、購入の機会が増える。
御福餅本店がある二見浦は、
かつては「浜参宮」として重要な場所だったが、
現代では伊勢神宮の一般的な参拝ルートからは
外れた場所になっているため、
通りかかる人の数が赤福本店と比べて少ないのだ。
理由の第2は、赤福が販売チャネル開拓と流通戦略によって、
広域展開に成功したことだろう。
伊勢名物だが、名古屋駅に行けば、毎日必ず赤福餅が買える。
カミさんも息子も大好物なので、
実家に帰省するといつも買って帰っていた。
東京では知らないが、僕が子供だった昭和40年代(1970年前後)、
名古屋では「赤太郎」というキャラクターが登場する
テレビコマーシャルが連日流れ、
「ええじゃないか、ええじゃないか、赤福餅はええじゃないか」と歌っていた。
僕の脳にはそのアニメ動画と歌がしっかり刷り込まれている。
おそらく同時代の人たちの中には、
同じように刷り込まれた人は大勢いるだろう。
こうなると僕たちにとって、もはや赤福餅は一生もの。
そんな人間がわんさかいることを考えると、
たかがコマーシャルでも、長い目で見れば侮れない効果がある。
その他、関西圏(大阪・京都)の主要ターミナル駅、
サービスエリアなど、
三重県外に積極的に販売網を広げてきた。
赤福は伊勢名物のみならず、
「名古屋みやげ」「大阪みやげ」としても
親しまれるようになったのだ。
一方の御福餅は地元密着型。
主に伊勢・二見浦周辺での販売が中心であり、
広域的な流通戦略は積極的に展開してこなかった。
結局、あれこれ投資してきた成果で、
赤福の知名度・ブランド力が上がったと言えるが、
ブランド作りにかけた年月は3年とか30年じゃなくて、
300年ですよ。
うまいもの・時代が変わってもみんなが喜ぶものを
300年作り続けるというのはハンパなことではない。
宣伝も大事だが、やはり決め手は商品力。
良い商品を誠実に作り、一生懸命売る。
これに勝るものはない。
宣伝では後れを取ったものの、
御福餅も商品力では五分の勝負をしている。
そして、今回感動した抹茶味は、
さらに商品力をパワーアップさせるに違いない。
ただ、二見浦に来る人は、伊勢神宮に来る人に比べ、
圧倒的に少ないので、やはりライバルには勝てないだろう。
しかし、この際、勝負なんてどうでもいい。
パクリだ、パチモンだと、かなりディスってしまったが、
御福餅にはマイペースでがんばってほしい。
赤福に続いて、創業300年はもう目の前だ。
あなたも夫婦岩を拝みに行ったら、御福餅をぜひどうぞ。
ただ、新しい本店はちょっとモダンでオシャレ過ぎるかも。
禊の地・二見浦だから、ちょっとフォーマル気分で・・・
というコンセプトなのかもしれないけど、
僕は庶民派なので、赤福のお店にある、
江戸時代の茶店みたいな、あのわいわい感が好きなんだよな。





コメントをお書きください