ゲーム理論との遭遇

 

仕事でゲーム理論に関する本を書いている。

ゲーム理論とは、別にゲーム必勝法などではなく、

経済学などに用いられる数学的思考法のこと。

いろいろな本が出ているし、ネット検索すれば、

AIさんが500字程度の解説をさらっと出してくれるので、

気になる人は調べてください。

 

この理論を生み出し育て上げたのは、

人類史に名を遺す20世紀の天才学者たちだが、

凡才以下の自分が、還暦を越えてまた数学系の話に取り組むなんて思ってもみなかった。

こういう仕事でもなければ、

たぶん、一生スルーしていたであろう分野なので、

これもチャレンジ、アドベンチャー。

人間死ぬまで勉強だ!――

と言えばカッコいいけど、なかなか脳がうまく働かない。

 

「囚人のジレンマ」とか「鹿狩りゲーム」とか

「チキンレース」とか、何かの本で読んで、

なんとなくは知っていたが、

正面切って取り組むのは、もちろん初めて。

 

その第一印象として抱いたのが、

もしや世界のすべて、人生のすべてが

このゲーム理論で解読・分析できるのではないか、ということ。

それくらいインパクトがあり、自分の利得、

さらに相手の利得を考えて理路整然と思考していけそうなのだ。

 

監修の先生曰く、「うん、ぜんぶできると思う」。

おお、これで家庭のもめごとも、ビジネス戦略も、

戦争・紛争・領土問題・環境問題、世界の蔓延るあらゆる問題も

解決できるではないか。

こんなすごいツールがあるのに、何をやっているのだ、人類?

と思ってしまったが、先生の答えには但し書きが付く。

 

「ただし、人間の感情とか、文化的背景とか、

ひとりひとりの事情や立場などをいっさい考慮しなければ、の話」

 

つまり純粋に理論だけなら解読・分析できるが、

現実の世のなかはそうなっていないとのこと。

地球上どこを探しても、感情も文化的背景も持たない人間、

事情や立場などを無視しても平気な人間など存在しない。

だからこの世界を構成するのが、

AIとかロボットばかりなら、

すべてゲーム理論でうまくいくのだろう。

人間は厄介だ。

その人間が作る社会は複雑怪奇だ。

だから面白いんだけど。

 

ちなみにスタンリー・キューブリックが監督した

「博士の異常な愛情」(1964年)の博士のモデルは、

この理論の発明者である

フォン・ノイマンがモデルと言われている。

ノイマンはほかにもコンピュータや核兵器の開発にも

携わったらしい。

 

また、2002年のアメリカ映画「ビューティフルマインド」は、

このゲーム理論の発展と構築の偉大な貢献者で、

ノーベル経済学賞を受賞した

数学者ジョン・ナッシュの半生を描いた物語。

どちらも天才と呼ばれた学者で、

天才ゆえの奇特なエピソードも尽きない。

 

人間が動かす現実世界は手ごわくて、

理論通りに動かせるわけはないが、

社会問題を少しでも解決に導く思考法として、

ゲーム理論はこの100年足らずの間で大きく発展し、

経済の分野を中心に幅広く活用されている。

 

僕が携わっているのは一般・ビジネスマンに向けた本なので、

できるだけやさしく、興味を持てるように工夫しています。