友だちの大学院生K君が、めでたく官僚になる。
4月からお勤めするのは内閣府だ。
「おまえ、それなら“さなえちゃん”の歌を覚えておけ」
「え、なんすか、それ?」
「知らんのか?それでよく受かったものだな。
ネットで調べてみろ」
即座にスマホを取り出して検索するK君。
「ああ、ありました。1972年、古井戸の歌ですね」
「そうだ。さなちゃんは俺とほぼ同級生だ。
小学生のときに絶対聴いているはずだ」
「そうなんですか。情報ありがとうございます」
「YouTubeで聴いておけ。もしおみえになったら、
その歌を歌ってお迎えするんだ」
翌週、K君は大学ノートを持ってきた。
「描きました。さなえちゃん。ちょっとへたくそですが。
裏表紙じゃなくて、表表紙に。
鉛筆じゃなくて、ちゃんと油性ペンで。絶対消えないように」
「おお、さすが太鼓持ち野郎だ。がんばって気に入られるんだぞ」
内閣府に勤めているだけで、
そうそう頻繁に総理大臣と合えるのかどうかは知らないが、
念願かなって張り切っているので応援してあげたいと思う。
それにしても、さなえちゃん絶好調。
冷ややかな意見も多いが、
還暦過ぎた女性が総理大臣に就任した――
それだけのことで人々に与える影響は大きい。
特に女性とシニアには希望の星になるだろう。
例の「働いて、働いて・・・」もセリフも
おっさんだったら単なる昭和の亡霊だが、
同世代の女性が言うと、なんだか感慨深い。
この歌が流行っていた1972年、歌の中のさなえちゃんにとって
夢のある将来は、可愛いお嫁さんになる――
ほぼ、それ一択だったのだから。
あれから54年後、
時代は大学ノートの裏表紙のさなえちゃんをよみがえらせた。
僕は高市総理を支援していないが、
こうなった以上はこの先数年、彼女の手腕に日本を託すしかない。
さなえちゃん、もし内閣府の職場で
太鼓持ちのK君に会うことがあったら、
こき使ってやってください。
そして、国民をハッピーにするために、
働いて働いて働いてくださいな。

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