新入社員は一度死ぬ

 

新年度が始まったばかりだが、

早くも新入社員が辞めたというニュースを見た。

入社式に出席して「だめだ、こりゃ」と思い、

その日の午後、代行会社を通して

「辞意」を表明した人がけっこういるらしい。

 

こうした現象に対して、

ネット上ではいろいろな人がそれぞれの立場から

あれこれ感想・意見を言っている。

「社会をなめるな」

「どこへ行っても通用しない」といった憤り。

「転職はきびしい」「非正規しか道はない」といった

今後のキャリアへの憂慮など、

退職した新入社員への手厳しい批判が多いが、

面接に問題はなかったのか、

採用の際にちゃんと条件を示したのか、

といった企業批判も少なくない。

また、新入社員のメンタル面に言及し、擁護する人もいる。

 

どれももっともな意見で、

今、就活をしている人の参考にはなると思うが、

当の本人にはあまり響くとは思えない。

なぜならこうしたすぐ辞める新入社員にとって、

就職は世間でいうキャリアのスタートではなく、

「人生のゴール」になっているからだ、と僕は思う。

 

●子供の10年は人生まるごと

 

良い会社・団体(公務員など)への就職をめざし、

早い場合は小学校のときから10年、

子供たちは受験・競争に追い立てられる。

おとなにとって10年は短くはないものの、

人生の一プロセスとして受け入れられるだろう。

しかし、人間として成長過程の子供たちにとって、

10年という時間は、人生ほぼまるごとである。

就職は人生まるごと費やしてきた

受験・競争・就活のゴール地点。

だからそこで人生が完結し、

燃え尽きてしまう人が何割かいてもおかしくない。

 

そもそもの問題として、企業や団体という組織に入って

お勤めするのが向いていない人は一定数いる。

僕はそういう人を何人も見て来た。

いや、自分も含めて、専門学校でも、アルバイト先でも、

海外の飲食施設で働いていたときでも、

「類は友を呼ぶ」のか、僕の周囲はそういう人だらけだった。

 

「お金を稼ぐ以上、嫌なことも我慢すべきだ」

という意見は必ず出てくるが、

我慢できない人もやっぱり一定数いる。

それでもみんな独立してちゃんと生きている。

 

親の想定から、また、世間の一般的な枠組みから

はみ出してしまったってそんなに心配することはない。

はみ出し者にははみ出し者の生き方があるし、

それで人生なんとかなるものだ。

僕のような落ちこぼれの劣等生でも

還暦を超えて楽しく生きている。

 

●子供の進学・就職はじつは親の人生

 

3月はSNSなどで親から

「うちの子が第一志望の学校に合格しました」とか、

「無事、○○(業界名)の会社に就職しました」といった

喜びの声の投稿をよく見かけた。

それを見るたび、子供の進学・就職は、

親の人生でもあるのだなと思う。

そして、何割かの子供は、

ここまで親の人生を生きて来たのだなとも思う。

 

辞めることを決心した、

あるいは辞めたいと悩んでいる新入社員に言いたい。

 

親に対するあなたの務めは終わった。

親のために生きたあなたの人生は一度終わり、

あなたは一度死ぬのだ。

 

●本当の自分の声を聴く

 

入社から数日・数週間・数か月で

辞めたいと言い出したあなたは、

そもそもその会社・その仕事に対して志もないし、

好きでもないし、やる気もない。

親のためか、世間体のためか、大学の仲間への対抗心のためか、

カネやライフプランのためにその会社・その仕事を選んだ、

あるいは選ばされたのだろう。

 

それが、いざ入社・仕事となって

「これは違う。これはわたしの人生ではない」

という自分の声を聴いてしまったのだろう。

表向きのもっともらしい理由はいろいろあるかもしれないが、

本当の理由は自分自身がいちばんよく知っているはずだ。

 

それなら躊躇せずやめたほうがいい。

それで人が言う厳しい人生が待ち受けていたとしても、

構わないではないか。

 

無理にその会社に残ったとして、それで楽な人生、

自分にとって良い人生、楽しい人生になるのか?

それも自分自身がいちばんよく知っているはずだ。

 

親が怒ろうが悲しもうが関係ない。

あなたはもう十分に親孝行を果たした。

子供を育てるのは親の義務なんだから、

そんなに一生懸命感謝する必要などない。

もし感謝を強要するような親なら、

さっさと離れて、親は親の人生を生きろと言ってやった方がいい。

 

●いっぺん死を体験してみる

 

といってもなかなか吹っ切るのは難しいだろうから、

いっぺん死を体験してみるといいかもしれない。

最近は納棺体験とか、死を疑似体験できる

施設や催しも増えていて、若者に人気があるようだ。

死と向き合って、今日・明日にでも死ぬとしたら、

どうすれば悔いなき人生にできるか考えてみれば、

それまでとは違った展望が開けるだろう。

ましてや20代前半も若さなら、まったく憂慮することなどない。

本当の自分を取り戻しすために

あなたは一度死んでみたほうがいい。

就職・入社に疑問を抱いてしまった若い人たちが、

本当の意味で元気に生きていけるよう応援したい。