きみも一生に一度は着ぐるみアクターに。

photo:Mustafa Kürşad
photo:Mustafa Kürşad

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●着ぐるみアクターの仕事

 

 世界の着ぐるみ状況はよくわかりませんが、日本は豊かな人形文化を持っている国なので、間違いなく着ぐるみ先進国だと思います。

 最近はご当地キャラクターを使った街おこし運動も活発になっているので、着ぐるみアクターのニーズもかなり高まっているのでは、と思います。

 「ディズニーでやった経験があります」なんて人は引っ張りだこなのではないかと推察しますが、どうでしょう?

 

 昨日も書いたように条件が厳しく、肉体を酷使する仕事です。

 「身長150センチ以下でバク中ができる人」とか、かなり無謀な注文も多いと聞きますが、待遇はいかがなものでしょうか?

 「単なる余興なので、ボランティアで」なんて言わないでくださいね。

 実際、大変なんですから。

 

●僕の着ぐるみ体験

 

 はるか昔ですが、僕もこの仕事をやっていた時期がありました。

 僕の場合は、イベントでなく、子供ミュージカルです。

 「ドラえもんの宝島探検」という芝居で、敵役の海賊の船長をやっていました。

 50cmくらいはある面、肩パットやおしりの肉を装着し、上げ底の巨大長靴を履いていたので、身長2メートルを軽く上回る大男。子供がビビりまくっていました。

 子供の目から見ると、本当に着ぐるみっで大きく見えるんですよね。

 

 僕の入っていた、その船長は、口がアクターの目の位置になる――つまり、口の中から外を見られるようになっていました。

 視界が限られている状態で芝居するので最初は相当不安感がありました。

 

 また、面の内側は顔に密着するし、全身に重たいヨロイをまとったような状態で演技したり、踊ったりするので、5分もやるともう汗だく。それだけならまだしも、密閉状態なので、すぐに息が苦しくなり、脳の中は酸欠状態で、やっている間中、頭真っ白です。

 終わったころには、真っ白だよ、真っ白な灰になっちまたっよ・・・ってな感じです。

 

 巨大長靴を履いている足も重くて、なかなか上げられないので、これは体力をつけないと、と思い、スポ根マンガのように、毎日、鉄下駄を履いてランニングしていました。

 

 トータルで1時間強の舞台だったと思いますが、1日2公演・3公演ある日もザラだったので、本当にあの時期はどれだけ飲み食いしてもやせる一方でした。

 1日終わると、いつも1ℓの牛乳やジュースを2,3本一気飲みしていました。

 

 そういう記憶があるので、今でも着ぐるみアクターの人――とくに元気にガンガン動ける人には尊敬の念を覚えます。

 

●一生に一度はチャレンジしたい

 

 そんなわけで大変な仕事なのですが、子供は喜んでくれるし、なんだか一時、人間社会から逸脱し、別の世界の生きものになったようで、奇妙な解放感が味わえて楽しいです。

 なんといっても、ありふれた日常に活力を与えてくれると思いますよ。

 

 「一生に一度は着ぐるアクターをやってみよう!」が、本日の僕の主張です。

 着ぐるみに入ったことのある人生と、ない人生とはこんなに違う!

 

 ・・・かどうかは、やってみないと分かりません。

 

 とくに若い人はチャンスに恵まれています。

 アルバイトでも何でもいいので、ぜひ一度、体験してみてほしいと思います。

 通常では発想できないちがう世界、ちがう自分が発見できるかも。

 

 中高年の人は残念ながら、そう簡単にチャンスはつかめない。

 いくらやる気があっても、体力に自信があっても、熱中症などで倒れられたら困るので、そうしたリスクを恐れる自治体や企業が雇ってくれないでしょう。

 

 なのでこの際、志望者は「ふなっしー」などを見習って、インディペンダントでやってみてはいかがでしょう。

 町内のお祭りとか、地元の商店街のイベントとか、学校の運動会の賑やかしとかに出演すれば、存在感絶大のスターですよ。

 

 どうですか?

 女も男も、老いも若きも、あなたも着ぐるみアクターになって、オルタネイトワールドへ。ありふれた日常を吹き飛ばそう!