「わたしを離さないで」と「ノルウェイの森」: 恋愛から遠ざかり、恋愛小説に歩み寄る

 

先週、AmazonPrimeでドラマ「わたしを離さないで」を

一気観したことを書いた。

そのドラマの感触が何かによく似ているなぁ、

何なんだろうと思っていたが、

それが村上春樹の小説「ノルウェイの森」だと気づいた。

 

じつは3年ほど前に村上春樹の初期作品を立て続けに

再読したことがある。

「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を読み終え、

しばらくしてから「ノルウェイの森」も読んだ。

 

二つのストーリーは共通したところはないのだが、

全体を貫くトーンと言うか、悲しみの色合いみたいなものが

よく似ていると感じるのだ。

 

「ノルウェイの森」は1987年の発売当時、

大ベストセラーになったので、読んだ人も多いだろう。

そして多分、嫌いになった人も多いだろう。

村上春樹を嫌いな人は

たいてい「ノルウェイの森」の悪口を言う。

 

僕が最初に呼んだのは20代後半の頃だったが、

それまでの現実世界から少しズレた、

クールで、幻想的な味わいのある作品が好きだったので、

何とも言えない違和感を覚えた。

 

そして、あのグダグダした感傷的で鬱病的な恋愛の世界と、

濡れ場の描写の妙なリアル感がかなり気持ち悪くもあった。

 

当時、女性の友人らともあの小説について話したが、

一体何を話していたのか、さっぱり思い出せない。

 

たぶん僕も彼女らも、誰もまともなことは言えなかったのだろう。

売れてるし、恋愛がテーマだから読んどくか、

みたいなノリだったのだろうと思う。

 

僕もその頃は恋愛は本の中ではなく、現実の世界にあった。

 

しかし、それから30年経って再読した「ノルウェイの森」は

全然違う世界だった。

 

けっしてすごい傑作だとは思わない。

やっぱりグダグダしてて感傷的で鬱病的なのだが、

それがひどくリアルに自然に感じられ、

抵抗なく受け入れることができた。

 

そして舞台となっている1970年の空気も

ひどく肌になじんだ。

タイムマシン効果というやつだろうか?

 

大事なものを失うこと、

何か得体の知れない巨大なものに奪われること、

抗いようもなく損なわれること、

それでも癒し癒されながら生きようとすること―ー

そうしたものが描かれている気がする。

 

そう考えてみると、「わたしを離さないで」も

こういった要素を含んだドラマだった。

 

こんな劇的な悲恋を体験したことなどないし、

そもそも僕にとって恋愛は遠い世界になった。

 

もうあんな面倒くさいことにわが身を投じる

気力も体力もない。

 

ただ、恋愛について考えることはできる。

半分は性的衝動だが、あとの半分は何なのだろう?と。

10代の子どものように恋に恋しているのかもしれない。

 

今年はどこかで時間を作って

「ノルウェイの森」をもう一度読んでみようと思う。

 

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