週末の懐メロ138:夜明けのスキャット/由紀さおり

 

6月は夏至。

雨や曇りの日が多いせいであまり気が付かないが、

夜明けがとても早くやってくる季節になった。

 

「夜明けのスキャット」は、

1969年に由紀さおりが歌って

大ヒットした昭和歌謡の代表曲。

タイトルは夜明けだが、

歌の中で、時計は夜明け前で止まり、

星は永遠に消えず、ふたりは愛の世界に生きる。

捉えようによっては相当エロい歌だ。

 

子どもの頃はそんなエロさなど分からなかったが、

聴いていて「なんだ、この歌は?」と

異常なインパクトを受けたことを、

いまだにありありと憶えている。

 

ルルルとか、ラララとか、パパパばっかりで

全然歌詞が出てこない!

いま聴けば2番はちゃんと歌詞があって、

それなりにバランスが取れているのだが、

子どもの頃は、スキャットのみの部分が

とんでもなく長く感じられて、

他の歌にはまったくない、

唯一無二の不思議感がずっと残っていた。

 

それからすでに半世紀以上。

その不思議感は半永久的な生命力を持って、

歌詞の通り、時のない愛の世界にリスナーを連れていく。

 

その透き通るようなファンタジー性は、

いまや世界中に響き、アメリカのジャズオーケストラ

「ピンクマルティーニ」をはじめ、

世界中の様々なミュージシャンが

この曲をリスペクトし、カバーしている。

昭和歌謡の代表曲は、

時計を止めて、国境を越えた名曲になった。

 

子どもの目にはとても色っぽい大人の女性に見えた

由紀さおりは、この当時まだ21歳。

自分とひと回りしか齢が違わなかったことにも、

ちょっと驚き。

 

最近、聴いたギリシャのエレクトロポップデュオ

「マルシュー」リミックスバージョンが、

「夜明けのスキャット未来編」といった趣で素晴らしい。

こちらを聴いていると、

なんだかミステリアスなSF映画の主題歌のようだ。