週末の懐メロ139:ロックンロール黄金時代/モット・ザ・フープル

 

モット・ザ・フープルは、

ヴォーカルのイアン・ハンターを中心とした

70年代前半に活躍したイギリスのグラムロックバンド。

いわゆるグラムロックとしては、

デヴィッド・ボウイ、Tレックスの

次くらいに名前が上がるだろう。

 

デヴィッド・ボウイはこのバンドがお気に入りで、

自らプロデュースを申し入れ、ボウイ作の

「すべての若き野郎ども」が1972年に大ヒットし、

スターバンドに駆け上がった。

 

1974年リリースのアルバム「ロックンロール黄金時代」は、

アルバムタイトルのこの曲をはじめ、

「マリオネットの叫び」「あばずれアリス」

「野郎どもの襲撃」「あの娘はイカしたキャディラック」「土曜日の誘惑」など、

邦題マジック満開の名曲が並び、充実度抜群。

クセのある香辛料を効かせたロックンロールがたまらない、

文句なしの名盤である。

ジャケットデザインも一度見たら忘れられない

 

強烈なインパクト。ロック史上、屈指のカッコよさだ。

 

モット・ザ・フープルは、

ビートルズ亡き後の70年代前半、

レッド・ツェッペリンやローリング・ストーンズ、

プログレ四天王などに比べると、

やや格落ちするB級バンド感がいいじゃん、

いうことで、日本でも結構人気があった。

 

たしか1975年の「ミュージックライフ」の人気投票では、

バンド部門で15位前後だったと記憶している。

ただ、このアルバムを最後にスタープレイヤーの

イアン・ハンターが抜け、

バンドはなかば空中分解。

その後は人気を盛り返せることなく、

70年代後半に解散してしまった。

 

このアルバムに参加したメンバーで、

キーボーディストのモーガン・フィッシャーは、

80年代後半から日本に活動拠点を移し、

過去の栄光にこだわることなく、

まったく違ったスタイルの音楽を追求。

 

それは当時、新しい音楽の潮流となった

アンビエントミュージック(環境音楽)だった。

ヒーリングミュージックと言ってもいいが、

シンセサイザーを駆使し、

日常の中で瞑想を喚起するような音楽を創り出した。

 

フィッシャーは環境音楽家として、

90年、91年と京都・大阪で開かれた

大規模イベントに出演したのだが、

僕はその時、演出スタッフとして関わっていた。

それで打ち合わせなどで何度か言葉を交わしたことがある。

 

「モット・ザ・フープル、好きでした」とコクると、

彼はいきなり、ダダダダダダダ、ダダダダダダダ・・・と、

この曲の出だしのピアノ連打のフレーズを口ずさんだ後、

「フーッ、やれやれ」という感じで、

やや自嘲的な笑みを浮かべて、

「そう言や、そういうバンドもやってたね」

みたいなポーズを見せた。

 

たぶんその頃は、

自分の新しい音楽を作るのに躍起になっていて、

「もうあんなの昔ばなしだから勘弁してくれ」

という気持ちだったのではないかと思う。

 

ところが、フィッシャーはその後、

日本のみ発売のモット・ザ・フープルの

トリビュートアルバムを作ったり、

2018年・19年には、イアン・ハンターらと共に

モット・ザ・フープルを再結成。

ヨーロッパやアメリカで大々的なツアーまで行った。

 

ちなみに彼はモット以外にも

ジョン・レノンの楽曲の

カバーアルバム(オノ・ヨーコが参加)を作ったり、

クイーンのサポートキーボーディストとして、

ツアーに参加したり、CM音楽や映画音楽を製作するなど、

長年にわたって多彩な活躍を見せている。

 

最近のインタビューを読むと、

日本で暮らすことが音楽活動にとてもプラスに働き、

安定したキャリアを築くことに成功したようだ。

 

現在もコンスタントに音楽づくりを続ける

モーガン・フィッシャー。

彼の音楽は僕も気に入っていて、

仕事のBGMとしてよく聴いている。

 

特に「Refresh」というアルバムは、

単なるヒーリングミュージックを超えた、

ユーモアとフューチャー感があふれる傑作で、

BGMとしてはもちろん、

日常生活に心地よい刺激を与える

プログレッシブな音楽としても素晴らしい。

すべての人におすすめだ。