仮面の女と母の愛

 

ちょっと前に息子から新しいガンダムが

面白いと薦められたので、

「機動戦士ガンダム 水星の魔女」を見てみた。

 

去年の秋に1クールやっていて、

今年の春から2クール目をやっている。

現在は2クール目の途中だが、

かなりハマってこの3日ほどで21話をイッキ見。

 

ガンダム伝統のSF戦争ものに、

少女マンガ(学校・恋愛・仲間・LGBT)と

ビジネスドラマ(企業の宇宙経済圏・M&A・ベンチャー起業)を掛け合わせたつくりになっていて、

ちょっと「エヴァンゲリオン」を匂わせる要素も

入っており、とても見ごたえがある。

 

ガンダムは息子がチビの頃、「ガンダムSEED」など、

3作ほどいっしょに見ていただけで、

その歴史についてはよく知らないが、

今回のは新機軸らしく、主人公が女の子だ。

 

この主人公のスレッダというのが、

昔ながらの少女マンガのヒロインを彷彿とさせる、

純情で、ちょっとドジでヘタレな田舎娘というキャラで、

かわいい。

 

最初の方はガンダムで学園少女マンガをやるのか?

魔女だの魔法使いだのって、ハリーポッターの路線なのか?

というノリで始まったが、

さすがに世界観とキャラクター紹介を済ませた

1クール目の終盤から

ハードでシリアスなガンダムらしい展開になってきて、

オールドファンはほっとしただろう。

 

スレッダちゃんも話が進むにつれ、

単なる純情娘でなく、

過酷な運命を背負っていることがわかってきて、

ガンダムの主人公らしくなっていく。

 

「水星の魔女」というメインタイトルが示す通り、

ほかの登場人物も、圧倒的に女が多く、

キャラクターも女のほうが魅力的だ。

 

特にすごいのが、レディ・プロスペラという

スレッダちゃんの母親で、

新興のモビルスーツ企業の経営者。

しかもこの女性は、

ガンダムシリーズの名物の仮面キャラである。

彼女の復讐劇が、この物語の重要な軸になっているようだ。

 

シャア・アズラブル由来の仮面キャラは、

仮面をつけているというだけで、

相当ガンダムファンが期待し、

作る側のプレッシャーも大きいと思うが、

脚本のセリフも声優さんの演技も素晴らしく、

見事にそれに応えている。

 

序盤のビジネスシーンで、

「水星の地場に顔と腕を持っていかれた」と言って、

仮面(実際には目元まで隠すヘッドギア)と

義手を付けている理由を説明するが、

娘と会話する時は普通に外して素顔を晒している。

べつに顔面が崩れて醜くなっているとか、

外見上の異常は見られない。

 

なので、どうもこの仮面(ヘッドギア)を

装着すること自体になにか秘密があって、

ふつうに「働いているお母さん」

というわけではなさそうだ。

そのあたりは後半でどんでん返しをやるのだろう。

最後はやはり母と娘の対決になるのか?

女同士で戦うのを見るのはちょっと怖いので、

あまり凄惨なシーンにはしてほしくないけど。

 

この物語ではまた、社会格差や世代格差、

毒親など、親子間の問題なども

巧みに取り入れていているが、

究極のテーマは、

おそらく「母の愛」ということになるのだと思う。

それもかなり怖くて、狂気を秘めた愛。

 

従来のこうしたロボットもの・戦闘ものでは、

女性は、かわいかったり、お姫様だったり、

女神様だったり、色っぽい悪魔だったり、

やさしいお母さんだったり、

いわゆる「男が求める女性」として、

あまく描かれることが多かったが、

エヴァンゲリオン以来、だいぶ変わってきたようだ。

それにしても今さらながら、

最近のアニメは作劇術も画像表現も質が高い。

いろんな意味で楽しめ、

今の世の中の在り方・若い世代の思考タイプも学べる。