映画「ザリガニの鳴くところ」  陸と海との境界の物語

 

事件の真相は、初恋の中に沈んでいる――。

 

宣伝コピーがカッコいい「ザリガニの鳴くところ」は、

全世界で累計1500万部を売り上げた

ディーリア・オーエンズの同名小説の映画化。 

 

1969年、ノースカロライナ州の湿地帯で、

将来有望な金持ちの青年が変死体で見つかる。

殺人事件の容疑者として逮捕されたのは、

「湿地の少女」と呼ばれる孤児の女の子。

 

彼女を裁く陪審員裁判で事件の真相が明かされていく。

しかし、本当の真実が明かされるのは

それから半世紀のちの現代(映画のエピローグ)。

人生の結論はすぐには現れず、

目に見えないところに深く沈み、

思いがけない時に浮かび上がってくる。

 

原作小説は一昨年、読んでいた。

作者のオーエンズは動物学者で、

その知見をふんだんに活かし、

湿地の生態系について詳しく描写しており、

それと人間ドラマとがブレンドされて、

詩的でスケールの大きな物語になっている。

 

湿地という土地自体がミステリアスで、

様々な暗喩に満ちており、

人間の心のなかの世界を表現しているかのようだ。

 

ただ、ミステリー映画という頭で見ると、

正直、論理的に甘い部分が気になるかもしれない。

冒頭の宣伝コピーも

実際の内容とはちょっとズレてる感じが否めない。

 

映画化に際してストーリーは単純化され、

殺人事件の真相解明に焦点が絞られているが、

アメリカ社会に深く根を張った

児童虐待・家庭崩壊の問題も

もっと突っ込んで描いてよかった気がする。

 

アマプラで見た(今でも見られる)が、

陸と海との境界となっている雄大な湿地帯の風景と、

そこで暮らす人々のライフスタイルは、

映画館のスクリーンサイズで見たかった、という印象。

 

その映像をバックにしたプロローグとエピローグの

ナレーションもしびれるほど詩的でイマジネーティブ。

「ザリガニの鳴くところ」というタイトルの意味も分かる。

 

そして、ラブシーンがいい。

ドラマの文脈、映像の美しさ。

若い俳優さんがあまり美男美女過ぎないのもいい。

こんなきれいなラブシーンは久しぶりに見た気がして、

年甲斐もなく、ムズムズソワソワしてしまった。

 

夏休み無料キャンペーン 第4弾

ちち、ちぢむ 

8月18日(金)15時59分まで

 

 ろくでなしだけど大好きなお父さんが

「ちっちゃいおじさん」に!

 人新世(アンドロポセン)の時代を生きるアベコベ親子の奇々怪々でユーモラスな冒険と再起の物語