週末の懐メロ156:青春の日々/ニコ

 

原題「These Days」は

「最近」とか「近頃」と訳すのが普通だが、

1967年の日本のレコード会社の人は

「青春の日々」という

当時のフォークソングっぽい邦題を付けた。

歌でも本でも映画でもよくあるタイトル。

でもニコのこの歌を聴くと、

他のタイトルは思い浮かばなくなる。

 

とくにセンチメンタルな旋律ではないのだが、

聴けば聴くほど、雨水がしみ込むように、

深く広く、胸のなかに切なさが広がっていく。

青春の日々が遠くなった人間だからかもしれない。

 

作詞作曲はジャクソン・ブラウンで、

デビューする前、16歳の時に書いた歌だという。

 

歌詞は、最近、わたしの人生うまくいかない。

もう夢を見るのはやめた。

失敗したことを忘れたわけじゃないから責めないで

・・・といったちょっとネガティブな内容だ。

 

ティーンエイジャーの頃は

よくないことがあると内省的になり、

人生を達観したような気になってしまうことがある。

 

もちろんポジティブな気持ちを持って

元気に生きた方がいいけど、

いつもピーカンの青空ばかりというわけにはいかない。

晴天ばっかりでは生きててつまらないし、

人生もうすっぺらくなる。

 

ぽかぽか浮かんでくる雲の形を楽しんだり、

しとしと雨降りも経験して

生きる哀しさややるせなさも知ったほうが

人間が立体的に形成されていくと思う。

 

ニコはドイツ出身のファッションモデルで、

その後、シンガーソングライター、女優として活躍。

ニューヨークでかのポップアートの巨匠 

アンディ・ウォーホールと知り合い、

彼がプロデュースするロックバンド

「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」と共演した。

 

ジャケットにウォーホール作のイラストーー

世界で最も有名なバナナが描かれたデビューアルバム

『The Velvet Underground & Nico』は、

ロック史に欠かせない超名盤となり、

その評価はむしろ21世紀になってからのほうが

上がっている。

 

ただ、ニコがベルベットに参加したのは、

ウォーホールが「女がヴォーカルをやった方が話題になる」

と言ってくっつけたからだそうで、

彼女は1枚限りでバンドを離れ、

同年、ソロアルバムを制作。

「青春の日々」は、そのアルバム

「チェルシーガール」に収録されていた。

 

昨年(2022年)1月にはビリー・アイリッシュがこの曲を

TikTokに投稿し、再生回数1億2千万回超を記録。

音楽ニュースサイトで大きな話題になった。

まさに今の世界中の若者の心もとらえた大ヒット懐メロだ。

 

ニコも、アンディ・ウォーホールも、

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを率いた

ルー・リードも、とうの昔に故人になっているが、

40年・50年・60年経っても

良い曲は聴き継がれ、世代を超えて共有される。

若い世代の人もこの曲を聴きながら、

自画像・人生像を描いてみるといいかもしれない。

 

 

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