京風お地蔵さん人形と義母のまぼろし家族

 

京都の百万遍にある知恩寺というお寺で

毎月15日に「てづくり市」という市が立つ。

その名の通り、結構広い境内いっぱい

関西・近畿一円から集まった業者が

露店を開き、衣料・アクセサリー・工芸品・アート・

玩具・生活雑貨など、手作り品を売っている。

関西弁があふれ、とても楽しくてにぎやかだ。

 

そのなかで布で作った人形を売っている店があり、

かわいいお地蔵さんが目に留まった。

10数個あったが、一つ一つ顔と着物が微妙に異なる。

売り子のおねえさんによると、

95歳のおばちゃんが作っているのだそうだ。

 

そんな話を聞いて、義母のお土産にと一つ買ってきた。

(旅行中はショートステイに預けていた)

鏡台の前にずらりと並んだお友だちの間に

さりげに置いておいたら、

新入りに気付かないのか、自然に受け入れているのか、

とくにリアクションもなく、この1週間過ごしている。

彼女にとってはお地蔵さんも、タコやネコやワンちゃんと

同列扱いのようだ。

それでもって昼となく夜となく

これらマスコット相手におしゃべりをしている。

 

それだけでなく最近は幻視なのか、

やたらとどこかの子どもや、もうこの世にいない

親やきょうだい、見知らぬ先生とかお兄さん・お姉さんまで

遊びにくるようで、いろいろ訊かれるのだが、

「こっちにはいないよ」とか

「さあ、どこに行ったんだろう?」とか、

「会えてよかったね。きっとまた来るよ」とか言ってかわすと、

納得したのかしないのかわからないが、一応ひっこむ。

それでまたちょっと経つと部屋で誰かと話している。

 

知らない人が見たらびっくりするかもしれないが、

すっかり慣れて日常の風景になってしまった。

一時期、「お母さんのところに帰る」と言って、

止めるのも聞かずに家を出ていくことが会って往生した。

数日前に見たNHKのクローズアップ現代で

「認知症行方不明者1万8千人の衝撃」

という特集をやっていたが、

これは本当に大問題である。

家族や子供が家の中にいて話ができるなら

いきなり「かえるかえるケロケロ」と騒ぎ出さずに済んで

こちは助かるというものだ。

 

考えてみれば、どこか違う世界の子供と会ったり、

もうこの世を去ってしまった家族がいたりするなんて

幸福なくらしである。

そういうふうに考えていかないと、

これからの「高齢者の5人にひとりが認知症」なんて時代を

到底乗り越えていけないのではないか。

お地蔵さん、義母が図と幸福でありますように。