週末の懐メロ167:ジャンプ/ヴァン・ヘイレン

 

天使の小僧がニタッと笑うジャケットの

アルバム「1984」からもう40年。

アメリカンハードロック史上最大のヒット曲

「ジャンプ」を産んだ

ヴァン・ヘイレンの1984は、

もちろん1984年のリリース。

 

発売当初はイギリスの小説家ジョージ・オーウェルの

ディストピアSF小説「1984」が関係しているのでは?

という議論も生まれたが、メンバーは一笑に付した。

 

まぁ、確かに暗い影もないし、

思想的なことを楽曲にするようなバンドでもない。

「ジャンプ」はエドワード・ヴァンヘイレンの

ギターとシンセサイザー二刀流がさく裂する

超カッコいい、エネルギー噴出ナンバーだ。

でもこの「1984」がオーウェルの小説と

何の関係もないところが

逆に時代の変わり目を感じさせる。

 

というのも20世紀後半、

欧米では全体主義国家によって分割統治された

近未来世界の恐怖を描いたこのディストピア小説は

非常に高く評価され、よく読まれており、

ミュージシャンらにも大きな影響を与えていたからだ。

 

デヴィッド・ボウイ『ダイアモンドの犬』(1974年)

トッド・ラングレン『1984年の子供たち』(1974年)

スティーヴィー・ワンダー『ビッグ・ブラザー』(1972年)などは、もろに「1984」をモチーフにした作品として知られている。

 

ちなみに音楽ではないが、

「1Q84」という傑作小説を書いた

村上春樹も言及したことはないが、

やはり「1984」を意識したのだろう。

 

思えば20世紀のロック/ポップミュージックは、

自由を許さず、絶え間ない監視によって人々を抑圧する

1984ディストピア的世界と戦うために

生れ育ったカルチャーであるとも言えるだろう。

 

しかし、ヴァン・ヘイレンが

世界のトップバンドに上り詰めた

1984年頃にはそんなことも忘れられ、

ミュージシャンもリスナーも楽しさを追求することでに

一生懸命になっていた。

 

もちろん、音楽なんだから、

難しいこと抜きに楽しければいい、

テンションが上がればいいのだけど。

あれから40年。

2024年になろうとしている今、

僕たちの世界はどうなっている?

そして、これからどうなっていく?

 

ロシア・ウクライナの戦争が長期化し、

パレスチナ問題が再燃し、

中国・北朝鮮の脅威が迫る2024、

もう一度「1984」を意識したほうがいいかもしれない。

 

ちょっと辛気臭い話をしてしまいましたが、

皆さんが新しい年に向かってジャンプ!できますように。

良いお年を。

 

大みそかまで続行!

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