教育産業・受験産業は縮小してください

 

そろそろ受験シーズンも終わりと思っていたら、

電車内にぶわーっと有名学習塾の広告。

ライバルに負けじと複数の塾が一斉に広告を出している。

もちろん、いち早く次年度の塾生を獲得するためだ。

テレビCMもしかり。

戦略とか、マーケティングとかあるんだろうけど、

当事者でない者としては本当にげんなりする。

 

おまえに見せてるんじゃねーよ。

嫌なら文句言わすに無視しろ。

 

広告主はそういうだろう。

テレビは消せばいいが、

電車内では目をつむったり、逃げ出すわけにはいかない。

広告によってそういう環境を作り出すことが問題だ。

子供も親も「教育」とか「受験」に

脳が毒されてしまうからだ。

 

少子化の時代、僕は教育産業も成長を諦め、

縮小していくべきだと思っている。

大学もどんどん減らしていったほうがいい。

受験戦争に巻き込まれることにって、

さらに大学に進学することによって、

いったいどれくらいの子供や親が幸福になるのか?

 

もちろん、そんな数字は出ない。

学習塾は塾生の○パーセントが合格した、

志望校に入れた、一流校に入れた、

という結果が出ればそれでいい。

それが学習塾にとってのゴールだ。

 

けれども子供や親にとってはそれはゴールでも何でもない。

人によってはさらなる無間地獄への入口になる。

そんなことをもう半世紀以上も繰り返している。

 

僕が子どもの頃、楳図かずおのマンガの中に

「秀才」という作品があった。

(「おろち」というオムニバスシリーズの一編)

折しも受験戦争、受験地獄とい言葉が

生まれた時代のもので、

大学受験に向き合う親と子がいかに狂っているか、

いかに不幸なものか、その真髄を描き出した作品だ。

 

この頃はまだ大学への進学率も低く、

ある意味、ここまで狂ってしまうのは

ある特殊な層の、特別な家庭というイメージがあった。

けれども日本全体が豊かになり、情報化が進んだせいで、

この「秀才」の世界がどこの家庭にも浸透して

すっかり日本社会のデフォルトになってしまった。

 

そして大学に入ったら入ったで、

その後はベルトコンベア式に

就活、就職というイベントに巻き込まれる。

そんな子供たちにおとなは

「がんばれ受験生」「がんばれ就活生」などと

無責任なエールを送る。

ほとんど季節の風物詩というか、

子どもをネタにしたお祭りみたいな気分になっている。

これでは死にたくなる子供が増えてもおかしくない。

 

僕にはやっぱりこういう状況は

狂っているとしか思えないのだ。

受験勉強に情熱を傾け、

ある意味、生きがいに出来る子供はいいが、

そんな子は少数派のはずである。

それが当たり前のようになって

しまっているところがおかしい。

親も子も目を覚まして

こんなおかしなシステムに安易に巻き込まれず、

自分の心の声に耳を澄まして、

冷静に人生について考える勇気をもって生きてほしい。