小山田問題:才能と人間性

 

世の中は芸術的才能よりも

人間性を重視している。

人として正しく生きている上での

才能でなければ認められない。

そういう世界になった。

 

数年前、ハリウッドの女優が

映画プロデューサーのパワハラ・セクハラを

掘り起こして糾弾したあたりから、

世界が急速に人権や個人の尊厳といったものを

クローズアップするようになった。

 

この流れはもう止まらない。

そして、元に戻ることはない。

 

昔は真逆だった。

 

才能がすべてだ。人間性なんか関係ねーだろ。

 

誰だったか忘れたが、むかし芝居をやっていた頃、

僕もそう言われたことがある。

 

かれこれ40年近く前の話だが、

当時、それは真実の言葉だった。

 

作家も俳優もダンサーも画家も映画監督も、

そして音楽家も、

およそ芸術・娯楽の分野で仕事をしようとする者にとって

それは鉄の掟のようなものだった。

 

いや、でも人間性も大事なんじゃないでしょうか。

そんなことを言おうものなら嗤われ、馬鹿にされた。

 

「いい人」に何ができる?

世間の常識にとらわれた人間に

面白い表現、人を感動させる表現などできるわけがない。

そう言われたらグウの音も出なかった。

 

僕の実感は昭和時代のものだが、

これは割と最近まで、おそらく10年ちょっと前くらいまで

生きていた鉄則ではないかと思う。

 

小山田氏があんなひどい虐待・暴行を

さも自慢げに、笑い飛ばすように話したのも

1990年代半ばは、そうした芸術分野の

才能至上主義みたいな常識が

まだしっかり生きていたからだろう。

 

才能があり、人気もあり、

セールスを上げているミュージシャン。

ほとんど無敵である。

何を言っても、何をやっても許される。

あの記事の内容を読む限り、

そうした自信(今となっては驕り)

が見て取れる。

 

僕は今回読んで吐き気がしたけど、

当時はああした話を歓迎して受け止める風潮も

世の中にあったのだろうと想像する。

 

だから出版したし、

あの雑誌自体もそこそこ売れたらしい。

 

そういう観点からすると、

記事を企画し、リリースに関わった

ライター、インタビュアー、編集者、そして出版社にも

相当大きな責任がある。

(出版社は謝罪文を出した)

 

小山田氏に関して、全然彼の音楽を知らなかったので、

フリッパースギターとか、

コーネリアスとか、ちょっとずつ聴いてみた。

 

胸に響くというほどではないにせよ、

そこそこカッコいいし、才能を感じる。

 

さすが開幕式の音楽担当に選ばれるだけあって、

作曲能力も演奏表現も優れている。

実績も立派なものだ。

 

だけど、時代は変わった。

芸術を生み出すにはにはもちろん才能が必要だが、

それは人間性とセットでなければ、

社会に受け入れてもらえない。

 

それでこの先、本当に面白いものは生まれるのだろうか?

新しい芸術は生まれるのだろうか?

と、古い常識にとらわれた僕は

ちょっと疑問には思っている。


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週末の懐メロ39:ダンシング・ウィズ・ミスターD/ザ・ローリング・ストーンズ

 

ヘビが肌にからみつくようなヌメヌメ感。

粘り気たっぷりのグルーブが気持ち悪くて気持ちイイ。

 

「ダンシング・ウィズ・ミスターD」は、

1973年リリースのアルバム「山羊の頭のスープ」の

オープニングナンバー。

ダークで猥雑で退廃的な

ストーンズ流変態ダンスナンバーとでもいえばいいのか、

彼らの楽曲の中でもすごくユニークな曲だ。

 

このビデオでも化粧したミック・ジャガーが

体をくねらせ尻振りダンスを披露していて、

セクシーというより、いやらしくて気味が悪くて面白い。

 

女ものの帽子をかぶってギターを弾く

この時代のリードギタリスト、ミック・テイラーも

無表情にドラムを叩くチャーリー・ワッツの顔もいい。

 

★山羊の頭のスープ1973

 

この年、僕は中学2年生だったが、

「悲しみのアンジー」というラブバラードが大ヒットし、

それが聴きたくてアルバムを買った。

ローリング・ストーンズとまともに出逢ったのは、

このアルバムが初めてだった。

 

薄い布かビニールみたいなものを被ったメンバーの顔が映った

まっ黄色のジャケットもシュールでヘンテコで大好きだった。

だからとても愛着がある。

 

この1973年は彼らの来日公演が、

ミック・ジャガーの麻薬所持が理由で中止になった年でもある。

 

結局、初来日公演はそれから17年後の1990年になった。

僕は1万円のチケットを手に入れて

友だちと大騒ぎして東京ドームまで観に行った。

 

ド派手な超一級のエンターテインメントだったが、

今思うと、やはりこの頃のダークさ・猥雑さと

だいぶ雰囲気が違っていた。

 

★1979年代:ロック王の格闘史

 

ストーンズが名実ともにロックの王者となったのは、

70年代を見事に生き抜いたからだと思う。

 

60年代の終わり、

目の上のたんこぶ的な存在だったビートルズが解散。

初代リーダーのブライアン・ジョーンズが死に、

ミック・ジャガーとキース・リチャーズの双頭体制になった。

(まるで芹沢鴨を追い出して、

近藤・土方主導になった新撰組みたいだ)

 

そして「スティッキー・フィンガース」

「メインストリートのならず者」という

ロック史・ストーンズ史に残る

大傑作アルバムを立て続けに出して天下を取った、

と思われた。

 

しかし、ポップミュージックの可能性が思い切り広がった

70年代の音楽シーンの荒波に

王者の地位はいつも揺るがされていた。

 

イギリス・アメリカでは人気ナンバーワン。

そして音楽通・ロック通の評判は高かったものの、

日本ではどうだったか?

 

人気の面、音楽性の広さ・演奏表現の醍醐味といった面では

レッド・ツェッペリンやディープ・パープルなどの

ハードロック勢、

イエスやELPなどのプログレ勢、

もしくはクイーンやエアロスミスなどの新興勢力の

後塵を拝していた。

 

そういった状況を意識してかどうか、

2大傑作の成功に安住することなく、

「山羊の頭のスープ」では、

この変態ダンスナンバー「ダンシング・ウィズ・ミスターD」や

ストーンズとしては珍しい、

もろバラードの「悲しみのアンジー」、

民俗音楽を取り入れ、

ちょっとプログレにアプローチしたようにも聴こえる

「すべては音楽」など、

いろいろなことに挑戦している。

 

もちろん、「スター・スター」みたいな

This is Stones みたいな曲もやりながら。

 

それまでのワイルド感やラフ感を抑えて、

かなり緻密で来寧な音作りを行っている。

 

評価が低いのは、そのへんが裏目に出て、

なんだか全体の印象が散漫で、

あんまりストーンズらしくないぜ~と映ったからだろう。

 

一貫して、ブルースから発展させた

自分たちのロックンロールを失わなかったストーンズだが、

その一方で、いろいろな音楽のっセンスを取り込むことに

挑戦し続け、

コンスタントにアルバムを作り、

ライブをやり続けたからこそ

激動の70年代ロックシーンを生き抜くことができた。

 

そして80年代になる頃、

他の人気バンドが解散したり衰退したりする中、

ストーンズだけは頭一つ抜けた、

別格のロックバンドになっていた。

 

そんなふうな格闘のヒストリーを考慮すると

「山羊の頭のスープ」はもっと評価されていい。

 

★山羊の頭のスープ2020

 

と思っていたら、じつは昨年、

「山羊の頭のスープ2020」という

アルバムが出ていたのを知った。

 

聴いてみたら、リマスターされたオリジナルの10曲に加え、

デモバージョン、別バージョン、アウトテイク、

未発表曲、この時代のライブパフォーマンスなど

盛りだくさん入っていてすごくいい。

 

僕たちの世代にとってローリング・ストーンズは、

永遠のロックの王者だが、

今の若い世代は、ベロ出しマークは知っていても、

ストーンズというバンドの存在は知らない人が多いらしい。

 

そんな世代にとって、バラエティに富んだ

ストーンズのロック宇宙が楽しめる

「山羊の頭のスープ2020」は超オススメである。

 

★ミスターDとコインロッカーベイビーズ

 

最後に、この「ダンシング・ウィズ・ミスターD」の

ミスターDとは何者なのか?

ちょっと気になるところ。

これはどうやらドラキュラのDらしい。

闇夜に吸血鬼と一緒にヌメヌメ踊ろうぜ、というわけだ。

 

ちなみに村上龍が1980年に発表した傑作小説

「コインロッカーベイビーズ」の中に

“D”という変態音楽プロデューサーが登場する。

このDという人物は、

この曲からイメージして書いたのでないか、

と勝手に僕は思っている。

 

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エッセイ集:音楽

ポップミュージックをこよなく愛した

僕らの時代の妄想力

ロックが劇的に進化し、ポップミュージックが世界を覆った時代。僕たちのイマジネーションは 音楽からどれだけの影響を受け、どんな変態を遂げたのか。心の財産となったあの時代の夢と歌を考察する音楽エッセイ集33篇。

もくじ

●アーティストたちの前に扉が開いていた

●21世紀のビートルズ伝説

●藤圭子と宇多田ヒカルの歌う力の遺伝子について

●ローリング・ストーンズと新選組の相似点について

●キング・クリムゾンの伝説と21世紀版「風に語りて」 ほか

 


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幻想漬け、妖怪漬けの夏

 

夏の訪れ。

夏の木陰。

夏の夕暮れ。

夏の夜。

田舎の夏。

故郷の夏。

 

音楽ではない。自然の音。

虫、鳥、かえる、せせらぎ、風鈴など。

YouTubeには短くて1時間、

長いのだと10時間以上の自然音のBGMにあふれている。

癒しのサウンドスケープ。

こんなにいろんな自然音にあふれた国は、

世界中探してもどこにもないかもしれない。

 

夏の音は僕たちの心に

見たことなんてないのに、

きっとどこかで体験したような気にさせる

夏の風景--幻想の風景をつくりあげる。

 

かつて幕末から明治にかけて日本にやってきた

欧米の知識人たちは、日本を「妖精の国」と呼んだ。

目をつぶればたちどころにその妖精の国に飛んでいける。

 

妖精というより妖怪か。

 

民俗学者・柳田国男と漫画家・水木しげるの功績によって、

妖怪は日本の文化の一つになった。

 

夏は幻想に浸りながら妖怪を楽しみたい。

 

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おとなも楽しい少年少女

 

ざしきわらしに勇気の歌を

ロボット介護士に支えられて余生を送っている寅平じいさんが、林の中を散歩していると、ざしきわらしに出逢う。

 

ざしきわらしは最強の妖怪“むりかべ”の脅威から人間を守るために闘うので、応援してほしいと寅平に頼む。

 

 


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週末の懐メロ38:ワイルドワン/スージー・クアトロ

 

「キャン・ザ・キャン」「48クラッシュ」

「悪魔とドライブ」に続く真打。

スージー。クアトロ、1974年の大ヒット曲。

 

レザーのジャンプスーツに身を包み、

ベースを弾いてシャウトする

ロックンロールねえちゃんは、ぶちカッコよかった。

 

彼女が弾くベースはやたらでかく見えたが、

べつにベースがでかいわけじゃなくて、

彼女が小柄だったのだ。

 

あんまりグラマーでお色気出しまくりじゃなくて、

ちょっと小さくて可愛いところも、

アイドルチックで日本人にウケた。

 

それまで女性のミュージシャンが弾く楽器といえば、

ギターやピアノ(キーボード)で、

少なくともメジャーになった人で

ベースというのはいなかった。

その点でもクアトロは斬新だった。

 

彼女が人気になって以降、

急にベ-スが女をカッコよく見せるアイテムになり、

実際に弾かなくてもベースを抱えた

女性アイドルがレコードのジャケットや

雑誌のグラビアを飾っていた記憶がある。

 

音楽雑誌で「なぜあなたはベースを弾くんですか?」

というインタビューに対する

彼女の答が忘れられない。

 

「ギターは頭にガンガン響くのよ。

ドラムはお尻にボンボンくるわ。

ベースはね、股間にビンビン来るのよ」

 

ひえー、そうなの!と、

中学生だった僕はそれを読んで、ぶっとんでしまった。

ロックの女王、面目躍如。

この名ゼリフとともにスージー・クアトロは

永遠のアイドルになった。

 

アイドルと言えば、

かつての歌謡アイドル・榊原郁恵の「夏のお嬢さん」

(♪アイスクリーム、ユースクリームと歌う曲)は、

この「ワイルドワン」のパクリだと言われている。

 

試しに聴いてみたら、パクリとまではいわないけど、

おいしいところはいただいてます、という感じ。

興味のある人は聴き比べてみてください。

 

 

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エッセイ集:音楽

 

ポップミュージックをこよなく愛した

僕らの時代の妄想力


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週末の懐メロ 37:紅い月/佐野元春&ザ・コヨーテバンド

 

若い頃より還暦を超えた今のほうが

楽曲も。歌う姿も、断然カッコいい。

 

ビートと歌詞が深く溶け合った表現。

積み重ねた歳月、刻まれた経験知

それでいて不思議と新鮮な息吹を感じさせる音楽。

おとなとして成長するとはこういうことか。

 

「アンジェリーナ」も「ハートビート」も

「サムデイ」も「ビジターズ」も「ヤングブラッズ」も

好きでよく聴いていたけど、

最近はもうあのへんの曲を聴きたいと思うことはない。

 

2015年リリースのアルバム

「BOLLOD MO0N」のタイトル曲の充実した歌と演奏は、

佐野元春が懐メロ歌手ではなく、

いまだ現役バリバリの日本のロックの担い手である証だ。

 

この曲のみならず、2005年から始まった

コヨーテバンドとのセッションで

彼の世界はさらに進化した。

 

80年代から90年代の活躍は、

ここにたどり着くまでの

助走だったのではないかとさえ思える。

 

盟友・忌野清志郎も、大瀧詠一も

この世を去った今、

時代の天気を気にすることなく、

けれども確実に空気を呼吸しながら、

佐野元春はひたすら誠実にロックし続けている。

 

かつて「ガラスのジェネレーション」で

「つまらない大人にはなりたくない」と叫んでいたが、

40年を経て、彼はそれを実現した。

 

自分はどうか?

つまらない大人をしていないか?

佐野元春の歌を聴くと。

いつもそう問いかけずにはいられない。

それだけでも聴く価値がある。

 

 

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ポップミュージックをこよなく愛した

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週末の懐メロ㊱:雨音はショパンの調べ/小林麻美withC-POINT

 

 

雨の季節になると思い出さずにはいられない、

小林麻美、1984年の大ヒット曲。

邦題と日本語訳詞を手掛け、

プロデューサー的な役割を果たしたのは松任谷由実。

 

ディスコブームの1980年代、

陽気でイケイケなアメリカとはひと味違う

ユーロ系ディスコが台頭し流行したが、

中でもメロディアスでメランコリックな旋律を

ダンスのリズムに乗せた

イタリア産の「イタロディスコ」はユニークで人気を博した。

 

そのイタロディスコの立役者のひとりが

パウロ・マッツォリーニ。

この原曲「I Like Chopin」を歌ったガゼボだった。

 

ガゼボは自作でありながら

この日本語バージョンに魅了され、

「これは彼女(小林)の歌だ」と言ったという。

 

アレンジも打ち込み音とオーガニックなイメージの

バランスが素晴らしく、

原曲のようなディスコっぽさをあまり感じさせない

とても繊細で丁寧な音作りをしている。

 

「別れたあの人はショパンが好きだった」という、

内容的にはありがちな失恋ソングなのだが、

ユーミンマジックと小林麻美の魔性の歌唱によって

神秘度・エロス度MAXの名曲に昇華した。

 

クールでメランコリックでダンサブル。

8分間のクラブミックスバージョンで展開する

小林麻美の脳内フル女神イリュージョン。

このイリュージョンであなたも僕も

10年長く生きられる。

 

 

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エッセイ集:音楽

 

ポップミュージックをこよなく愛した

僕らの時代の妄想力


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週末の懐メロ㉟:ナッシング・トゥ・ルーズ/U.K.

 

U.K.は1978年に結成された

“最後の”プログレッシブロックバンドである。

プログレッシブロックの歴史の始まりが、

1960年代後半のビートルズの

「リヴォルバー」や「サージェントペパーズ」だとすれば、

終焉はU.K.の3枚目にして最後のアルバム

「ナイト・アフター・ナイト

(U.Kライブ・イン・ジャパン)」だった。

 

僕は1979年のこの日本公演を見た。

東京で2公演が行われ、

5月30日の中野サンプラザのステージに行った。

 

同年発表されたこの曲ももちろん演奏され、

クリスタルに輝くエレクトレックバイオリンを弾きまくる

エディー・ジョブスンの姿が今でも目に浮かぶ。

 

「ナイト・アフター・ナイト

(U.Kライブ・イン・ジャパン)」は演奏修了後、

オーディエンスの「U.K.コール」が鳴り響き、

それがエコーアウトするという

すごくカッコいい終わり方をする。

 

しかし、収録は僕が見た後の6月4日の

日本青年館での公演を録音したものだったので、

レコードを聴いた時、

U.K.コールに参加できなかったことを

地団駄踏んで悔しがった。

 

そのライブアルバムが出たのは

確か同年の終わりごろだったが、

翌年になってU.K解散のニュースが伝えられた。

つまり、プログレッシブロックの歴史は

1970年代とともに終わったのである。

 

――と言うと、異論を唱える人がいるのは知っている。

U.K.を率いていたジョン・ウェットンは解散後、

イエスのスティーヴ・ハウや

ELPのカール・パーマーらと

エイジアを結成し、世界的な大ヒットを飛ばした。

 

メンバーチェンジをして生まれ変わった

イエスやジェネシスも

全米ヒットチャートを賑わせる

超人気グループに駆け上がった。

 

それはそれでいい。

売れたのが悪いわけではない。

けれども、それらはもうプログレッシブロックとは

異なる音楽だった。

 

その後、40年余りにわたってこれらのバンドは

解散しては再結成を繰り返してきたけど、

オーディエンスがリクエストと喝采を送るのは、

全米で売れた80年代のヒットナンバーではなく、

それ以前の70年代に彼らが生み出した、

今思えば奇跡のような、野心と抒情と哲学と、

大いなる世界の幻想に溢れたプログレの名曲群なのである。

 

1978年はパンクロックが音楽界に旋風を巻き起こし、

プログレ人気が凋落の一途を辿っていた時期だった。

 

そこへ舞い込んだビッグニュース。

ジョン・ウェットン(ベース/ヴォーカル)と

ビル・ブラッフォード(ドラム)が新バンドを結成!

しかもバンド名は、

United Kingdamというイギリスの正式国名。

 

これに数多のプログレファンの胸は高鳴った。

何と言っても二人は1975年に一度解散した

キング・クリムゾンのベーシストとドラマーだ。

 

そこにロキシーミュージックの元メンバーで、

クリムゾンのセッションに参加したこともある

キーボード&バイオリンのエディー・ジョブスン、

そして元ソフトマシーンのギタリスト、

アラン・ホールズワースが加わる。

 

U.K.の登場はキング・クリムゾンの再来、再結成と

受け取られた。

しかし、U.K.に対する当時の世間的評価は

あまり芳しくなかった。

 

クリムゾンファンの期待が大きすぎたせいか、

デビューアルバム「憂国の四士」は、

「クリムゾンにしてはスケール小さい」

「いまいちエッジが立ってない」などと言われた。

 

メンバーチェンジしてトリオ編成になって出した

セカンドアルバム「デンジャーマネー」は

「プログレなのにポップ過ぎる」という評価だった。

 

いま改めて聴いてみると、

1枚目は、確かにクリムゾンの影が残っているものの、

アヴァンギャルド的な部分よりも、

メロディアスな部分を強調していて聴きやすい。

 

2枚目は半分プログレ、

半分ポップなハードロックという感じで、

のちのエイジアに繋がる要素が垣間見える。

 

けれどもそれはもちろん、

クリムゾンでもエイジアでもなく、

U.K.というバンドでしか生み出せなかった楽曲群だ。

 

U.K.は活動期間も短く、

遺したアルバムもスタジオ盤2枚、ライブ盤1枚の

3枚のみで、レパートリーも20曲に満たない。

けれどもその充実度はすばらしく、

僕はどの曲も大好きだったし、

初めてプログレを聴く人にも親しみやすいと思う。

 

プログレの頂点に立つのは、一般的には4大バンド

(キング・クリムゾン/ピンク・フロイド/

イエス/エマーソン・レイク&パーマー)、

あるいはこれにジェネシスを加えた

5大バンドと言われているが、

僕はキャメルとU.K.を加えて

7大バンドということにしている。

そして唯一、

リアルタイムでライブを体験できたU.Kに対しては

愛着ひとしおなのだ。

 

あの40年以上前の日本公演で印象に残ったことがもう一つ。

プログレを聴くのは男ばかりと思っていたのだが、

オーディエンスには意外と女の子も多かった。

 

それはたぶん、

表に立つジョン・ウェットンとエディー・ジョブスンが

二人ともかなり美形だったことが大きいと思う。

ちょっとクイーンファンっぽいノリだったのだろう。

 

たしかにウェットンがベースをブンブン鳴らす横で、

ジョブスンが、今でいうならまるで羽生結弦のように

華奢な身をくねらせながらバイオリンをきらめかせ、

ギュンギュン言わせるビジュアルは、

本当に美しく、かっこよかった。

 

女子たちは、周りにいる

「聖域を荒らすミーハー許すまじ」みたいな、

プログレファンの男たちの気位の高さを察してか、

ジョンとかエディーとか呼ぶのではなく、

「ウェットン!」「ジョブスン!」と声をかけていた。

そのおとな対応が、いま思い返すとちょっと面白い。

 

2011年以降、ウェットンとジョブスンはU.Kを再結成し、

日本公演も行った。

映像を見たが、齢を取って二人の美貌は衰えたものの、

演奏は素晴らしく充実しており、

“最後の”プログレッシブロックバンドは

なおも光り輝いていた。

 

けれどもウェットンは2017年にこの世を去り、

ジョブスンも音楽の世界から身を引いたという。

 

さようならU.K.

歴史は永遠に閉じられた。

それでも僕はやっぱり死ぬまで

プログレを聴き続けるだろう。

 

 

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週末の懐メロ㉞:雨のクロール/森田童子

 

森田童子には春や夏を歌った曲が多い。

明るい光の向こう側にある影、孤独、別れ、哀しみ、死。

彼女はそうしたものを歌にしてきた。

1975年のデビューアルバムに収められた

「雨のクロール」はそれを象徴する佳曲である。

 

この音源はライブ

「東京カテドラル聖マリア大聖堂録音盤」から。

 

死去したことが公表されたのは3年前、

2018年のちょうど今頃だ。

それより35年以上も前に

もう森田童子であることをやめ、

一人の主婦として

都内のどこかで静かに暮らしていたらしい。

 

森田童子として遺した特異な歌の数々からは

どうもその暮らしぶりは想像しにくい。

でも、作品とその人の生き方・キャラクターに

整合性を求めるのは間違っていると思う。

 

1980年を過ぎて時代が変わり、

「学生運動をやっていた人たちのアイドル」

に対する関心は薄れ、

もう自分の役割は終わったと感じたのだろう。

 

どんな思いで歌うのをやめたのかわからないが、

もうしがみつくことはなかった。

 

キャリアの後半、

周囲がなんとか“延命”させようと

自分の曲に

当時の流行りだったニューウェーブやテクノポップ風の

アレンジをして売ろうとしたことにも、

すっかり嫌気がさしてしまったのだろう。

 

でもそれ以上に、普通の人になって

普通の幸せを手に入れたかった。

子ども時代に何か普通ではない、

過酷な体験があったのかも知れない。

 

本人はインタビューで

「病気のせいで孤独な生活を送っていた」

とだけ語っている。

 

そんなわけで1990年代になって

「ぼくたちの失敗」がドラマの主題歌となって

大ヒットしたのは、

本人がいちばんびっくりしたにちがいない。

 

けれども、それさえも遠い昔ばなしになってしまった。

 

森田童子はあまりにも学生運動とその時代と

セットで語られ過ぎてきた。

 

時代のベールを剥がして聴くと、彼女の歌の本質が見える。

春や夏の光の向こう側にある、人間の心の影や孤独。

 

時々、若い歌手がカヴァーを歌っているのを聴くが、

若者ほどその本質を理解している。

 

消費されることのない永続性と、

神聖と言ってもいい領域が、森田童子の歌の中にある。

 

 

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エッセイ集:音楽

ポップミュージックをこよなく愛した僕らの時代の妄想力


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週末の懐メロ㉝:ジョニー・B・グッド/チャック・ベリー

 

ビートルズも、ローリング・ストーンズも、

彼らに追随した世界中の数多の歌手も演奏者も、

チャック・ベリーがいなかったら生まれなかった。

ロックンロールのグランドファーザー、

1958年のバイブル。

 

このバイブルが発表された年は

僕はまだこの世に影も形もなかった。

 

初めて聴いたのは1974年。

近所のレコード屋が主催する

中高生らのコンサートが

区役所のちんまりしたホールで開かれた。

 

そこで中学の同級生のカドタくんが

「お子さまバンド」という3人組のバンドを結成して出演。

そこで演奏したのが「ジョニー・B・グッド」だったのだ。

(他にも2、3曲やったと思うが忘れてしまった)

 

当時、僕はハードロックやプログレッシブロックの

分厚くて起伏が激しく、

綿密に構成された楽曲が好きだったので、

初期のビートルズやストーンズがやっていたような

シンプルなロックンロールには

スカスカ感を感じて、正直、物足りなかった。

 

ところが、お子さまバンドがやった

「ジョニー・B・グッド」は

めちゃくちゃイカしてた。

 

中学生のバンドがそんなにうまかったわけではない。

しかし、とにかく楽しいノリと旋律が、

一発で体に刻み込まれた。

 

チャック・ベリーはその頃から

すでに伝説のロックンローラーとして、

ジョン・レノンやキス・リチャーズの口から

語り継がれていた。

 

その独特のパフォーマンスも、

「ロックなんてお笑いみたいなもん」とか、

「インチキだらけの世の中なんて笑い飛ばしたる」

みたいな気概を体現しているようで大好きだ。

 

2017年、グランパ・ベリーが

90歳でこの世を去った今も、

永遠のロックの北極星として、

ジョニーはグッドであり続ける。

 

電子書籍・音楽エッセイ「ポップミュージックをこよなく愛した僕らの時代の妄想力」、音楽を愛した人に贈る三木楽器の「メモリアルギター」もどうぞよろしく。


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週末の懐メロ㉜:パンク蛹化の女/戸川純とヤプーズ

 

月光の白き林で

木のの根掘れば蝉の蛹の幾つも出てきし

嗚呼 嗚呼

それは貴方を思い過ぎて変り果てた私の姿

月光も凍てつく森で

樹液啜る 私は蛹化(むし)の女

 

何時の間にか貴方が

私に気づくころ

飴色の腹持つ

虫と化した娘は

不思議な草に寄生されて

飴色の背中に悲しみの茎が伸びる

 

カノンの旋律に

昭和のアングラ演劇を思わせる

女の情念のような詩を乗せ、

少女のように歌う戸川純。

 

「蛹化(むし)の女」を初めて聴いたのは

1984年のことだった。

ソロデビューアルバム「玉姫様」の

最後を飾るその歌声に戦慄が走ったことを憶えている。

 

蜷川幸雄も蜷川実花も

あまりに切なく美しい

この奇怪で文学的な純愛歌を愛し、

舞台や映画の劇中歌として使った。

 

それを自らの手で叩き潰したパンクバージョンは、

ライブのラストナンバーとして歌い続けられた。

 

昔はその狂いっぷりにドン引きして

まともに聴けなかったが、

還暦を過ぎて再び巡り会った今、

一気に脳髄に食い込んできて、血を逆流させる。

 

戸川の絶唱とヤプーズの壮絶な演奏に

ただただ感涙するのみ。

 

そして最後の投げキッスが可愛い。

 

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ポップミュージックをこよなく愛した

僕らの時代の妄想力

 

ビートルズをきっかけにロックが劇的に進化し、ポップミュージックが世界を覆った時代.僕たちのイマジネーションは 音楽からどれだけの影響を受け、どんな変態遂げたのか考察する、おりべまことの音楽エッセイ集。

 


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スーパースター西城秀樹メモリアル

 

2018年の今日、青山葬儀所で

昭和のスーパースターの葬儀が行われた。

僕はたまたま仕事で取材したので、

その時の思いを綴った3つのエッセイを電子書籍

「昭和96年の思い出ピクニック」に収録しています。

(ブログの記事をリライト・再構成)

 

・西城秀樹さんのお葬式:青春の同窓会

・西城秀樹さんのお葬式:女の涙は子どもと夢の人のために

・西城秀樹さん ラストステージの記憶

 

素晴らしいお葬式・・・と言うと、

語弊があるけど、最近の傾向を見ていると、

この先、大スターや著名人が亡くなっても

あんなに心に残るセレモニーは、

もう行われないかも知れない。

 

そういう意味ではとても貴重な体験をしたと思う。

 


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週末の懐メロ㉛:シュガー・ベイビー・ラブ/ザ・ルベッツ

 

1974年。当時日本で大人気だった

カーペンターズやミッシェル・ポルナレフを押しのけ、

ラジオの洋楽ヒットチャートで1位に駆け上った

「シュガー・ベイビー・ラブ」。

 

中学生だった僕も、一発で大好きになり、

毎日のように聴いていた。

 

ルーベッツ(正式にはルベッツらしい)

のデビュー曲だが、おそらく日本人の大半は

この曲以外、まったく知らず、

このグループのことなんて

とっくの昔に忘れていたのでないだろうか。

僕もすっかり忘却の彼方だった。

 

しかし、ある時、あの甘くて、

ちょっと切ないメロディが

脳の奥からよみがえってきたのだ。

 

で、探してみたら、あった!

曲はやっぱり素晴らしい。

 

そして動画までああった。

もちろん初見。

こんなちゃんときれいな画像が残っていたとは驚きだ。

70年代臭さがプンプンするところも感動的だ。

 

メンバー全員お揃いの

白い帽子、ジャケット、ズボン。

背中にはグループ名のロゴまで入っている。

 

そして、振り付けや決めポーズも

おもしろレトロ。

 

極めつけは、途中に入る

ドラマーのキザなセリフ。

当時の女子はこれでメロメロっとなったのか?

 

ラブ&ピースなザ・70年代ポップスを楽しむのに最適。

コロナの梅雨の清涼剤に、ぜひどうぞ。

 

 

おりべまこと電子書籍

 

ポップミュージックをこよなく愛した

僕らの時代の妄想力

 

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メイキング・オブ・メモリアルギター

 

楽器や音楽を愛した人たちへの御見送りオブジェ

として開発された「メモリアルギター」。

 

納棺の際、故人の遺族・友人は、旅立ちの品として愛用してい

たものを棺に入れてあげたいと願う。

しかし、火葬の際に遺骨を傷つけてしまう不燃物は

入れることが出来ず、諦めなければならない。

 

楽器の演奏を趣味とする人、生きがいにしてきた人は大勢いるのに、

ギターをお棺に入れることはできない。

メモリアルギターは、このような遺族・友人の気

持ちに応えるために生まれた“燃えるギター”である

 

火葬炉で燃えるギター にするためには、

すべて可燃性の素材で作る必要がある。

全国の木工品メーカーに打診を繰り返し、

ようやく愛知県の木製玩具を製造する工房の協力を得られた。

 

木材をギター形状に手加工で切り出し、弦はタコ糸で細工。

ペグやジャックなど、表面の金具などの装飾

はレーザーカットした部品を貼り付けて表現した。

 

材料はパイン集成材(松)、本体厚みは3㎝、部品

はベニヤ材をレーザーでカット、木工用ボンドで接着。

全体の面取りなどの仕上げは手作業で行っている。

見た目だけでなく、持った時の感覚、手触りの

優しさ・心地よさまで徹底的にこだわった。

 

三木楽器は1825年、大阪の船場地域で貸本屋として創業。

明治時代にオルガンを皮切りに西洋楽器を取り扱うようになった。

昭和初期の著名な作曲家、山田耕筰らとの交流も深かった。

現在も楽器、楽譜の販売のほか、

音楽イベント開催など文化事業にも力を入れている。

 

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僕らの時代の妄想力

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小説を書いたり、時にはビジネスのサイトや書籍の文章を書く時にも、頭の中の記憶バンクから好きな曲を引っ張りだしてきて、勝手にテーマ曲にして書く。リズムやメロディでイメージが膨らみ、文章が呼吸をして動き出す。音楽リスニングで妄想力を養ってきたおかげで今の自分がいる。


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週末の懐メロ㉚:ララ・ミーンズ・アイ・ラブ・ユー/スウィング・アウト・シスター

 

「ララは愛の言葉」はフィラデルフィアソウル最高の一曲。

オリジナルは1968年のデルフォニクス。

 

以来、70年代・80年代・90年代と、

ジャズ系・ソウル系ポップスのシンガーたちが

こぞって歌いたがる超人気曲となり、

ジャクソン5時代のマイケル・ジャクソンや

プリンスなどもカヴァーしている。

 

僕が初めて聴いたのは阿川泰子の

ちょっと夜っぽくて艶っぽいヴァージョン。

日本人では山下達郎が圧倒的な人気だ。

 

山下達郎ヴァージョンはカッコいいし、

プリンスのちょっと変態チックな歌い方も好きだけど、

やっぱりこの歌は女性の声で聴きたいなということで、

1994年リリースのスウィング・アウト・シスターを選択。

 

この頃、よくJ-WAVEを聴いていたが、

ほとんど局のテーマソングみたいに1日何回も流れていた。

 

爽やかで華やかな、このバンド独特のサウンド、

親しみやすく覚えやすく、それでいて味わい深いメロディは、

コリーン・ドリュリーが歌うと、

ますます愛らしく聴こえる。

 

いつ聴いても耳に心地よくて、

今日も思わず「ララララ・・・」と口ずさんでいる。

 

「メモリアルギター」というものにハートを射られた。

これは大阪で195年の歴史を持つという超老舗楽器店「三木楽器」が

開発した「燃えるギター」である。

いわゆるビートルズ世代も70 代に入り、エンディングについて考えるようになっている。

「三木楽器」はそんな世代の、楽器や音楽を愛した人たちへのお見送りオブジェとしてこの「燃えるギター」をプロデュースした。

どうせあの世に行くなら、大好きな音楽・愛する楽器とともに――とお考えの皆さんは、ぜひ三木楽器のサイトを覗いてみてください。

 

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メモリアルギター 燃えるギター愛

 

「週末の懐メロ」を書くようになってから音楽熱が再燃した。

と言っても、音楽的才能はゼロなので、

もっぱら聴く方専門。

だけど本当に音楽には恵まれた時代に育ったんだなぁと

最近しみじみ思っている。

 

そんな中、「メモリアルギター」というものにハートを射られた。

これは大阪で195年の歴史(なんと江戸時代から!)

を持つという超老舗楽器店「三木楽器」が

開発した「燃えるギター」である。

 

いわゆるビートルズ世代も70 代に入り、

エンディングについて考えるようになっている。

「三木楽器」はそんな世代の、

楽器や音楽を愛した人たちへのお見送りオブジェとして

この「燃えるギター」をプロデュースした。

 

「燃えるギター」と言えばジミヘンだが、

これはレッド・ツェッペリン(ジミー・ペイジ)の

「天国への階段」が似合う。

弾くのではなく、棺に入れ、

天国へ持っていくためのギターなのである。

 

本物の楽器は金属を使っているので納棺できない。

火葬炉で燃えるギター にするためには、

すべて可燃性の素材で作る必要がある。

そこで企画・開発担当の櫻井裕子さんは、

全国の木工品メーカーに打診を繰り返した。

 

徹底的なこだわりがあったので、

何となくギターの形をしてりゃいいや、では納得できない。

 

形状の複雑さやコスト面でなかなか話が

折り合わず難航したが、

ようやく愛知県の木製玩具を製造する工房の協力を得られた。

 

その一方で斎場なに聞き取り調査を行い、

ご遺体とともに確実に燃え尽きることが前提であること

を確認し、小型化を検討した。

 

葬儀で祭壇に飾ったときに玩具っぽく映らないよう

見た目とのバランスをとりつつ完成させた。

まさしく職人技。

櫻井さんもついに思い描いた商品の形に

たどり着いた時は涙した。

もちろん、量産などできないので、一つ一つ手作りだ。

 

すべて木材で出来ているため、

セレモニーの際に納棺する楽器の副葬品としても、

また祭壇やお仏壇へのお供え物としても贈れる。

大きさは本物ギターの約 1/2 スケールで、

納棺に適したサイズに設計されている。

 

タイプはアコギと、エレキギターのレスポール型、

ストラトキャスター型の計3種類。

演奏用ではないものの、本物感を重視し、

細部まで丁寧に再現されているところは泣かせる。

 

開発コンセプト、そして

商品化するまでのこだわり・執念にも胸を打たれ、

レギュラーワークの月刊仏事

(葬儀供養業界の業界誌)で紹介した。

 

今日のブログはその記事をアレンジしたものである。

 

どうせあの世に行くなら、大好きな音楽・愛する楽器とともに――

とお考えの皆さんは、ぜひ三木楽器のサイトを覗いてみてください。

 

メモリアルギターの開発ストーリー

https://youtu.be/gh08NdcJ1sE

 

販売サイト

https://mikiwood.base.ec/

 

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週末の懐メロ㉙:サパーズレディ/ジェネシス

 

Supper's Ready「晩餐の支度」。

1972年リリース。

 

ディナーを前に恋人と抱き合った男が

瞬間的に見る幻想の数々。

オカルティックであり、ユーモラスでもある

その幻想の旅をストーリー仕立てで綴った楽曲は、

半世紀後の今も燦然と輝く

1970年代プログレッシブロックの最高傑作である。

 

彼女の体を抱きしめたとたん、

男の心の奥底にある不安や恐怖や邪な思いがあふれ出し、

様々なシーンやキャラクターとなって一種の悪夢を作り出す。

 

その素材となっているのはイギリスの歴史、

御伽噺や寓話、幻想文学、

そしてキリスト教文化の世界観。

 

それぞれのシーンに深い意味や思想性があるわけではないが、

それらを一つの楽曲として織り上げたセンスと技術がすごい。

 

バックの演奏も素晴らしいが、

特にこの曲を名曲の極みに持って行ったのは、

この時のヴォーカリスト、

ピーター・ガブリエルの独特の歌唱スタイルだ。

 

ガブリエルがジェエシス時代に築き上げたスタイルは、

自ら物語の主人公となって、その心情のみならず、

情景描写、他の人物のセリフ的な部分まで歌い分けること。

 

分かりやすく言うと、ミュージカルっぽい表現手法だが、

こんな奇抜な表現力をロック音楽の中で発揮できたのは、

先にも後にもガブリエルしかいない。

 

彼は後年、バンドを脱退し、

このスタイルを捨てて、本格的な歌手への道を歩むが、

ジェネシスのヴォーカリストとして遺したものは

他では聴くことのできない秘宝となっている。

 

ちなみにジェネシスは、最もビートルズに近い

プログレバンドである。

 

「サージェントペパーズ」などで

ビートルズが行なった実験音楽を発展させたのが

プログレッシブロックだとすれば、

それを一番忠実にエッセンスとして取り入れていたのが、

ジェネシスだ。

 

リアルなラブソングと

幻想・非日常の世界・ドラマを絶妙なブレンドで表現する。

 

この曲の中でも端々に、また、構成全体からも

「サージェントペパーズ」や「アビーロード」の影響、

ナンセンスファンタジーみたいな歌詞には

ジョン・レノンの影響が感じ取れる。

 

1975年にガブリエルが脱退した後、

ドラムのフィル・コリンズがヴォーカルとなり、

プログレを捨てて、ポップロックに転向して大成功を収めたのも

そんなバンドの成り立ちと歴史が要因ではないかと思う。

 

この時期のジェネシスは

「シアトリカル・ロックバンド」の異名を取り、

ピーター・ガブリエルが奇妙奇天烈な扮装で歌い踊るという

すごいパフォーマンスを見せていた。

 

そのライブ映像も楽しくて見ものだが、

今回は曲の全体像がわかるので、

あえてイラストで疑似アニメーションにした映像を選んだ。

 

20分超の大曲をイラスト化した労作で、

作者のジェネシス愛、ガブリエル愛が伝わってくる。

 

僕はELPを聴いて以来、

中学生の頃からプログレマニアだったが、

ジェネシスはそんなに聴かなかった。

その楽曲の持つ魅力と真価と普遍性に気づいたのは

割と最近のことである。

 

ピンク・フロイドもキング・クリムゾンも

今となっては懐メロ感が拭い去れないが、

ジェネシスはいまだ僕の中で進化を続け、

刺激的なイメージを送ってくる。

 


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音楽から生まれる妄想力とライティング

 

今でも小説を書く時はもちろん、

ビジネスのサイトや書籍の文章を書く時にも、

頭の中の記憶バンクから好きな曲を引っ張りだしてきて、

勝手にテーマ曲にして書くことがある。

リズムやメロディを与えると、イメージが膨らみ、

文章が呼吸をしてするすると動き出す。

音楽リスニングで妄想力を養ってきたおかげで今の自分がいる。

 

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残酷な天使のテーゼ/高橋洋子:週末の懐メロ㉘

 

「エヴァンゲリオン」がここまで人の心に食い込んだのは、

作品の内容はもちろんだが、テーマ曲の存在も大きい。

「残酷な天使のテーゼ」の歌詞は、

とてつもなく美しくドラマチックだ。

 

作詞の及川眠子がこの曲を書く際に与えられたオーダーは

「哲学的であること」「難解であること」。

それに対し、萩尾望都の漫画「残酷な神が支配する」を

元ネタにして2時間で書き上げたという。

 

そうして生まれたこの曲はエヴァ人気とあいまって

前世紀から常に人気カラオケ曲のトップ10に入る名曲となった。

アニメを観たことない人でも、

この歌は知っているという人は多いのではないか。

 

カヴァーもやたらと多い。

外国語バージョンも英語はもとより、10か国はくだらない。

 

それでもやはり高橋洋子のオリジナル版がいい。

このビデオは歌に合わせて、

テレビ版と旧劇場版、

つまり20世紀の旧シリーズのストーリーを

曲の尺4分に編集している。

 

新シリーズの完結編である「シン・エヴァ」を観た後だと、

絵もちょっと懐メロっぽい。

でも、そこがまたいい。

 

そして曲名どおり、

旧シリーズは本当に残酷だったなぁと感じる。

そう感じるのは、苛烈で凄惨なシーンが多いせいもあるが、

一番の要因は、女性の登場人物の運命があまりに過酷だからだ。

 

かつて映画の世界では、

劇中であっても女と子どもは殺してはならないという

不文律があった。

半世紀以上前の話で「女は守られるべき存在」という

一種の差別の表れでもあるのだけど。

 

しかし、自分が男のせいか、たとえ虚構の中とはいえ、

女が死んだり殺されたりするところを見るのは、

心が切り裂かれるような痛みを感じる。

 

旧シリーズでは、レイもアスカもミサトもリツコも、

主要な女キャラがみんな死んでしまった。

それもかなり無残で惨い死に方だった。

 

物語自体も最終的に狂気の世界に突っ込んでいき、

通常のロボットアニメ、

ヒロイックファンタジーとはかけ離れた、

前衛的なアート作品のようなエンディングになった。

 

そして、エヴァ人気が一種の社会現象としても扱われた。

1990年代の世紀末観、オカルトじみた事件の数々、

従来の社会常識の液状化、

人間の心の暗黒面の発見といったことも

影響してたのだろう、

 

それに比べて、新シリーズが

とても優しく温もりのある終焉に感じられたのは、

彼女らの命が無残に潰えることなく、救われたからだと思う。

ただ一人の死も崇高な「英雄死」だった。

 

庵野監督が新シリーズを旧シリーズほど

残酷な物語にしなかったのは、

齢を取って丸くなったせいもあるが、

女を殺し過ぎたことに対する

罪ほろぼしの意識があったからだろうと推測する。

男の心には必ずそういう贖罪の季節が訪れる。

 

この曲とこのアニメは、ある世代、

具体的には1995年から97年の

テレビアニメ放映~旧劇場版上映の時期に

ティーンエージャーだった人たち(現在の40代)にとって、

一つの原風景になった。

 

巨大なトラウマであり、一生消えない感動と傷跡。

幸か不幸か、僕は大人になってから出逢ったので、

適度な距離を置いて見ることができたけど、

耽溺した人を少し羨ましく思う時もある。

 

エヴァの素晴らしいところは、

自分の想像力でストーリーを補完し、

ひとりひとりの心の中に

「マイ・エヴァンゲリオン」をつくれるところにある。

 

エヴァンゲリオン補完計画発動。

四半世紀にわたった新旧シリーズが完結し、

「残酷な天使のテーゼ」が懐メロになった今、

世界中で無数の新たなマイ・エヴァが起動する。

 

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5月1日(土)17:00~3日(月)16:59

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僕らの時代の妄想力

5月3日(月)17:00~6日(木)16:59

昭和96年の思い出ピクニック

 


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週末の懐メロ㉗:レディラック/ロッド・スチュワート

 

幸運の女神」と題された1995年リリースの歌。

明るさと切なさの入り混じった印象的なメロディーを

リズミカルに、独特のハスキーヴォイスで歌っていく

ロッド・スチュワートの佳作だ。

 

この曲はフジテレビで放送されていた

「沙粧妙子 最後の事件」の

エンディングテーマだった。

 

主演の浅野温子、佐野史郎、升毅をはじめ、

当時のスター級俳優やアイドルたちが顔をそろえた

とんでもなくヘヴィで陰惨でオカルト風味満載の

心理サスペンスドラマ。

 

ベストセラーになり、プロファイリングという言葉を広めた

ノンフィクション「FBI心理捜査官」や

サイコスリラーの原点となった

映画「羊たちの沈黙」の影響は明らかで、

毎回おそるべき異常でミステリアスな殺人事件が起きていた。

 

夜9時というゴールデンタイムに公共の電波で

よくあんなとんでもない話をやっていたものだ。

 

思うにあの1990年代、

多くの人が、人の心の奥に計り知れない闇があることを発見し、

そこに鬼とか悪魔が生息することを認識し、

それを覗き見ることに興奮と快感を覚えてしまったのだろう。

僕はその一人である。

 

あの頃、異常だの狂気だのと騒がれたような事件や事象は、

いまや日常茶飯事的に起こっている。

人間と社会の、一つの進化だったのかも知れないと思う。

 

いずれにしても「沙粧妙子 最後の事件」は

めちゃくちゃ面白かった。

毎回、次はどうなるんだろうと盛り上がったところで

この歌が入ってきてエンディングとなる。

 

ドラマの濃厚な後味をクリーンにしてくれる

スチュワートの、軽くカマしているような、心地よい歌声。

何度聴いてもナイスだ。

 

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もくじ

●八王子・冨士森公園のスローバラード駐車場で、ポップミュージックをこよなく愛した僕らの時代の妄想力について考える

●アーティストたちの前に扉が開いていた

●21世紀のビートルズ伝説

●藤圭子と宇多田ヒカルの歌う力の遺伝子について ほか

 

●アクセス

https://www.amazon.co.jp/ から上記コードナンバー、

または「おりべまこと」、または書籍名を入れてアクセス。

 

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週末の懐メロ㉖:LOCH SENU/LANPA

 

LAMPA(ランパ)の[LOCH SENU(ロッホ・セヌ―)」は

1990年5月、イカ天で歌われた。

 

通称イカ天、「いかすバンド天国」はTBS系で

1989年2月から1990年12月まで放送された

バンド勝ち抜き合戦の番組である。

 

始まった頃、出場バンドのクオリティは結構高く、

当時、こりゃすごい、カッケー、楽しい、

テレビ的に面白いと思ったのがいっぱいあった。

 

しかし、30年あまりたった今。なおも新鮮に響き、

こころ傾けて聴けるのは、LANPAだけである。

 

ハイトーンで清涼な女声ヴォーカルと

ファンタスティックに響きわたるギター。

リズムセクションを含めた

アンサンブルの素晴らしさ。

 

そして、光や水、木や土や月など、

自然の事象と人の心情を重ね合わせて表現する

独特の美しさを持った音楽世界。

 

時に民俗音楽のようであり、

時にプログレッシブロックのようであり、

時にフォークっぽいニューミュージックのようでもある

変幻自在な楽曲は、どこかにありそうだけど

どこにもないユニークさを放っていた。

 

メジャーデビューも果たし、

CDも買って聴いていたが、この曲以外にも、

「水の上のペディストリアン」「記憶の森」

「ムーンライトマッドネス」「大地に雨」など、

バラエティ豊かな名曲ぞろいだ。

 

イカ天はその週にチャンピオンとなった「イカ天キング」が

5週連続で勝ち抜くと「グランドイカ天キング」になるという

仕組みだった。

 

LAMPAは4週勝ち抜くも最後の5週目で敗れ、

グランドにはなれなかった。

 

LANPAが去って以降のイカ天は全体的にクオリティが落ち、

ブランキージェットシティ以外、ほとんど憶えていない。

最後の3か月はつまらなくなって見なくなっていた。

 

審査員の好みか、番組の趣向なのか、

ルーツのはっきりしたロックらしいロック、

アクの強い強烈なキャラクター、イロモノ、

テレビ的に面白いといったバンドが

優遇されていたような気がする。

 

それらの基準のどれにも当てはまらず、

音楽性だけで勝負していたLANPAはちょっと不利で、

イカ天バンドらしくなかったのかもしれない。

 

けれども今となっては、そんなことはどうでもいい。

あれから30年。彼女らの遺した楽曲が

またとない生命力を持って輝いていることが

確認できれば、それで十分だ。

 

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もくじ

●八王子・冨士森公園のスローバラード駐車場で、ポップミュージックをこよなく愛した僕らの時代の妄想力について考える

●アーティストたちの前に扉が開いていた

●21世紀のビートルズ伝説

●藤圭子と宇多田ヒカルの歌う力の遺伝子について ほか

 

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週末の懐メロ㉕:タワー/エンジェル

 

高校に入ってしばらく経った1975年のある日。

当時よく通ってたロック・フォーク専門のレコ―ド店を

覗きに行ったら、店のマスターが僕の顔を見るなり、

「おっ、フクシマくん、今度すごいバンドが出たんだよ」

と言って聴かせてくれたのがエンジェルのデビューアルバム

「天使の美学」だった。

 

視聴用のプレイヤーのターンテーブルに

レコードを乗せて針を落とすや、

いきなりシンセサイザーの電子音がギュンギュン唸って、

ド派手なドラムがドカドカと響いたかと思ったら、

哀愁を帯びた美しいメロディーが流れだす。

オープニング曲「タワー」は、確かに劇的・衝撃的だった。

 

プログレ風味のハードロックと言うか、

ハードロックっぽいプログレと言うか、

とにかくそんな感じ。

 

ただし、日本でのエンジェルの扱いは

「アメリカ版クイーン」という感じだった。

人気爆発のクイーンをフォローして

女子ウケ狙っているのがミエミエで、

メンバー全員、中性っぽいメイクで

天使の白いヒラヒラの衣裳を着ていた。

 

レコードジャケットやステージを彩る

トレードマークの仮面のような像は

天使をモチーフにしているのだと思うが、

これはどう見ても天使と言うより、

エヴァンゲリオンに出てくる「使徒」である。

 

結局、僕は「天使の美学」しか聴かなかったが、

このアルバムは結構いい出来でクオリティの高い良い曲・

好きな曲が揃っていた。

中でもやっぱりトップにぶちかまされる

この「タワー」が最高である。

 

メロディラインの美しく、陰影に富んだ繊細な楽曲。

それに対して力まかせ、若さまかせの荒っぽい演奏。

そしていかにもアイドル然としたルックスとステージアクション。

 

いかにも1970年代のロックっぽくて

今ではとても貴重な存在、そして面白い個性に思える。

 

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もくじ

●八王子・冨士森公園のスローバラード駐車場で、ポップミュージックをこよなく愛した僕らの時代の妄想力について考える

●アーティストたちの前に扉が開いていた

●21世紀のビートルズ伝説

●藤圭子と宇多田ヒカルの歌う力の遺伝子について ほか

 

●アクセス

https://www.amazon.co.jp/ から上記コードナンバー、

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週末の懐メロ㉔:悲しき鉄道員/ショッキング・ブルー

 

僕の脳内ジュークボックスの中で

すっかり廃盤になっていたショッキング・ブルー。

今年になってからたまたまYouTubeさんにご紹介いただいて

半世紀ぶりに聴いてみたら、まさしくショッキング。

すっかりイカれてしまった。

なんじゃ、この新鮮さ、このカッコよさは!

 

なにせまだ小学生だったので、

ラジオでなのか、テレビでなのか、

街中のどこかのお店でなのか、

どこで耳にしたのか、さっぱり憶えていない。

 

1969年「ヴィーナス」、1970年「悲しき鉄道員」と

大ヒットを連発したので、

けっこうよく聴いていたはずではある。

 

けれども中学生になってロック好きになってからは

「昔流行ったポップスグループ」として、

すでに過去の存在になっていた。

 

なんかその頃も耳にしたことがあったかも知れないけど、

古臭くて全然興味がわかなかった。

しかし、50年の歳月がそんなイメージをひっくり返した。

 

オランダのバンドで、

ヴォーカルのマリスカ・ヴェレスは

ジプシーの血をひく60年代型エキゾチック美人。

ーーということも初めて知った。

こんなちゃんとしたプロモビデオが残っているのも驚きだ。

 

世界的な大ヒットになったのは「ヴィーナス」の方だが、

僕はちょっとメランコリックなメロディーラインと

「No No No」という印象的なフレーズがリフレインされる

この曲の方がお気に入りだ。

 

「悲しき鉄道員」という邦題も

文学感、レトロ感が漂ってかえって新鮮で魅力的。

 

運転士なのか、機関士なのか、車掌なのか、駅員なのか、

はたまた開発者なのかーー

世界各地で特急列車が次々と開通し、

鉄道という産業・交通機関が花形だった時代には

「鉄道員」が一つの職業世界を表していた。

 

そういえば浅田次郎の小説を、

高倉健さん主演で映画化した「鉄道員(ぽっぽや)」

という20世紀の鎮魂歌のような名作もあった。

 

この歌のように、女よりも新列車の開発に夢中だった

レイルロードマンも大勢いたに違いない。

いまや絶滅寸前の「男のロマン」という言葉が通用した

最後の時代の名曲ともいえそうだ。

 

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ビートルズをきっかけにロックが劇的に進化し、ポップミュージックが世界を覆った時代.僕たちのイマジネーションは 音楽からどれだけの影響を受け、どんな変態を遂げたのか。心の財産となったあの時代の夢と歌を考察する、音楽エッセイ集。ブログより33編を厳選・リライト。

もくじ

●八王子・冨士森公園のスローバラード駐車場で、ポップミュージックをこよなく愛した僕らの時代の妄想力について考える

●アーティストたちの前に扉が開いていた

●21世紀のビートルズ伝説

●藤圭子と宇多田ヒカルの歌う力の遺伝子について ほか

 

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週末の懐メロ㉓:同志/イエス

 

あまりにシンプルで、あまりに日常的な

「イエス」という言葉を新たな世界観で捉え、

芸術の次元まで昇華させたのは、

オノ・ヨーコの神業だった。

 

ジョン・レノンの魂を鷲掴みにした

あの有名なエピソードを、

ビートルズの曲が大好きだという

このバンドのメンバーが知らなかったわけがない。

 

彼らがどの程度、意識したかは知らないが、

「イエス」というたった3文字のバンド名と、

ヴォーカルのジョン・アンダーソンが紡ぎ出す

哲学的な世界観の音楽は、

オノ=レノンが目指したものと相通じている。

 

プラスティック・オノバンドに参加していた

ドラマーのアラン・ホワイトが途中から加入したのも

何かの縁かもしれない。

 

プログレッシブロックは狂

気や闇の世界を描く楽曲が多いが、

イエスが描き上げるのは光の世界--

あくまで肯定的な「イエス・ワールド」だ。

この世の森羅万象を自分の一部として受け入れる姿勢。

 

1972年リリースのアルバム「危機(Close Edge)」を

初めて聴いたのは中学3年のときだったが、

以来、イエスの音楽は、つねに僕の脳内にある

“もう一つの地球”の浄化装置として稼働し続けている。

 

オーケストラと共演した2001年のライブ。

「危機」の中の一曲、「同志(And You AND I)は

彼らの音楽性が最も優美に結実した佳曲。

 

歌詞は文学的な言葉遣いだが、

曲名通り「あなたとわたし」のラブソングとして、

おおらかな音の波に身をゆだねて楽しむことができる。

 

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週末の懐メロ㉑:忘れじのグローリア/ミッシェル・ポルナレフ

 

1973年の日本の一般的中学生の間で“洋楽”と言えば、

基本はカーペンターズかミッシェル・ポルナレフだった。

 

出る曲、出る曲、次々とヒットチャートのトップを獲得。

ラジオでカーペンターズとポルナレフの曲を

聴かない日はなかった。(という印象)

 

音楽のハットリ先生というのがいて、

1学期に1回、好きなレコードを持ってきてかけていいという

時間があったが、

その時もだいたいカーペンターズとポルナレフの曲が

音楽室に溢れていた。

 

女・子どもの聴くものなんか——という、

僕のロック信仰者の先輩方は、

例によって「あれは歌謡曲に過ぎない」と、

ポルナレフのことをバカにしていた。

フランスというところも「スカしやがって」

と気に入らなかったのかもしれない。

 

かつての日本人には一種のフランス信仰があって、

最近、UQのコマーシャルで片岡愛之助が扮している

「シェ―!」のイヤミさんのように、

おフランス大好き!パリ最高!という人がいっぱいいた。

 

芸術も思想も文学もファッションも食べ物もおフランス。

ならば映画だって、音楽だって、というわけで、

今思うと、60年代から70年代は、

日本の音楽界ではフレンチポップが

一つのジャンルを作っており、

フランスの歌手や音楽家がとても愛されていたように思う。

 

中でもミッシェル・ポルナレフは

ロック世代にもアピールする、

独特の音楽世界を展開していた。

 

軽快なリズムのオシャレなロック調の

「シェリーに口づけ」、

ちょっとアンニュイな雰囲気漂うロマンチックなバラード

「愛の休日」、

そしてこのドラマチックな

「忘れじのグローリア」のヒット3連発は

当時の中学生(特に女子)を完全にノックアウトした。

 

「オー、グローリア、グローリア~」と壮麗に歌い上げ、

これでもかとばかりにエンディングをリフレインして

余韻に浸らせるところが、とっても70年代っぽい。

 

ところで、この映像では最後の最後に

素顔の写真が出てくる。

あのカーリーヘアとでっかいサングラスが

トレードマークだったので、

へー、ポルナレフってこんな顔してたんだ~と、

プチ新たな発見。

 

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週末の懐メロ⑳:なごり雪/イルカ

 

3月は「なごり雪」の季節。

新しい季語まで生んだこの歌は、

僕が10代の頃からもう時代遅れな世界だった。

 

ロマンチックに感じて当時のガールフレンドと

真似事をしたことはある。

 

だけど、新幹線や特急列車が続々と

日本中を走る時代になり、

こんな別れのシーンは、1980年ごろには

古びた映画みたいなストーリーになっていた。

 

かぐや姫の伊勢正三が作り、

アルバムにひっそりと収められていた曲を

イルカがカバーして1975年に大ヒットさせ、

ほとんど彼女の代名詞になった。

 

子どもなのか、大人なのか、

女なのか、男なのか、

いまいち判然としない彼女が歌うことで

「なごり雪」は一つのファンタジーに昇華した。

 

いまや懐メロ中の懐メロ。カラオケの鉄板。

いろんな歌手がカバーしているので、

若い世代にもよく知られた人気曲になっている。

70代以下の日本人なら、

知らない人はいないと思われるくらいだ。

 

昨年の大みそかにテレビ東京の歌番組

(冒頭の徳光和夫さんのアナウンスから涙が出る)

で放送された、たぶん最新のイルカの映像。

 

いつまでたっても変わらないその風貌に

ずっと不思議な思いを抱いてきたが、

久しぶりに見て、ちょっとショックを受けた。

 

彼女も齢を取った。

時がゆけば幼い君も

大人になると気づかないままだったんだ、僕は。

 

独特の伸びやかな声は失われつつあり、

もう高い音を出すのが苦しそうだ。

けれども、それが新しい味付けになっているようにも聴こえる。

 

長年彼女が歌い続け、たくさんの人が愛して育ててきた名曲は、

この先、「ふるさと」や「赤とんぼ」のような

日本人の心の故郷の歌になっていくのだと思う。

 

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週末の懐メロ⑲:マーチ・オブ・ザ・ブラッククイーン/クイーン

 

僕にとってクイーンの最高傑作アルバムは間違いなく

1973年リリースの「クイーンⅡ」である。

「マーチ・オブ・ザ・ブラッククイーン」は

その劇的な構成美のクライマックスを飾る

クイーン・オブ・クイーンズとでも呼びたくなる曲だ。

 

デビューアルバムは大半が前身のバンド・

スマイル時代にやっていた曲か、

それを焼き直したものだったので、

「Ⅱ」が本格的なクイーンのスタート、

そして、フレディ・マーキュリーの才能が

爆発した作品でもある。

 

このアルバムは光と闇の世界の対比を描いた

コンセプトアルバムになっており、

アナログ盤ではA面がホワイトサイド、

B面がブラックサイドになっている。

 

英国のダークファンタジーに素材を取ったブラックサイドでは、

悪鬼や妖精が跳梁跋扈する曲がメドレーでつながっている。

4曲目に登場する「マーチ・オブ・ザ・ブラッククイーン」は

その世界観を集約した最高の聞かせどころだ。

 

スリリングな曲展開とドラマチックな構成は、

当初、ツェッペリンのパクリだの、

イエスの物まねなどと、

イギリスの音楽評論家にけなされていたが、

日本のファン(評論家ではない)は、

この頃からすでにクイーンの音楽を高く評価していた。

 

おそらく今でも日本では、世界的なバンドになった後期よりも

この時代の“ブリティッシュ・クイーン”のほうが

人気が高いのでがないかと思う。

 

2018年の映画「ボヘミアン・ラプソディ」では開始早々、

フレディ・マーキュリーが

ブライアン・メイとロジャー・テイラーのバンド

「スマイル」に出逢い、

脱退したヴォーカリストに替わってメンバーになる。

 

その後、バンド名を「クイーン」にして

ライブハウスに登場するのだが、

そこで「炎のロックンロール」を勝手に歌詞を替えて

歌ってしまうシーンが最高に面白かった。

 

そのシーン、その歌詞は、映画のテーマでもある

彼の生き方・不安定なアイデンティティの問題にも

関わっている。

 

映画自体は人間の掘り下げが非常に甘く、

むかし音楽雑誌で読んだクイーンのエピソードを

つぎはぎしただけのストーリーで

まったくの期待外れだった。

 

ただ、マーキュリーが抱えていた問題は伝わった。

 

イギリスという国でマイノリティとして生きる

自分とはいったい何者なのか?

 

このブラッククイーンにはマーキュリー自身が投影されている。

彼は自分が何者なのかを知るために、

英国の闇の女王・ブラッククイーンとなって

自分の心の中にある闇の部分を

洗いざらい表出しようとしたのだ。

 

楽曲の美しさ・カッコよさもさることながら、

そうした視点から聴いても面白いのではないかと思う。

 

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週末の懐メロ⑱:トムズ・ダイナー/スザンヌ・ヴェガ

 

静寂の中に響くクールな歌声と呼吸。

きっとどこかで楽器が入ってくるのだろうと思っていたら、

耳に届くのは最後までそのまま彼女の声と呼吸だけだった。

 

描かれるのは、ニューヨークの雨の朝。

トムの店でコーヒーを飲んでいた主人公は、

むかしむかし――雨が降り出す前の、

真夜中のピクニックのことを思い出し、

コーヒーを飲み干して電車に乗るために立ち上がる。

 

2分ちょっとの短い物語が不意に終わったとき、

背中がぞくぞくっとしたのを思い出す。

 

スザンヌ・ヴェガ、1984年の傑作アルバム

「孤独(ひとり)」の冒頭を飾る鮮烈なアカペラ。

 

都会の片隅の、奇妙に居心地よい孤独。

思い思いに生きる人たちの

それぞれの呼吸が聞こえてくる。

 

世間はとやかく言うけど、

ひとりぼっちもそう悪いものじゃない。

 

いくつになっても孤独な姿でステージに立つヴェガの

優しいメッセージが、

この曲に込められているような気がする。

 

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アイドル、マンガ、オカルト、オリンピック、新聞配達、家族、そして戦争――

昭和には愛すべきもの、憎むべきもののすべてがあった。

2021年=令和3年=昭和96年になった今でも、僕たちは昭和の物語から離れられない。

海を埋めたて、山を切り開き、明日へ向かって進んだ果てに見つけたものは何だったのか?

みんなが愛して憎んで生きた時代を1960(昭和35)年生まれの著者が探検する面白まじめエッセイ集。ブログ「DAIHON屋のネタ帳」から30篇を厳選・リライト。

 

もくじ

・西城秀樹さんのお葬式:青春の同窓会

・ちびまる子ちゃんとサザエさんはいつまで続くのか?

・昭和オカルト大百科

・新聞少年絶滅?物語

・死者との対話:父の昭和物語

・社会全体の児童虐待と「晴れた空」

・東京ブラックホールⅡ:「老いた東京」は美しいか?

・さらばショーケン:カッコ悪いカッコよさを体現した1970年代のヒーロー

・さらば平成――みんなが昭和に帰りたがった30年

・永遠の昭和 明日のための1960年代・70年代   ほか

 

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週末の懐メロ⑰:ジュニアズ・ファーム/ ポール・マッカートニー&ウィングス

 

ジョン・レノンとポール・マッカートニー。

ビートルズ解散後、ソロ活動になった二人の天才。

1970年代当時、自分のバンド・ウィングスを率いて

次々とアルバムをリリースし、

ヒット曲を連発していたマッカートニーは

完全にレノンを凌駕していた――

そんな印象があった。

 

けれども年月が経ち、それぞれの曲を聴いてみると、

「イマジン」「ラブ」「マザー」「マインドゲームス」など、

レノンの遺した曲は数は少ないものの、

永遠の生命力を持ったかのように深く体の芯まで染みてきて、

何度でも繰り返し聴きたくなる。

 

対してマッカートニーの曲、特にバラード系は、

正直、どうも深いところまで響いて来ない。

もちろん美しくて口当たりが良く、親しみやすいのだが、

ビートルズ時代と比べて何かが足りないのだ。

 

ポップミュージック史上最強の作曲コンビ、

レノン・マッカートニーがどういうふうに

ソングライティングしていたのか、詳しいことはわからない。

 

現在ではごく初期の頃を除いて、

ほとんどが共作ではなく、

それぞれの単独曲ということが定説になっている。

けれども彼らの曲作りはそう単純ではなかったと思う。

 

どちらか一方が作った曲だとしても、

スタジオでレコーディングする段階でセッションするうち、

さまざまなインスピレーションがやってきて、

こうしよう、ああしようと二人の間で

丁々発止のやりとりがあって

あの奇跡としか思えないビートルズの楽曲群が

出来上がっていった。

 

マッカートニーの憎いほどツボを心得たメロディーメイキングも、

レノンが一言アドバイスしたり、

プラスアルファのアイディアを付加するなど、

仕上げのスパイスを一振りすることで、

あそこまでの神業になり得たのだろう。

 

ソロのマッカートニーに何が足りないのかと言えば、

レノンの持っていた「思想性」みたいなものだろうか。

音楽の天才職人は、音楽が好きすぎて、

音楽を中心にしてしか世界のことを

考えられなかったのかもしれない。

 

なんだかポール・マッカートニーをディスってしまったが、

彼が今に至るまで超一流のミュージシャンで

あり続けていることは

ほとんど驚異的であり、尊敬すべきことに間違いない。

まさに彼の人生は音楽のためにあった。

 

1974年発表の「ジュニアズ・ファーム」は

生き生きしたロックナンバーで、

ラジオで初めて聴いてしびれた僕は、次の日、

レコード屋にシングル盤を買いに走った。

 

今は亡き奥さんのリンダも参加していたウィングス最盛期の

脂がギンギンのった演奏は

本当に元気でカッコよくて楽しくて、

彼自身もめちゃくちゃエンジョイしているのが伝わってくる。

 

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だれの心のなかにも「子ども」がいる。

自分のなかにいる子どもにアクセスしてみれば、

何が本当に大切なのか、何が必要なのか、

幸せになるために何をすればいいのか、どう生きるのか。

自分にとっての正解がきっとわかる。

〈少年時代の思い出〉×〈子育て体験〉×〈内なる子どもの物語〉で

こね上げた 面白エッセイ集。ブログから40編を厳選・リライト。

もくじ

・大人のなかの子ども、子どもの中のおとな

・ちびちびリンゴとでかでかスイカ  

・天才クラゲ切り:海を駆けるクラゲ 

・子ども時間の深呼吸 

・親子の絆をはぐくむ立ちション教育 ほか

 

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週末の懐メロ⑯:少女/五輪真弓

 

子どもの頃、僕が暮らしていた小さな家には縁側があって、

柿と柘榴と無花果の木が生えていた。

猫の額ほどの小さな庭だったが、

子どもの目にはずいぶんと広く見えた。

 

縁側では祖父や祖母といっしょに

みかんやお菓子などを食べていた記憶がある。

真冬に白い雪が積もっていたこともあった。

 

中学生の頃、出逢ったこの歌は

そんな情景を思い出させてくれる。

 

そして、いつもこの歌の主人公の少女は

いくつなのだろう? と考えてきた。

 

歌詞の1番の少女は9歳じゃないかと思う。

2番の少女は19歳だろうか。

 

9歳の少女は夢が崩れるのを見ても

縁側に座っているしかなかった。

けれど、19歳の少女は色あせた夢を捨てて

垣根の向こうへ旅立つことができた。

 

だけども最近、もしかしかしたらどちらも

本当は90歳のばあちゃんなのかもしれない

と考えるようになった。

 

叶えた夢も、叶えられなかった夢も、

いずれは手放さなくてはならない。

老いた時、人はそのことを知る。

 

そして9歳でも、19歳でも、90歳でも、

どの女にもその内側に少女がいるのだ。

 

人間は経験しなくても、勉強しなくても

生まれながらに生きる知恵と勇気を携えている。

その人ならではの知見もたくさんある。

 

五輪真弓はそんな普遍的な人間存在への思いを

美しい旋律に乗せた。

男の中にも少女がいることを伝えた。

一生の伴侶となる歌に出逢えたのは、

とても幸福なことだと思う。

 

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週末の懐メロ⑮:キエフの大門/エマーソン・レイク&パーマー

 

1975年、ロック音楽雑誌「ミュージックライフ」で

グループ部門堂々第1位。

キーボードプレイヤー部門はキース・エマーソン、

ベーシストはグレッグ・レイク、

ドラマーはカール・パーマーと、

すべて第1位を総ナメ。

「ELP(エマーソン・レイク&パーマー)を聴かない奴は

若者じゃないぜ」

とまで言われるほどの圧倒的な人気を誇った伝説のバンドだ。

 

当時はロックミュージックの急成長時代。

「古い価値観・古い権威をぶっとばせ!」の心意気で、

クラシック音楽をロックにしちゃうというのが一時期流行した。

 

そこでELPはムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」を

めちゃくちゃアグレッシブなロックに変えて

ライブ録音でアルバムをリリース。

それが大ヒットとなり、

「クラシック音楽ロック」の代名詞となった。

もちろんで今も名盤として聴き継がれている。

 

また、男子だけでなく、女子にも人気があり、

少女マンガの青池保子氏の名作「イブの息子たち」に登場する

3人の主人公は、ELPをモデルにしている。

 

この1974年の「カリフォルニアジャム」というライブにおける

「展覧会の絵」のクライマックス「キエフの大門」の演奏では、

曲の中盤で、エマーソンがオルガンを弾き倒し=引き倒して

ギュワンギュワン唸らせた後、

今度はグランドピアノに飛び移って弾き出すと

それがみるみる宙に浮かび、

エマーソンはピアノとともに空中で

グルングルン何度も回転する。

 

そして最後はダイヤルとケーブルを全身にまとった

電子楽器の巨神兵・ムーグシンセサイザーに飛び掛かり、

ヒュイーンヒュイーンと泣かせて完全制圧する。

 

いま見ると大笑いの超絶パフォーマンスだが、

あの頃はこれがすごかった。カッコよかった。

エマーソンはまるで機械文明に打ち勝った

人類代表のヒーローのようだった。

みんなが興奮して泣いていた。

 

けれども僕らの胸を熱くした

エマーソンもレイクもこの世を去っていった。

「キエフの大門」の歌詞の末尾、

「Death is Life」が胸を刺す。

 

今ではもう多くの人から忘れられているかも知れないが、

ELPこそロック黄金時代の夜空を焦がした

巨大な打ち上げ花火だった。

This is ELP!

20世紀の夢の歴史を見よ。

 

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●八王子・冨士森公園のスローバラード駐車場で、ポップミュージックをこよなく愛した僕らの時代の妄想力について考える

●アーティストたちの前に扉が開いていた

●21世紀のビートルズ伝説

キング・クリムゾンの伝説と21世紀版「風に語りて」

●プログレッシヴ・ロックスターの死①:ジョン・ウエットンの訃報、そしてロンドンの寿司

●プログレッシヴ・ロックスターの死②:キース・エマーソンの尊厳死(1周忌に捧ぐ) 

●ヘイ・ジュード:ジョンとポールの別れの歌  ほか

 


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週末の懐メロ⑭:タイムマシンにおねがい/サディスティック・ミカバンド

 

イカしたロックはいつでもどこでも誰にでもモテる。

懐メロでありながら、50年の時間もひとっ飛び。

「ティラノサウルスお散歩アハハーン」が子どもにもウケて、

今や学童唱歌にもなっている(?)

サディスティック・ミカバンド1974年リリースの

「タイムマシンにおねがい」。

 

本当にタイムマシンのスイッチを回せば、

脳の中だけならいつどもどこでも

好きな時代に行ける時代になってしまった。

 

エンディングのリフレインをフェイドアウトじゃなく、

歌詞の途中でぶった切るのも70年代っぽくってラブリーだ。

 

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●ヘイ・ジュード:ジョンとポールの別れの歌

●阿久悠の作詞入門

●余命9ヵ月のピアニスト

●ローリング・ストーンズと新選組の相似点について

●キング・クリムゾンの伝説と21世紀版「風に語りて」

●プログレッシヴ・ロックスターの死①:ジョン・ウエットンの訃報、そしてロンドンの寿司

●プログレッシヴ・ロックスターの死②:キース・エマーソンの尊厳死(1周忌に捧ぐ) 

●勝手にビートルズ・ベストテン

●中学生時代の「エリナ・リグビー」の衝撃と和訳演奏

●純情ストーカー男と純心DV願望女の昭和歌謡

●人間は幸せに慣れると、幸せであることを忘れてしまう

●義弟のアナログレコードと帰ってきたカレン・カーペンター

●いちご畑で抱きしめて

●ダイヤモンドをつけたルーシーとの別れとジュリアンの心の修復作業

●抹消された20世紀パンクと想像力の中で生きる19世紀型スチームパンク

●悲しいことなんてぶっとばすロックンロールバンドのモンキービジネス

●オノ・ヨーコさん「NHKファミリー・ヒストリー」とYESの3文字の秘密

●オノ・ヨーコさん「NHKファミリー・ヒストリー」と「イマジン」の秘密

●いろいろな人が弾くから、心に響くロンドンのピアノ

●ストリートミュージックが商品になった街ロンドン

●アナログレコードとの再会

●見捨てられた恋人のようだったアナログレコードが、 なぜ絶滅の淵から回帰したのか?

●さすらいのレコード・コレクター:男のバカバカしくて痛快な生きザマ

●クリスマスにちょっとだけ世界と自分を変える

●森田童子の思い出:僕らの時代の子守唄

●自分をリライトする

●よみがえる死者・よみがえる歌:AIの音楽

●20世紀の愛と平和のロックなんて忘れてしまっていた

●だいじょうぶです、なすがままになさい

 

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「ポップミュージックをこよなく愛した 僕らの時代の妄想力」3日間無料キャンペーン

 

きょうは誕生日。

むかし、ジェスロ・タルというバンドが

「ロックンロールにゃトシだけど、死ぬにはちょいと若すぎる」

という歌を歌ったけど、

その心境がよくわかる年齢になりました。

 

この10年ほどの間に、自分の精神形成に多大な影響を与えてくれた

ミュージシャンたちが次々と旅立ちました。

そのたびに何か書かずにいられなくなって、

いろいろ書き散らした音楽テーマのエッセイが100本以上。

その中からいいのを選んで本にしてみました。

 

もくじを見て、面白そうだなと思うものがあれば、

読んでみてください。

本日、21日(木)17:00より24日(日)16:59まで

3日間無料キャンペーン実施中。

 

 

★ビートルズをきっかけにロックが劇的に進化し、ポップミュージックが世界を覆った時代.僕たちのイマジネーションは 音楽からどれだけの影響を受け、どんな変態を遂げたのか。心の財産となったあの時代の夢と歌を考察する、おりべまことの音楽エッセイ集。

ブログ「DAIHON屋のネタ帳」より33編を厳選・リライト。Amazon Kindleにて。

 

もくじ

●八王子・冨士森公園のスローバラード駐車場で、ポップミュージックをこよなく愛した僕らの時代の妄想力について考える

●アーティストたちの前に扉が開いていた

●21世紀のビートルズ伝説

●藤圭子と宇多田ヒカルの歌う力の遺伝子について

●ヘイ・ジュード:ジョンとポールの別れの歌

●阿久悠の作詞入門

●余命9ヵ月のピアニスト

●ローリング・ストーンズと新選組の相似点について

ング・クリムゾンの伝説と21世紀版「風に語りて」

●プログレッシヴ・ロックスターの死①:ジョン・ウエットンの訃報、そしてロンドンの寿司

●プログレッシヴ・ロックスターの死②:キース・エマーソンの尊厳死(1周忌に捧ぐ) 

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●中学生時代の「エリナ・リグビー」の衝撃と和訳演奏

●純情ストーカー男と純心DV願望女の昭和歌謡

●人間は幸せに慣れると、幸せであることを忘れてしまう

●義弟のアナログレコードと帰ってきたカレン・カーペンター

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●抹消された20世紀パンクと想像力の中で生きる19世紀型スチームパンク

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●オノ・ヨーコさん「NHKファミリー・ヒストリー」と「イマジン」の秘密

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「ザ・ビートルズ:Get Back」を観て死ね

 

昨年末に映画「ザ・ビートルズ:Get Back」の

先行特別映像が公開されていた。

 

1970年制作の映画「レット・イット・ビー」は、

「ゲットバック・セッション」という約3日間にわたる

末期ビートルズのセッション風景を編集した

ドキュメンタリーだった。

 

今年8月に公開される「ザ・ビートルズ:Get Back」は

それと同じ映像素材――

「レット・イット・ビー」で使われなかった

約56時間に及ぶ未公開映像を編集し、

新たな映画として構築したものだ。

 

予定ではビートルズの終焉から50周年となる昨年中に

完成・公開されるはずだったが、

コロナ禍によって延期を余儀なくされたという。

 

先行特別映像は、ピーター・ジャクソン監督の挨拶の後、

約5分にわたってモンタージュ映像が展開するが、

これを見て驚愕した。

 

本当にこれが50年以上前の、

あの「レット・イット・ビー」と

同時期に撮影した映像なのか?

 

この4人は一昨年のクイーンの映画みたいな

若いそっくりさんじゃないのか?

 

何かフェイクの極みみたいな、

すごい加工技術が施されているのではないか?

 

そんな疑念が次々と湧いた。

が、そんなことはあり得ない。

これは本物だ。1970年のリアル・ビートルズだ。

 

この頃、解散寸前のビートルズは仲間割れが顕著となり、

4人の心はもうバラバラで、

それぞれのソロ活動に向かっていた。

ビートルズは、ビートルズを葬り去ろうとしていた。

 

ーーというのがこれまでの定説だった。

それを表現した映画「レット・イット・ビー」は

葬送曲のごとく、暗く物憂いトーンで作られていた。

 

ところが、この未公開映像の中の4人は

そうした従来のイメージとあまりにかけ離れている。

とても半分崩壊したバンドとは思えない、

元気で生き生きとした輝きを放っている。

 

そして端々に垣間見える、

彼らの音楽つくりへの意欲と創造性の炸裂。

このテンションの高さはなんだ?

すでにこの世にいないレノンやハリスンの息吹も

間近に感じられる。

 

若い世代にとっては、現代に続くロック、

ポップミュージックの礎を築いた伝説のバンドの

最後の姿が見られる絶好のチャンス。

 

そして半世紀を超えてビートルズを愛し続けたファン、

特に70歳を超えた、リアルタイムでビートルズを聴いた

オールドファンは、もう一度、元気にGet Backするためにも

これを観ずして死んではいけない。

8月27日(金)世界同時公開とのこと。

 

1月21日(木)17:00~24日(日)16:59

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●ヘイ・ジュード:ジョンとポールの別れの歌  ほか

 


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週末の懐メロ⑬:デジャ・メイク・ハー/レッド・ツェッペリン

 

おそらくいちばん女子ウケするツェッペリン・ナンバー。

有名どころではシェリル・クロウが1990年代にカヴァ―したり、

「デジャ・メイク・ハー」という曲名そのままの

日本のアイドルグループもいる。

 

ビートルズ以外、ロックなんてほとんど興味のない、

もちろんレッド・ツェッペリンなんて全然聴かない

うちのカミさんもこの曲だけは好きだという。

 

レゲエとトラッドフォークのエッセンスをブレンドした

ポップでキュート、楽しくてご機嫌なリズム。

それでいながら思いっきり「ZEP節」になっている。

僕の「マイ・ツェッペリン・ベスト」の中でも、

つねに5本の指に入れている。

 

レッド・ツェッペリンといえば、

1970代のロックバンドの最高峰に位置するとともに

「ヘヴィメタの元祖」というのが世間一般のイメージ。

 

超名曲「天国への階段」は別格として、

いまだファンが挙げる彼らの代表曲は、

「胸いっぱいの愛を」や「移民の歌」などの

ヘヴィメタナンバーばかりだ。

僕はこれらの曲が昔からどうも好きになれない。

どうしてツェッペリン=ヘヴィメタなのか?

 

ヴォーカルのターザンみたいな雄叫びや、

宇宙空間で唸るようなギターとドラムなど、

演奏表現としては面白いと思うけど、

楽曲として美しくも楽しくもないし、心に響かない。

 

レッド・ツェッペリンの本当の魅力は、

特に3枚目以降のアルバムで聴ける、

ワールドミュージックを取り込んだ広大な音楽宇宙だ。

そこには世界各地の音楽に宿る精霊みたいなものが感じられる。

 

それを現代的なロックのビートに乗せて、

独自のZEP節にしてしまう作曲力と演奏力が素晴らしい。

圧倒的なオリジナリティ。

まさしくキング・オブ・ロックバンドの所業。

 

レゲエがポップミュージックの世界でまだ認識されておらず、

当然、ジャンルとしても確立していなかった1973年に

レゲエを取り入れてこんな斬新な曲を作れたのは、

このバンドだけだ。

今では多くのレゲエアーティストがこの曲をカヴァーしている。

 

ユニークなタイトルは、イギリスのジョークと

レゲエ発祥の国「ジャマイカ」を掛け合わせたもの。

実際、彼らは“ジョーク”としてこの曲をアルバムに入れ、

その後、二度と演奏しなかった。

 

この映像は曲に合わせて、

他の曲をやっているライブシーンを編集したものだ。

 

半世紀たっても絶大な人気と影響力を持つ

キング・オブ・ロックの魅力を

ひとりでも多くの人に味わってもらいたい。

「デジャ・メイク・ハー」は、その入口として最高だと思う。

 

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週末の懐メロ⑫:クレア/フェアーグランド・アトラクション

 

1988年にデビューして、たった1枚のアルバム

「The First Kiss of a Million Kisses(邦題:ファースト・キッス)を遺して消え去ったスコットランド出身のバンド、

フェアーグランド・アトラクション。

 

彼らの音楽は1930~50年代のスウィングジャズや

古いアメリカやイギリスのフォークソングのエッセンスを

たっぷり取り入れた、当時からすでに懐メロ。

それでありながら超斬新で、たまらない切れ味があって

僕はしびれまくっていた。

 

「パーフェクト」という曲が大ヒットしたが、

いちばん好きだったのは、この「クレア」。

歌い手のエディ・リーダーと、クラリネットおじさんとの

丁々発止のやり取りが楽しくてイカしてる。

 

ちなみに「フェアーグランド・アトラクション」とは

移動遊園地のこと。

 

僕が過ごした1980年代のロンドンでは、

中心にある繁華街のレスタースクエア

(東京で言えば新宿みたいなところ)に、

ある夜、ピカピカ光を放つ遊園地が忽然と現れ、

子どもよりも、むしろ大人が嬌声を上げて

アトラクションを楽しんでいた。

 

安っぽくロマンチックで、懐かしいぬくもりがあって、

ちょっと退廃的な香りも混じる

大人のメルヘン、ファンタジー。

フェアーグランド・アトラクションの音楽には

そんなテイストがある。

 

たった1枚のアルバムは永遠の遊園地となって

21世紀もピカピカ光り続けている。

 

1月11日(月) 発売決定

AmazonKindle電子書籍・おりべまことエッセイ集

「ポップミュージックをこよなく愛した

僕らの時代の妄想力」

 

ビートルズをきっかけにロックが劇的に進化し、ポップミュージックが世界を覆った時代.

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週末の懐メロ⑪:スキャットマンズワールド/スキャットマン・ジョン

 

ジャズピアニストだったジョン・ポール・ラーキンは、

スキャットをヒップホップにリズムに乗せるという

アイデアを実行した。

1995年。52歳のときだ。

彼は音楽の才能はあったが、ずっと吃音で悩み続けていた。

 

彼のスキャットはハンディキャップである吃音症を

逆に活かした独特の唱法だ。

そのユニークな「スキャット・ヒップホップ」は

世界中で大ブレイクし、ジョン・ポール・ラーキンは、

「スキャットマン」「スキャットおじさん」として

一躍大スターとなった。

日本でも90年代後半、数々のコマーシャルに出ていたので、

憶えている人も多いだろう。

 

コミックミュージシャンと思ってる人も多いだろうが、

彼のデビューアルバムは、

未来を生きる子どもたちへの温かい愛にあふれている。

 

オープニングナンバー

「スキャットマンズワールド」で彼はこう語る。

 

ぼくはスキャットランドから呼びかけている

もし君が自由になりたいなら

ぼくの声を聴くと良い

君の中にあるファンタジーを学べるようになるよ

 

みんながひどくショッキングなことばかり話すから

きみは心の声から耳を閉ざし続けている

 

でも兄弟たち、聞いてほしい

歩き続けるんだ

君もぼくも姉妹たちも

隠すものなんて何もないんだ

 

このアルバムでスキャットマン・ジョンは、

社会における理想郷 「スキャットランド」について歌っている。 

 

「遠くを見る必要はない。

 それは君の心の奥深く 

一番大きな夢と一番暖かな願いの間に見つかることだろう」

というのがジャケット裏に書かれたメッセージだ。

 

すい星のごとく現れて人気を博したスキャットマンは、

わずか数年活躍したのち、

ガンのため、21世紀を迎える前に、

これまたすい星のごとく、この世を去った。

 

2021年になった今、

スキャットマン・ジョンのメッセージが

ふたたび僕たちの心に届く。

 

 

おりべまこと年越し無料キャンペーン

第2クールは2日夕方から4日夕方まで。

面白まじめなネタ帳エッセイ集4タイトル。

お正月後半のおつまみに!

 

1月2日(土)17:00~1月4日(月)16:59

●どうして僕はロボットじゃないんだろう?

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社気を劇的に変えるAI・ロボット・インターネット・DXにまつわる考察を面白まじめな読み物に。ブログから33編を収録。

 

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イマジネーションを掻き立てる、地球上の137万種類の動物たちについてのエピソードやあれこれ考えたこと。ブログから36編を収録。

 

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自分のなかにいる子どもにアクセスしてみれば、自分にとっての正解がわかる。〈少年時代の思い出〉×〈子育て体験〉×〈内なる子どもの物語〉。ブログから40編を収録。

 

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※3日(日)17:00~4日(月)16:59のみ

「食」こそ文化のみなもと。その大鍋には経済も産業も、科学も宗教も、日々の生活も深遠な思想・哲学も、すべてがスープのように溶け込んでいる。ブログから33編を収録。

  

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週末の懐メロ⑩:翼をください/山本潤子(赤い鳥)

 

赤い鳥というフォークロックバンドが歌う

「翼をください」を聴いたのは、

中学生どころか、まだ小学生だったかも知れない。

 

その時はまさかこれほどの名曲として成長し、

世代を超えて歌い継がれるとは思ってもみなかった。

 

息子の合唱コンクールでも歌ったし、

卒業式で歌った人もいるだろう。

音楽の学校の教科書にも載っているらしい。

 

エヴァンゲリオンの映画では、

神話的クライマックスの映像とともに

ドラマチックな聖歌のように響いた。

 

フォークでもあり、ロックでもある。

ジャズにもなるし、クラシックにもなる。

変幻自在でありながら、どんなアレンジをしても、

誰が歌っても、楽曲の良さが損なわれない。

 

改めて原曲を聴いてみた。

いろんなアレンジを聴いたので、

もともとは優しいバラードだったはずと、

勝手に思い込んでいた。

 

ところが、意外とアグレッシブでアップテンポ。

途中で拍子が変わるなど、

1970年代初頭――50年前!の日本のポップス としては、

かなり斬新な楽曲だったと思う。

赤い鳥はプログレバンドだったのだ。

 

そして、今では聴き取りづらくなってしまったけど、

この歌詞とメロデイの奥には、

既存のシステムや価値観に抗うようなメッセージも

含まれていたはずだ。

 

最近は大合唱やオーケストラで神々しく

盛り上げるバージョンを聴く機会が多かったが、

このバージョンは、アトリエのようなアットホームな場所で

赤い鳥オリジナルメンバーの山本潤子さんが

ギター、ベース、ピアノのシンプルな編成で

しっとりと、けれども明るく突き抜けるように歌い上げる。

 

半世紀の年月を経た歌声と旋律は、

原曲よりもさらに原点に回帰したかのような深い響きがあり、

この名曲の神髄に触れたような気持ちになる。

 

今年の年越しはこの曲で決まりだなぁ。

 

 

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週末の懐メロ⑨:ハッピークリスマス」/ジョン・レノン&ヨーコ・オノ

 

1980年代に入ってから、いろんなミュージシャンが

クリスマスソングを作るようになったが、

70年代にはまだまだ少なかったような気がする。

 

中学生の時に聴いてから、

10年くらいの間、「戦争は終わった」と歌うこの曲は

子どもの時から聴いているクリスマスの歌や

戦前に作られたクラシックソングとは一線を画す

「僕らの時代のクリスマスソング」だった。

 

ジョン・レノン没後40年。

あの頃より少しは世界は良くなったのだろうか?

 

と、他人事のように呟くのでなく、

僕たちひとりひとりの心がけ次第なのだろう。

 

 

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週末の懐メロ⑧:ボール・アンド・チェーン/ジャニス・ジョプリン

 

中学生の一時期、ジャニス・ジョプリンは憧れの女性だった。

 

「サマータイム」も「ムーヴオーバー」も大好きだが、

1曲だけ選ぶとしたら、やっぱり世界中に衝撃を与え、

遥か未来の世代にまでその名を知らしめた

1967年、モンタレーポップフェスティバルでの

「ボール・アンド・チェーン」のパフォーマンス。

いま聴いても圧巻の一言だ。

 

インターネットもホームビデオもない時代、

僕はこの映像をNHKの「ヤングミュージックショー」で観た。

その時、14の小僧にとって、

ジョプリンは世界で最高にかっこいい女だった。

そして僕は彼女がすごく美人で可愛いと思っていた。

 

ジョプリンの歌に出逢ったのは、ラジオの深夜放送だ。

いまや伝説の「糸居五郎のオールナイトニッポン」。

糸居五郎さんのディスクジョッキーを聴いたのは、

それが最初で最後だったが、強烈に記憶に残っている。

 

いま思えば、糸居五郎さんは、僕の出逢った

まともに英語をしゃべる初めての日本人だった。

そこでかかったのが、

ジョプリンの「サマータイム」だったのだ。

 

DJの紹介に続いてトランペットのメロウなイントロが流れ、

最初の1フレーズが耳に入ったときの衝撃は忘れられない。

ジャニス・ジョプリン、「サマータイム」。

しかし僕が彼女のことを知ったとき、

彼女はもうこの世の人ではなかった。

 

1970年、クスリのやりすぎで、

27歳の若さでジョプリンは死んでしまった。

現代の感覚で言えば、不道徳で愚かな死にざまだ。

 

けれども「30以上は信じるな」と若い連中が叫び、

カウンターカルチャーをかまして熱くなっていた時代のこと。

ロックに魂を捧げたかのような歌いっぷりを見せた、

その生きざま・死にざまは、一つの理想であり、

彼女の存在は神格化され、神聖な物語のように語り継がれた。

 

それは半世紀が過ぎた今でも生き続けている。

ジョプリンの人気の高さは、

僕らが若いころからほとんど変わっていないのではないか。

今の若い連中の間でも伝説化されているらしい。

 

彼女を超える女性ロックシンガーは、もう現れないだろう。

テクニック的にうまい歌手はいくらでもいるが、

それを聴くオーディエンス、リスナーの

耳とマインドがもうすっかり変わってしまった。

「音楽で世界を変えられる」と信じていた若者が大勢いたから、

ジョプリンはあれだけの歌唱ができた。

類まれな音楽の才能と、

それを求めた時代精神との幸福な結婚がそこにあった。

 

僕は彼女の歌はもちろん好きで、

初めての出逢いから折に触れて聴き続けているが、

それ以上に顔が好きである。

 

歌っているとき、若い女から年季の入ったおばさん、

ばあさんまで

人生をタイムトラベルするかのような表情の変化。

 

それと対照的に、音楽雑誌のグラビア写真や、

レコードに付録としてついていたフォットブックの中では、

当時のヒッピー御用達のトンボメガネをかけて、

きょとんとした顔や、ちょっとはにかんだ表情で映っているのが、

とても印象的でかわいいなと思った。

 

1960年代の思想やら文化やらのベールに覆われて、

自由や社会運動や女性解放の象徴みたいに

扱われることもあったが、

実際の彼女は、そうした思想や政治的こととは無関係の、

ただ純粋に歌うのが大好きな女の子だったのではないかと思う。

 

YouTubeにアップされた、このモンタレーポップの

「ボール・アンド・チェーン」の最後を見て、

その思いを強くした。

 

歌い終わり、熱狂的な観客の拍手を浴びて

小躍りしながら舞台袖に引っ込んでいく彼女の後姿は、

まるで6歳児のようだ。

「キャーッ、じょうずに歌えちゃった~!」

なんてセリフが聞こえてきそうな、

かわいくてユーモラスなジャニス・ジョプリンだ。

 

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週末の懐メロ⑦:青春の影/財津和夫(チューリップ)

 

1974年リリースのチューリップ版

「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」。

リーダーだった財津さんのテーマ曲にもなっている。

 

何かとビートルズのパクリみたいに言われることが

多かったけど、

ビートルズへのリスペクトから愛される歌をつくり、

今に至るまで、人生の大半にわたって歌い継いできたことは

やっぱり素晴らしいことだと思う。

 

昔のチューリップの演奏もいいけど、この曲に関しては

白髪になり、老眼鏡(だよね、きっと)をかけて歌う

財津さんの姿がじつに味わい深く、歌詞の説得力も増している。

間奏のギターソロが妙に70年代っぽいところもご愛嬌。

しみじみする冬。熟成の境地。

 

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●あらすじ

カナコは10歳。小学4年生。

一人娘の子育てに悩まされながら、生活を支えるのに忙しい母親のマヨと二人暮らしをしている。

しかしもう一人、というか一匹、いっしょに暮らす同居者がいる。その名は「イタチ」。ペットのフェレットだ。学校でも家でも口をきかないカナコにとって、イタチは唯一、心を開いて話ができる親友であり家族だ。

 

国語の授業で、その大好きなイタチのことを作文に書いたら、

担任のあかり先生が目にとめ、

「すごくいいので、コンクールに出しましょう」と言ってきた。

そんなつもりじゃなかったのにと、内気なカナコは困惑し、

先生に激しく抵抗する。

 

しかし、母と先生と関わる中で、カナコはだんだん変わり始める。それをイタチは察知していた。彼女が3歳の時からずっと一緒に暮らしてきたイタチは、地球に生まれて間もないころから、自分がカナコに必要な存在だとわかっていた。

 

彼は天国にいた時の記憶を持っている。

天使だったイタチは、もともと人間として地球に生まれることを望んでいたのだが、生き物としての命を与え、地球に送る〈地球いきもの派遣センター〉の手続き上のミスによって

人間になるのを諦めた。

その代わりにフェレットとして

ワンサイクルの命をまっとうすることになったのだ。

 

子どもからちょっとおとなに変わっていくカナコと、

そのそばで天使の目を持ったまま生きるフェレットのイタチ。

それぞれの視点から代わる代わる、日常生活とその中で起こる事件の数々、そして、ふたりの別れまでのストーリーを描く。

 

なお、表紙イラストは

漫画家・イラストレーターの麻乃真純さんが制作。

「パートナー 進め!ソラ」「ほっと・ペットクリニック」「あしたはハッピードッグ」「母のバッカス」「いぬの先生」など、動物ものの作品を多数発表している。

 


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週末の懐メロ⑥:スワロウテイル~あいのうた~/¥タウンバンド

 

1996年は息子が生まれた年だった。

それなのにこの歌は、

中学生か高校生の時に出逢ったような錯覚にとらわれる。

それくらいの威力を持って肌に食い込んで、

消えない痣をつくった。

 

今でも耳にすると、架空の街「¥TOWN(エンタウン)」の

荒廃した風景と人々の群像が浮かび上がり、胸が疼き出す。

そして繰り返し聴かずにいられなくなる。

 

¥TOWN(エンタウン)は

バブル経済崩壊後の日本の心象風景だった。

岩井俊二監督はそれを終戦後の焼け野原・闇市のような

イメージを重ね合わせて描き出した。

 

経済戦争のThe DAY After。

僕たちはいまだその後遺症に悩んでいる。

 

その映画「スワロウテイル」を

僕は仕事帰りに渋谷の映画館で観た。

子どもが生まれたばかりだったので、

早く家に帰ってカミさんを手伝わんと・・・と、

ちょっと罪悪感を抱きながら。

 

およそ四半世紀が過ぎたいま、

この歌が頭の中で鮮明によみがえってきたのは、

コロナ禍に巻き込まれて世界が変わっていくのを

目の当たりにしているからだろうか。

 

名曲はそれまでの価値観が崩壊した荒野から生まれる。

 

 

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11月30日(月)、Amazon Kindleより発売予定

 

子どもからちょっとおとなに変わっていく小学4年生のカナコ。そして、天使の目を持ったまま生きるフェレット「イタチ」。

飼い主とペット、それぞれの視点から代わる代わる、日常生活とその中で起こる事件の数々、そして別れを描く長編小説。

「ほっとペット・クリニック」「いぬの先生」などの作品でおなじみ、日本の動物マンガの第一人者、麻乃真純さんが表紙イラストを制作。お楽しみに。

 


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週末の懐メロ⑤:ソー・ロンリー/ザ・ポリス

 

ロックってとにかくカッコいい!

いつ聴いてもそう思わせてくれるバンドがポリス。

最初は70年代後半に起こったパンクムーブメントに乗って

現れた(ように見えた)が、

その曲作りと演奏力は

他のパンクバンドをはるかにしのぐ、

まったく別次元のものだった。

 

ロックにレゲエのエッセンスを持ち込んで

自分たちの音楽を創り上げることに成功したのはポリスだけだ。

 

ギター、ベース、ドラムの最小ユニットから繰り出される

「白いレゲエ」は圧倒的な威力で世界を席巻した。

その代表曲「So Lonely」の1979年の圧巻パフォーマンス。

 

ビッグになってからの貫禄ある演奏もいいが、

この曲に限っては、デビューしたての頃の

“若気の至り”が炸裂する、

ノリノリ、やっちゃえ的な演奏が好きだ。

いやー、やっぱ若いって素晴らしい!

 

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週末の懐メロ:嘆きの天使/ケイト・ブッシュ

ケイト・ブッシュとほぼ同世代であり、

彼女の歌をリアルタイムで聴き続けられてきたことは、

自分の幸運の一つのように感じる。

 

その出逢いが、デビューアルバムのトップナンバー

「嘆きの天使(Mooving)」だった。

クジラの歌声と神秘的な海鳴りの音から始まるこの曲は、

のちの彼女のとてつもなく

綿密で深遠な音楽世界のイントロダクションでもあった。

 

彼女に“Mooving”を教えた

英国のダンサー、リンゼイ・ケンプのことを歌った歌。

ケイト・ブッシュの歌世界は、

ケンプのイマジネーションあふれる創造的舞台ともリンクしていた。

 

それにしてもよくこんな映像が残っていた。

1978年の第7回東京音楽祭。

彼女は銀賞を受賞した。

 

東京音楽祭がどんな音楽祭だったのか調べてみたら、

TBS系の団体が1972~92年まで20年間開催された国際音楽祭だったらしい。

どの程度、権威があったのかわからないが、

受賞者のリストを見ると、ナタリー・コール、ライオネル・リッチー、

オリビア・ニュートン・ジョンなどの名も見られるので、

当時はそれなりのものだったのだろう。

 

けど、僕の中ではケイト・ブッシュがこの時、

ただ一度きり日本に来た、ということで記憶にとどまっている。

ついでに言うと、この時に撮影したらしい

「ローリン・ザ・ボール」のセイコーのコマーシャルも憶えている。

 

他のライブ映像やミュージックビデオではお目にかからない

いかにもアイドルと言った感じのピンクのフリフリを着ているのも

日本人の嗜好に合わせてのことだろうか?

 

それにしても曲名が解せない。

どうして「Mooving」が「嘆きの天使」になるのか?

これは1930年のマリーネ・ディートリッヒ主演の映画と同じタイトルだが、

ケイト・ブッシュとディートリッヒはどうも結びつかない。

 

ただ、この曲はかの「嵐が丘(Wuthring Heights)」と

カップリングしてシングル化された。

「嵐が丘/嘆きの天使」。

アイドルの歌でありながら、文学的な香り漂う邦題マジックは、

日本でこの天才少女を売り出すのに一役買ったのかもしれない。

 

その天才ぶりはこの後40年以上ずっと続いている。

始まりはアイドルだったが、音楽家・表現者として超一流だった。

ミステリアスでエキセントリックでプログレッシブ。

かと思えば、叙情的でユーモラスでドラマチック。

1曲1曲に音楽の神が宿っているかのような充実度・完成度。

生きててよかったと思わせる音楽。

ケイト・ブッシュを聴き続けてきて本当に良かったと思う。

 

 

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週末の懐メロ:ドント・レット・ミー・ダウン/ザ・ビートルズ

 

「浄心ハイツにビートルズが来るんだって。行こか?」

と友だちに誘われたのは、中2か中3、1973年か74年のことだ。

 

浄心ハイツとは、名古屋市西区の浄心町にあった映画館である。

もちろん、そんなところにビートルズが来るわきゃない。

ビートルズの映画が来たのである。

 

45年も昔のことなので栄や名駅などの繁華街に出なくても、

映画が娯楽の王様だった時代の名残で、

うちの近くにもけっこう映画館がたくさんあった。

 

小学生の時は、浄心ハイツで、それぞれの休みになるたびに

「東宝チャンピオンまつり」

(ゴジラなどの怪獣映画にアニメなどを付け足した5~6本立て)を見ていた。

 

ちなみに黒川日劇で「ガメラ」や「大魔神」や「妖怪百物語」などの大映映画を、

志賀東映で「東映まんがまつり」を見ていた。

どこも現代の感覚では信じられないほどボロくて汚なかったけど、

あったかくて楽しいところだった。

 

その浄心ハイツでビートルズ映画の3本立て

「ビートルズがやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!」

「ヘルプ!」「レット・イット・ビー」をやったのだ。

 

時はビートルズが解散して3~4年経った頃だ。

僕はハードロックやプログレッシブロックに

のめり込んでいたので、

当時、ビートルズにはさして関心がなかった。

先輩たちにロックスピリット(?)を叩き込まれていたせいもあって、

「ビートルズなんて歌謡曲とおんなじ」とまで思っていた。

 

僕だけではなくて、1970年代は次々と新しい音楽が生まれていた時代だったので、

「ビートルズなんてもう時代遅れ」という風潮もあった。

 

けれども当時の中学生にとってビートルズ映画を見るというのは、

やはり一つのビッグイベントだった。

 

なんといってもインターネットはおろか、

ホームビデオさえない時代なので、

ミュージシャンの映像を見るということは、

めちゃくちゃ貴重で、しかもカッコいいことだったのだ。

 

というわけで友だち3人と見た3本立て。

他の2本はアイドル時代のもので、

「なんじゃ、このガキっぽい映画は?」という感想だったが、

ドキュメンタリーの「レット・イット・ビー」は一味も二味も違った。

なんというか、大人の音楽家の世界と言う感じがしてカッコよかった。

 

リアルタイムでビートルズを聴いていたファンは、

スタジオに当然のように4人といるオノ・ヨーコを

毛嫌いしていたようだが、

僕はそれまで全然知らなかったので、

「この女の人は一体何なんだろう?」と不思議でしょうがなかった。

 

なので映画「レット・イット・ビー」には4人と同時に

長い黒髪のオノ・ヨーコの神秘的なイメージが鮮烈に貼りついている。

 

この頃のビートルズはすでに崩壊状態で、

メンバー間の感情もあまりよくなったそうだ。

 

しかし、セッション音源を聴くと、

いざ楽器を持って音を奏でだすと彼らの心が一つになり、

まるでモスラが糸を吐き出すように音楽が紡ぎ出されてくる。

その様はさすがとしか言いようがない。

 

割とだらだらとスタジオ内のドキュメントが続いた後のクライマックスは、

アップルレコードビル屋上でのゲリラ演奏である。

この通称「ルーフトップライブ」は彼らのラストライブとなった。

 

その演奏曲の中でも一番好きだったのが、

「ドント・レット・ミー・ダウン」だ。

 

ジョン・レノンの書いた楽曲の中で5本の指に入る。

ノリもメロディも演奏スタイルもすごくユニークで、

いまだにこれに類する曲を聴いたことがない。

最高にカッコいい、まさしくレノン独自の世界。

 

ジョン・レノンは短い人生の間に、

ビートルズのメンバーやロックミュージシャンとしてだけでなく、

思想家、哲学者、社会運動家、家庭人、父親など、

実にさまざまな人間的な顔を見せた人だ。

 

それゆえ、伝説になっているのだが、

僕の中ではこのルーフトップライブで

「ドント・レット・ミー・ダウン」を歌う姿が

レノンの基本イメージになっている。

 

そういえば今年はレノンの没後40年だ。

 

 

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週末の懐メロ:愛にさよならを/カーペンターズ

 

カーペンターズを聴くと、中学生の頃、

好きだった女の子を思い出す。

彼女とは結構イイ線いってて、

よく話をしていたのだが、

音楽の話になって

「わたし、カーペンターズが好きなんだけど、

フクシマ君はどう?」

と言われたので、

「おれはロックだから、カーペンターズなんて聴かないよ。

レッド・ツェッペリンとか、エマーソン・レイク・アンド・パーマーとか・・・」

「何それ?」

「うわー、わかってねえなぁ」とかなんとか。

 

なんだかそれから気まずくなって話をしなくなった。

後悔することしきりだった。

くだらん自己主張なんぞせずに

「うん、カーペンターズも好きだけど、

よく聴くのはロックでさ、レッドツェッペリンとか知らないかな・・・」

とかなんとか言っていれば展開は違っていた。

今でいう「中2病」にかかっていたんだろう。

 

まさしく中2の1973~4年、カーペンターズは人気絶頂だった。

僕たちの世代の洋楽入門編という感じだった。

ラジオ音楽番組でも、洋楽ヒットチャートの1位は

いつもカーペンターズの曲が占めていた。

 

しかしその一方で、ロックを聴く男子たちは

「英語の歌謡曲」「女・子どもの聴くもの」

と言ってバカにしていた。

 

 

事情は中学生の世界だけでなく、

アメリカの音楽評論家なども

「甘ったるいお菓子のようなポップス」と酷評していた。

 

リチャードとカレンの、

大人に褒められる優等生的な若者ぶりも

不良っぽいロックンローラーが持て囃される時代では

嫌われる要因だったのだろう。

 

「いい子ちゃんしやがって」

みたいな感じで。

 

そんな中、当時読んでいた日本の音楽雑誌の中で

とある評論家(日本人)が

「〈イエスタディ・ワンス・モア〉1曲を書いただけでも、

もっとリチャード・カーペンターが評価されるべき」

と書いているのを見て、ちょっと心を動かされた。

(今思えば馬鹿げているが)

じつは僕は隠れカーペンターズファンだったのだ。

 

あれから50年近くの歳月がたち、

かの評論家氏が正しかったことを改めて実感せずにはいられない。

カーペンターズの音楽は素晴らしい。

 

僕だけでなく、当時のロック中学生も

じつはカーペンターズの音楽の質の高さを認めていたのだ。

恥ずかしくて言えなかったけど。(ほんとに馬鹿げている)

 

しかし、あれだけのヒットメーカーでありながら、

リチャードもカレンも世間の悪口を気にしていたようで、

なんとかロックのテイストを盛り込んだ

オリジナル曲を作ろうとしていた。

 

そして生まれたのが、

間奏とエンディングの派手なギターソロが異彩を放つ

「愛にさよならを(Goodbye to Love)」。

 

当人のギタリスト氏は、

「カーペンターズの曲でこんなにやっちゃっていいの?」と

内心ビビってたそうだが、

リチャードは「いいんだ、もっとやってくれ」と鼓舞したらしい。

 

「わたしはひとりで生きていく」と

凛として歌い上げるカレンの歌唱と

ドラマチックなエンディングのコーラス、

そして、めっちゃカッコいいギターソロで、

名曲揃いのカーペンターズのレパートリーの中でも

燦然と輝く1曲になった。

その輝きはもちろん半世紀を経た今でもまったく色あせない。

 

1974年の日本公演。

絶頂期のカーペンターズは、

2週間ほどの間に全国銃弾ツアーを行った。

 

そして、ここから10年も経たないうちに

カレン・カーペンターは33歳の若さでこの世を去った。

彼女の死因「拒食症」という病気があることを知ったのも、

その時が初めてだった。

 

中学の同級生だった彼女は

まだ元気でいて、カーペンターズを聴いているのかなぁ。

 

 

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偉大なるアメリカの物語を体現するロックスターは、大統領選に勝つのか、負けるのか?

 

4年前、トランプ大統領が当選したとき、

どこの州の人だったか忘れたが、

農業経営者らしき人がテレビのインタビューに答えて

「やっと本当に大統領らしい人が大統領になった」

と感慨深げに語っていたのが、妙に印象的だった。

 

トランプが大統領らしい大統領?

 

その時、僕はアメリカ人の念頭にあるトップ像が

日本人のそれとはひどく違うのだなぁと感じた。

 

もちろん、それはその人特有の考え方だったのかも知れないが、

なぜか僕にはそれが大半のアメリカ人の代表的な考えのように思えたのだ。

 

首相ではなくて大統領と言うところがミソなのかも知れない。

アメリカ人は大統領にヒーローのイメージを重ねている。

 

トランプがヒーロー?

 

日本人や、おそらく他国の人には奇異に映る。

おそらくアメリカ人の半分もそうなのだろうと思うが、

半分は(特に白人は)違う感覚を持っている。

 

「偉大なるアメリカ」

「強きアメリカ」

 

そうした言葉の響きにアメリカのマジョリティは

胸が震える思いがするらしい。

 

日本だったらどうだろう?

「偉大なる日本」「強い日本」なんて言われて、

その政治家に陶酔する日本人なんているだろうか?

 

内に流れる物語が違うのだ。

 

過去1世紀、世界の中心に座り、人類の正義であり続けた歴史――

偉大なアメリカの物語を、人々はそう簡単には手放せない。

 

その偉大なアメリカの物語を体現し、未来につなげるのは、

トランプなのか、バイデンなのか? 

大統領選はそういう問いかけなのだろう。

 

人種差別やコロナ対策などをはじめ、

まともに、理論的に考えれば、

明らかにバイデンの民主党の主張のほうが正しい。

 

けれども正しければ魅力的かと言えば、そうでもない。

 

バイデンがボスになって中国やロシアに勝てるのか?

世界の中心であり続けられるのか?

偉大なるアメリカのプライドが保てるののか?

 

そういう方向に思考が働き、シーソーは傾く。

要は理論よりも感情なのである。

人は理論よりも感情で動く。

何でもそうだが、理論・理屈は

感情で行動した後の後付け・言い訳に過ぎない。

 

僕はロックが好きだが、今思うと、

1960年代・70年代のロックは半ば宗教のようだった。

だから当時の若者たちは本気で

「音楽で世界を変えられる」と信じていた。

(比喩的・間接的な意味では、今でも信じられるけど)

 

その50年後のロックスターの姿を

トランプは体現しているのではないか。

支持者の多くは、かつて

「ラブ&ピース」や「30以上は信じるな」と叫んでいた、

シニアになった若者たちである。

 

ロックスターなのだから、みんなのカリスマなのだから、

ちょっとやそっとのスキャンダルはご愛敬、むしろ勲章である。

 

今のところ、バイデン候補が優勢らしいが、

アメリカ人の潜在意識は違うところにあるのではないか。

 

正論好きの、つまらないいい子ちゃんのバイデン民主党よりも、

コロナを克服し、中国や不法移民に立ち向かう“偉大な”トランプが

またもや選ばれるのではないかという気がしてならない。

 

こんな予想は外れてほしいのだけど。

 

 

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週末の懐メロ:5年間/デビッド・ボウイ

 

1972年。若きボウイの雄姿。

曲は代表作「ジギースターダスト」のオープニングナンバー。

地球滅亡5年前の歌だ。

 

あと5年で地球が滅ぶ、世界が終わるという時に

ロックスター「ジギースターダスト」が空から舞い降りる。

この頃、デビッド・ボウイはジギー・スターダストだった。

 

そんなSFな物語が当時は説得力を持って、

広く若者たちに受け入れられた。

みんな、どこかでこんな世界は終わると思っていた。

けれどもそれは押し寄せる機械文明や管理社会に

抗いたいという精神の表れだったのだろう。

 

いま、誰も「ジギースターダスト」の物語は受け入れない。

もう抗えないところまで来てしまったと諦めた。

それは賢明なことであり、憂うべきことでもあると思う。

 

 

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ルカ Lukaと子どもの虐待

 

YouTubeのおすすめでなぜだかスザンヌ・ヴェガの

「ルカ Luka」が出てきたので、

だいぶ久しぶりに聴いてみた。

1987年に発表され。大ヒットした曲だ。

軽快なコード進行の、素敵な明るい歌に聞こえるが、

この歌のテーマは「子どもの虐待」である。

 

ぼくの名まえはルカ

ここの2階に住んでいる

きみの部屋の上さ

ぼくを見かけたことはあるよね

 

もしも夜中に

もめごととか、ケンカみたいな声が聞こえても

「何があったの?」とか

尋ねたりしないでね

無視してほしい

何も見なかった、聞かなかったことにしてほしい

 

当時アメリカでは児童虐待が深刻化していたが、

日本ではまだ「そうでもなかったと思う。

僕も「これかっこいいね。好きだな」と言ったら、

「でもこれ虐待の歌なんだと」と友だちに言われ、

歌詞を調べた憶えがある。

 

でもその頃は、子どもの虐待の深刻さは全然わかっていなかった。

 

先日、ドラマ「高校教師」(1993年)を見たが、

あの作品も近親相姦=子どもに対する性的虐待が

ドラマの大きな要素になっていた。

 

信じたくないが、結構多いようだ。

現在はその深刻さが認識され、犯罪となるが、

おそらく近代化以前の社会では、

道徳的にタブーとされながらも

結構、裏側で、割と普通に行われていたのだろうと思う。

 

幾つか本(アメリカ社会における虐待のルポや小説)も

読んだことがあるが、

特に社会的地位・名声の高い親のそうした行為に対しては、

子どもも抗いがたい傾向があるという。

 

「家族の絆」が大事にされるのはいいが、

家族と言う関係に対して、日本人はもっとクールな視線が必要だと思う。

やっぱり見ないふり・聞かないふりはできない。

 

それにしても若い頃、見過ごしてみたものがいっぱいいあるなぁ。

のんべんだらりと100歳まで生かしてもらうわけにはいかない。

100年ライフは、人生2度やれということだろうか。

 

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ストーブとライター代わりの電熱器

 

森田童子の「ぼくたちの失敗」の歌詞の中に

「ストーブ代わりの電熱器」というのが出てくる。

僕がこの曲から離れられないのは

この電熱器の思い出があるからかも知れない。

 

高校生の時、演劇部をやっていた。

部室は実習室(工業高校だった)が集まる校舎の

屋上に繋がる踊り場のような不思議な場所にあった。

 

トイレと隣りあった3畳間くらいの小さな部屋だった。

たぶん以前は物置に使っていたのだろうと思う。

 

歴代の上演台本や発表会のプログラムなど、

いろんな資料が壁の棚にゴタゴタぶち込まれ、

稽古の時に使うテーブルと椅子がガタガタ放り込まれた

闇鍋みたいな部屋だった。

その闇鍋の中にくだんの「電熱器」があったのだ。

 

コンセントを入れると

ぐるぐる蚊取り線香みたいに渦を巻いたコイルが、

みるみる発熱して赤くなった。

まさしく“赤く燃えていた”。

 

1970年代半ばの公立高校のクラブの部室には

エアコンはもちろんのこと、ストーブだってありゃしないので、

冬の間、僕たちはぶるぶる震えながら

その電熱器に手をかざし、ストーブ代わりにして暖まっていた。

 

セキュリティの厳しい現代では考えられないし、

当時もどうしてそんなことができたのか不思議だが、

2~3度、夏休みや冬休みの夜に

友だちとこっそり校舎に忍び込んで、

その部室の中で煙草を吸っていた。

 

電熱器をつけると、赤くなったコイルはライター代わりになる。

そんなことを2~3度やった。

ガキの分際で紫の煙をくゆらしながら

友だちや演劇部の仲間と一生懸命何かを話していた。

 

今となってはいったい何を話していたのか、さっぱり憶えてないが、

妙に楽しくてわくわくしていたことと、

電熱器の温もりだけは忘れられない。

 

ときどき、こういうちっぽけでくだらない、

本当にどうでもいい思い出が、

自分を温め、支えてくれているのではないかという気がする。

 

その高校時代――1976年の森田童子のライブ。

ラジオの公開録音だったらしい。

わずか20分余りだけど、ほとんど彼女のベスト7とも言える7曲を歌っている。

4曲目が「ぼくたちの失敗」。

ギター1本の弾き語りで聴けるのは、たぶんこれだけだと思う。

 

ドラマ「高校教師」の脚本家も彼女の歌が好きで、

テーマ曲だけでなく、セリフやナレーションの中で

歌詞や合間の語りを隠し味的に取り入れている。

 

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サルビアの花を聴いた

 

 

公園の花壇に赤いサルビアが咲いているのを見て、

「サルビアの花」という歌があったのを思い出した。

 

なんとなく、こっそり家で聴いてみる。

1972年、昭和47年の歌。

記憶ではかなりヒットし、

当時のフォーク歌手の何人かがカバーしたり、

歌謡曲の歌手も自分のアルバムの挿入歌にしていた。

 

オリジナルは「もとまろ」という女性3人のグループ。

その後のことは全然知らないので、

たぶんこれ1曲しか売れなかったのだろう。

 

しかし、そのたった1曲が永遠の名曲になった。

 

当時、ぼくは子どもだったので、

この歌の世界のことがよくわからなかったが、

改めて聴くととても映像的でドラマチック。

 

ただ、現代の感覚だと、

この歌詞って、カン違い妄想ストーカー男の歌?

と聴けなくもない。

 

けれどもこの哀愁を帯びた旋律は現代からは生まれにくい。

1970年代独特の、美しく透き通ったメロデイーライン。

森田童子や、デビューした頃の中島みゆきの曲に通じる感傷。

どこからか、あの時代の風が吹いてくるようだ。

 

 

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ざしきわらしに勇気の歌を

 

ロボット介護士に支えられて余生を送っている寅平じいさんが、ある日、林の中を散歩していると不思議な子どもに出逢う。

その子を追って木の穴に潜り込むと、奥には妖怪の国が広がっていた。子どもの正体はざしきわらし。

ざしきわらしは最強の妖怪“むりかべ”の脅威から人間を守るために闘うので、応援してほしいと寅平に頼む。

寅平はこれぞ自分のミッションと思い、闘うざしきわらしのために勇気の出る歌を歌う。おとなも楽しい少年少女小説最新作。

9月30日(水)Amazon Kindkeより発売決定。

 


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義母が歌う自分への子守歌とザ・ピーナッツの「村祭り」

 

毎晩と言うわけではないが、

夜、義母の部屋から歌声が聞こえてくる。

大声で歌っているわけではなく、

鼻歌程度の音量なので特に問題ない。

 

レパートリーは、いわゆる昭和歌謡

(昭和30年代から40年代初め頃)と、

童謡・小学唱歌などだ。

 

寝つきが悪いと、つい口をついて出てくるようで、

長いときは1時間以上歌っている。

まるで自分に子守唄を歌っているようだ。

 

べつに聞き惚れるというほどのものではないが、

ぼくはそれを聴くのが結構好きだ。

 

なんというか、ちょっと心が洗われるような気分になる。

そして、人間が結局落ち着くべきところに

案内してもらっているような気分になる。

 

最近よく歌っているのは「村祭り」。

ぼくが小学校の頃は音楽の教科書に載っていたが、

今はたぶんもうないだろう。

このメロディもちょっとユニークで美しく、

わりと好きだったことを思い出した。

 

それでYou Tubeで聴いてみようと思ったら、

なんと! ザ・ピーナッツが歌っている。

 

昭和歌謡の代表選手。

ポップスはもとより、ジャズやボサノバ、

モスラの歌まで何でも歌いこなす天才双子デュエット。

 

ユーライア・ヒープの「対自核」や

キング・クリムゾンの「エピタフ」を歌っていたのにも

びっくりしたが、こんな小学唱歌まで歌っていたとは!

 

彼女らが〽ドンドンヒャララ ドンヒャララ~

と歌うと、山奥から守護神の怪獣が目を覚ましそうだ。

 

今年はコロナ禍で秋のお祭りも中止なので、

ザ・ピーナッツを聞いて、

日本のお祭りの精神を愛でたいと思います。

 

 

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欲望がかなう街「マホガニー市」のアラバマソング

 

昨日はドアーズのファーストアルバム

「ハートに火をつけて」のことを書いたけど、

このアルバムに収録されている

「WiskeyBar(Arabama Song)アラバマソング」は、

いかにもドアーズ、ジム・モリソンらしい、

奇妙で捻じれた曲調の、エロチックでひどくユーモラスな歌だ。が、これは彼らのオリジナル曲ではない。

 

演劇人の間では有名な「三文オペラ」の作者

ベルナルト・ブレヒトが

作曲家のクルト・ワイル(ヴァイル)とコンビを組んで作った

「マホガニー市の興亡」というオペラの挿入歌である。

 

どこかの国(母国ドイツをイメージ?)から逃亡してきた

お尋ね者の3人組が、

アメリカ南部のアラバマ州(らしき地域の)の砂漠に

「マホガニー市」という「欲望がかなう街」を建設。

カネと酒と女(男)を求めて集まってくる

男や女たちの悲喜劇を描く。

 

この物語「マホガニー市の興亡」は初演が1930年のベルリン公演。

90年以上も前の作品にも関わらず、内容はあまりに現代的だ。

 

「三文オペラ」と同じく、

人間批評・社会批評たっぷりに描かれており、

あらすじを読む限り、ラ

ストも決して「人間って素晴らしい」と歌い上げる

ミュージカルなどとは真逆の、かなりシニカルな内容だ。

 

しかし、この作品は欧米で非常に人気が高く、

戦後、くり返し上演されてきたという。

 

その代表曲ともいえる「アラバマソング」も人気抜群で、

ドアーズをはじめ、実にいろんなミュージシャンや俳優が

この歌をカバーしている。

 

物語の世界観・菓子のユニークさも含め、

音楽家たちにとってチャレンジし甲斐がある、

面白い曲なのだろう。

 

ドアーズバージョンで、モリソンは2コーラス目

「Show me the way to next little Girl?」

(教えてくれよ、この近所にいい娘いないかい?)と歌うが、

オリジナルではnext prety Boy――

「近所にいい男いないかしら?」となっている。

 

つまりもともとこれは、

男を漁りに来た娼婦らが歌う歌なのだ。

 

このオペラについては「オペラ対訳プロジェクト」

というサイトで詳しく紹介・解説されており、

初演で主役を演じた女優(歌手)ロッテ・レーニャの

「アラバマソング」も聴ける。

 

対訳もすごく面白い。

「モシモイイ男ガ見ツカラナカッタラ、

私タチ死ヌヨリ他ナイノデス!」なんて最高だ。

 

ちなみにこのロッテ・レーニャという人は、

クルト・ヴァイルの奥さんなんだそうで、

同じドイツ人のせいか、

何となくマリーネ・ディートリッヒをイメージさせる。

 

この作品、最近では日本では

2016年に山本耕史やマルシアらが出演して

音楽劇として上演されている。

 

なかなか興味深いストーリーなので、

コロナ禍が去って再演されるようなことがあれば観てみたい。

 

 

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ロックの邦題マジック「ハートに火をつけて」/ドアーズ

 

ロックの邦題マジックシリーズ第2弾は

「ハートに火をつけて」(ザ・ドアーズ)。

 

●人気フレーズのオリジナル

日本人が大好きで、アイドルが歌い出しそうなこのキュートなフレーズは、少女マンガのタイトルにも用いられていた。

むかし、「りぼん」で一条ゆかり先生が書いたものが最初じゃないかと思う。

他にも少女マンガやライトノベルなどで同名のタイトルが使われているのを見かける。

 

J-POPはもっとすごい。

いちいちミュージシャンの名前は挙げないけど、

同名異曲が5つや6つはあるんじゃないか。

やっぱり魅力的で覚えやすいフレーズで、

ラブソングにぴったりだからだろう。

 

このフレーズを考え出したのは

1960年代の日本のレコード会社の人(たぶん)。

 

1967年にデビューしたアメリカ西海岸のロックバンド

The Doors(ドアーズ)の

ファーストアルバムにこの邦題がつけられた。

 

その意味では、J-POPもマンガもライトノベルも、

みんなドアーズのパクリである。

 

●異常なセックスソングとキュートな邦題とのギャップ

アルバムタイトルはバンド名の「The Doors」だが、

A面6曲目、シングルでもヒットした「LiLIght my Fire」が

「ハートに火をつけて」となり、そ

れがアルバムタイトルにもなった。

 

僕はこれも名邦訳だと思う。

 

現代の感覚で言うと、

原題が「LIght my Fire」?なんだ、だったらほぼ直訳じゃん。

と思うだろうが、

50年以上前に「ハートに火をつけて」なんて

お洒落な曲名がすんなり出てきたとは思えない。

 

そもそもこの曲自体、初期のビートルズのような

明るいヘルシーなラブソングじゃなく、

当時のサイケデリックのエッセンスを盛り込んだ

けっこうきわどい、いわばセックスソング。

 

「LIght my Fire」と言っている歌の主人公は、

恋する胸キュンの女の子じゃなくて、

女とやることしか頭にないスケベ野郎だ。

 

曲調もポップなラブソングでも美しいバラードでもなく、

のっけから猥雑さ漂う不気味なオルガンが

クネクネうねりまくる、かなり“異常な”曲である。

 

邦題的には「おれを燃やしてくれ」とか、

意訳して「エロスの焔」とかつけそうなものだが、

なんでこんな女の子が口にするような

キュートな邦題を考え付いたのか、

考えてみると不思議である。

 

いずれにしても、

ドアーズの奇妙でエロチックな独自の音楽世界と、

キュートな邦題とのギャップが素晴らしく、

日本でのドアーズ人気に一役買っていると思う。

 

●1stと2ndは歴史的大名盤

もちろん、英米でもこのファーストアルバムはド名盤で、

充実度は抜群。

クルト・ワイルのオペラ曲をカバーした「アラバマソング」や

カリスマロッカーにして詩人のジム・モリスンの名を

世に知らしめた大作「ジ・エンド The End」など、

めちゃくちゃ聴きごたえのある名曲が揃っている。

 

そもそもドアーズがその異常性・独自性を見せつけたのは

これとセカンドアルバム「まぼろしの世界 Strang Day」で、

その後はフツーのブルースロックバンドになってしまって

あまり面白くない。

 

これからドアーズを聴く人は、とにかくこの2枚とベスト盤です。

 

●モリソンの伝説とマンザレクの怪しいオルガン

ヴォーカルのジム・モリスンは、僕がロックを聴き始めた頃、

すでに他界していて、

ジミ・ヘンドリクスやジャニス・ジョプリンと同様、

最初から「伝説のロッカー」だった。

しかもセックスシンボルとして、

スキャンダラスなエピソードにまみれていた。

 

すごかったのがそのライブパフォーマンスで

性器を露出したり、

自慰をしたりして逮捕されたこともあるという。

 

アルチュール・ランボーなど、

フランスの詩人に影響を受けていたらしく、

1971年に人気絶頂のバンドを脱退し、

詩作のために恋人とパリへ移住して

そこですぐに死んでしまったらしい。

死因はドラッグのやりすぎというのが通説になっている。

 

いかにも昔の破滅的芸術家らしい人生を送ったせいか、

今でもカリスマ性が高く、やたら「信者」が多い、

そのため、ドアーズ=ジム・モリソンみたいな形で

語られることが多い。

 

だけど、僕にとってはモリソンと同格以上なのが

オルガンのレイ・マンザレクである。

 

「ハートに火をつけて」の

イントロ10秒を聴いただけでわかるように

孤高のドアーズサウンドは、マンザレクの

うねり、くねり、大蛇がのたうつような、

隠微な見世物小屋に誘い込むような

独特の怪しいオルガンに支えられている。

(彼も3年ほど前に他界してしまったようだ)

 

●還暦によみがえったドアーズ

実は僕は最近までドアーズをそんなに

熱心に聴いたことがなかった。

 

「ハートに火をつけて」と「まぼろしの世界」は

アナログレコードを持っていたが、

そんなに頻繁に針を落とすこともなく、

数年前に整理してしまった。

 

なんでか考えてみたが、たぶん理由は3つ。

 

・「サイケデリック」を感じさせる60年代的な音が

 時代遅れだと思ってた。

・「ジ・エンド」がフランシス・コッポラの映画「地獄の黙示録」

 (70年代のベトナム戦争をテーマに描かれた作品)

 で使われ、長らくそのイメージがまつわりついてた。

・ジム・モリソンの伝説が、今一つピンと来なかった。

 

ところがこの1週間ほど前、ふと脳の奥底から、

あのうねうねオルガンがよみがえってきたので、

久しぶりに――と聴いてみたら、

すっかりハマってしまったのである。

 

YouTubeでは、これまで見たことなかったライブも上がっていて、

ありし日のジム・モリソンの姿もたっぷり見られる。

 

「ハートに火をつけて」はマンザレクのオルガンを中心とした、

サイケで不気味でカッコいい、10分以上にもおよぶ、

長大なインストゥルメンタルも楽しめる。

 

音だけだとわからないが、映像付きだと

その間、モリソンが性行為を連想させるような

アクションをやりまくって、

観客が盛り上がるというクレイジーな世界が展開する。

 

興味のある人は、ぜひ半世紀前のヤバい

アナザーワールドを世界を体験してみてください。

 

 

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ロックの名盤「対自核」の邦題マジック

 

日本語の、漢字が創り出す世界観は強烈で深遠だ。

それを最初に教えてくれたのが「対自核(たいじかく)」だった。

 

「対自核」という3つの漢字が並んだタイトルからは

何とも言えない禍々しさ、危うさ、異常性を感じた。

その異世界の感触ロックにハマるきっかけとなった。

 

Uriah Heep ユーライア・ヒープが

1971年にリリースしたサードアルバム。

僕が初めて聴いたのは中学生になってからだから、

その2~3年あとだ。

 

原題は「Look at Yourself」。

「自分を見つめ直せ」という意味だが、

これはロックにおける傑作邦題としても有名だ。

 

「対自核」なんて言葉はもちろん、日常会話では使わない。

本を読んでいてもこんな言葉には一度もお目にかからなかった。

 

つまり1971年からこれまでおよそ50年、

「対自核」とはユーライア・ヒープのこのアルバムと、

1曲目に収められている同名の曲の目に

しつらえられた言葉だったのである。

 

それにしても普通、「Look at Yourself」から

「対自核」なんて日本語は生まれてこない。

いったいこの邦題を付けた日本のレコード会社の人はどんな人だったのだろう?

どうやってこの造語ができたのだろう?

と疑問に思わずにはいられない。

 

バックグラウンドにはやはり時代の特性があると思う。

会社はレコードを売らなきゃいけない。

 

「ルック・アット・ユアセルフ? これじゃ売れんなー。

もっといいタイトルつけられないのか?」

「自分を見つめろ」じゃどうでしょう?

「アホ、そんな直訳じゃだめだ。商品のネーミングだぞ。

ちゃんとマーケティングやって考えろ!」

てなわけで担当者は市場調査をして知恵を絞り始めた。

 

ロックのレコードを買うお客は若者だ。

当時、1971年は学生運動が終わって間もない頃。

その影響をもろにかぶった50年前の若者の多くは、

思想や哲学にかぶれていた。

 

実際に読んでいるかどうか、理解しているかどうかは別にして、

思想家や哲学差の名前を口にしたり、

かばんやポケットに本を入れていればカッコがついた。

女の子にもモテた。

 

中でもブランド力が高かったのが、フランスの哲学者

ジャン・ポール・サルトルだ。

サルトルの実存主義は20世紀を代表する思想の大きな柱だった。

 

実はこの「対自核」の「対自」という語は

サルトルの著作「存在と無」で流行った

実存主義用語から採られたという。

 

レコード会社の担当者は

その対自に、心臓部――コアを表す「核」をつけた。

 

「対自核。どうでしょう?」

「よっしゃー、これで決まりや!」

 

その担当者が本当に実存哲学の理解者だったかどうかはとにかく、

サルトルに考えが至ったというところがすごい。

 

会社としてこの邦題に決めたということは、

やはりそれなりの説得力があり、手ごたえを感じたからだろう。

 

これが今の時代だったら、

いや、当時から10年後の1980年代だって

「対自核」なんて言葉が作られ、

アルバムの邦題として採用される余地はなかっただろう。

 

僕は当時のレコードの購買層だった若者、学生さんたちより

だいぶ下なので、彼らの心にこのタイトルが

どんな具合に刺さったのか、実際はわからない。

 

だが、1973年か74年にこのアルバムのジャケット、および、

それに掛けられた帯の上に書かれた「対自核」という

漢字3文字を見たときの衝撃で、中学生だった僕の人生は変った。

と今では思う。

 

ちなみにジャケットは、

直径30センチのアナログLPレコードを納める、

30センチ×30センチの厚紙でできていた。

帯のタイトル、ジャケットアートと相まって

音楽はリアルな存在感を持ってそこにあった。

 

その頃、僕はサルトルも実存主義も知らなかったが、

ロックという音楽の中には思想や哲学や文学や神話、

そして社会に、世界に、他分野の文化に通じている

扉があることを予感した。

 

タイトルナンバーと「7月の朝 July Morning」という

名曲2曲が入っているとはいえ、

このアルバムが「対自核」という邦題でなかったら、

たとえば原題そのままの「

ルック・アット・ユアセルフ」だったら、

そんなに売れなかったし、

ユーライア・ヒープが日本の音楽シーンに

大きな影響を与えることもなかったに違いない。

 

ザ・ピーナッツが「対自核」を、

西城秀樹が「7月の朝」を歌うこともなかっただろう。

 

そしてこてほどの名盤として50年後の今も語り継がれ、

伝説になることもなかったかもしれない。

 

日本語の、漢字の組み合わせが創り出す、

音楽の域を超えた圧倒的な世界観。

 

対自核にはじまり、神秘、原子心母、狂気、炎、危機、童夢、

四重人格、怪奇骨董音楽箱、太陽と戦慄、暗黒の世界・・・

 

これらの邦題マジックは日本におけるロック音楽を、

本家の英米とは少しばかりニュアンスの異なる、

独自の作品に育て上げたのではないかという気がする。

 

 

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西城秀樹さん ラストステージの記憶

 

ユーライア・ヒープの「July Morning」、
キング・クリムゾンの「Epitaph」。
この2回、自分の好きなロックのことについて

書こうと思ったのに、なぜか西城秀樹さんの話になっていた。

 

たまたまネット上で音源を見つけたからだが、
彼がこれらの歌を歌っていたのをまったく知らなかったので、
本当に驚いてしまった。

 

そして、それが人気歌手が流行りに乗って
片手間で歌ってみました、という類のものではなく、
本気で取り組んでいたを感じて心動かされた。

 

本人はもちろんだが、
これはスタッフやバックミュージシャンも含めて、である。
西城秀樹という天才を中心に、

日本の大衆音楽を大きく育てていこう、
レベルを高くしていこうという熱いうねりが
当時はあったのだと感じる。

 

★情熱の嵐

僕は小学生から中学生の初め頃まで、
昭和の歌謡曲の世界にハマっていた。


ちなみに熱狂的な秀樹ファンである、
ちびまる子ちゃんのお姉ちゃんと同じくらいの世代である。

 

西城さんについては「情熱の嵐」「激しい恋」

「薔薇の鎖」などの振り付けが好きで、

よくマネして遊んでいた。

 

「情熱の嵐」では上着を脱いで

頭の上で振り回すアクションがあったが、
あれをマネして学校の休憩時間中、
振り回していた体操着が花瓶に当たって壊れ、
先生に怒られた記憶がある。

 

ただし、それっきり。
その後、特にファンだったわけでもないし、
レコードなどもを買わず、ライブに行ったこともない。

 

★2018年5月 青山葬儀所

けれども今回発見した「July Morning」や「Epitaph」の音源が
大阪球場や後楽園球場のライブだったことを知り、
2年前の5月、

青山葬儀所での西城さんのお葬式に行ったことを思い出した。

 

これもその時まで知らなかったが、
西城さんは1974年夏、日本人としては初めて
球場でライブをやったミュージシャンだったという。
それを記念して祭壇は大阪球場を模したものだった。
そこには「一生青春」の文字も刻まれていた。

 

日本の音楽シーンが活性化した

1970代後半から80年代、90年代にかけて
球場でライブをやることは、

そのミュージシャンがビッグになった証であり、
一つのステータスでもあったが、

その流れを作ったのも西城さんだった。

 

西城さんはさらに大きなミュージシャンとして

成長しようとしていた矢先、
病に倒れ、人生の後半は病気との闘い、リハビリの日々になった。

 

そして2018年4月の終わり、運命の日は来てしまった。

自宅で倒れ、意識不明のまま、翌5月半ばに帰らぬ人となった。

 

西城さんがアイドル、スターとして活躍した時間は、
トータルで見るとけっして長くない。
けれども凡人の何倍も濃密な時間を生きたのだと思う。
まさに太く短い人生だった。

 

葬儀が行われたのは亡くたって9日後。
僕はレギュラーワークの一つとして
葬儀・供養関連の専門誌のライターをやっているので、
その現場を取材する幸運に恵まれた。

 

 

★華やかであたたかいお葬式
式場には入らなかったが、
テレビ中継のスタッフや芸能記者たちに混ざって、
青山葬儀所内の別室にあるモニター画面で
告別式の一部始終を目にし、
野口五郎さんや郷ひろみさんらの弔辞を聴いていた。

 

告別式が終わり、真っ青なベールがかけられた棺が
真っ青な空のもとに運び出される。


黒いリムジンに乗せられた後、
MCの徳光和夫さんが集まった人たちに
「ヒデキ、ありがとうと言って送ってください」と呼びかける。

 

ファンかスタッフかわからないが最初に一人の男性が声を上げた。
「ヒデキ、ありがとう」
すると堰を切ったようにみんなが「ありがとう」と
ヒデキコールを繰り返し、火葬場へ向かうリムジンを見送った。

 

テレビやネットで観た人も多かったと思うが、
あれは本当に一世を風靡したスターらしい華やかで、
そしてあたたかいお葬式だった。

 

最後を締めた徳光さんの人柄や、
野口さん・郷さんの、あの時代の叙事詩を語るかのような
弔辞も影響しているが、
何よりもファンの、ここに来なくてはいられなかったという
思いの渦みたいなものが青山葬儀所を包み込んでいた。
(確か地方から旦那さんと泊りがけで来たという人もいた)

 

いま思えば、亡くなって10日足らずで
あれだけの規模・内容の式が出来たこと自体が奇跡のようだ。

 

企画・運営した人たちにも、
大スターの最後を飾る花道を作らなくては、
という使命感にも似た思いがあったのだろう。

 

今はがたとえ有名人が亡くなっても、
まず近親者だけで密葬をし、
あとからファンなどのためにお別れ会を開く――
といったパターンが多く、

それさえもないことも珍しくなくなった。

 

西城さんのご家族も、
気を遣わないで済む密葬(家族葬)で済ませ、
後日にお別れ会――という選択肢だって当然考えただろう。

 

しかし喪主である奥さんは、彼を支え応援してくれたファンと
悲しみを分かち合うのが義務と思ったのかも知れない。

 

また、病気を負った姿しか見ていない息子さんたちに、
父がいかに偉大なスターであり、ミュージシャンであったかを
胸に焼き付けてほしいという思いもあったのかも知れない。

 

★死してなお輝き続ける
青山葬儀所から出ていく西城さんの棺をその場で見送り、
ありがとう、さようならとコールを送った1万人の人たち。
その胸にも深い満足感と、
それまでの活躍の記憶がより深く刻み込まれただろう。


やはりテレビやネットで得られる、
効率の良い「情報」だけでは補えないものが
リアルな場にはあるのだ。

 

もしかしたら、いかなる昭和のスターでも、この先、
あんな華やかで、あたたかいお葬式はできないのでは・・・
とさえ思う。

 

ロックの話とすっかり離れてしまったが、
西城秀樹の歌は素晴らしい。
「July Morning」も「Epitaph」も、

その他、いろいろなジャンルの音楽を
自分のものして歌える才能は稀有なものではないか。

 

あの時代の音楽と、
それを糧にして育った日本人を語るに欠かせない存在して、
死してなお、西城秀樹は輝き続けるのかも知れない。

 

 

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エピタフとキング・クリムゾンと西城秀樹

 

「Confusion will be my Epitaph(混乱こそわが墓碑銘)」

その昔、自分の書いた芝居に 
KingCrimson キング・クリムゾンの
「Epitaph エピタフ(墓碑銘)」の歌詞をパクって
台詞に入れたことがある。

 

予言者達の書いた壁が
ひび割れたところから崩れ落ち


殺戮の道具の上に
日の光は燦然と輝く

 

誰もが悪夢や夢想とともに
引き裂かれていく時


栄冠など何処にもない
静寂が叫び声さえ呑み尽くす

 

1969年、KingCrimsonデビューアルバム
「クリムゾン・キングの宮殿」A面3曲目。

 

半世紀以上が経った今でも、キング・クリムゾンは、
プログレッシヴロックの王として君臨する。

そして「エピタフ」はその深紅の血塗られた王の
代名詞ともいえる名曲だ。

 

作詞のピート・シンフィールドは、
英国のさまざまな文学者の影響を受けていた。
特に彼がリスペクトしていたのは、
劇作家ウィリアム・シェイクスピアだ。

 

初期の1stアルバム「クリムゾン・キングの宮殿」と
2ndアルバム「ポセイドンのめざめ」の楽曲の歌詞には、
シェイクスピア特有の、
ちょっと時代がかった(でも現代的な)
韻の踏み方、言葉のリズム、演劇的な匂いが感じられる。

 

「エピタフ」の歌詞も「リチャード3世」
「マクベス」「ハムレット」などの、
血と死と幻想を想起させる詩になっている。

 

ちなみにシンフィールドは作詞だけで楽器をやらないのに
正規のオリジナルメンバーだった。
このバンドの誕生時における、
一種のコンセプトメーカーだったのだと思う。

 

彼は自分が書いた詞を、少年時代、聖歌隊に属していた
グレッグ・レイク(ヴォーカル&ベース)が歌うのに
至上の喜びを感じていたという。

確かに若き日のレイクの声は、美しく神秘的だった。

 

ロックミュージックに文学・哲学・思想といった、
それまで誰も思いつかなかった知的なマテリアルを持ち込み、
見事に融合させたのはビートルズ、
とりわけジョン・レノンだが、
クリムゾンはデビューアルバムで、
ビートルズが導いた新しいロックの地平を一気に切り開いたのだ。

 

そのプログレッシブロックの代表曲が、
なぜか日本の昭和歌謡と親和性が高いのはどういうわけか?

 

ザ・ピーナッツや、

ジャニーズ事務所初期のスター・フォーリーブスが
「エピタフ」をカバーしているのにはびっくりした。

 

そしてまたもや西城秀樹だ。

 

ピート・シンフィールドが綴った原詩のまま歌っている。
確かに「エピタフ」なのだが、
ちょっと違う曲に聞こえて、すごく新鮮だ。

クリムゾンを吸収し、完全に自分の歌にしてしまっている。

どんだけすごいのか、天才だったのか、ヒデキ?

 

バックの演奏もいい。
特にベースとドラムは、そこはかとなく
クリムゾンのオリジナルメンバー、
グレッグ・レイク(ヴォーカルと共にベースも兼任)と
マイケル・ジャイルズ(ドラム)を意識していている気がする。

 

雷鳴と驟雨の音は、最初、レコーディング時の演出の
SEかと思ったが、これは野外(球場)ライブで、
この時、ほんとに嵐がきていたらしい。

 

ヒデキのキセキ。
すごすぎる。
40年もたってこんな音源に出逢えるとは、
まさしく僕の頭は「Confusion will be my Epitaph」。

 

 

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7月の朝とユーライア・ヒープと西城秀樹

 

7月になると「7月の朝」を聴く。
ユーライア・ヒープの「July Morning」は
70年代ロック不動の名曲だ。

 

中学生1年生のある時期、僕にとって
ユーライア・ヒープは世界最高のロックバンドだった。

単純に他のバンドをあまり知らなかったからだが、
「ユーライア・ヒープを聴いたら、
ビートルズなんかたかったるくて聴いてられねぇよ」
とうそぶいていた。

 

どうしてそこまでユーライア・ヒープに
肩入れしたのかと言うと、
「7月の朝」がとんでもなく好きだったからだ。

 

1971年リリース、ヒープのサードアルバムにして
ロック史に燦然と輝く名盤「対自核(Look at Yourself)」の、
アナログレコードならA面3曲目。

 

隣に住んでた2年年上の先輩がロック好きで、
それまでディープ・パープルの「ハイウェイスター」などは
聴いていた(聴かされていた)が、
ハードロックってうるせえなぁという印象だった。

 

けれども「7月の朝」は全然違っていた。
何といっても哀調を帯びたメロディが美しい。
そして、それまで聴いたことがなかったドラマチックな曲構成。

前半のバラードから後半、
ギターとオルガンがうねりまくるクライマックスに
繋がっていくのだが、
その盛り上がり方がまた美しく、すべてが完璧だった。

音楽を聴いて鳥肌が立ったのは、たぶんこの時が初めてだった。

 

ユーライア・ヒープは、
もちろんメンバーチェンジをしているものの、
今まだ活動しているようだ。
そのブランドとしての生命力には拍手を送りたいが、
やはり頂点はこのサード・アルバムで、
過去の遺産で食っている感は否めない。

 

ネットの記事によっては
「レッド・ツェッペリンやディープ・パープルと並ぶ
イギリスのハードロックバンド・・・」なんて
紹介の仕方をしているところもあるが、
正直、かなり格下だと思う。
悪いけど、ツェッペリンと並べないでほしい。

 

それでも、僕が若かりし時期、
「世界最高のロックバンド」と信じたように
当時(1970年代)のヒープの、特に日本における名声は
相当なもので、
来日公演も果たし、熱狂的なファンも大勢いた。

その音楽性が歌謡ポップスとの親和性に富んでいて、

日本の音楽関係者もかなり影響を受けたようだ。

 

そのヒープの大名曲「7月の朝 July Morning」を、
かの昭和歌謡のアイドル・西城秀樹が
カバーしていたということを、
彼の死後(2018年5月)、知った。

 

昔はアイドルが「こういう歌も歌えるんだぜ」と
カッコつけてロックを歌っていると思って、
まともに聴こうとしなかったが、
改めて聴くとその歌唱力に圧倒される。

 

デビッド・バイロン(全盛期のヒープのヴォーカリスト)に劣らぬ
詩情と感情あふれる表現力。
日本語の訳詞も良い。
完全に自分のものにしている。これはすごい。

天国の秀樹さん、ごめんなさい。

 

西城秀樹は他にも、
リズム&ブルースからプログレまで歌いこなす
素晴らしい歌唱力を持っていた。
ヒデキ、カンゲキ!

 

その西城秀樹の歌手としての凄み、カッコよさ、
そして当時の熱狂的な人気ぶりを物語る
1980年・後楽園球場での「7月の朝」。

 

 

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ああ、ここもやっぱりどしゃぶりだ

 

どしゃぶりの雨を見ていたら、ふとこの曲が頭に浮かんできた。
還暦になって、ああ、またここに戻ってきてしまった、
という気分になる。

 

作詞作曲は吉田拓郎。
落陽、春だったね、人間なんて、今はまだ人生を語らず・・・


やっぱり拓郎は良い曲、良い歌詞を書く。
やんちゃな言葉遣いの中に深みがある。

 

♪人の言葉が 右の耳から左の耳へと 通りすぎる
それほど 頭の中はからっぽになっちまってる
今日は何故か おだやかで知らん顔してる自分がみえる♪

 

拓郎はフォークのイメージだが、
「たどりついたらいつも雨ふり」は
日本のロックを代表する名曲になった。

調べてみたら、いろんな歌手がカバーしている。
なんと宝塚歌劇でも歌われているのにはびっくり。

 

だけど、やっぱりモップスのオリジナルがいい。
鈴木ヒロミツはずいぶん前に他界してしまったが、
この曲のヴォーカルは記憶にある声よりうんと若い。

歌詞はちょっと切なくてやるせないが、
シンプルなビートとロックのノリは元気が出るぞ。

 

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神さまのカケラを拾い集めて生きる

 

小さい頃は神様がいて、不思議に夢をかなえてくれた。

というのはユーミンの「やさしさに包まれたなら」の
出だしの歌詞だが、
本当に子どもの頃は神様はいたと思う。

 

子どもの脳は100パーセント開かれているので、
いろいろ見えて、あれこれ触れるらしい。

 

だが、現実社会の枠組みの中で
脳の使える部分は制限される。
人間が一生のうちで使う“脳力”は全体の1割とか2割。
みんなに100パーセント“脳力開放”されてもらっては、
社会として何かと困ることが多いのだろう。

 

というわけで僕たちは神さまを見失う。

 

ただ、齢を取って認知症などになると。
それまで使ってた1割・2割がダメになり、
あんまり社会で役に立たなくなる。
すると、
それまで制限されていた残り8割だか9割だかの
脳のどこかの部分が開放される、こともあるらしい。

 

それでいわゆる「妄想」が見えるようになる。
それは小さい頃いた神様なのかも知れないし、
妖精とか妖怪とか小人とか、

そういうちょっと禍々しいものかも知れない。

 

うちの義母はそこまでひどくないが、
時折、別世界に入っているのではないかと思えることもある。

 

目に映るすべてのことはメッセージ――
なんだろうか?

 

僕も一緒に朝とか夕方とか、
光が淡い時間に林を歩くと
神さまのカケラぐらいは感じ取れる。
カケラを拾い集めて、夜なべしてつなぎ合わせて明日も生きる。

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青春ソングを愛する若者とおやじとアンドロイド

 

♪汽車を待つ君の横で僕は時計を気にしてる・・・


最近、一緒に仕事をしている若い娘が
いきなりアカペラで歌い出した。


なんでこんな歌を歌い出したのかと思ったら、
「この歌ドンピシャっすか?
聴いてなんかリアクションするかなと思って」だと。


要するに僕が年齢不肖なので、
歌で探りを入れてみたというのである。


ほぉ、なかなかいい方法だ。
お見事、ドンピシャです。
中学生でしたけど。


きみにとっては、かぐや姫と言えば竹取物語か
auのコマーシャルだろうし、
イルカと言えば水族館の人気者しか思い浮かばないだろうけど、
「なごり雪」は世代を超えた名曲だ。


浪人生だそうだから19か20.
だいたいこれで判明しただろう。
僕はきみのお父さんよりずっと齢行ってると思うよ。
さすがに孫娘とは言わないけど。


「青春っすか?」って訊くので
「そうっすよ」って答えたら
アハハと笑って、
「あたしババアに見られるので、
なるべく最近の歌しか歌わないんですよ」と言う。

トンチンカンだけど、なかなか面白いやつである。

 

彼女と話していると、やたらと「青春」という言葉が出てくる。
若い連中の間では「青春」なんて死語だと思っていた。
うちの24の息子の口から「青春」なんて言葉を聞いたことがない。
しかし、こういう青春好きな
(どこまで本気で、どこまで冗談かわからないが)
若い女子もいるんだなぁと、
妙に感心して、ちょっと新鮮な気持ちになった。


今や青春と言えば、おっさん・おばさんの専売特許である。
べつに自分で歌を作ったわけでもなければ、
歌ったわけでもないのに、
やたらその時代のこと・自分が聴き込んだ歌のことを

自慢したがる輩が多い。
特に男に多いようだ。


たとえばYou Tube などで若い子が
「なごり雪」みたいな“青春”の名曲を
カバーしていたりする。


僕はうれしいと思うのだけど、
しばしばディスっているコメントに出会う。


「ちゃんと意味わかって歌ってるの?」とか、
「上手に歌えばいいってもんじゃないよ。上っ面だけだね」とか、
「〇〇(オリジナル)の足元にも及ばん」とか、
「おまえに何がわかるんや」とか・・・。
中にはくどくど数百字にわたってお説教している奴までいる。

こういう書き込みはたぶん、おっさんかジイさんだ。


自分の青春時代を大事にしたい気持ちはわかるけど、
なんだか見苦しくて、読んでると腹が立ってくる。
(だったら読まなきゃいいんだけどね)

こんな年寄りにはなるまいぞと心に誓うが・・・


本当に大丈夫かな? と、ちょっと心配だ。
20年くらいしたらアンドロイドのおねえちゃんが働いているバー
(コロナのせいで夜の街は人間が接客してはならないという
お触れが出た、という近未来SF設定)
で飲んだくれて、


「おまえらに人間の何がわかるんや? 
青春の何がわかるちゅうんや!」
と、くだを巻いているかも知れない。


それでもって、アンドロイドちゃんたちから
「ごめんなさい。セイシュンのこと、
いろいろ教えてくださいなセンセ」
とヨイショされて、
いい気分になってカラオケで青春ソングを歌い出したりして。

その歌を聴きながら彼女らはディープラーニングしているのある。


そんな未来が待っているのかも知れない。

 

おりべまこと電子書籍
子ども時間の深呼吸 

 

だれの心のなかにも「子ども」がいる。
自分のなかにいる子どもにアクセスしてみれば、
何が本当に大切なのか、何が必要なのか、
幸せになるために何をすればいいのか、どう生きるのか。
自分にとっての正解がきっとわかる。
〈少年時代の思い出〉×〈子育て体験〉×〈内なる子どもの物語〉でモチモチこね上げた おりべまことの面白エッセイ集。自身のブログ「DAIHON屋のネタ帳」から40編を厳選・リライト。

もくじ

・大人のなかの子ども、子どもの中のおとな 
    ・ちびちびリンゴとでかでかスイカ  

     ・天才クラゲ切り:海を駆けるクラゲ 
     ・子ども時間の深呼吸    他

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幻のエヴァvs五輪、そして明菜の残酷な天使

 

昨日、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の公開が延期された、
というニュースが流れてきた。

 

今年6月27日(土)に公開予定だったが、
新型コロナウィルス感染症の拡大でやむなく延期とのこと。

 

前作「Q」を高校生だった息子と一緒に見に行ったのが、
もう8年も前のことだったので、すっかり忘れてた。


去年だか一昨年だかに息子に
「2020年の夏に続きやるらしいよ」と聞いて、
「なに? もしや意図的に五輪にぶつけてきたのか?」
と思ったことを思い出した。

その「エヴァvs五輪」の対決? も幻と消えた。

こうなると新型コロナウィルスは、まさしく“使徒襲来”である。

 

映画館も劇場も、図書館さえもが閉鎖されてしまった今、
そういった場所に普通に入れて、

普通に非日常を楽しめたことは
本当に幸せなことだったと、しみじみ噛みしめる。

 

延期されたエヴァの映画の公開日もまだわからない。
いったいいつまでこれが続くのか?
今はいつかは再開するんだと信じるのみである。

 

でも劇場なんかは、この時期に特別な演劇体験をできないかなぁ。

 

舞台と客席の間を、飛沫が飛ばないよう透明な幕で仕切る。
観客は人数制限して、その劇場のキャパの1割程度しか入れない。
あえてそういうスカスカの空間で芝居をやるのだ。


プレミアムな演劇体験だから、料金は通常の10倍――
はさすがに高すぎるので、2~3倍いただいたらどうだろう?


それでも興行としては採算取れないだろうが、
実験的として面白いんじゃないかな?
寺山修司が生きていたらやりそうだ。
そういえば彼の作品の中で「疫病流行記」というのがあった。
やってみるところはないだろうか?

 

といった妄想にとらわれっつ、久しぶりに頭の中が
エヴァだらけになったので、
「残酷な天使のテーゼ」を聴こうと思ったら、
知らぬ間にいろんな歌手がカヴァーしていて、
なんと、八代亜紀や藤あや子までこの歌を歌っている。

 

中でも究極は中森明菜。
これまた久しぶりにこの人の歌を聴いたけど、
これはすごい。
とんでもなく色っぽくてエモーショナルで、完全にノックアウト。
エヴァとのシンクロ率120パーセントだ。

 

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なごり雪 なごみ庵 なごり花

 

最初のピアノのイントロ10秒を聴いたら、
もうそれだけで涙腺が緩む「なごり雪」。

 

3月になるとついこの懐メロを口ずさむけど、
桜も咲いたし、今年はまさか・・・と思ってたら、
なんと明日は雪予報。

今日は半袖で過ごせる暖かさだったのに、
まさかまさかの二乗です。

 

今週は月刊仏事の「寺力本願」の執筆。
今回は月曜日に取材した横浜の「なごみ庵」というお寺の巻です。

ここの住職は「死の体験旅行®」の講師として有名。


「死の体験旅行®」とは、
もともと欧米の終末医療の現場で考案されたワークショップで、
カードとペンと想像力を使って、

死を疑似体験するというプログラム。

 

ポイントは自分が大切だと思っているものを
一つ一つ捨てていくところ。
それによって最後に、

自分にとって本当に大切なものだけが残る。

それはあなたにとって何なのか?

家族? 仕事? お金? みんなの幸福?

それとも・・・

 

僕も一度体験してみないと、と思っていますが、
うちの義母と散歩すると、
彼女はもうその域を超越しているのかも、と思えます。

 

家族とか、大切だと思ってきた記憶をどんどん捨て去って、
自分にとって本当に大切なもの――
歌や花を楽しむ気持ちだけが残っている。

 

認知症だからなんだけど、
べつに認知症にならなくても、
人間の脳が行きつく先は、結局、
自分一人の宇宙なのかなぁ。

 

なんだか人生のたたみ方を教えてもらっている気がします。
明日、雪が降ったら今年の桜も終わりでしょうか?
あと何回、桜の花を見られるでしょうかね?

 


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恐怖のウィルスをまき散らす正体不明の美女と対決する
ドラマチックな面白ストーリー。
この機会にぜひ。

 

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ビートルズのセッション音源から名曲の生い立ちを知る

 

作業中はいつもYouTubeでいろんな音楽を聴いているが、
一番多いのは、たぶん、
レッド・ツェッペリンやビートルズのセッション、
デモテープ、リハーサル音源だ。

このあたりの音源を聴いていると、当
時、親しんだ名曲の数々はこんなふうに生まれて育ったのか、
ということがたどれて面白い。

 

ビートルズは1969年1月、

ゲットバックセッションというのをやって、
ここから「アビイ・ロード」「レット・イット・ビー」という
2枚の名盤と映画「レット・イット・ビー」が生まれている。

 

このテープはそのセッションの中でも特に面白いもの。
 「ザ・ロング・アンド・ワインディングロード」を

ボサノバ風に歌っていたり、
「ストロベリーフィールズ・フォーエバー」の

ピアノの弾き語りが入っていたり、
「レディ・マドンナ」をロックンロールでやっていたり、
デビュー曲の「ラブ・ミー・ドゥ」まで遊び感覚でやっている。
ジョン・レノンのソロアルバムに入っていた

「ジェラスガイ」も歌っている。

「サムシング」など、完成版よりいいじゃんと思えるくらいだ。

 

いちばん面白いのは「ドント・レット・ミー・ダウン」や

「ディグ・ア・ポニー」における
ジョン・レノンの超絶的なふざけっぷり。

 

ジョン・レノンという人は、

ビートルズのリーダーだっただけでなく、
いろんな人間的な面を見せて、40歳で夭折してしまったので、
いまだに究極のロックレジェンドして語り伝えられているが、
彼の最も本質な部分は、ここに現れている気がする。

 

ジョン・レノンはヒーローでも、聖人でも、
子どもや家族を大事にする家庭人でもなく、
ふざけるのが大好きな、やんちゃな子どもだ。

 

その子どもが世界のに聴衆に受けて

大スターになってしまったために、
歯止めが利かなくなってしまった。


表向きは華やかだったが、
サージェントペパーズの頃には、
かなり精神的にヤバイ状態になっていたようだ。
もう誰も彼を止められない。

 

それを唯一、諫めることができたのが、
オノ・ヨーコという年上の日本人女性だった。
これらのセッションを聞きながら、
ヨーコさんはレノンにとって、良くも悪くも
母親のような存在だったのではないかと思う。

 


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独断と偏見のマイ・クリスマスソング・ベスト5

 

第1位 パッフェルベルのカノン/ジョージ・ウィンストン

「パフェルベルのカノン」は僕にとってクリスマスソングである。

ジョージ・ウィンストンの「December」に収録されたピアノ1本の演奏。

これまでいろんなカノンを聴いたが、これに勝るカノンはない。

どこまでも白い雪原の彼方に真っ直ぐに屹立するモミの木を思わせる。

まさに天使が降りてきてピアニストに憑依したかのような名演。

 

 

第2位 ハッピークリスマス/ジョン・レノン

1970年代の息吹が吹きこまれた曲。ジョンは「戦争は終わった」と歌う。でもその後に「IF YOU WANT」と続く。もし、あなたが望むなら、それは終わるのだ、というメッセージ。あれからずいぶん時代は変わったけど、世界の本質的な所は何も変わっていない。

 

 

第3位 戦場のメリークリスマス/坂本龍一

人界の歴史をすべて溶かし込んだかのような「サピエンス全史」的名曲。

人間とは何か? 幸福とは何か? をクリスマスに考えてみてもいい。

 

 

第4位 恋人がサンタクローズ/松任谷由美

バブル期は日本で最もクリスマスが盛り上がった時代だったのではないだろうか? これはその頃の代表曲。歌詞の面白さと高中正義のギターがお気に入り。山下達郎の「クリスマスイブ」もいいよ。

それにしてもあの頃、恋人だったサンタクロースを旦那さんにしたお姫様たちは今も幸せでい続けているのだろうか?

 

 

第5位 Silent Night/ロバート・フリップ

先日も紹介した、キング・クリムゾンの総帥ロバート・フリップ独自のギター奏法「フリッパトロニクス」による「きよしこの夜」。

今年は1人で過ごす「ソロクリ」が流行だとか。この曲をループさせて、年に一度くらい頭をリセットするために瞑想するといいかもしれない。

 


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フリッパトロニクスの「きよしこの夜」

 

あっという間にクリスマスがやってくる。

今年のテーマ曲は、

ロバート・フリップの「SILENT NIGHT」に決定。

 

最近、キングクリムゾン名義で

ヴォーカル入りのヴァージョンを耳にしたが、

やっぱりインストゥルメンタルの、このオリジナル版がいい。

 

瞑想ライティングのときに

よくかけているフリッパトロニクス。

今年1年のことについて静かに思いをめぐらせたい時は

ぜひ聴いてみてください。

 


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中学生時代の「エリナ・リグビー」の衝撃と 47年後の和訳演奏

 

●「エリナ・リグビー」の詩

中1の時、国語の時間で自分の好きな詩を選んで書き、

それに自作のイラストを添えて発表するという課題があった。

国語の先生はクラス担任の北原先生と言って、

僕にとっていちばん良い記憶に残っている先生だが、

今考えるとイキな課題を出したものだ。

授業参観の日に教室の後ろに貼り出していた。

 

僕は確か、高村光太郎の「無口な船長」という詩を書いたのだが、

昨日紹介したビートルズオタクのイナガキくんが選んだのは、

レノン・マッカートニーの「エリナ・リグビー」の詩だった。

 

イナガキくんは、すべてにおいて“そこそこ”の少年で、

勉強もスポーツも、とびきりできるわけでもなく、

さりとて明るい性格や芸人気質で教室を賑わすわけでもなく、

リーダーシップを発揮して人望を集めるわけでもない、

要するに僕と似たり寄ったりの目だたない生徒だった。

 

ビートルズオタクだったけど、

僕自身、ビートルズというバンドは知っていたが、

ほとんど意識していなかった。

 

そもそもその頃(1972年)、「ビートルズはもう古い」と言って

隣のロック好きな先輩はバカにして、ハードロックを聴いていた。

 

ところがその彼が書いた詩を見て、僕は仰天した。

「ああ、あんなにさみしい人たちは何処へ行くのでしょう?」

大人になりかけた子ども心に、その詩のインパクトはものすごかった。

その時からイナガキくんをちょっと尊敬するようになった。

 

●衝撃の弦楽四重奏

それから間もなくして、ビートルズを馬鹿にしていた先輩が

「兄貴の友だちから貰ったけど、俺はビートルズなんで聴かんから」

と言って、ビートルズの「オールディーズ」というLPをくれた。

 

「リボルバー」までのシングル曲を集めた、

いわゆるベストアルバムで、

「シーラブズユー」も「抱きしめたい」も「涙の乗車券」も

入っていたのだが、その頃はあんまりピンと来す、

最高に響いたのが「エリナ・リグビー」だった。

 

それまで抱いていた「なんだか歌謡曲っぽいロック」という

ビートルズのイメージが、

あの美しくて切ない弦楽四重奏で木端微塵に吹っ飛んだ。

生まれて初めての異次元の音楽体験だった。

そして、あのイナガキくんの詩のインパクト。

初めて「ビートルズってすごいバンドだ」と認識した瞬間だった。

 

・・・というのがマイビートルズ・ベスト10の

第7位「エリナ・リグビー」のマイストーリー。

 

●ああ、この孤独な人々

最近、YouTubeで和訳のカバーを聴いて驚いた。

ギター2本とアコーディオンの素朴な編成で

あの美しいメロディを奏でる。

これは素晴らしい!

イナガキくんも聴いているだろうか?

 

初めて聞いた頃、僕の中でエリナはまだ10代の少女で、

マッケンジー神父も「イマジン」を歌っていた頃の

ジョン・レノンに似た青年だったが、

年月を経た今は、二人とも齢を取った姿で現れる。

なんとなく孤独死や、無力な宗教者を連想させる。

 

もう半世紀以上も前からビートルズは

現代人の孤独と不安を歌っていた。

信じられるもの、心を寄せられるものが

どんどん消え失せていく時代において、

ますます多くの人の心をつかみ、深化し、

アレンジされて口ずさまれるだろう。

 


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勝手にビートルズ・ベスト10

 

中学1年生の同級生でイナガキくんというのがいて、

彼はビートルズマニアだった。

(ちなみにこれは1972年から73年の話。

ビートルズは僕が小学生の頃、とっくに解散していた)

 

イナガキくんは下敷きにびっちり

「自分の好きなビートルズナンバーベスト30」

というのを書いていた。

 

せっかく彼のことを思い出したので、46年後の今、

僕も自分のマイビートルズナンバーを書いてみた。

 

30書けるけど、ちょっと多すぎるかなと思うので、

とりあえずベスト10で。

 

1.レット・イット・ビー:

もともとのLPに入っている、間奏とエンディングでジョージ・ハリスンのリードギターが炸裂するバージョンが最高。中間部のリンゴ・スターのドラミングもさりげに印象的。最近はYouTubeでいろんなバージョンが聴けて嬉しい。永遠の名曲。

 

2.ヘイ・ジュード

定番中の定番だが、やっぱり良いものは良い。ジョン・レノンと最初の妻のシンシアさんが離婚して、残された息子のジュリアンに贈った曲だというバックストーリーを知ると、なおのこと胸に響く。僕の解釈ではこの曲はジョンとポールの訣別の歌であり、青春ビートルズのラストソングである。

 

3.涙の乗車券

ジョン・レノンの天才ぶりが凝縮された曲。甘く切なく、それでいてロックするヴォーカルが最高。

 

4.シー・ラブズ・ユー

初期の最高傑作。たった2分30秒にビートルズの魅力が濃縮。中学の頃、女の子がこの曲に合わせてお尻を振りながらジーンズを履く、EDWINのCMがあって、いつも鼻の下を伸ばして見ていた。

 

5.ア・デイ・イン・ザ・ライフ

アルバム「サージェントペラーズ」のラストを飾る、日常と幻想を往復する壮大な楽曲。現代人の孤独と不安を圧倒的な構成力で表現している。文学的なようでありながら、ただの遊び・ジョークとも思えるのがビートルズのすごさ。1967年の時点で、こんな音楽を作ったバンドはなかった。プログレッシブロックの元祖。

 

6.ストロベリー・フィールズ・フォーエバー

「ストロベリー・フィールド」はリバプールにある孤児院。ジョン・レノンは別に孤児ではなかったが、ちょっと家庭環境が複雑だったようで、ストロベリー・フィールドで遊ぶ自分の姿を夢想していたのだろう。そんな少年時代の心象を作品化したイマジネーティブな楽曲で、これまた後のプログレッシブロックに繋がる傑作。

 

7.エリナ・リグビー

僕が初めてビートルズにインパクトを受けた曲。その話長くなるのでまた今度。

 

8.抱きしめたい

「涙の乗車券」と同じく、ジョン・レノンの魅力が炸裂する一曲。ノリが最高。

 

9.ドント・レット・ミー・ダウン

YouTubeで「LET IT BE」製作のために行われたゲットバックセッションが上っているが、その中でこの曲をやっている時のレノンのふざけぶりが最高に面白い。それ抜きでもすごく好きな曲。何度聴いても飽きない。

 

10.トゥモロー・ネバー・ノウズ

「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」「ストロベリー・フィールズ」と並ぶビートルズの3大プログレナンバー最初の曲。サウンドエフェクトを採り入れた実験的な曲で、その後のロックミュージックに与えた影響を考えて音楽史的価値が高いが、それ以上に、半世紀以上経った今でも、未だに新鮮さに溢れた曲であり続けているのはなぜだろう?

 


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さすらいのレコード・コレクター:男のバカバカしくて痛快な生きザマ

 

先日、レコード屋さんの仕事をやったこともあり、

たまたま近所の映画館でかかっていたので観に行った。

1時間強のドキュメンタリー映画。

 

ジョー・ハザードはクレイジーなレコードマニア。

先入観念で、いわゆるジャズマニアなのかと思ってたら、

それ以前のルーツ音楽――ブルース、カントリー、

ブルーグラスなどのレコードのコレクターなのだ。

 

製作年が2003年で、この頃、ジョーは見た感じ、

70歳前後。

今も存命中だとすれば、もう80代後半。

僕の父とそう変わらない齢だ。

ということは昭和ひとけた。

1930年代の生まれらしい。

 

彼が愛する音楽は、その自分が生まれる前と生まれた頃の

1920年代~30年代、今から1世紀近く前の、

主に黒人音楽だ。

 

音楽ソフトはもちろんアナログレコード。

それも78回転のSP盤。

僕もこんなの資料館みたいなところでしか見たことがない。

ハードは蓄音機である。

 

で、このおっさんはオンボロのアメ車を乗り回して、

要らないレコードをはるばる遠くまで出張買取に出かける。

今でいう中古レコード屋みたいなことを

1960年代頃からやっている。

 

すでにこの頃からSP盤や蓄音機は過去の遺物で、

売りたい人たちは、テレビを買うお金の足しにするために、

モノ好きなレコードコレクターに二束三文で

大量のレコードを売っていた。

取引額は$でなく、¢の世界。

10セントとか20セントだ。

 

そんなわけでジョーは、

長年溜めこんだ2万5千枚のレコードが棚に並ぶ

音楽のお城で、いつも葉巻を吹かしながら、

リズムに乗せて、5歳児みたいに

足をバタバタ鳴らし、

あげくに私設ラジオ局まで作って、

お気に入りの曲を放送する。

とんでもなお大人子どもだ。

 

当時の若者音楽であるロックが大嫌いで、

娘が親への反抗の意味もあって買ってきた

ビートルズのレコードも捨ててしまったと言う。

 

この映画は、そんなおっさんのクレイジーぶりを描くのだが、

なぜ彼がブルーグラスなどの音楽にそこまでハマったのか、

仕事は何をしている(してきた)人なのか、

音楽を聴く以外にどんな暮らしを送っているのかということなど

一切描かれない。

 

家族も、成人して中年に近くなった娘が

「こんなお父さんだった」ということをコメントするために

2,3ヵ所、短く登場するだけだ。

 

カメラは、ただひたすら楽しそうに音楽を聴き、

車に乗ってレコードを買い集めるジョーを追うだけで、

特にこれといったドラマも起こらない。

 

ジョー自身も特にこれといった

音楽に対する主義主張や評論家じみた批評や

マニア然としたうんちくをぶつわけじゃなく、

ひたすら「これがいい」「あれが最高」と言うだけ。

 

ちなみに彼はロック以前にジャズさえもいい作品は

戦前のもので、大恐慌・2次大戦以降の音楽は

とても聴けないと言う。

まさしく古き良きアメリカンフォークの偏愛者と呼ぶしかない。

 

結果的に、彼は100年後の現在のポップミュージックに繋がる

アメリカ音楽の歴史の貴重な生き証人であり、

この映画にはそういう価値があるのだが、

ジョーにとってはそんなこと、どうでもいいのだろう。

 

何も人間を深く描き、

ドラマチックで感動的な出来事を伝えるだけが

ドキュメンタリーではない。

 

「俺には生涯熱中できるものがある。

傍から見たら単なるバカに見えるかもしれないけど、

楽しい音楽を聴いてりゃ、そんなことどうでもいいんだ」

 

そんなジョーの声は聞こえてきそうだ。

 

人の役に立つわけでなく、社会に貢献するわけでもない。

感動的でもなければ、深い意味があるわけでもない。

しかし、彼の音楽に対する偏愛ぶりは痛快で、

どこか胸を打つものがある。

 

これもまた立派な男の生きザマである。

 


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若者がレコードを聴くのは、デジタル時代へのアンチテーゼなのか?

 

最近のレコード事情について勉強していて、

「デジタル化が進む現代に対するアンチテーゼとして」

という一文に出会った。

 

音楽産業マーケティング「MusicWatch」が調べたところ、アメリカにおけるアナログレコードの購入者は35歳以下が全体の7割を占め、学生時代からインターネットやパソコンのある環境で育ってきたデジタルネイティブ世代の需要が高いようです。

 

その理由は、デジタル化が進む現代に対するアンチテーゼ。楽に音楽を聞くのではなく、A面からB面へとひっくり返すような手間こそがライブやフェスに参加するような「非日常的な体験」として若者たちから支持されています。

 

また、レコードならではの「所有感」も若者は魅力に感じているようです。デジタルは簡単にコピーされてしまうのに対して、レコードは自分だけのもの。「個人の所有物」という感覚が持て、他の人とは違う満足感や達成感を味わえることが嬉しいようです。

 

「どうやって売る? どこに売る? レコード買取ナビ」

http://www.dokoniurou-record.net/market/youth.html より引用

 

 

一言で言ってしまうと、今の世の中で、

自己喪失の恐怖を

若い連中は肌でひしひしと感じているのだ。

 

ハロウィーンの子供じみたバカ騒ぎも、

そうした不安や恐怖から逃れる、一つの手段なのだろう。

 

大人は否定的に見るが、

僕も10代・20代だったら、

同じように渋谷に繰り出して騒いでいただろう。

今はそういう気分にならないことに、

ちょっぴり寂しさを覚えたりして。

 

いずれにせよ、今年は大した事件やトラブルが起こらなくてよかった。

 

話を戻すと、自己喪失の恐怖に襲われることは、

何も今に始まったことではない。

昭和だって、明治だって、江戸時代だってあっただろう。

むしろ、それは一生懸命生きている証拠なのではないか。

 

ただ、現代は情報化が進んでいるので、

誰もがより自覚的になっているのだと思う。

昔と比べて、みんな識字率が上り、

知識が豊富になったのだからしかたがない。

 

潰れないようにがんばれと言うしかない。

でも、レコードを発掘して、

デジタル化時代のサバイバル方法を工夫するなど、

彼らは彼らで、ちゃんと対策をしている。

 

子どもは放っておいても育つもの。

大人はそんなことに余計なおせっかいをする前に、

子どもらが呆れるような、自分たちの言動を見直した方がいい。

まだまだ先は長いんだから。

 


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見捨てられた恋人のようだったアナログレコードが、 なぜ絶滅の淵から回帰したのか?

 

●古き時代への浪漫、だけではない

長年、レコードコレクターがいるのは知っていたが、

それは考古学者が目を輝かせて

恐竜の化石を発掘する

―ーそうした喜びに似ているんだろうと思っていた。

 

ひとことで言えば、過去へのノスタルジー。

古き時代への浪漫、郷愁。

 

年輩のコレクターにはこれに当てはまる人が多いようだが、

最近のレコード事情を探ってみると、

どうもそれだけではない。

 

アナログレコード未体験の若い世代の中にも

結構レコードファンが増えているのだと言う。

 

どうやら彼らはレコードを、

CDやYouTubeやデジタル配信と競合するものでなく、

まったく別種のメディアとして捉えているようだ。

 

●アナログ未体験世代に非日常を提供する

それは形態の違いというよりも、

「聴くスタイル」の違いだ。

 

音楽を聴くのなら、レコードかラジオ、プラス、

ごく一部のテレビ音楽番組など、

非常に限られた選択肢しかなかった僕たちと比べ、

今の若い奴らは何でも選び放題だ。

それにお金もたいして掛らない。

 

その豊富な選択肢の中から、

他と比べて高価なアナログレコードを選ぶのは、

なぜなのか?

 

また、デジタル配信などで聴いている

同じアーティストの同じ曲を、

わざわざアナログレコードで聴くというのは、

どういう心理が働くからだろうか?

 

もちろん人それぞれ理由があると思うが、

あえて概論として考えてみると、

それは生活の中のいろいろなシーンに合わせて

「聴くスタイル」を変えるから、ではないだろうか。

 

デジタル系の音楽が、

掃除や洗濯の時のBGM、

仕事をするときのBGMなど、

日常に溶けこんだものだとすれば、

 

アナログレコードは同じアーティスト、同じアルバム、

同じ曲を聴いても、

それは「非日常体験」になるんだろうと思う。

 

プレイヤーの上に盤を置き、

アームを上げて、静かに針を落とし、

数秒間、演奏が始まるのを待つ。

 

そんな面倒な作業を通して得られる、

何ともいえない緊張感は、

演劇や映画を観る時の体感に似ている。

 

ライブコンサートも非日常体験だが、

それと異なる、自分だけの非日常の世界。

間断なく入り込んでくる情報という名のノイズに

侵されない聖なる時間。

 

そういう世界・時間を内に持つことは、

事あるごとに「社会の歯車」的な感覚を覚え、

アイデンティティを見失い、

日々、生きる意味を問われる今の時代にあって、

自分を育てるのに大切なことだ。

 

ジャケットなどのアートワーク、

歌詞カード、ライナーノーツ、

さらにさまざまな「おまけ」など、

その音楽にまつわるストーリーが

パッケージされたレコードは、楽しさとともに、

そうした自己育成のタネも与えてくれる。

 

●アナログレコードが真価を発揮する時代が来る

1980年代後半の軽薄短小の時代、、

重くて嵩張って、収録時間も短くて、

もはや無用の長物じゃないかと思ったレコード。

 

多くの人が、こんなもの、20世紀の化石じゃないかと審判し、廃棄・二束三文売却の対象となったレコード。

 

見捨てられた、かつての恋人のように、

ネグレストされた子どもか老人のようになってしまったレコード。

 

けれども、その命はレコードを愛する人たち、

レコードを生きる支えにする人たちの手によって守られ、

この30年余りの間、途絶えずに継がれてきた。

命は耐えていなかった。

 

絶滅の淵から回帰したアナログレコード。

一度廃れたからこそ、レコードの文化は

これから先、その奥底に眠っていた真価を発揮し、

人間の心を癒し、活性化させるメディアとして

再び成長するのかもしれない。

 

新しい仕事を戴いたことをきっかけに、

レコード文化復活にまつわる様々なストーリーを探り、

描いていけたら、と思う。

 


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アナログレコードとの再会

 

とあるレコード店のコピーライティングを

やることになった。

音楽、レコードは大好きなので、とても嬉しい。

 

が、待てよ。

じつはもう30年以上、まともにアナログレコードを聴いてない。

 

僕がアナログレコードを熱心に、

それこそ盤が擦り切れるほど聴いていたのは、

中学生から25歳まで。

 

ロンドンで働くために、それまで住んでいた

江古田(練馬区)のアパートを引き払った時、

ステレオセットを売り払ってしまい、それっきり。

今から思えば、わずか10年余りの期間だ。

 

でもその10年は今の10年と全然違っていた。

いわゆる日常生活やお金を稼ぐ仕事は適当にうっちゃいといて、

本と音楽と演劇・映画に浸っていた。

 

一枚のレコードはA面・B面合わせて

短いのだと30分少々、長くても50分くらい。

でも、その1時間に満たない時間が、

とてつもなく豊かだった。

 

仲間や友達、あるいは付き合ってた女の子と

いっしょに聴くことも、たまにはあったが、

基本的に一人で聴いていた。

 

酒を飲んだり煙草を吸いながら、

集中してひたすらその音楽世界と向き合っていた。

アナログレコードではそれができた。

 

それがCDになり、ネット配信になり、

ほとんどがもうBGMというリスニングスタイルだ。

 

好きな曲を2~3曲、手を止めて聴くこともあるが、

レコードを聞いていた頃の感覚とはほど遠い。

 

実はCDに移行した後も、

200枚くらいのレコードを引っ越しのたびに持ち歩いていた。

 

20年以上も聴いてないのにずっと持っているのはどうもなぁ、

部屋も手狭だしなぁと、、

7年ほど前に処分することを思い立った。

 

某レコード店に何度か通い、大半を売りさばいたが、

話によると、その頃は最もレコードが不人気だった時代に

合致するらしい。

 

次いで3年ほど前に、義弟がコレクターになり始めたので、

残りは彼に譲ることにした。

 

以前、父の職務室兼応接間だった実家の一室が、

今では彼のご自慢のオーディオルームに変貌し、

棚にどっさりアナログレコードが収まっている。

 

そのうちの百枚ほどが自分の人生の半分を

連れ添ってきたレコードだと思うと、なんだか不思議な気分になる。

 

しかし、それでもまだ最後の10枚ほどが手元にある。

思いがけず、仕事で再びレコードの世界に入れるとは・・・

人生、面白い。

割と自分思い通りになるものかも知れない。

 

というわけで、最近のアナログレコード事情を

勉強し始めたところです。

 


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よみがえる死者・よみがえる歌:AIの音楽

 

Nスペ「AIでよみがえる美空ひばり」を観た。

AIによってよみがえった美空ひばり(音声+映像)が

30年ぶりに新曲を披露する。

そのメイキングだ。

 

僕はべつに美空ひばりのファンではないが、

このAIの新曲「あれから」」には心を揺さぶられた。

若手作曲家のメロディに、「川の流れのように」を書いた

秋元康氏が詞を付けたものだ。

 

正直、今まで聴いた身空ひばりの歌の中で最高だと思った。

そして、AIはもう芸術の分野でもここまでできるのかと

驚愕した。

 

今、世界中でこうしたAIによるミュージシャンの再生の

試みがされているようだ。

この番組でもテレサ・テン、バディ・ホリー、

マリア・カラスなどの例が紹介されていた。

 

懐メロ趣味のおじさんみたいなセリフだけど、

やっぱり昭和の時代、海外なら1950年代半ばから

1990年代前半あたりまでの大衆音楽・

ポップミュージックは素晴らしい。

 

ものすご~く大ざっぱにいうと、

あの時代はあらゆる歌・音楽に

「もっと自由になっていいんだ」

「もっと自由に表現できるんだ」という

時代の空気がこめられていた。

 

もうああいう時代は帰らない。

ああいう楽曲群は生まれない。

 

今の若い連中もたぶん、それは認めている。

新しい曲は、必ずあの時代の音楽の影響下に作られる。

カバー曲も量産されている。

 

歌唱技術・演奏技術は進化しているので、

みんな、めちゃくちゃうまいし、感心するアレンジもたくさんあるが、

オリジナルはやっぱり30年から50年前のものがほとんどだ。

 

権利問題とかいろいろ障壁があるので、

そう簡単ではないと思うが、

こうしたAIによるミュージシャンの再生は

どんどん増えるだろう。

そしてビジネスにもなるだろう。

 

エルヴィス・プレスリー、ジョン・レノン、

デビッド・ボウイ、フレディ・マーキュリー

マイケル・ジャクソン・・・

 

AI・ロボット技術に対する

不安・猜疑はあるものの、

何よりも世界中の人々が死者たちの再来を待っている。

これからの時代、がんばっていく力を得るために

あの時代の歌・音楽を共有した人たちの心が

ミュージシャンをよみがえらせる。

 

身空ひばりの「あれから」、本当に良い曲ですよ。

 


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純情ストーカー男と純心DV願望女の昭和歌謡

 

昭和歌謡にはストーカーするする男と、

DVしてして女が登場する。

 

前者の代表は坂本九の「明日があるさ」、

後者の代表は奥村チヨの「恋の奴隷」か。

 

高井戸図書館にはCDも置いてあるので、

歌好きな義母のために2枚ほど借りてきた。

 

耳が悪いので、そのまま聴こうとすると、

近所迷惑な大音量にしなくてはいけないので、

ヘッドホンで聴いてもらう。

 

全30曲、義母はノリノリで声を出して歌いまくる。

同じ家にいる僕としては、ちとうるさいなと思うが、

これくらいなら近所迷惑にならないからいいかとガマン。

 

認知症なのだが、若い頃に聴いた歌は

脳のどこかにこびりついていて、

心地よい世界にトリップできるようだ。

 

それにしても、義母が歌うと歌詞が気になる。

「明日があるさ」も「恋の奴隷」も大ヒット曲だが、

現代なら発禁になりそうな内容だ。

 

しかし、明るいメロディーと

歌い手の九ちゃんのキャラクターも相まって、

「明日があるさ」の主人公のストーカーまがいの行為は、

愛すべき純情男の、片思いの表現とされていた。

 

そして、子犬のように膝に絡みついたり、

「悪い時はどうぞぶって」と言う「恋の奴隷」の女は、

男にとってはたまらなく可愛い純心女だった。

 

もちろん当時は、ストーカーや

ドメスティックバイオレンスなんて言葉自体、

存在してなかったし、

流行歌や作詞家が悪いわけでもない。

 

けど、子どもの虐待が頻発し、

その原因の一つに、男の女に対するDV、

支配構造があると聞くと、

やっぱり気分が落ち着かなくなる。

 

僕も子どもや若い時分には、人生の先輩たちに

「女ってのはちょっとくらい殴って、言うこと聞かせなきゃだめだ」

なんてことをよく言われた。

 

半ば冗談であったり、子ども・若造の前で

男気を見せようという意識がはたらいて、

そんなセリフになったんだろう。

ただ、やっぱり昭和はまだ男が威張れた時代、

言い換えれば甘やかさていれた時代だったんだなと思う。

 

人間は感情で動く生き物だ。

理屈は感情で行動した後の言い訳・後付けに過ぎない。

歌は感情に深く訴えかけるからこそ、

認知症になった義母も憶えている。

 

男尊女卑(とあえて言う)の時代の空気を取り込んだ

昭和歌謡に親しんできた世代の人たちが、

セクハラやパワハラという概念に理解を示し、

現代の考え方に順応していくのは、

それだけですごいことなんじゃないかな。

 

けど、その遺伝子を引き継いでしまった若い人たちが、

まだまだ大勢いるようだ。

 

余談だが、「恋の奴隷」を歌った奥村チヨさんは

昨年、71歳で引退したそうだ。

「恋の奴隷」(改めて見るとすごいタイトル!)が

リリースされたのは1969(昭和43)年。

彼女は22歳だったが、あの歌詞には抵抗があった、

とコメントしていた。

 

けど、「わたしを奴隷にして」と歌うことで、

当時の男の心を虜にしたんだよね~。

 


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般若心経(cho Ver)は21世紀のプログレ

 

エンディング産業展のイベント「次世代僧侶オブザイヤー」で知った。

坊主バンド、昨年末のアジアツアーライブ。

世界は宗教から離れつつある。

それを人々のもとに取り返そうという試み。

 

てか、そんなリクツはどうでもいい。

これはすごい。カッコいい。

僕に言わせれば、これぞ現代のプログレッシブロック。

若い坊さん、面白いじゃないか。

 


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生きててもだいじょうぶ、死んでもだいじょうぶ

 

年寄りのつぶやきとして「変わってしまった・・・」というのがある。

世の中変わってしまった。

人の心が変わってしまった。

みんな変わってしまった。

 

今年90になったうちの母親も、僕が実家に帰ると口癖のようにそう言う。

 

だいたいこの「変わってしまった・・・」というつぶやきの中には、

「もう私の居場所はない」という心の声が含まれている。

 

僕は母親に「だいじょうぶだよ」と声をかける。

そう言ってから「何が“だいじょうぶ”なのだろう?」と考える。

 

そして、ちょっと恥ずかしいが、

「お母さんがこの家にいるだけでありがたいんだよ」と言う。

 

「そうかい」と、母は一応、わかったように言うが、

心底納得しているとは言い難い。

 

そこでこちゃごちゃ説明しても仕方ないので、そのままにしているが、

ほんとうに何が“だいじょうぶ”なのだろう?

 

たぶん、そのまま生きていてもだいじょうぶだし、

死んでもだいじょうぶだ、ということなのだ。

 

もういあんまりやりたいこともないようだし、

欲しいものもないと言う。

母に「がんばって生きろ」とはもう言えない。

幸い健康で、食欲は旺盛なので、食事制限など受けることなく、

自分の好きなものを食って暮らしてほしいと願うだけだ。

 

「人間、どんな時もがんばって生きなきゃいけない」は正論だと思う。

けど、なんだか暑苦しし、息苦しい。

無責任に言われると、時にムカつくことさえある。

おまえに何がわかるんだ、と言いたくなる。

 

書いてきたのは年寄りの話だが、年寄りに限らず、

最近は世の中の変化についていくので

いっぱいいっぱいの人が大勢いるのではないか。

 

優秀さを求められ、効率を求められ、

AI・ロボットが普及したら、お払い箱になると脅されて、

余裕を失っているのに

「人間、どんな時もがんばって生きなきゃいけない」

なんて正義の味方から正義の言葉を聞かされても、

「うるせー!」とブチ切れるのがオチだ。

 

こういうときはやっぱり神様・仏様だな。

ポール・マッカートニーのような天才さえ、

ビートルズの終焉を悟った時は、

これが終わったらオレはどうなるんだろう?

レノン=マッカートニーを解消してやっていけるのか?

この先、音楽で生きていけるのだろうか?

と心配していたのだと思う。

 

「LET IT BE」はそこから生まれた。

神様・仏様に

「なすがままになさい。あなたはそのままでいい。

生きていても、死んでもだいじょうぶだ」

 

そう言われるだけで人間は元気を取り戻せる。

 


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ロンドンのストリートミュージック

 

ストリートミュージックが商品になった街・ロンドン。

 

1週間前にロンドンのセントパンクラス駅の駅ピアノの話を書いたが、

街頭の音楽は、今やすっかりこの街の観光資源の一つである。

 

歴史的な古い建造物の立ち並ぶ街の中で、ギターをはじめ、

アコーディオン、バイオリン、管楽器、キーボードなど、

思い思いの楽器を手に、名も知らぬ貸家演奏者が

得意のパフォーマンスを披露する。

その光景は確かに楽しく、絵になる。

さしずめ、どこかの物語世界の中に入ったような気にさせてくれる。

 

演奏する曲もロックからジャズ、クラシックまでさまざま。

けっしてみんながみんな、上手いわけではないが、

やる側も聴く側も、あまりそんなことは気にしていない。

 

残念ながら、日本の都市で同じことを、いくら上手いミュージシャンがやっても、

こんな魅力的なテイストにはならないだろう。

 

30数年前、ロンドンで暮らし始めたばかりの頃、

地下鉄の構内や町中で彼ら演奏しているのを聴いて、

「おお、俺はロンドンにいるんだ」と、胸を熱くしていたが、

当時、彼らは街の邪魔者で、何割かはホームレスだった。

 

1980年代半ばの英国は経済的落ち込みから復興する途上で、

鉄の女マギー・サッチャーがそれまでの福祉政策を全面的に見直して

大ナタを振るっている最中だった。

 

その頃まだニートという言葉は生まれていなかったが、

多くの若者は職もなく、路上に放り出され、途方に暮れ、

歌でも歌わずにはいらなかった。

 

警官や地下鉄の職員は、大目に見ていたものの、

やはり目立つことをすると追いはらっていた。

 

けれども追いはらっても追いはらっても、

虫のようにわいてきて、今度は隣の駅で、

一本向こうの通りで歌ったり、演奏したりしている。

 

それが30年たって、社会は彼ら(の「子どもたち)を

認めるだけでなく、

観光客用の売り物にしてしまった。

 

歴史を売り物にするこの国では、

わずか30年前の歴史もまた、

立派なメニューとして陳列され、

求めるお客様をおもてなしする。

 

生活事情は30数年前と大して違わないと思う。

物価の高いロンドンで、歌って暮らすのは楽じゃない。

EU離脱問題だって気が気じゃないだろう。

 

それでも歌うのをやめない。

誰かがいなくなっても、またべつの誰かが、

どっからかやってきて、

楽しそうに歌ったり踊ったりしている。

 

人生にはやっぱり音楽が必要だ。

ロンドンにはそう思わせてくれるろくでなしが大勢いる。

 


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いろいろな人が弾くから、心に響くロンドンのピアノ 

 

ピアノを演奏するのが好きな人、自信のある人は、

ロンドンに行って一曲弾いてみるといいと思う。

きっと貴重な体験・思い出ができる。

人生が変わることだってあり得るかもしれない。

 

ロンドンの都心にあるセントパンクラス駅構内に一台のピアノが置いてある。

通りすがりの人が、誰でも自由に弾けるようになっている。

 

今日、お昼を食べながら、そのテレビ番組

「駅ピアノ」(NHK-BS1)を見ていた。

いろんな国籍の人が足を止めて弾く。

 

旅行で来た人もいれば、在住の人もいる。

ロンドンは多国籍都市なので、イギリス人、ロンドン在住者でも人種はさまざま。

 

性別はもちろん、年齢もバラバラ、職業もいろいろ。

そして演奏する曲も、クラシック、ジャズ、ロック、ソウル、

ポップスなど、バラエティに富んでいる。

 

ポーランドから来た旅行者で、クイーンの大ファンだという男性は、「ボヘミアン・ラプソディ」を弾いた。

 

ミュージシャンを目指し、弾き語りを披露する若い男性。

 

地方から遊びに来た仲良しの女子高生のカップル。

 

同じく地方から来たが仕事が見つからず、

現在はホ―ムレスだと言う男性のピアノは

ちょっと物憂げだが、美しかった。

ここでピアノを弾くことが、

彼の心の支えになっているようだ。

 

ルーマニア人の奥さんとラブラブな

ナイジェリア人の男性が、ゴスペル風の讃美歌を轢く。

そういえばアフリカの国は半分くらいの人が

キリスト教らしい。

 

8歳のかわいい男の子が、即興でブギウギ(めちゃくちゃ上手い!)を弾いていると、

プロのミュージシャンの男性がジョイントして、

アドリブ合戦が繰り広げられる。

 

1ヵ月前、脳梗塞で倒れた男性は、無事、一曲弾き終えて

安堵した表情をしていた。

 

ドイツ人の音楽教師は替え歌で、EU離脱で混迷する

イギリスに向けて

「イギリスよ、離れるな。帰ってきてくれ」と歌った。

 

ブルーのおしゃれなネクタイを締めた90歳の男性は、

「音楽は生きがいだった。ピアノと出会い、

弾けることができて、私の人生は幸運だった」と

しみじみ語った。

 

どうもこのピアノは、2012年のオリンピックの時に、」

エルトン・ジョンが寄付したものらしい。

去年、ロンドンを旅したときは、

セントパンクラスにも行ったのに、

不覚にも見過ごしてしまった。

ちと残念、

 

テレビ番組なので、うまい人しか登場しないが、

たぶん誰でも触れると思う。

たくさんのオーディエンスが行き交っているので、

自信のある人はトライして楽しませてほしい。

 

この番組はロンドンに限らず、

各国の駅や空港に置いてあるピアノと、

それを演奏する人たちを映し出すドキュメンタリー。

 

登場する人たちのプロフィールを紹介するテロップが出て、

演奏後にそれぞれの人のコメントが入る。

 

途中で、その国や都市のインフォメーションが何度か入る。

 

たったそれだけだが、音楽が楽しめるとともに、

ピアノを愛する、それぞれの人の人生の背景を

垣間見ることができて、本当に面白い。

 

番組の最後には、黒人のミュージシャンが、

障がいのある女の子とのセッションを見せる。

さらに、周囲のオーディエンスに呼びかけて、

サッカーのイングランド応援歌を演奏して盛り上げた。

 

やっぱりそうだ。

音楽には人をつなぐ力がある。

そしてやっぱり、

世界はいろいろな人がいるから、生きてて面白い、

いろいろな人がいるから、世界は成り立っている。

いろいろな人が弾くから、心に響くロンドンのピアノ。

 

今度行ったときは、わが十八番「かえるの合唱」を弾こう。

 


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フリッパトロニクス 幻の起動音

 

 キング・クリムゾンのロバート・フリップが開発したフリッパトロニクスの音がWindowsの起動音に採用された――というニュースを、ラジオで、確かJ-WAVEのジョン・カビラがナビゲーターをやっていた朝の番組で聞いたことをふと思い出した。

 

 確か2000年をちょっと過ぎた頃だと思う。

 反響も大きく、僕も楽しみにしていた。

 

 しかし、それはガセネタだったのか、その後もフリッパトロニクスはWindowsで使われることはなかった。

 

 ブライアン・イーノやロバート・フリップが1980年代に始めた環境音楽 ambient musicは今でも仕事のBGMや、頭を休めたい時によく聴く。

 

 あの時代よりも、むしろ21世紀の今の時代に合っているのではないかと思う。

 かつては空間に溶け込むような感触だった環境音楽の音は、今だとそれに加えて、時間にも溶け込んでいるように聴こえる。

 

 ちょっと瞑想音楽めいたフリッパトロニクスの世界。

 20年近くの時を超えて、Windowsの起動音。

 今からでも遅くないのではないか。

 


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ガーナのお葬式は、泣き女、棺桶ダンス、ポップアート棺桶

 

 ガーナと言えば某菓子メーカーのチョコレート。おいしい。

 チョコレートの原料はカカオ豆。

 西アフリカのガーナ共和国は世界有数のカカオ産出国。

 意外だったが、ほかにGOLDや石油の産出量も有数だ。

 

 そしてサッカーファンはご存じ、アフリカのチームとしてはトップクラスの実力を持っている。だ。

 しかし、もう一つ、世界に冠たるすごいものがある。

 それはお葬式であり、棺桶だ。、

 

 ここのところ、アフリカ諸国の生活文化に興味を持って、仕事の合間にちょこちょこネットで調べている。

 

 「月刊仏事」でエンディング関係の記事を書いているので、どうしても葬式とか供養のことが気になるのっだが、どうもガーナのお葬式の派手さはアフリカだけでなく、世界でも断トツらしい。

 

 ガーナはかつてイギリスの植民地だったこともあり、約7割がクリスチャン。

 大都市に暮らす富裕層はもクリスチャンが大半のようで、彼らは一般人の平均年収の4倍から10倍にあたる費用を葬式に使うらしい。

 故人が亡くなってから遺体を冷凍保しておき、約3ヶ月後、満を持して週末3日間かけて盛大に、飲んで食って、歌って踊って、お祭り騒ぎをするというのだ。

 

 この国には葬式を盛り上げるために「泣き屋」、そして棺桶の「担ぎ屋」がいて、このプロフェッショナル達が、まさしくプロの技を見せる。

 

「泣き屋」は一般的には女の団体で、「泣き師協会」というものもあるらしい。

 静かな啜り泣きから、地面に転がっての号泣、謎の「シマリス泣き」というものまで豊富なmメニューを取り揃え、時間やシーン、人出などに合わせて会場を盛り上げるために変幻自在の泣きパフォーマンスを披露するという。

 

 「泣き屋」が女の仕事なら、「担ぎ屋」は男の仕事。

 スーツを着込んだダンディーな奴らがお神輿よろしく棺桶を担ぐ。

 と言ってもただ担いで練り歩くだけではない。

 陽気でリズミカルなハイライフミュージックに合わせて、棺桶を担ぎながら踊る、いや、踊りながら担ぐのか。

 とにかくこれがえらくカッコいい。

 

 周囲には演奏するバンドマンやダンサーたちもわんさかいて、いつ果てるともないビッグパーティーが続く。

 

 ガーナでは人は死後、異なる世界でふたたび新たな人生が始まると信じられており、「死」は「新たな始まり」と捉えられるのだそうだ。

 したがって葬式とは、故人の死は悲しむものでなく、新たに生き始める故人をみんなで祝福するための儀式なのだ。

 

 

 さらにもう一つすごいのが、その棺桶。

 ガーナの棺桶は世界一ユニークと言っても過言ではない。

 

 ガーナ人は、故人の人生にちなんだ棺桶をオーダーメイドする。

 たとえば、パイナップルの形をした棺桶は、パイナップル農家。

 魚の形をした棺桶は、漁師の棺、

 

 仕事だけでなく、自分の人生に幸をもたらしてくれたもの、叶わなかった夢や希望などを様々な形にして棺桶を作るというのだが、これがポップで可愛くてファンキーだ。

 

 

 いわゆるアート作品として海外からの評価も高く、プロのアート館桶屋が 何人もいるようで、希望があれば海外からの注文も受けるという。

 

 備えあれば憂いなし。ガーナのアート棺桶。終活している人はオーダーメイドを選択肢に入れておいてもいいのでは?

 


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ドラム少女の快演:もはや音楽やるのに子どもも大人も関係なし

 

 8歳のドラム女子(現在は9歳になってるらしい)・よよかちゃんの超絶パフォーマンス。
 曲目はなんと、Led Zeppelinの「Good Times Bad Times」だ。

 とてもこの小さな体が叩き出しているとは信じられない、ぶっといグルーヴ。
 ジョン・ボーナムが生きてたらぶっとびそうな演奏――いや、もしやボーナムの魂が乗り移っているのか?

 でも彼女はべつにZep専門じゃなくて、ロックやファンクのいろんなナンバーを叩きこなしてUPしている。
 そのどれもが完コピ。
 ちびっこががんばってるとか、上手にやってるといったレベルをはるかに超える、プロフェッショナルのパフォーマンスだ。
それに加えて、彼女の笑顔のかわいいこと。

 もはや音楽やるのに子どもも大人も関係なし!の時代に突入している?

 


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人間は幸せに慣れると、幸せであることを忘れてしまう

 

You Tubeで音楽を聴いている。

僕が聴くのは大半が60年代・70年代・80年代のロックやポップスだが、そこに付いているコメントを読むのが結構好きだ。

時々若い連中も書いているが、やはり僕と同じくらいの世代や、もっと上の世代が多いようだ。

本や映画のレビューと違って音楽は気軽にレビュー出来るので、いっぱい書き込まれている。

そこでちょくちょく目にするのが「この時代は良い時代だった」的コメント。

気持ちはわかる。

あなたも若かったしね。

確かにあの頃は良い時代だった。

 

でも、その良い時代の音楽を、当時はまったくの幻だった音源や映像、もしレコードやテープがあれば、何万円、何十万円出しても聴きたい・見たいと思っていたコンテンツを、これだけタタで見放題な今は、もっと良い時代ではないか?

 

今を生きる僕たちは幸せだ。恵まれている。満たされている。

でもそうした満足感や感謝の気持ちを持てるのは一瞬のこと。

一瞬ののちには、これはあたりまえのことになってしまって、僕たちは自分が実はとても幸せであることをすっかり忘れてる。

 

それを繰り返していると永遠に幸せにはなれない。

「青い鳥」じゃないけど、いまどきの幸福は、どっか家の中に転がっている。

ゴミゴミ散らかってるところを片づけて掘り出せば、たいてい出てくると思う。

 


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45周年ユーミン、40周年サザン&YMOの衝撃

 

 正月は家で執筆以外はテレビを見ていた。

 久しぶりにいっぱいテレビを見た。

 「もう見る気ねーよ」と言ってた紅白も見てしまった。

 

 サザンの桑田とユーミンの暴れっぷりにはホントびっくりした。

 還暦も軽々クリアして、もう怖いものなしという感じである。

 平成最後のどーのこーのと言ってたけど「勝手にシンドバッド」は昭和の曲だ。ま、お祭り騒ぎができれば、昭和だろうが平成だろうがどうでもいいか。

 

 昨年、ユーミンはデビュー45周年、サザンは結成40周年ということで紅白に出たが、同じく結成40周年だからか、YMOの特集番組も2日にNHK-BSでやっていた。

 

 「名盤ドキュメント」は、1979年発表の名作「SOLID STATE SURVIVOR」の解析。

 制作当時から厳重に保管されてきたマルチトラックテープの音源を再生し、当時の関係者や参加ミュージシャン、YMOチルドレン世代のアーティストたちの証言により、この大ヒットアルバムの謎と魅力に迫るという内容。

 

 「細野晴臣イエローマジックショー2」は、メンバー3人がジジイに扮装して(実際3人とももうジジイだけど)コントと演奏をやるという内容。昔から自分たちを茶化してお笑いに持っていくのが大好きな人たちだったけど、世界的ミュージシャンに上り詰めてベテランの域になってもやり続けるこの姿勢はリッパ。

 

 YMOは仕事のBGMでよく聴くが、ここのところ、1979年と1980年のワールドツアーのLIVE音源にはまってしまって、このあたりの音はエキサイティングでカッコ良すぎてとてもBGMとして聴いていられない。

 

 特にこの1980年10月のオランダ・ロッテルダムのライブは、自らテクノポップの概念をひっくり返すようなロックしまくりの演奏で観客のノリもすごい。

 

 サザンもユーミンもYMOも、やっぱりいいもんはいい。

 彼らの活躍後に生まれたチルドレンたちも素直にはまっちゃうようだ。

 


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クリスマスにちょっとだけ世界と自分を変える

 

 むかしむかし、愛と音楽があれば世界を変えられる、と多くの人が信じていた時代があった。

 若い連中はみんな、多かれ少なかれ頭がヒートアップして、かなりイカれていたので、そうした偽善者めいていてインチキ臭い話も平気で口走っていた。

 

 今はもうそれが空想か幻想か妄想だということが分かってしまっている。

 それでも年に1日くらいはそういうことを口走ってもいいのではないかと思う。

 

 バカバカしいし、何の得にもならない。それにいっぱいいっぱいで暮らしているので、そんなことに関わっている余裕なんてない。

 

 そうこうしているうちに、自分の半径50メートルが平和で穏やかであればOK、とりあえずオイラが死ぬまではとこのまんまで――と多くの人が考えるようになった。

 

 トランプ大統領の悪口を言う人は大勢いるが、あのビジネスファーストのボスはアメリカのみならず現代の先進国の、目先のことしか見ようとしない一般大衆の正直な心の写し絵ではないのか。

 

 人と人、文化と文化を遮断する壁はアメリカとメキシコの国境だけじゃなく、世界中のいたるところに建てられている。

 人種問題も階級格差も大きくなるばかり。

 

 なんだか宗教だかスピリチュアルめいた話になるけど、ひとりひとりの祈りだとか、

 

言霊だとかは結構、大切なんじゃないかと考えたりする。

 

 あなたや僕が祈ったり唱えたりすることで、ほんのちょっぴりでも世界は良い方向に変わるかも知れなない。

 みんなが12月24日と25日にそうした思念を集中させれば、その波動でかすかにでも地球の軸を動かせるかもしれない。

 

 そして、そうした言葉を口にしたり字にしたりすることによって、自分も本当にちょっとだけだけど、昨日よりはましな人間に変われるかも知れない。

 

 べつにその年一回はクリスマスじゃなくてもいいんだけど、ツリーやキャンドルやケーキやプレゼントのおかげで「LOVE」とか「PEACE」とか割と口にしやすい日なのであれば、やってみてはどうだろう。

 

 というわけで、Merry Christmas。

 素敵なクリスマスをお迎えください。

 


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12月のCanon

 

 クリスマスまでもうあと1週間、今年もあと半月しかない。

 クリスマスも年末年始もまだ全然準備してない。

 掃除もやってない。

 ので、まったくそういうモードに入れずにいた。

 

 なので例年ごとくGeorge Winstonの「DECEMBER」を聴く。

 頭の中に果てしない雪原が広がる。

 雪うさぎがピョンピョンと跳ねてゆく。

 

 「聖夜」「ジングルベル」「もろびとこぞりて」のような、子供の頃からおなじみのクラシックに加え、この40年余り、日本でも海外でもいろんなクリスマスソングが続々と出てヒットした。

 

 僕もさんざん聴いてきたが、なんだかもうお腹いっぱいになってしまって、ここ数年はおなじみのクラシックとこのアルバムしか聴かなくなった。

 

「Summer」や「Autumn」もいいけど、Winstonはやっぱりこの「DECEMBER」だ。

 

 集中してイメージを楽しみながら聴くこともあるし、仕事中のBGMとしても適しているし、もちろん季節の気分も堪能できる。一石三鳥。

 

 中でも「Canon」はほとんどループ状態で聴くことが多い。

 Winstonの演奏に初めて出会って、かれこれ35年たつが、いまだこのピアノ一台で紡ぎ出すCanonをしのぐCanonは聴いていない。

 

 なんとか来週には実生活も年末年始モードに入れたいのだけど。

 


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未来が来ても嬉しくないのさ、君と一緒でなけりゃ

 

 久しぶりに佐野元春を聴いてみたら、すごくよかった。
 「アンジェリーナ」や「SOMEDAY」や「約束の橋」などの懐メロもいいけど、最近のはもっといい。ルックスもグレイヘアが似合って若い頃よりかっこよくなった。
 何よりも歌詞が聴かせる。「人間なんてみんな馬鹿さ」「未来が来ても嬉しくないのさ、君と一緒でなけりゃ」・・・大人の想像力を刺激する歌だ。「SOMEDAY」からここまでたどり着いたのか、という感じがする。

 アルバムも聴いてみようかなと思う。

 


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みきなつみの「ボクらの叫び」がカッコいくてかわいい

 

こんなカッコいい歌を、こんな可愛い子が歌ってるなんて昨日まで知らなかった。

後半の歌詞の「空想、幻想、妄想」の3タテには涙がキレまくる。

いつまでもたってもこういう曲が好きだ。たぶん死ぬまで。

 


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Queenの思い出:1974~87年

 

 今日はQueenのフレディ・マーキュリーの命日だったらしい。

 そういえばこの間までYou Tubeにアクセスするたびに映画の予告編が出てきたが、この週末あたりから公開しているみたいですね。

 ファンは嬉しいでしょう。

 

 僕がロックを聴き始めた頃、ロック痛の先輩がいて、彼とその仲間がよく僕に向って「Queenみたいなのは女・子供が聴くバンドだ。あんなの聴いてちゃ男の名折れだぞ」とかなんとか言ってた(当時、その人たちは中学生です)。

 

 でも僕は初期の頃のQueenが割と好きだったで、そんな意見はシカトしてレコード買って、75年の来日公演の時も愛知県体育館まで観に行った(当時、名古屋在住)。

 

 初めて買った「MUSIC LIFE」(当時の音楽雑誌)の表紙がQueenだった。

 ちなみにこの少し後の号に載っていた1975年の人気バンド投票の結果は、1位がEmerson,Lake&Palmer、2位がLed Zeppelin、3位がQueen、4位がYes、5位がDeep Purpleだった。(たぶん15位くらいまで憶えている)

 

 僕がQueenを好きだったのは「ボヘミアン・ラプソディ」が入っている4枚目の「オペラ座の夜」までで、その後はだんだん聴く気がなくなった。

 世界的な人気が出たのはその後からだと思うが、人気の秘密はフレディ・マーキュリーのパフォーマンスがお笑いのネタになったのが大きいと思っている。

 

 マイケル・ジャクソンなどもそうだけど、音楽・アーティストとして素晴らしい一方で、モノマネができてお笑いネタにできるというのが、1980年代のスーパースターの条件だったような気がする。

 

 1985~87年、ロンドンの日本食レストランに勤めていた時、一度だけメンバーが揃ってきたことがある(たしか87年の春先)。

 ロジャー・テイラー、ブライアン・メイ、ジョン・ディーコンと来て、最後にフレディも来るのか?と思ってたら彼だけ来なかった。

 今思えば、当時、すでにAIDSとの闘病生活が始まっていたんですね。

 

 うーん、全然見る気なかったけど、映画観とこかと思い始めた。

 


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「ぼく」という一人称の女が気にニャってる  

 

 10代から20代の前半くらい、自分のことを「ぼく」という女がチラホラいた。

 べつに性同一障害とか、そういうことではない。

 「変身願望」とか「ほんとは男の子になりたかった」とか、心理学的にいろいろありそうだが、少なくとも表面的には皆、その一人称以外はいたってフツーで、見た目も可愛く、頭脳も明晰そうだったと記憶している。

 

 「リボンの騎士」や「ベルサイユのばら」など、宝塚歌劇系の影響が強かったからだろうか?

 

 そういえばあの時代(1970~80年代初めごろ)、一人称に「ぼく」を用いて男の立ち場に立って歌う女性歌手が多かったと思う。

 

 代表的なのはイルカの「なごり雪」か。

 あれはもともとかぐや姫の伊勢正三の曲だけど、後にイルカの旦那になるプロデューサーが彼女に歌わせてくれと直談判したらしい。

 それがイルカのキャラクターとマッチして大ヒットし、後世に残る名曲となった。

 今年亡くなった森田童子の歌もほとんどが「ぼく」の一人称だった。

 

 あの頃の流行だったかもしれないけど、少なくとも歌の政界では今でもAKBなどのアイドルが「ボク」「キミ」っていう呼称を使っている。

 

 そこで気になってネットで調べてみたら、「ボクっ娘」とか「ボク少女」とかのカテゴリーがあるという。

 

 これはマンガ・アニメ・ゲーム等のサブカルチャーの世界で、女の子キャラクターがそれぞれの個性を立たせるためにそういう、通常は男が使う一人称を用いることがままあるようだ。

 

 あくまでイメージだけど、確かに萌えキャラで「ぼく」と言っている娘はたくさんいそうな気がする。

 

 歌にしてもサブカルにしてもバーチャルな世界でそういうキャラが重宝され、活躍するのはわかるけど、現実的にはどうなのか?

 

 やっぱり気になって現役若者の息子に「おまえの中高あたりの同級生の女の子で自分のことをボクっていう子いた?」と聞いたら、全然いなかったという返事。

 

 バーチャルで増殖している分、リアルでは絶滅危惧種になっているのか?

 どうでもいいことなんだけど、気になり始めるととことん気になって、仕事にニャラならなくなってしまったので一筆。

 


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20世紀の愛と平和のロックなんて忘れてしまってた

  

 1960年代から80年代のロックやフォークやポップスをいつも聴いているので、YouTubeさんがよく僕のMy Mixというのを提供してくれる。その中には普段聴かないコンテンツも混じっている。

 「あんた、こういうのも好きしょ」と、オーダーしてないものでもおススメを蔵出ししてくれるというわけだ。

 

 昨日は久しく聴いていなかったNenaの「99 Luftballons (ロックバルーンは99)」が出てきた。

 世界を席巻したドイツ発のドイツ語ソング。

 YouTubeが出してくれたのは2016年ニューヨークでのライブだ。

 

 めっちゃ明るいノリだけど、これはけっこう強烈な風刺を含んだ反戦歌だ。

 ご機嫌なリズムとポップなメロディはもちろんイカしてるが、99個の赤い風船を兵器と間違えて攻撃し戦争に発展してしまうという寓意に富んだ歌詞が素晴らしい。

 

 当時の核廃絶のムーブメントと相まったのか、1983年の世界的大ヒットとなった。、

 そしてそれから5年後にベルリンの壁が崩壊した。

 

 そういえば最近、ある本でデヴィッド・ボウイが1987年にベルリンの壁の前で野外ライブをやったという話を読んだ。

 スピーカーを東ベルリン側に向け、壁で分断された双方のオーディエンスに音楽を送り届けたという。

 まさしくボウイHeroesだった。合掌。

 

 1960年代、当時の若者の多くは音楽で世界が変えられると信じ、ミュージシャンたちはそれに応え、愛と平和について語り歌った。

 その精神は20世紀の間中ずっと生き続けて、東西冷戦の終結や核廃絶運動、難民の救済などにも何らかの影響を与えたと思う。

 だが、いつの間にか、たぶん21世紀の始まりとともに消えてなくなっていた。

 

 世の中そう甘くない。単純ではない。

 あれは幸せな時代の、能天気な連中の、つかの間のたわごとだったのか?

 音楽ビジネスのための偽善だったのか?

 みんな夢でしたと、あとはYou Tubeで音楽を楽しんでりゃそれでいいのか?

 

 ロックが骨抜きにされ、反戦も反核も何もなかったのように、次々とまた世界中で壁が作られ、核が作られる時代になってしまっていることに、今さらながら愕然とする。

 

 「おまえごときに何ができる?」と問われたらグウの音も出ない。

 それでもまだ生きているので、自分の宿題として抱えて、たとえちょっとずつの時間でも向き合いたいと思う。

 


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創作と勝手にテーマ音楽

 

 新作ラジオドラマ脚本の初稿を書き上げた。

 自己満足度100%。「わーい!」って気分になっている。

 

 前作がコンペでファイナルまで残ったので、今回はぜひとも当選してほしい。

 まだ完成ではないが、とりあえず今年も連荘で参加できるという目途が立って一安心。

 とにかく作品を書いて参加しないことには話にならないので。

 

 創作に関してはいつも作品ごとにテーマ音楽を決める。

 言っても、べつにこれを使ってくれとかリクエストを書き込むわけじゃなく、自分がの頭の中で勝手に決めているだけ。

 

 でもテーマ曲があると不思議と全体の雰囲気がつかめ、リズムも出る。

 要は気持ちよく書けるのだ。

 

 選曲は頭の中の音楽ライブラリーから引っ張り出してくる。

 今回のはYesの「And You、And I」

 メンバーがシニア世代になってからのライブを見ると、間奏のあとの後半部分でベースのChris Squire (3年前に他界してしまった)がハーモニカを吹いている。

 それが原曲にない素晴らしい味付けになっていて、イメージの刺激剤となった。

 音楽の力はGreatだ。

 

 ちょっと休んで頭を冷やしてこれから1ヶ月かけてリライトする。

 じつはこれが肝心。

 結構余裕があるので、思い切ったリライトもできそうだ。

 


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ちょっとイカれたサブカルチャーの聖域シモキタ

 

 とくに用事があったわけではないけど、お天気が良かったので午後から自転車でぶらっと下北沢へ。

 到着すると駅の方から何やら聴きなれたフレーズが生音で響いてくる。

 お、これはCreamの「Sunshine Of Your Love」ではないか!

 

 出所は駅前広場(しもきたスクエア)。

 英国フェスでLiveと食い物の出店が10軒ほど。

 ライブは複数のバンドが60'S~80'Sのブリティシュロックのカバーをやっ

ている。

 Creamのカバーバンドは上手い! ギターは本家エリック・クラプトン並みだ。

 この広場は再開発予定地で、いずれ駅ビルが建つらしい。

 

 下北沢には東京に来た40年前からずっと通っていて、昔は芝居やライブを見たり、飲んだり食ったり古着を買ったりよくしていたが、ここ10年くらいはカミさんと年に1~2度買い物に来る程度。

 

 一人で来たのは久しぶりだったので2時間ばかりブラブラ歩いて一回りした。

 程よい高揚感と安心感、不思議な居心地の良さは40年前から変わっておらず、狭い道をうじゃうじゃ歩いている人たちを見るだけで面白い。

 

 昔の自分と同じ若い衆の人口密度も高いし、僕と同じ旧・若い衆も負けず劣らず多い。そこに外国人も混じってブレンド具合が絶妙だ。

 

 学生時代よく行った店が立ち退きで閉店になっていたりして寂しい部分もあったが、その代り表通りにも裏通りにも、ポップだったりパンクだったりシブかったりする新しい店もたくさんできてにぎやかだ。

  

 裏通りの「こはぜ珈琲」という小さなカフェに入った。

 コーヒー何と200円。もちろんセルフだが小さな店内にはジャズが流れて

いて、入り切らないお客は表のイスでコーヒーを飲んでいる。

 寒い人用にブランケットも用意されていて、とてもあったかい空気だ。

 トイレも狭いが飾りつけがお洒落で楽しく、シモキタっぽい。

 トイレが楽しい店は良い店だ。

 

 ブラつくだけで面白いシモキタ。

 やっぱりいい。用事がなくてもまた来よう。

 

 再開発されるとキレイでオシャレになる代わりに、漂白剤と脱臭剤をふりかけられ、クセもアクも匂いも消えてつまんない街になるパターンが多いけど、シモキタにはずーっと、ちょっとイカれたサブカルチャーの聖域であってほしい。

 


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森田童子の思い出:1970年代ぼくたちの子守唄

 

★訃報

 

 YouTubeで1960~80年代前半の音楽を聴いていると時々特定のミュージシャンの音源や映像が激増している現象に出くわす。

 で、よく見るとそのミュージシャンなり、そのバンドのメンバーなりが亡くなっていたことを知る。

 

 先月下旬もそれがあった。

 

 年に1度くらいの割合で発作的に聴きたくなる声がある。

 森田童子の声。

 検索したところ、6月に「いったい今までどこに眠っていたんだ?」と思える貴重な音源・映像が次々にUPされていた。

 もしやと思って添えられたコメントを読んで今年4月24日に亡くなっていたことを知った。

 世間に公表されたのはJASRACの会報で6月11日となっている。

 

 ぜんぜん知らなかった。

 死因は心不全。享年65歳。

 最近の基準に照らし合わせれば、早すぎるのかも知れないが、森田童子という虚像はすでに1983年――35年も前に消えていた。

 

 それなのに人々の心の中で強烈な存在感を放ち、生き続けていた。

 

★1978年

 

 僕が彼女の歌を初めて聴いたのは、東京に出てきて1年目の1978年のことだった。

 当時、演劇学校に通っていて明大前のアパートで友達と二人で暮らしていた。

 そこは双方の関係からいろんな連中が集まる溜まり場になっており、そのうちの一人がレコードを持ってきた。

 

 森田童子の名前と写真は知っていた。

 大きなサングラスとカーリーヘアの風貌から、てっきりブルースシンガーだと思っていた。それも男の。

 

 レコードは「マザースカイ」。

 A面1曲目「ぼくたちの失敗」。

 短いピアノのイントロに続いて聴こえてきたのは、ブルースシンガーの焼けた声でなく、甘く透き通った少女のような声だった。

 

 心臓を直撃された。

 

 その後40年、いろんな音楽を聴いたけど、これほど素朴で美しいメロディラインを持った楽曲は他にほとんど思い浮かばない。

 

 グッドバイ(75年)、マザースカイ(76年)、A BOY(77年)、東京カテドラル聖マリア大聖堂録音盤(78年)、そしてラストワルツ(80年)。

 

 遅れてきた僕がこれらのレコードをよく聴いていたのは3年ほどの間だった。

 今でも曲を聴くと、この頃の友達の顔や声、生活の断片、街の風景が妙にくっきりとした輪郭でよみがえる。

 僕が経験したのは最後の方だけだったが、森田童子の歌は1970年代という時代の象徴でもあった。

 

 

★1980年/1983年

 

 1970年代後半、森田童子はライブハウスで最も観客を集めるシンガーソングライターの一人だった。

 まさしくあの時代の空気を体現できるミュージシャンだった。

 

 僕は結局ライブハウスには行かなかったが、テント公演を体験した。

 

 80年11月、池袋の東口・三越裏の空地に黒テントを張って行われた「夜行」と題されたコンサート。

 森田童子を生で見たのはそれ一度きりだ。

 激しくギターを掻き鳴らす「春爛漫」で、漆黒のテントの中に桜吹雪が夥しく舞っていたのを思い出す。

 

 YouTubeに当時のドキュメンタリー映像(テレビ東京の番組だったらしい)が上がっていて、その中で彼女は語っている。

 

 「あと何年か後には東京でテントを建てるということは不可能になるでしょう。私たちのコンサートが不可能になっていく様を見てほしいと思います。そして、私たちの歌が消えていく様を見てほしいと思います・・・(中略)一つの終わりの時代へ向けて、私たちの最後の切ない夢を見てほしいと思います」

 

 80年代に入り、もう自分の歌が求められない時代になっていく。遠からず自分はこの世界(音楽シーン)から消え去るのだ、ということを予感していたのかも知れない。

 

 世間には明るく華やかなダンスミュージックが溢れ始めていた。

 孤独や悲しみ、絶望や死を歌う童子の歌を聴く人はどんどん減っていった。

 僕もその頃はもうほとんど聴かなくなっていた。

 「もう森田童子なんて聴かないよ」と誰かに言った覚えもある。

 それなのに、グッドバイとマザースカイの2枚のアナログレコードはいまだに手元にある。

 

 そんな中、1983年、新宿ロフトのライブを最後に森田童子は静かにギターを置いた。

 それを気に留めた人さえ、そんなにいなかったと思う。

 特に引退宣言なども残すこともなく、ひっそりと音楽の世界から身を引き、「みんな夢でありました」と普通の人の生活を送るようになった。 そこで森田童子は死んだのだ。

 

 

★1993年

 

 ところがそれから10年後、彼女は再び脚光を浴びた。

 バブル景気、ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代で浮き上がっていた人々が地上に足を下ろし、内省し始めた1993年、あの「ぼくたちの失敗」がテレビドラマ「高校教師」の主題歌に使われたのだ。

 ドラマを見た人たちが「あの歌手は誰だ?」ということで森田童子を再発見した。

 

 その当時、僕はドラマのイメージが貼り付いてしまうことをとても苦々しく感じていた。

 けれどもいま振り返れば、あの美しいメロディと彼女の声がより大勢の人の耳に届き、心に宿ったのは喜ぶべきことだと思う。

 

 「ぼくたちの失敗」が大ヒットになり森田童子にスポットライトが当っても、そこには誰もおらず、空っぽのままだった。

 

 現実の彼女は30歳で森田童子を辞めた後、結婚し、都内で主婦として暮らしてたようだ。

 一度、あるルポライターが居所を探り当て、取材を申し込んだことがあるが頑なに拒否されたと言う。

 

 その後、インターネットが発達しても、とうとう彼女の素顔も本名も公になることはなかった。

 これほどの知名度の人間がここまでプライバシーを守り続けられたのは奇跡的なことだ。

 

★病気

 

 「出たくないと」いう強い意志に加えて、僕は体調や精神状態があまり良くなかったのではないかと推測する。

 10代の頃、大きな病気を患っていたというから、それがずっと残っていたのではないだろうか。

 もし健康だったら、本人がいくら拒んでも周囲が何とか説得しようとあらゆる手段を講じて動くだろう。

 少なくとも取材の一つ、二つは受けさせただろうと思う。

 

 死因も心不全とのことだが、どこかでその病気が関係していたのではないだろうか。

 

 あるインタビューで、病気のせいでまともな生活が送れず、高校を中退してブラブラしている時に音楽を始めた」といったことを話していたが、そのブラブラの中身は苦しい闘病生活だったのかも知れない。

 

 そして死線を彷徨った経験と、学生運動をしていた友達との付き合いが曲作り、音楽活動に結びついた。

 

★子守唄

 

 森田童子の歌は一般に「暗い」と揶揄されることが多かった。

 けれども深刻度はさておき、孤独感や、悲しい・寂しいという感情を味わわない人間はいない。

 彼女の独特の「ゆらぎ」を持った声はそこに感応し癒しを与える。

 元気で明るい歌が心の傷を癒し、元気に、明るくしてくれるとは限らない。

 

 また、僕たちはいつもどこかで死に怯えながら暮らしている。

 いつか必ず訪れる自分の死、愛する人の死、大切な人の死――

 光の届かない奥底の暗闇に、僕たちの心の中の小さな子供はぶるぶる震えている。

 童子の歌はその子を優しく慰めてくれる母の子守唄だ。

 あの少女のような甘く透き通った声は、母の声でもあるのだ。

 

 時々発作的に聴きたくなるのはそのせいなのかもしれない。

 

★夜想と狼少年

 

 実は最後の2枚のアルバム「夜想」と「狼少年 WolfBoy」はかつては一度も聴いたことがなくてYou Tubeで初めて聴いた。

 時代に合わせようと彼女が(というよりスタッフが)苦労しているのが見て取れる。

 

 サウンド的にプログレっぽくしたり、テクノポップみたいな味を加えたり、ワルツのリズムを採り入れてダンスミュージックに近づけようとさえしている。

 

 歌の語り口の定型だった「ぼく、きみ」を辞めて「わたし、あなた」にした曲もあり、それまで隠されていた女の部分が見えてドキッとする瞬間もある。

 

 いま聴いてみて僕はけっこう好きになったが、「グッドバイ」や「マザースカイ」の童子節を愛するファンにとってはどうしても違和感を感じる作品だろう。

 彼女自身も違和感を覚え、納得できない部分が多くあったのではないだろうか。

 そして、ここまでして音楽の世界で生き残るつもりはない、と去ることを決意したのだろうと想像する。

 

★普遍

 

 訃報に出会って以来この10日ほど、夜な夜な彼女に関する音源、映像、ネット上の記事をあちこち見ていた。

 その中に5年ほど前に投稿されたものだが、12歳の女の子が「ぼくたちの失敗」を歌っている動画があった。

 

 おそらく自宅のリビングだろう、暖かい陽の当たる部屋で自分でギターを弾きながら、あどけない声で明るく軽やかに歌っている。

 過去の思い出を愛おしみながら別れを告げ、笑って旅立とうとしている少年少女の情景が浮ぶようだ。

 

 童子の歌がこんなふうに響いてくるなんて不思議で新鮮で、ちょっと感動した。

 

 森田童子という歌手の存在は1970年代の構成要素であり、あの時代の空気を知る者が共有できる世界であり、それ以外の聴き方は難しいのではないか。ずっと思っていた。

 が、どうもそうではない。

 

 彼女の孤独、悲しみ、寂しさ、絶望、死をテーマとした歌の数々は、その多くがかなり普遍的なものであり、貴重なものであり、むしろこれから大事にされていくのではないかと思うようになった。

 

 ぼくたちの時代の子守唄は未来へも繋がる。

 

 最後に、森田童子さんのご冥福をお祈りします。

 そして最期まで秘密にした素顔と本名、プライバシーが今後もけっして暴かれることのないよう祈るばかりです。

 


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抹消された20世紀パンクと想像力の中で生きる19世紀型スチームパンク

 

 6月にロンドンに行ったとき、ひとつ大きなことに気づいた。

 パンクが歴史から抹消されている。そう感じた。

 僕がロンドンで暮らしていた1980年代後半、パンクロックのムーブメントはもちろん、とっくの昔に消え失せていたが、街の中ではまだまだトサカ頭の若者たちが闊歩していた。そう、パンクはファッションとして生き延び、観光の目玉にもなっていた。

 

 王室やビッグベンやウェストミンスター寺院などとともにロンドンの代名詞となっていた。ダイアナ妃のロイヤルウェディングの絵はがきの隣には隣にパンクの兄ちゃん・姉ちゃんたちの絵はがきがあった。

 僕自身は経験ないが、観光客と一緒に写真に納まり、金をせびり取っていたという話もある。

 僕が働いていた日本食レストランでは、すぐ隣のテーブルにパンクの連中が来たので、日本人のおじさん・おばさんたちが怖いから席を替えてくれと言ってきた。

 そう考えると、セックスピストルズらのパンクバンドがリアルタイム活躍していていた時期よりも、有名度としてはあの頃が最高潮だったのかもしれない。

 

 しかしパンクは21世紀に生き残れなかった。

 ビートルズやローリングストーンズはもちろん、へヴィメタもプログレもグラムロックもバンドエイドもイギリスが産み落としたポップカルチャーとして、ロンドンの20世紀の歴史の中に燦然と輝いているのだが、パンクはその片鱗も見当たらなかった。当局から存在を抹消されてしまったという感じである。

 

 なぜだ? 反抗的だったり暴力的だったりしたからか? 音楽性が他のジャンルに比べてショボかったからか?

 でも僕がちょっと知っていたパンクの兄ちゃん・姉ちゃんたちは気が良くてかわいいやつらだった。

 

 20世紀のパンクは消えうせたけど、近年はそれに代わって19世紀のスチームパンクが人気みたいだ。僕も息子の影響で少々かじっているが、要はSFのジャンルの一つで、産業革命時の蒸気機関のテクノロジーが発達した世界観のもとに綴られた物語だ。

 

 現実の歴史の中では無視されても、パンクのスピリットは人々の想像力の中で生きていく時代になっている。

 そしてまた、僕たちは10年・20年単位でなく、200年・300年のスパンで自分の存在を位置づける時代になっているのではないかと思う。

 


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アナ雪短編 充実度1時間分

 

 大ぴらに言うのは初めてだけど、けっこうアナ雪が好きなんです。

 ストーリーもビジュアルも音楽も素晴らしい。

 最近、ミュージカル映画なんて全然見ない(そもそも作られているのだろうか?)けど、アナ雪だけは別格。何度聴いてもいい。

 この映画は本当にディズニー/ピクサーの力を思い知らされた。

 

 で、今日は「リメンバー・ミー」を見たんだけど、その前座がアナ雪。

 なんと贅沢な!

 20分そこそこのクリスマスをテーマにした短編だけど、ひとかけらの手抜きもなく充実度満点。

 「自分たちには伝統がないね」と、ちょっと悲しむアナとエルサのために、雪だるまのオラフが伝統を集めて回るが・・・という、いかにもアメリカらしい発想のストーリーで、これがまたとても面白く、かつ美しくまとまっている。

 もちろんアナとエルサの歌も最高で、1時間分くらい見た気になりました。

 

 けどあくまで前座なので、あまり胃にもたれず、ちゃんとメインを食べられるように軽くしてあるのがミソ。

 ちょっと完璧過ぎるバランスです。いずれにしてもこの2本立ては超お得です。

 

 メインの「リメンバー・ミー」については、いろいろ考えさせられたので、また後日。

 

 今日はほとんど映画会社の回し者になってしまいました。

 まぁ良いものは良い。好きなものは好きなので、ということで。

 


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自分をリライトする

今までやってきたことを書き直す。

 リライトは今後の自分のテーマである。

 

 と思って、久しぶりにアジアンカンフージェネレーションの「リライト」を聴いた。

 とんでもない重量感と疾走感。

 こんなカッコいいロックに出会ったのはどんだけぶりだ~と、ぶっとんだのが、はや15年ほど前。

 

 アニメ「鋼の錬金術師」のラストクールのオープニング曲だったので、ハガレンのクオリティが10倍UPした。

 

 いま聴いてもレジェンドでなく、なつメロでもなく、現在進行形のリアル感満点で、ザラザラの音の塊がより深く胸をえぐってくる。

 

 リライトは形を成した文脈をもう一度掘り進めて、新しい価値と意味を見つけ出す作業。書いて休んで書いて休んで、また書き直す。

 

 個人的なことだけど、今の時代はみんな同じようなことをして、自分の生きてきた中から何かを掘り出そうとしているのではないだろうか。

 

 あなたは何回自分を書き直しますか?

 


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雪と少女

 

雪どけの風景に出会うと、五輪真弓の「少女」という歌を思い出す。

 

 ♪あたたかい陽の当たる真冬の縁側で

 少女はひとりでぼんやりと座ってた

 積もった白い雪がだんだんとけていくのを

 悲しそうに見ていたの

 夢が大きな音を立てて崩れてしまったの

 

 透明感のある旋律と余白に満ちた詞。

 思い出すたびにとても清新な気持ちにさせられる。

 

 子供は雪どけの景色や子犬の遊ぶ姿を見るだけで、生きるってどういうことなのか感じとっている。

 夢がとけて消えても、また次の夢の芽を雪の下から見つけ出してくる。

 生きるってその繰り返しなんだということも。

 

 塾や習い事などいくら詰め込まれて忙しくても、

ちゃんとぼんやりして感じる時間を持っている。

 「なにぼんやりしているの!”」と大人に怒られたってへっちゃらで、

 自分の中にいる未来の自分と話している。

 


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八王子・冨士森公園のスローバラード駐車場で、ポップミュージックをこよなく愛した僕たちの時代の妄想力について考える

 

八王子緑化フェアのメイン会場である富士森公園の駐車場は、ある一部の人たちにとってスペシャルな駐車場である。

 

 ある一部の人たちというのは、僕を含むRCサクセション、あるいは忌野清志郎の音楽が好きな人たちだ。

 この駐車場は彼らの名曲「スローバラード」の舞台なのである。

 

 ♪昨日はクルマの中で寝た

  あの娘と手をつないで

  市営グランドの駐車場・・・

 

 ここはもともと運動公園で、陸上競技のグランドになっていた。

 おそらく清志郎がこの歌を作った若かりし頃は、こんなにきちんと整備・舗装されていない、土の駐車場だったのだと思う。

 

 そんなイメージを抱きながら、僕は仕事の合間にこの入口に立ち、頭の中にスローバラードの切ないメロディを響かせてみた。

 

 すると一瞬のち、この場所はもう何の変哲もないただの駐車場ではあり得ず、光り輝くロックの聖地に変貌を遂げたのだ。

 

 おそらく僕だけでなく、60~70年代のロック・ポップミュージックに浸っていた輩は、こうした想像力が旺盛だ。

 

 当時はインターネットはおろか、まだミュージックビデオさえもなかった。

 

 僕たちが得られる音楽周辺の情報は、一部の音楽雑誌に載る記事と、ごく限られた写真、ラジオ、ごくたまにテレビ、そしてレコードジャケットのアートワークとライナーノーツだけだった。

 

 現代と比べればごくわずかなそれらの情報をタネに、僕たちは想像力を駆使して、その音楽の中から迸る感情を受け止め、現出する世界に没頭し、ひとりひとりが自分の感性によりぴったりくるよう頭の中でアレンジを施し、「自分の歌・自分の音楽」に育てあげていた。

 

 こうなると想像というよりは妄想に近い。

 

 より情報の少ない海外のミュージシャンのもの、さらにより前衛的なプログレバンドの音楽世界などは、そうした妄想力をますますパワフルにかき立て、際限なくストーリーを膨らませることができた。

 

 だから情報過多な現代とは、まったく聴き方の作法が違っていたのだ。

 

 それは単にミュージシャンから提供してもらった音楽を聴くというより、脳内で彼らの歌や演奏とともに、めくるめくイメージの世界を築き上げる「共同作業」をしていたと言える。

 

 もちろん、はなはだしい勘違いもあっただだろう。

 でも僕たちはそこまで楽しませ、刺激し、生き方の指針を示してくれるミュージシャンたちを心からリスペクトしていた。

 

 そうした情報レスな妄想リスニングの時代は、ミュージシャンとリスナーのとても幸福な関係が結ばれていたのではないかと思う。

 

 ♪ぼくら夢を見たのさ

  とってもよく似た夢を

 

 そう歌った清志郎も、もうこの世にいない伝説の人になってしまっている。

 八王子緑化フェアで賑わう、10月の日曜日の富士森公園の、ただ車を停めておくだけの空間でその歌声が胸にしみこんだ。

 


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義弟のアナログレコードと、帰ってきたカレン・カーペンター

 

  30余年前、これからの音はデジタルですよ~!と刷り込まれて、世の中に一気にCDが普及しました。

 そうか、レコードの時代はもうおしまいなんだ~と思いつつ、中学生の頃から約10年余りにわたって集めてきた200枚のレコードを捨てるに捨てられず、段ボールに詰めて押し入れに封印。

 

 今の家に引っ越してから備え付けの棚があるので、それらを出して並べるだけは並べていたけど、結局、聴かないので5年程前に一念発起してだいふ売り払いました。

 

 それからほどなくして少数のマニアのみならず、若者の間でもアナログ人気が高まり、盤もプレイヤーも針も再生産され始めたといいます。

 もはや恐竜のごとく、絶滅の道をたどるのみ・・・と思い込んでいたのに、世の中、何が起きるか分かりません。

 

 それでこの夏、義弟がプレイヤーを買い込み、アナログレコードを聴けるシステムを設えたというので、手元に残っている50枚余りのレコードの何枚かを手土産に実家へ。

 

 アナログ音を愛する人たちのマニアックなうんちくはよく耳にしますが、「百聞は一聴にしかず」。

 義弟にCDとレコードの聴き比べをさせてもらいました。

 

 試聴したのはカーペンターズの「ナウ・アンド・ゼン」から、かの名曲「イエスタデイ・ワンスモア」。

 CDの音が締まってタイトな感じがするのに比べ、レコードの方は柔らかく、のびやかな感じ。

 この曲の持つ清々しさと甘い感傷を際立たせ、ラジオで初めて出会った時のカレン・カーペンターの声により近いのは、やっぱりアナログかなぁと思います。

 

 でも、それは音の問題だけだけじゃなくて、でっかいジャケットを見開きで楽しめたり、黒い円盤がクルクル回っているビジュアルも脳に影響しているせいかも知れません。

 

 ここ30年余りはCDで、最近はもっぱらパソコンで音楽を聴いていますが、若い頃、何千時間と聴いたアナログレコードを聴くスタイルは、身体の芯まで染みついているんだなぁと実感。

 まさにイエスタデイ・ワンスモア。


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